データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第16回主要国首脳会議における国境を超えた問題に関する声明

[場所] ヒューストン
[年月日] 1990年7月10日
[出典] サミット関連資料集,617−621頁.
[備考] 外務省仮訳
[全文]

テロリズム

 我々7カ国の元首及び首相は,あらゆる形態のテロリズムに対する非難,テロリスト又はその支援者に対しいかなる譲歩も行わないとのコミットメント,及びテロリズムと闘う努力において協力を継続する決意を再確認する。我々は,テロリストに支援を与える政府が,その支援を直ちに中止するよう要求する。我々は,テロリストが処罰されずに放置されてはならず,国際法及び国内法に従って,裁判にかけねばならないと決意している。

 我々は,人質数名が最近解放されたことを歓迎するものであるが,未だに人質が存在し,中には5年以上にもわたって拘束されている人々がいることに,引続き深い懸念を有している。人質及びその家族の苦難は,終了されねばならない。我々は,すべての人質の即時,無条件,かつ安全な解放を求めるとともに,人質とされたまま既に死亡している虞れのある人々のすべてを明らかにすることを求める。我々は,人質犯に影響力を有する者に対し,そのための影響力を行使するよう求める。

 我々は,1988年12月21日スコットランドのロカビー上空において,1989年9月19日ニジェール上空において,また,1989年11月27日コロンビア上空において発生した民間航空機破壊の如き非道な好意に示された通り民間航空が,テロリスト・グループから依然として脅威を与えられていることに,深い懸念をもって留意する。我々は,民間航空に対するテロリストの攻撃と闘う決意を改めて表明する。

 よって,我々は,探知を容易にするためにプラスチック爆薬に添加物を混入することを義務付ける条約の作成交渉のため,協力を継続する。我々は,国際民間航空の保安基準の強化のために努力することを誓う。この目的に合致するものとして,我々は,研修及び技術援助を他の諸国の利用に供することの重要性に留意する。我々は,この問題に関し,国際民間航空機関(ICAO)を通じてとられているイニシアティヴを支持する。我々は,このような支援を拡大するため,ICAOとともに努力を行う。

不拡散

 我々は,核兵器,化学兵器及び生物兵器の拡散,並びに弾道ミサイル兵器運搬システムの拡散が,国際の安全に対して与える脅威に関して討議を行った。

 核兵器の拡散に関し,我々は,欧州理事会が最近ダブリンにおいてこの問題に関して発出した宣言に特に留意する。この文書は,効果的かつ国際的な格不拡散体制を維持すること,また,あらゆる努力をもって拡散防止を徹底し,一層多くの国々による核不拡散体制参加を奨励すべく寄与することが,大きな重要性を帯びている旨強調した。核兵器の不拡散に関する条約(NPT)は,そのような体制の重要な要素である。我々は更に,すべての国がIAEA保障措置を可能な限り普遍的に適用するように呼び掛ける欧州共同体の要請を支持する。

 我々は,また,すべての核物質供給国に対し,核物質供給国ガイドラインと同等の核物質輸出規制措置を採用するよう求める。

 NPTの締約国であると否とを問わず,我々は,ジュネーヴの第4回NPT再検討会議における討議を含め,今後数箇月のうちに行われる核不拡散関連討議において,満足のいく結果が得られることを確保するため,積極的に努力する旨を確約する。

 我々は,それらの討議が,衡平かつ安定的な不拡散体制に支持を与える旨の,出来る限り広範な合意の形成に寄与することを希望する。このような体制は,武器不拡散の養成と原子力エネルギーの平和的かつ安全な利用の発展という養成との間の欠くべからざる衡量を,その基礎と成すべきである。

 地球社会は,ここ2〜30年,核不拡散の問題,特に先進ミサイル運搬システムと組み合わされた場合の問題に焦点を当ててきた。今日,我々は更に,化学兵器及び生物兵器の拡散から生ずる新たな,かつ深刻化しつつある問題に直面している。

 化学兵器及び生物兵器の拡散に関し,我々は,前駆的化学物質の不法移転を防止するため,国内的な努力を進め,また,西側の関係場裡における努力を追求することを確約する。我々は,生物学上の技術の分野における潜在的な不法移転の危険に対し,警戒を怠らないことを同様に確約する。

 この点で,我々は実効的かつ検証可能な条約を通じた化学兵器の完全禁止を,化学兵器の拡散を防ぐため唯一の長期的保証として支持する。我々は,そのような条約に到達するための重要な一歩が,化学兵器の完全禁止を,化学兵器の拡散を防ぐため唯一の長期的保証として支持する。我々は,そのような条約に到達するための重要な一歩が,化学兵器の廃棄及び生産中止に関する最近の米ソ間の合意,並びに化学兵器禁止条約の原署名国となる旨のNATO諸国による最近の意図表明において,踏み出されたものと信ずる。我々は,未解決の問題を解決し,最も早い時期に化学兵器禁止条約を締結するためジュネーヴ軍縮会議における努力を倍加することにつき,化学兵器に関する1989年のパリ会議において初めて表明した我々の決意を,ここに改めて表明する。同様に,生物兵器禁止条約に関する1991年の再検討会議開催を目前にして,我々は,同条約の締約国となっていないすべての国に対し,その締約国となるよう呼び掛けるとともに,同条約の実効性強化のための信頼醸成措置に参加するよう呼び掛ける。

 我々は,核兵器,化学兵器及び生物兵器の搭載が可能な弾道ミサイルによってもたらされる関連の脅威に対処することの重要性を強調したい。我々は,ミサイル関連技術輸出規制(MTCR)が,ミサイル拡散規制のための我々の共同努力に寄与することに,特に留意する。我々は,いくつかの諸国がMTCRへの追加参加を最近決定したことを賞賛するとともに,すべての国に対し,MTCRガイドラインを遵守するよう呼び掛ける。