データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第22回主要国首脳会議における議長声明,協力を深める世界における一層の安全と安定を目指して

[場所] 外務省仮訳
[年月日] 1996年6月29日
[出典] 外務省
[備考] http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/lyon/seimei.html#0-0
[全文]

I.地球的規模の問題

 重要な問題は,地球的レベルで取り扱われる必要がある。すべての国は,国連の強化,不拡散及び軍備管理・軍縮の分野における進展,並びに,テロリズム及び国際組織犯罪に対する有効な闘いによりもたらされる一層の安全から裨益する。すべての国は,全世界を通じた民主主義と基本的自由の強化から利益を得る。環境保護,原子力安全及び新種の伝染病は,適切に扱われなくてはならない共通の挑戦である。すべての国は,情報技術のもたらす機会をとらえることに関心を有している。この観点から,我々は,効率及び連帯の精神の下でこれらの地球的規模の問題に取り組むために,我々の間で,また,他のパートナーとともに,積極的に協力することにコミットしている。

1.国連

 我々は,国連憲章に対するコミットメントを再確認する。国連憲章発効50周年を記念する国連総会特別会合において多くの首脳が表明したように,国連は,21世紀が近づくなかで,ますます大きな役割を果たすことが要請されている。国際システムが成功するか失敗するかは,各国の発展及び国家相互間のパートナーシップを含めた,「人間の安全」にとってますます重要となっているが,我々は,引き続き国連がこのような国際システムにおける基礎であると考える。我々は,国連の改革について早急かつ実行可能な結論に達することにコミットしている。これは,国連が個人及び国家の双方にとって,諸要請により迅速かつ効果的に応え,また,地球的規模で共有されている問題の解決の探求における重要な役割をより明確に示すことを目指すものである。 国連が自身に対する挑戦に十分に応えることを可能とするため,我々は,国連システムの再活性化,強化及び改革に向け前進する必要性を確信する。この目的のために総会により設置されたハイレベル・グループ及びワーキング・グループの努力が時宜を得た効果的でかつ均衡のとれた成果を得ることを助けるために,我々は,これらのグループの作業においてより大きな役割を果たしていく。我々は,この目標を達成すべく,国連システム全体の中で他の加盟国と協力する。

 我々は,現在の財政危機が国連の機能に対してもたらす危険性に留意し,これらの努力と並行して,より衡平な分担率の採用,加盟国による財政的義務のきめの細かい尊重及び未払金の支払いに基づいた長期的な解決を可能な限り早期に促進する決意である。

 国連は,国連憲章により課された任務に従い,国際の平和と安全についての主たる責任を担う機関であり,また,今後とも,そうあり続けなければならない。国連が国際の平和と安全に対する脅威により迅速かつ効果的に対応できるようにその能力を発展させることが重要である。また,国連加盟国が,国連の枠組みの中で課されている責任を全うすることも不可欠である。

 我々は,紛争を予防する最も確実な手段として,平和に資する条件を整備していくことの重要性を強調する。我々は,経験ある政治家や国連代表による仲介を含め,平和のためのより柔軟な手段を発展させることを支持する。我々は,ハイティ(UNMIH)及びボスニア(IFOR)における現在の平和維持活動の顕著な成功に勇気づけられている。我々は,紛争の終結及び平和と安定の再構築に当たって当事者自身が主要な責任を負っていることに留意する。我々は,国連待機部隊制度及び緊急展開司令部を更に発展させることにより国連の緊急展開の能力を強化すること,また,他の取組みにより新規の平和維持活動の迅速な展開と既存の活動の効果的運営のための国連事務局の能力を強化することを支持する。我々は,紛争で荒廃した国が自らの社会を再建することを支援する国際社会の努力を賞賛する。これらの措置は,永続的な平和の構築に対する決定的に重要な貢献である。我々は,地域的機関及び取極が国連憲章に従って行った国際の安定に対する貢献,並びに,その国連との協力の進展を歓迎する。

2.人権,民主的プロセス及び人道上の緊急事態

 我々は,すべての人権及び基本的自由が普遍的であることについての確固たるコミットメントを改めて表明する。すべての人権及び基本的自由の促進及び擁護は,国際社会の正当な関心事項である。我々は,攻撃的なナショナリズムや少数民族に属する人々の不当な取扱いを含む,あらゆる形態の差別と不寛容を非難する。

 かかる点を念頭に置いて,我々は,このような理解が引き続き我々の政策の指針となるよう確保することにコミットする。また,我々は,国連システムの中での人権に関する調整役としての人権高等弁務官に対する支持を再確認するとともに,早期警戒,紛争の予防及び平和の構築の分野における同弁務官の貢献を賞賛する。我々は,北京会議の際に改めて表明されたとおり,人権及び基本的自由が認められることで女性も男性も完全かつ平等に裨益すること,及び,児童の権利が尊重されることを確保すべく意を用いる。

