[文書名] 第20回主要国首脳会議における議長声明
1.今回の会合は,ロシア連邦大統領が政治問題の議論に全面的に参加したことにより,その意義を増すこととなった。このパートナーシップは,ロシアにおける改革の反映であり,今日の諸問題に建設的かつ責任ある姿勢で共に取り組むとの我々の希望を再確認するものである。
2.我々は,ボスニアにおける紛争の当事者が7月6日にジュネーヴで提示された案を受け入れるべきであると強く確信する。我々は,紛争当事者に対し,7月19日までの受入れを求める。この機会をとらえなければ,更に大きな規模で戦闘が再開する重大な危険がある。紛争当事者は,いかなる軍事行動も控えるべきである。
我々は,紛争当事者がその案を受け入れるか又は拒否するかに応じ,紛争当事者に知らされている措置が実施されることを確保する。
我々は,国連によって進められているサラエボ復旧のための行動計画を支持するとともに,7月5日に欧州連合(EU)及び関係当事者がEUによるモスタールの施政に関する了解覚書に署名したことを歓迎する。
クロアチアにおける国連保護地域に関し,我々は,停戦の遵守,話合いの再開及び現存の境界線を認め合うことを求める。
3.金日成の死去の後も,我々は,北朝鮮による国際原子力機関(IAEA)からの脱退決定によって引き起こされた問題の解決を引き続き求めなければならない。我々は,北朝鮮に対し,米国との協議の継続及び予定されている韓国との首脳会談の実施を含め,韓国及び国際社会との接触を続けるよう求める。我々は,また,北朝鮮に対し,不拡散に係る義務の完全かつ無条件な履行を通じ,核計画を完全に透明なものとし,核をめぐる疑惑を一切払拭するよう求める。我々は,北朝鮮の核問題を対話により解決するための新たな努力を支持するとともに,北朝鮮がIAEA保障措置の継続性を確保し,核計画の凍結を維持する。(使用済みの燃料の再処理及び原子炉への燃料の再装荷を行わないことを含む。)ことが重要であることを強調する。
4.我々は,イスラエル・パレスチナ間の原則宣言及び同宣言実施の第一段階としてのガザ・ジェリコ合意への署名を歓迎した。我々は,援助の実施を迅速化するとともに,生活条件の真の改善に向けた環境をつくる必要性を認識する。他の二国間交渉及び多国間協議における進展が,アラブ・イスラエル紛争の永続的かつ包括的な解決を実現するため,さらに,中東・地中海地域全体における平和と協力に向けたプロセスの幅を広げるため,今や不可欠である。我々は,アラブ連盟諸国に対し,イスラエルに対するアラブ・ボイコットを終了するよう呼び掛ける。我々は,繁栄し,孤立したレバノンの復興に向けた努力を支援する。
我々は,イラク及びリビアに関するすべての関連する国連安全保障理事会決議が遵守されるまで,これらの決議の各々について完全な実施を確保するとの決意を改めて表明するとともに,そのような実施に伴い制裁の見直しが行われるであろうことを想起すうる。
我々は,イラン政府に対し,平和と安定に向けた国際的な努力に建設的に参加し,この目的に反するような行動を,特にテロリズムに関し,改めるよう呼び掛ける。
我々は,経済改革を進めるとのアルジェリア政府の決定を歓迎する。この改革は,断固として推進されなければならない。また,我々は,アルジェリアの指導者に対し,暴力及びテロリズムを拒否するすべての国内勢力の政治対話を継続するよう求める。我々は,最近起きたイタリア人船員及び他の犠牲者の虐殺を非難し,遺族に対し哀悼の意を表する。
我々は,イエメン共和国政府に対し,対話と平和的手段により国内の政治的対立を解決するとともに,人道上の事態,特にアデン市内及び周辺地域の事態への対処を確保するよう呼び掛ける。主権及び領土保全を含む国際的義務は,尊重されるべきである。
5.我々は,最近の国連事務総長からの呼び掛けに応え,アフリカ大陸における事態に特別な関心を払ってきた。我々は,南アフリカ国民がアパルトヘイトを憲法上の手続により終結させたことを賞賛するとともに,安定し,繁栄した民主社会の建設に向けた新政府の努力を支援することにコミットする。同時に,我々は,多くのアフリカ諸国で起きている人道上の悲劇を痛ましく感じ,これらの諸国を助けるために最大限の努力を行う。我々は,特に,ルワンダにおける事態に驚愕し,拡大国連ルワンダ支援団(UNAMIRII)の迅速な展開を通じ,フランスにより実施されている人道的行動が妨げられずに継続することを呼び掛ける。我々は,政治的解決に向けた停戦の確立及び一層のかつ緊急の人道的努力を求める。我々は,アンゴラにおける問題解決を実施するための努力を支持する。
6.我々は,ハイティの軍指導部が関連する国連諸決議を完全に遵守し,民主主義の回復及び民主的に選ばれたアリスティド大統領の政府の復帰を認めるよう要求する。我々は,すべての諸国に対し,事実上の政権に圧力をかけるとともに,ハイティに関連する強化された国連の措置を実施するよう呼び掛ける。
