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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第18回主要国首脳会議における旧ユーゴスラヴィアに関する宣言

[場所] ミュンヘン
[年月日] 1992年7月7日
[出典] 外交青書36号,447−448頁.
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 我々は7ヵ国の首脳及び欧州共同体の代表は,進行しているユーゴースラヴィア危機を深く憂慮する。我々は,旧ユーゴースラヴィアにおける暴力の行使を強く非難するとともに,住民の蒙っている苦しみに対し遺憾の意を表する。特に,一般住民に向けられた行為及び民族グループの強制追放に対し遺憾の意を表する。現在の状況に至るについてはすべての当事者に責めがあったとはいえ,セルビア指導部及びその統制下にあるユーゴースラヴィア軍が最大の責任を負う。

 我々は,キャリントン卿を議長とするユーゴースラヴィアに関するEC会議を,ボスニア・ヘルツェゴヴィナの憲法上の枠組みを含む旧ユーゴースラヴィアの未解決の問題につき永続的かつ衝平な政治的解決を確保するための重要な場として支持する。我々は,すべての当事者に対し,この会議において誠実にかつ前提条件を付すことなく交渉を再会するよう要請する。我々は,またキャリントン卿を議長とする会議,EC,国連及びその他のユーゴースラヴィア危機の関係当事者の間の緊密な協議を歓迎する。これらの協議は,少数民族に関連する問題を含む未解決の諸問題を検討する幅広い基礎の国際会議の開催をもたらすこともあり得よう。我々は,ユーゴースラヴィアの当事者が平和を求める意思を示すことが断然必要であることを強調する。この意思こそ成功のために不可欠であり,これなくしてはユーゴースラヴィアの人々は苦しみ続けることとなる。

 人道面での悲劇的な状況,特にボスニア・ヘルツェゴヴィナにおける状況は,受け入れることのできないものである。我々は,国際社会が行っている救援努力を全面的に支持する。我々は,サラエヴォ空港を再開するために払われた努力を歓迎するとともに,UNPROFORが同空港の安全確保のために行っている活動を支持する。幅広い救援活動を維持するためには,サラエヴォの封鎖が解除され,サラエヴォへの砲撃が中止されなければならない。

 我々は,サラエヴォへの空輸及びその住民に対する物資供給に参加しているすべての者に対し謝意を表する。我々は,ボスニア・ヘルツェゴヴィナにおけるすべての当事者に対し,この人道上の努力を脅かすことのないよう訴える。我々は,非正規軍を含む関係当事者に対し,この救援活動に従事している者の人命を危険にさらすいかなる行動もとらないよう強く警告する。我々は,関係当事者が国連と全面的に協力する意思を有しないことによってこの努力が失敗に帰する場合には,安全保障理事会がその人道上の目的を達成するための他の措置(軍事的手段を排除しない。)を検討しなければならなくなると考える。

 サラエヴォへの空輸は,一層大規模な人道上の努力の始まりに過ぎない。サラエヴォへの及びボスニア・ヘルツェゴヴィナの他の必要な地域への陸路による安全な通行が保証されなければならない。

 数十万人に上る難民及び避難民の必要に対し,一層の大幅な資金援助が求められる。我々は,これに貢献する意思を有するとともに,他の諸国に対しても応分の貢献を行うよう要請する。

 我々は,セルビア及びクロアチアがボスニア・ヘルツェゴヴィナの領土の保全を尊重することの必要性,及びボスニア・ヘルツェゴヴィナ政府の指揮に服さないすべての軍隊が撤退すること又は解散され,武装解除されかつその武器を実効的な国際的監視の下に置くことの必要性を強調する。

 我々は,すべての当事者に対し,紛争が旧ユーゴスラヴィアの他の地域へ拡大することを防止するよう要請する。

 我々は,セルビア指導部に対し,少数民族の権利を十分に尊重するよう,コソヴォにおけるこれ以上の抑圧を慎むよう,また,コソヴォの代表者との間でユーゴースラヴィアに関するEC会議の条約案に従ってコソヴォの自治権を定めるため真剣な対話を行うよう求める。

 国連安全保障理事会が決議757により決定した制裁及び国連の他の関連決議のすべての規定は,完全に実施されなければならない。

 我々は,クロアチアに係る国連の平和計画をそのすべての事項について実施するための国連平和維持隊の努力を支持する。我々は,セルビア人及びクロアチア人に対し,国連の平和計画に十分に協力するよう,また,クロアチアにおける流血に終止符を打つためあらゆる努力を行うよう要求する。

 我々は,セルビア及びモンテネグロを旧ユーゴースラヴィアの唯一の継承国とは認めない。我々は,CSCEその他の関係する国際的な場及び国際機関の議事へのユーゴースラヴィア代表団の参加を停止するよう求める。