データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第21回主要国首脳会議における経済宣言

[場所] ハリファックス
[年月日] 1995年6月16日
[出典] 外交青書39号,214−223頁.
[備考] 外務省仮訳
[全文]

前文{前2文字下線}

1.我々主要先進7カ国の元首及び首相並びに欧州共同体委員会委員長は,第21回サミットのため,ハリファックスで会合した。我々は,変化と機会の時に集まり,共にそして世界中の我々のパートナーと協力していくとのコミットメントを改めて確認した。

成長と雇用{前5文字下線}

2.我々の経済政策の主要な目的は,国民の福祉を向上させ,豊かで生産的な生活を享受できるようにすることである。したがって,質の良い雇用を創出し,我々の非常に多くの国において依然として受け入れ難いほど高い失業を減らすことは,我々すべてにとり喫緊の優先課題である。我々は,この目標達成に資するような経済環境を確立する決意である。

3.我々は,世界の多くの国で力強い経済成長が続いていることに引き続き意を強くしている。成長は若干鈍化してきたが,我々のほとんどの国において,持続的経済成長の条件は整っていると見受けられ,インフレは十分に抑えられている。我々は,成長のモメンタムを維持するための適切なマクロ経済・構造政策を遂行する。

4.しかし,問題は残っている。内外の不均衡は,金融通貨市場の有益でない変動とあいまって,持続的なインフレなき成長の達成と国際貿易の継続的な拡大を危うくしかねない。

5.我々は,既に合意した中期的経済戦略に引き続きコミットしている。我々は,この戦略に従って,持続的な雇用の創出を促進する手段を講ずることにより,現下の景気拡大を最大限に活用する決意である。このためには,財政赤字を更に削減し,インフレなき環境を維持し,高いレベルでの世界的な投資の資金のために国内貯蓄を増加するとの断固たる行動が求められている。各国とも自らやるべきことをやらなければならない。

6.我々は,ワシントンでのG7蔵相会合において得られた結論を支持し,彼らに対し,経済の監視及び為替市場において緊密な協力を維持するよう求める。

7.適切な財政・金融政策は,それ自体が経済パフォーマンスの向上という成果を十分にもたらすものではない。また,我々は,我々の経済が成長し,かつ,安定した給与の良い雇用を創出する長期的な潜在力を発揮する上での障害を除去しなければならない。このためには,我々の労働力の技能を向上させる措置及び適当な場合には,労働市場の一層の柔軟性と不必要な規制の撤廃を促進する措置をとる必要があろう。ナポリにおいて,我々は,訓練及び教育,労働市場の規制及び調整,技術革新並びに競争強化といった分野における一連の改革を約束した。我々は,これらの改革を遂行するに当たって,OECDが各加盟国経済の構造・雇用政策に関し詳細な検討を開始したことを歓迎する。

8.我々の議論のフォローアップとして,我々は,閣僚に対し,次回のサミットの前にフランスで会合し,雇用創出の進捗状況を検討し,我々のすべての国において雇用を増加させるためには何が最善かを検討するよう要請することに合意する。

9.また,我々は,高齢者や社会的弱者の保護を確保する決意である。このために,我々の幾つかの国では,公的年金計画及び社会保障制度の継続を確保する措置をとらなければならない。また,我々の幾つかの国では,民間部門の年金資金の利用可能性を確保することに同様の関心を向ける必要がある。

10.我々は,関係閣僚たちによって合意された8項目の主要な政策上の原則を含め,2月にブラッセルで開催された「情報社会に関する会合」の成果を歓迎するとともに,技術革新と新技術の普及の促進に資するために計画されている一連のパイロット・プロジェクトの実施を奨励する。また,我々は,民間部門の参加を歓迎する。我々は,「グローバルな情報社会」を実現するに当たって,開発途上国や移行経済諸国との対話を奨励し,情報社会に関する会議を1996年春に南アフリカで開催するとの提案を歓迎する。

21世紀の課題に応えて{前11文字下線}

11.国際機関は,過去50年にわたり,安定,繁栄及び公平を追求する上で中心的存在であった。昨年ナポリにおいて,我々は,これらの国際機関が将来の課題に効果的に対処し得ることを確保すべくその見直しを求めた。本日ハリファックスにおいて,我々は,この目的に向かって幾つかの具体的な方策を提案する。効果的かつ効率的な国際機関は,すべての国にとって重要である。我々は,世界の安定と繁栄を増進するため,それぞれの国際機関のすべての加盟国と共に当該機関の強化に向けて全力を挙げることを約束する。

