[文書名] 第14回主要国首脳会議における政治宣言:東西関係
1.我々7カ国の首脳及び欧州共同体の代表は,自由,個人の諸権利の尊重,及び法の支配の下での平和裡の生存を求める全ての人々の希求について,共通の信条を有している。我々の国の国民は,自由のため,また民主主義とそれが生み出した繁栄を守るため,我々の現存の同盟関係の枠内において一致団結するものである。討議の過程において,我々は,これらの目標と価値を外交の分野,就中東西関係との係りにおいて如何に進捗すべきかにつき検討を行った。
2.我々は地域問題に関し,広範囲に亘る討議を行い,この討議はこのサミット期間全体に及んでいる。
3.我々は,軍備管理,人権及び地域問題等につき建設的かつ現実的な対話と協力こそが,東西間に安定を築き,より低い戦力レベルでの安全を増進する方途であるとの信念を確認した。我々はまた,予見しうる将来においては,核抑止力と充分な通常戦力が自由の下での平和を保障するものであることを再確認した。
4.我々が前回会合して以来,幾つかの重要な点において,西側諸国とソ連との間の関係に変化が生じている。この展開は,我々先進民主主義諸国が強固で団結してきたことによってもたらされたものである。ソ連における,より一層の自由と開放が,不信を減じ信頼を築く機会をもたらすであろう。我々はいずれも,このようないかなる動きに対しても積極的に対応するであろう。
5.我々は,ソ連がアフガニスタンから占領軍の撤退を開始したことを歓迎する。これはアフガニスタン全土からの全面的な撤退でなければならない。また,アフガニスタンの国民が自らの政府を自由に選べるようにならなければならない。我々はいずれも,難民の祖国帰還,再定住及び国家再建を確保するための国際社会の努力に対して,十分な貢献を行う用意があることを確認する。我々はここで,ソ連が他の地域紛争の解決についても,建設的な貢献を行うことを期待する。
6.前回の会合以来,米ソ両国間では,我々の各国の安全保障上の利益と完全に合致する方向で核兵器を削減することにつき合意をみるという進展があった。INF条約は,西側諸国の断固たる態度と団結の直接的な結果であり,核兵器を実質的に削減する史上初めての条約である。同条約は,非対称的な削減及び詳細な検証体制という。将来の軍備管理協定にとって死活的に重要な前例をもたらすものである。我々はここで,米ソ両国の戦略攻撃兵器の大幅削減を期待するものである。我々は,レーガン大統領がこの目標の向けてゴルバチョフ書記長と共にこれまで挙げている成果につき,同大統領を祝福する。
7.しかしながら,東ヨーロッパにおける大量のソ連通常戦力の存在とその結果としてのワルシャワ条約側の通常兵力の面での優位,そして奇襲攻撃・大規模攻撃を実施しうるその能力とが,ヨーロッパにおける安全保障問題の核心である。同様に,極東らおけるソ連軍事力の増強は,アジアにおける不安定の主要な源泉である。これらの脅威は削減されねばならない。我々の目標は,現在 の戦力の不均衡を解消した後,より低い戦力レベルで安全保障と安定を高めることである。我々は,化学兵器に関し,包括的で,効果的に検証が可能で,かつ真に世界規模での早期禁止を求める。
8.真正な平和は,軍備管理のみによっては確立され得ない。それは基本的人権の尊重の上に確固たる基礎を置かねばならない。我々は,ソ連が人間の尊厳と自由の保障において前進し,かつ欧州安全保障協力会議の活動(「ヘルシンキ・プロセス」)において受諾したコミットメントを完全に実施し,かつ実質的に強化するよう勧奨する。最近の進展は,法制及び実際の行動により示されねばならず,人々を分かつ痛ましい障壁は撤廃されねばならず,また,出国に対する障害は除去されねばならない。
9.我々は,東ヨーロッパの国に対して特別の関心を払う。我々は,東ヨーロッパの国々に対し,その経済と社会を開放し,人権に対する尊重を改善するよう勧奨する。この関連において,我々は,ヘルシンキ・プロセスの継続と強化を支持する。
10.我々は,東側諸国が,例えば欧州共同体との関係の確立と発展にみられるとおり,経済的孤立を終焉せしめることについての関心を高めていることにつき,積極的に留意する。東西経済関係は,商業的基盤が健全であり,国際貿易及び決済システムの基本的原則と諸規則の枠組み内においてとり行われ,かつ我々各自の安全保障上の利益と矛盾しない限りにおいて,その拡大を図り,我々共通の利益に資することができるものである。