7.大量破壊兵器及びミサイルの拡散は,国際の平和及び安全に対する最も深刻な脅威の一つである。我々は,核兵器不拡散条約(NPT)のすべての未締約国に対し,非核兵器国としてNPTに加入するよう呼び掛ける。我々は,1995年における同条約の無期限延長に対する明確な支持を宣言する。我々は,核軍備削減を継続することの重要性を強調するとともに,核実験禁止及び核兵器目的の核分裂性物質の生産禁止のための普遍的,検証可能かつ包括的な条約を実現するとのコミットメントを確認する。我々は,化学兵器禁止条約の可能な限り早期の発効に向けてのコミットメントを再確認するとともに,生物兵器及び毒素兵器禁止条約の特別締約国会議を歓迎する。我々は,国連軍備登録制度の完全な実施を支持する。我々は,核物資の密輸を防止するため協力することに合意する。我々は,対人地雷の諸問題(無差別使用の抑制,輸出の停止及び世界各地での除去に対する支援に係る努力を含む。)を優先課題とする。我々は,兵器及び機微な汎用品の貿易の責任ある実施を確保するために,効果的な輸出管理に向けて共に努力し,また,他の諸国と協力する。我々は,中東及び南アジアにおける不拡散に係る努力を奨励する。
8.国連は,予防外交並びに平和維持,平和創造及び紛争後の平和構築の面で中心的役割を有している。このようなすべての活動は,与えられた要求にこたえるために,十分な権限を付与され,効果的に計画及び組織され,並びに財政的に手当てされることが不可欠である。すべての国連加盟国は,この点に関し明確な責任を負っており,その責任を果たさなければならない。滞納はなくさなければならず,支払は迅速かつ完全に行わなければならない。なお,より衡平な分担率は,世界経済及び国連加盟国の変化を反映すべきである。国連改革は,効率性,職務の合理化及び費用効率を確保するために,引き続き進めていかなければならない。
地域機関は,国連憲章及び欧州安全保障・協力会議(CSCE)の関連文書と完全に合致した形で,予防外交及び平和維持の面で重要な貢献を行うことができる。我々は,平和維持活動においてすべての当事者の同意が重要であることを強調し,いかなる場合においても主権及び領土保全を尊重する必要があることを改めて表明する。我々は,また,平和維持隊が自衛のために必要な範囲を超えて武力を行使する必要性に直面し得る場合には,国連から権限が付与されることを求めるべきであることを強調する。
12月のCSCEブタペスト・サミットは,CSCEの役割及び能力を高める過程での重要な道標となるべきである。我々は,欧州における良好な関係の促進を目指す安定化条約の締結を支持する。
アジア太平洋地域においては,我々は,地域の安全保障対話の始まり,特にASEAN地域フォーラムでの対話の始まりを歓迎する。
9.我々は,少数民族に属する人々の権利を含む人権をいかなる地域においても増進し,保護するために,国際的な監視メカニズム及び手続を改善することを支持し,新設された国連人権高等弁務官への支援を誓う。我々は,人種主義,人種差別,排外主義,攻撃的な民族主義,反ユダヤ主義その他の種類の偏狭と闘うための努力を強化する決意である。
国際社会は,世界各地の人道上の緊急事態に迅速に対応するために,更に効果的な手段を備えるべきである。我々は,国連その他の適当なメカニズムを通じそのような要請にこたえる能力を高めるよう努力する。
10.我々は,あらゆる形態のテロリズム,特に国家の支援を受けたテロリズムを非難し,断固としてこれと闘うために協力するとの決意を再確認する。我々は,すべての関係国に対し,財政的支援を含むテロリズムへの支援を絶つとともに,テロリスト組織に自国の領土を使用させないために実効的な措置を採るよう呼び掛ける。
我々は,組織犯罪及び麻薬取引が政治,経済及び社会活動に対する脅威であることを強調し,国際協力の強化を呼び掛ける。我々は,そのような協力を推進する上で,イタリア政府の提案により10月にナポリにおいて開催予定の世界閣僚級会議が極めて重要な機会となるであろうことに意見の一致を見た。
11.今回の会合は,また,ロシアにおける改革のプロセスについて意見交換を行う機会を提供することとなった。ロシアにおける改革は,エリツィン大統領及びロシア政府が国際社会の確固たる支持を受けつつ推進している歴史的な課題である。エリツィン大統領は,世界の経済及び安全保障の諸問題に関するロシアの見解を説明した。我々は,国際犯罪,資金洗浄,原子力安全等の問題について協力する考えである。
12.我々は,ハリファックスでの会合を期待しつつ,世界の平和と安全を維持するための条件を増進するために,引き続き緊密に協力していく。