世界経済の強化

12.世界経済は,過去50年にわたり,創造を超える変化を遂げてきた。技術の変化が推進してきたグローバル化により,経済は相互依存関係を深めてきた。このことは,従来純粋に国内的なものと見られてきた幾つかの政策分野や政策分野間の相互作用にも当てはまる。我々が直面する主要な課題は,市場の特性を把握し,かつ,重要なプレイヤーが増加していることを認識しながら,この深まりつつある相互依存関係を運営していくことである。これは,世界的なマクロ経済と金融の安定を追求していくに当たって特に重要である。

13.G7間のマクロ経済政策に関する緊密な協議と効果的な協力は,インフレなき持続的成長を推進し,大幅な内外不均衡の出現を回避し,為替市場の一層の安定を推進する上での重要な要素である。我々の閣僚は,これまでに,国際通貨基金(IMF)との協議の拡充を含む政策協調を強化するために,協議のあり方に関し幾つかの変更を行ってきた。

14.世界の資本市場の成長と統合は,大きな機会と共に新たな危険をも生み出してきた。民間資本の流れの増大,国内資本市場の一層の統合,及び金融分野における革新の加速度的な進行に内在する危険に国際社会が引き続き適切に対処していくことができるよう確保することは,我々に共通の利益である。

15.本年初頭のメキシコにおける事態の展開とその影響により,これらの問題に対する我々の関心は強まった。我々は,メキシコにおける最近の事態の一層の改善と共に,多くの新興経済における事態の進展を歓迎する。

16.危機を予防することは,とるべき措置の方向性として望ましい。これを達成するためには,各国が健全な財政・金融政策を遂行することが最善である。しかし,早期警戒システムの改善も必要であり,それによって,我々は,金融上の衝撃的事態を予防し又は処理するために一層迅速な行動をとることができるようになる。かかるシステムは,各国の経済政策及び金融市場の動向に対する改善された効果的な監視システムを備えていなければならなず,また,市場の参加者に対し情報をより十分に開示するものでなければならない。このために,我々は,IMFに対し次のことを要請する。

 ・主要な経済・金融データの時宜を得た公表のための基準を設定すること。

 ・これらの基準に従っている国を定期的に特定し公表する手続を設定すること。

 ・加盟国が一連の標準的データを十分にかつ時宜を得て報告することを強く求め,すべての政府に対してより明確な政策的助言を提供し,必要な行動を回避していると見受けられる国に対してより率直なメッセージを伝達すること。

17.予防が失敗した場合の金融市場の難局に際しては,国際機関や主要国が,適当な場合には,迅速にかつ協調して対応する必要がある。融資メカニズムは,衝撃的事態に効果的に対処するために必要な規模とタイミングで運用されなければならない。この関連で,我々は,IMFに対し次のことを要請する。

 ・新たな常設の手続きとしての「緊急融資メカニズム」を創設し,危機が生じた場合に,厳格なコンディショナリティーとより多額の前倒し融資を伴うIMF取決めへのより迅速なアクセスを提供するようにすること。

18.この手続きを支援するために,我々は,次のことを要請する。

 ・G10及びこのシステムを支援する能力を有するその他の国が,金融上の緊急事態に対処すべく,一般借入取決め(GAB)の下で現在利用可能な額をできる限り早期に倍増するとの目的で融資取決めを作成すること。

19.IMFが現行の責任を果たす上で十分な財源を持つことを確保するため,我々は,IMFの新たな増資についての議論を継続するよう要請する。

20.上記の諸要素につき着実な進展が図られれば,将来の金融危機に対処する我々の能力は著しく向上するはずである。それにもかかわらず,これらの改善がいかなる場合にも十分であるとはいえないかもしれない。また,債務危機の状況においては,国際金融上の多様な手段がもたらす法的その他の複雑な問題があることをも認識して,我々は,G10の蔵相及び中央銀行総裁が,かかる問題の秩序ある解決のために有益と考えられる他の手続を更に検討することを奨励する。

21.我々は,SDR制度にすべてのIMF加盟国が参加するとを引き続き支持する。更に,我々は,世界の金融システムの変化にかんがみ,IMFに対し,SDRの役割と機能の幅広い見直しに着手するよう要請する。

22.金融機関や市場の規制及び監督につきより緊密に国際協力を行うことは,金融システムを守り,その健全性確保のための水準が損なわれていくことを防ぐ上で非常に重要である。我々は次のことを要請する。

 ・規制・監督当局間の協力を深め,危機を監視・抑止するために必要な防止措置,基準,透明性及びシステムを発展・増進させることにつき,グローバルなレベルで,効果的で統合されたアプローチを確保すること。

 ・適切な監督体制に関する国際金融機関よりの政策助言を強化することと併せ,各国が資本市場の規制を除去するよう引き続き奨励すること。

 ・蔵相が,銀行及び証券の規制に責任を有する国際機関に対し研究・分析を委託するとともに,次回のサミットにおいて現行の体制の妥当性につき,要すればその改善のための提案と併せ報告すること。

23.我々は,また,国際的な金融詐欺が大きな問題となりつつあると認識している。我々は,規制当局と法執行機関との間の意思疎通を改善する決意である。

持続可能な開発の推進

24.すべの人々にとってのより質の高い生活は,持続可能な開発の目標である。民主主義,人権,透明性が高く責任ある統治,人材への投資及び環境保護は,持続可能な開発の基盤である。一義的な責任は各国にあるが,二国間及び多数国間の国際協力は,各国の努力を補強するために不可欠である。我々は,相当規模の資金の流れを確保するとともに,我々の援助の質を改善する決意である。

25.国際開発協会(IDA)は,貧困を削減し,最貧国が世界経済に統合されることを助長する上で,不可欠な役割を果たしている。したがって,我々は,すべての援助国に対し,IDA第10次増資に関するコミットメントを迅速に履行するよう,及びIDA第11次増資を通じての大幅な増資を支持するよう要請する。我々は,国際開発銀行に関する世銀・IMF合同開発委員会タスク・フォースの提言に期待している。

26.国際機関は,知的リーダーシップ及び政策助言を提供すること並びに持続可能な開発にコミットしている国に資源を結集することにより,決定的に重要な役割を果たしている。国際連合及びブレトン・ウッズ機関は,それぞれの能力に立脚すべきである。国連は,世界の優先課題についての合意形成のための独特なフォーラムを提供し,基本的価値を擁護し,開発上及び人道上の要請に対応している。ブレトン・ウッズ機関は,マクロ経済の安定を促進し,持続可能な開発に資する環境を支援し,開発のための資源を動員・移転するに当たって,特有の役割を果たしている。我々は,関係国際機関が次のことを行うよう確保するために,それぞれの機関及びそのすべての加盟国と協力する。

 ・各機関の計画のすべての側面において,環境に対する配慮を強化・深化させること等により,持続可能な開発を政策及び計画の主要な目標とすること。

 ・各国に対し,健全な経済,環境及び社会政策をとるよう,並びに持続可能な開発のための適当な法的及び組織的な枠組みを整備するよう奨励すること。

 ・参加型開発戦略をとるよう各国に奨励し,並びに透明性,国民に対する責任,安定した法の支配及び活力のある市民社会を確保する政府の改革を支援すること。

 ・健全な民間部門の発展を奨励し,民間資金の流れを促進するための保証及び協調融資を拡大し,並びに中小企業のための信用供与を増大すること。

 ・民間部門の資金が利用可能でない場合には,持続可能な開発に必要な社会資本のための資金を引き続き提供すること。

27.我々は,中東和平のプロセスを積極的に支援する必要性について合意する。かかる支援には,地域的な協力を強化する新たな組織及び融資制度の設立が含まれる。したがって,我々は,既に作業中のタスク・フォースに対し,10月のアンマン・サミットに間に合うように適当な提案を作成するために検討を続けるよう要請する。

貧困の削減

28.何よりも優先されるべき課題は,世界の貧しい人々の窮状を改善することである。極度の貧困の存続及び最貧国の疎外は,繁栄と安全を求める世界中の願望と明らかに両立しない。サハラ以南アフリカは,特に深刻な課題に直面している。我々は,関係国際機関に次のことを奨励する。

 ・最貧国,特にサハラ以南アフリカの諸国であって,譲許的資金を効果的に使用する能力と決意を有することが明らかなものに同資金を集中し,援助を実施するに当たって軍事支出その他の非生産的支出の傾向を考慮すること。

 ・貧困の根源に立ち向かう基本的な社会計画その他の措置に向けられる国際機関の資金の割合を大幅に増加すること。

29.我々は,昨年我々が最貧国の債務救済措置の改善を奨励したことに対するパリ・クラブの対応を歓迎し,ナポリ・スキームの完全かつ建設的な実施を要請する。我々は,最貧国の中には,国際機関に対して相当規模の債務を負っているものがあることを認識している。我々は次のことを奨励する。

 ・ブレトン・ウッズ機関が,既存の制度の弾力的な運用及び必要な場合には新たなメカニズムを通じ,国際機関に対して債務を負っている国を支援するために,包括的な取組みを発展させること。

 ・この目的を推進し,譲許的な拡大構造調整ファシリティー(ESAF)の融資を継続するため,既存の世界銀行及びIMFのすべての資金をより有効に利用し,国際開発銀行が適当な措置をとること。

30.開かれた世界市場も開発途上国における経済成長の加速に決定的に重要である。国際機関は,世界の貿易体制への最貧国の統合を支援するために努力すべきである。我々は,後発開発途上国に対するウルグァイ・ラウンドの影響をWTOが監視・検討することを奨励する。

環境保護

31.我々は,環境保護のための国内的及び国際的措置の双方を最優先の課題とする。環境の保護は,革新的な技術の開発・採用の契機となり,これにより経済効率と成長は向上し,長期的雇用の創出に資する。G7諸国の政府は,その政策,活動及び調達において,環境の改善につきリーダーシップを示さなければならない。このためには,経済的措置,革新的な責任制度,環境への影響の評価及び自主的な措置を適切に組み合わせる必要がある。汚染の予防,汚染者負担原則,環境コストの内在化及びすべての分野における政策と意思決定に環境上の配慮を組み込むことに努力を集中させなければならない。

32.我々は,1992年リオ地球サミット以降のコミットメントを果たす重要性及び適当な場合には同コミットメントを見直し強化する必要性を強調する。気候変動は,依然として世界的に非常に重要である。我々は,他国と協力して次のことを行う。

 ・気候変動枠組条約に基づく現行の義務を履行するとともに,ベルリンでの締約国会議をフォローアップすべく合意された野心的な日程及び目的を実現するとのコミットメントを果たすこと。

 ・生物多様性条約に従って採択された中期的作業計画を実施すること。

 ・CSDの森林に関する政府間パネルの作業を成功裡に終了させ,200海里内と公海とにまたがる漁業資源及び高度回遊性魚種に関する国連会議の成功を推進するとともに,次回のCSD会合において世界の海洋に関する問題に対処する措置についての国際的な合意を推進すること。

33.我々は,CSDとUNEPの任務をより明確にすることを奨励する。CSDは,持続可能な開発のための長期的・戦略的目標を明らかにし合意するための世界的なフォーラムであるべきである。UNEPは,国際的な環境問題について発言し,触媒的役割を果たすものとして活動すべきである。UNEPは,監視,評価及び環境に関する国際法の発展に専念すべきである。

危機の予防及び危機への対処

34.災害その他の危機により,開発上の課題は複雑化し,我々の制度はその欠陥を露呈してきた。我々は,人権や難民に係る危機等,新たに生起しつつある危機を予防・緩和することに資するよう,次のことを要請する。

 ・国連事務総長が,特に国連人権高等弁務官及び国連難民高等弁務官を通じ,災害及び紛争に関する早期警戒情報の分析及び活用を改善する手段を探求すること。

 ・ブレトン・ウッズ機関及び国連が,危機の際の非常事態から復興段階への円滑な移行を容易にし,援助国とより効果的に協力するため,必要な場合には既存の資金に基づいて,新たな調整手続を設定すること。

 ・人道的支援の供与に関与する機関が,調整の役割を有する人道問題局とより緊密に協力すること。

国際機関の一貫性,有効性及び効率の強化

35.国際機関は,将来に向けて効果的に任務を遂行するために,引き続き改革を実行し,相互の調整を改善し,重複を減らさなければならない。国際金融機関は,世界経済のニーズの変化に弾力的に対応してきた。しかしながら,これらの機関が将来の課題により十分に備えるためには,改善が望まれる幾つかの分野が依然として残っている。我々は次のことを奨励する。

 ・世界銀行及び地域開発銀行が,活動に際しての権限の分散をできる限り図ること。

 ・IMF及び世界銀行が,各々の基本的な関心事項(概括的にいえば,IMFにとってはマクロ経済政策,世界銀行にとっては構造政策及び部門別政策)に専念すること。

 ・より効果的な意思決定を推進するために,IMF及び世界銀行の閣僚級委員会を改善すること。

 ・世界銀行グループが,国際金融公社及び多数国間投資保証機関の活動を同グループの国別援助戦略により効果的に統合すること。

 ・国際開発銀行が,二国間及び多数国間の援助の他のドナーとの間で各々の国別計画をより効果的に調整すること。

36.国連が国連憲章の目的をより十分に実現し得るようにするため,我々は,既に行われている改革を拡大・深化することを奨励し,他国と協力して次のことを行う。

 ・「開発のための課題」を完成し,その中で国際協力に関する新たなアプローチを設定するとともに,国連機関に期待される特有の貢献を明らかにすること。

 ・国連経済社会理事会(ECOSOC)のより効果的な内部の政策調整の役割を強化すること。本部と現場におけるより緊密な協力を通じ,国連と専門機関との間の協力をより深めるよう奨励すること。人道的支援,開発援助等,経済及び社会の分野における機関を強化し合理化すること。事務局の透明性,信頼性を高めるとともに,現代的な管理手法を採用するよう奨励すること。

 ・重複を避けるために,任務を時代に合ったものとし,絞り込むこと。新たな国際機関との重複を排除すること(例えば,UNCTADのWTOとの重複)。変化する課題にかんがみ,特定の機関(例えば,地域経済委員会及び国連工業開発機関(UNIDO))の役割を検討すること。

 我々は,加盟国が財政的義務を履行するよう求めるとともに,分担金制度の改革につき早期に合意するよう要請する。

37.我々は,全体としての一貫性,協力及び経費の効率性を増進させるために,他国と協力して次のことを奨励する。

 ・データ収集,分析,優先度の設定及び報告活動を合理化すること。国のレベルでの援助の供与に当たっての相互補完性を高めること。

 ・国際機関,二国間援助の供与国及び非政府機関の間で調整を改善すること。

 ・すべての機関が,今後数年以内に運営経費の大幅な削減を実現するための計画を作成・実施すること。

フォローアップ

38.以上の点は,国際機関を次世紀の課題に備えさせるための我々の最初の提案である。我々は,すべての適当な機関において,国際社会とより広範に協力しつつ,これらの提案を積極的に推進する所存である。特に,我々は,これらの目標を実現するために,他の国連加盟国と共に努力する決意である。我々は,これらの優先分野に関する合意を他国と形成するために,1995年10月の国連50周年の祝賀の機会を利用する。我々は,来年のフランスにおける我々の会合において,検討を行う。

開かれた市場を通じた機会の創出{前15文字下線}

39.我々は,新たな投資と貿易の拡大が成長と雇用という我々の目的を達成する上で極めて重要であると認識している。世界市場において,国内外のモノ・サービスの生産者及び供給者にとっての機会は,対外的な障壁と同程度に,国内政策によって左右される。

 市場アクセスを改善するために,我々は,残された内外の障壁の削減に努める所存である。

40.我々は,ウルグァイ・ラウンド合意を完全に実施し,あらゆる形態の保護主義に抵抗するとのコミットメントを改めて確認する。我々は,同合意の上に立って,成長,雇用及びグローバルな協力のための新たな機会を創出する。我々は,WTOを効果的な機関として確立するために,共にそして他の貿易パートナーと協力していくとともに,十分に機能しかつ尊重される紛争解決制度を確保することにコミットしている。我々は,WTOと他の国際経済機関との間のより緊密な協力を支持する。我々は,WTOの透明性を高めることの重要性を認識している。

41.我々は,WTOの非加盟国が,すべての加盟国に適用されるルールに従い,かつ,市場アクセスの意味のある約束に基づいて,WTOに加盟することを支持する。我々は,地域的貿易イニシアティヴへの我々の参加が,多角的体制にとって前向きの力であり続けるよう確保することにコミットしている。

42.貿易自由化のモメンタムは維持されなければならない。我々は,サービス分野について現在行われている交渉を成功裡に妥結させること,及び特に,金融・電気通信サービスにおいて相当程度の自由化にコミットしている。我々は,ウルグァイ・ラウンド最終文書の中で今後行うこととして予定されているフォローアップ作業を進めていく。我々は,技術基準,知的所有権,政府調達等の分野における作業を奨励する。直ちに優先して行うべきことは,投資についての高い水準の多数国間協定につきOECDで交渉することである。我々は,WTOのパートナーと共に,投資についての議論を開始する。我々は,規制制度改革のようなイニシアティヴが,グローバルな競争にとっての行政的・構造的障害を除去することにより,貿易自由化と経済成長にとって特に重要な貢献を行うものであると認識している。

43.我々は,貿易自由化の継続という目標との整合性を図りつつ,次のことに関する作業を遂行する。

 ・貿易と環境という異なる分野における規律と政策の両立を確保すること

 ・貿易と競争政策の分野における多数国による行動の範囲

 ・貿易と雇用・労働基準

44.我々は,WTOや他の適当なフォーラムにおけるパートナーと協力しつつ,1996年にシンガポールで行われる野心的なWTOの第1回閣僚会議の基礎作りを行う。

移行経済の国々{前7文字下線}

45.我々は,多くの移行国が民主的かつ市場経済に基づく社会に向けて前進していると認識している。早期の断固たるマクロ経済安定化は,成長を早期に回復させる最も効果的な戦略であることが明らかとなった。かかる成果を確固としたものとするため,広範囲に及ぶ構造改革が精力的に追求されなければならない。我々は,移行経済の国々における経済改革及びこれらの国々の経済が世界の貿易・金融制度に統合されることを引き続き支援する。我々は,これらの国々が市場アクセスの改善を必要としていることを認識している。

46.我々は,ウクライナが大胆な経済改革計画の良いスタートを切ったことを歓迎する。最近のIMFスタンドバイ取決めは,国際金融機関や二国間援助の供与国が相当規模の金融支援を行う基盤となった。我々は,ウクライナが,国際金融機関と緊密に協力しつつ改革努力を継続するよう奨励する。強力な経済改革が継続されるとの前提に立って,1996年末までに国際金融機関から更に20億ドルが利用可能となる。

47.我々は,ロシアが,金融の安定化と経済改革についてのコミットメントを新たにしていることに意を強くしている。政治的改革の継続も必要である。我々は,安定した政治上,規制上及び法的な環境並びに近代的な金融部門の発展が,最近署名されたIMFスタンドバイ取決めに示されている政策措置を完全に実施することとあいまって,ロシアの経済回復を促進するものと確信している。我々は,6月3日のパリ・クラブでの債務繰延べ合意を歓迎するとともに,ロシアの公的対外債務を多数国間で包括的に取り扱うことの妥当性を認識している。また,我々は,ロシアがパリ・クラブと緊密に協力することについて関心を有していることに留意する。

原子力の安全{前6文字下線}

48.各国は,自国の原子力施設の安全性に対して責任を負っている。我々は,中東欧諸国及び新独立国家における原子力の安全の水準を向上させる上で今日までに達成された進展を歓迎する。我々は,ウクライナのクチマ大統領が2000年までにチェルノブイリ原子力発電所を閉鎖するとの決定を行ったことを祝福する。我々は,「ウクライナのエネルギー部門のためのG7行動計画」に基づいて昨年ナポリで行った支援のコミットメントを改めて確認する。我々は,チェルノブイリ発電所の閉鎖のために行われている短期的安全性の向上及び予備的な解体作業のための欧州復興開発銀行(EBRD)の原子力安全基金の増資及び二国間での資金供与のコミットメントに言及することを喜ばしく思う。我々は,他の拠出国に対し,G7諸国と共にこの目的のために資金を供与するよう要請する。

49.チェルノブイリ発電所の閉鎖を支援するために,我々は,適切なエネルギー生産,エネルギー効率性及び原子力の安全に係る計画への国際的支援を結集するよう引き続き努力する。チェルノブイリ発電所の代替電力源のためのいかなる支援も,健全な,費用対効果の高い環境上の基準に基づくこととなろう。世界銀行とEBRDは,ウクライナと共に,現実的かつ長期的なエネルギー戦略を策定するための協力を継続すべきである。両銀行は。適切なエネルギー分野の改革及び省エネルギーのための措置を支援すべく資金的な貢献を増加すべきであり,エネルギー投資に対する民間部門の支援を結集すべきである。

次回サミット{前6文字下線}

50.我々は,1996年6月27日から29日までリヨンで会合することについてのフランスの大統領の招待を受諾した。