 我々は,旧ユーゴースラヴィア及びルワンダにおける重大な人権侵害を理由に起訴された者の訴追及び裁判を目指した国際刑事裁判所の努力を全面的に支持するとともに,同裁判所が任務を遂行する上で十分な資源が提供されるよう図ることにコミットする。同時に,我々は,刑事裁判所に対する非協力的対応,特に起訴された者の逮捕及び引渡しを行わないこと,については,それがいかなるものであっても極めて遺憾であり,また,すべての当事者に対し,協力のコミットメントを全うするよう求める。

 我々は,世界のいかなる場所でも人権尊重の基本的な保証である民主化プロセスを積極的に支持する。我々は,自由で公平な選挙の実施並びに民主的制度及び規準の強化を支援する。また,民主主義の発展のための国際的支援は,非政府組織(NGO)によるものも含め,自由なメディア,法の支配への支持,責任ある公的機関(警察の訓練を含む)及びより広範な市民社会を強化することにも貢献するものである。 人道上の緊急事態は,しばしば政治的危機によりもたらされるが,我々にとっての特別の関心事項である。我々は,特に,この分野における赤十字国際委員会(ICRC),国連難民高等弁務官(UNHCR),世界食糧計画(WFP),国連児童基金(UNICEF)等による作業を賞賛する。我々は,支援を必要としている人々に引き続きこれを提供していくことにつき確固たる決意を有しており,また,より効果的な支援を行うために作業の調整と合理化がなされるよう求める。

3.不拡散及び軍備管理・軍縮

 我々は,包括的核実験禁止条約(CTBT)への署名が本年9月の国連総会第51回会期初めまでに可能となるよう,同条約を妥結するとの我々の誓約を確認する。我々は,軍縮会議(CD)のすべての参加国に対し,CTBTがいかなる核兵器の実験的爆発又は他のいかなる核爆発も禁止しなければならないということに同意するよう要請する。CTBTの発効までの間,核兵器国は最大限の自制を行うべきである。

 我々は,そのような条約は,軍縮及び不拡散の分野における国際社会の優先的な目標を達成し,並びに,核兵器不拡散条約(NPT)第6条に規定されている義務を履行する上で重要な一歩となると考える。我々は,1995年5月11日にNPT再検討・延長会議の終了に当たり採択された「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」の文書で示された目標に対するコミットメントを再確認する。2000年に行われる次回の再検討会議のための第1回準備委員会が1997年に予定されているが,我々は,次回の再検討会議の前に,強化されたNPT再検討プロセスを効果的なものとすべく貢献する決意である。

 同様の精神に基づき,我々は,東南アジア地域に非核地帯を設定する条約が1995年12月にバンコックで東南アジア諸国により署名されたことに留意し,南太平洋に非核地帯を設定するラロトンガ条約の議定書が中国,フランス,ロシア,英国及び米国により署名されたことを歓迎する。また,アフリカに非核地帯を設定するペリンダバ条約が4月11日にアフリカ統一機構の加盟国により署名され,同条約の関連議定書が米国,フランス,英国及び中国により署名されたことを歓迎する。これらの新しい非核地帯が設定され,核兵器国がその関連議定書を支持することを通じて協力していることは,2000年のNPT再検討会議までに更に非核地帯を設定するとの目標の実現に資するものである。

 さらに,我々は,軍縮会議で合意された権限に基づいて,核兵器その他の爆発装置用の核分裂性物質の生産を禁止するための条約についての交渉を早期に開始することの重要性を強調する。我々は,第二次戦略兵器削減条約(START_)の早期発効を待望する。我々は,対弾道弾ミサイル(ABM)条約を戦略的安定性の基礎と考える。

 我々は,化学兵器禁止条約の発効の重要性を改めて表明する。我々は,効果的な検証制度の確立を含め,生物兵器及び毒素兵器禁止条約の実施のため引き続き鋭意努力する。また,我々は,ヴァンクーヴァーからウラジオストックにわたる前例のない信頼醸成措置となるオープンスカイズ条約の早期の発効を期待する。

 我々は,通常兵器が拡散し,又,それによって一般市民,特に児童をはじめとして何千人もの死傷者がもたらされていることに対して,ますます懸念を深めている。我々は,1980年の特定通常兵器禁止条約の再検討会議の結果を歓迎する。我々は,この第1回再検討会議において,目潰しレーザー兵器に関する新議定書とともに地雷,ブービートラップ及び他の類似の装置に関する議定書の強化についてコンセンサスが得られたことを喜ばしく思う。我々は,すべての国に対し,対人地雷の拡散とその無差別使用によりもたらされる惨害の発生の全世界的な禁止を確保する努力を惜しまないよう要請する。我々は,また,既にいくつもの国がこれらの兵器の生産,使用及び輸出に対するモラトリアム及び禁止措置を採用していることを歓迎するとともに,これらの兵器の保有量の一方的削減及びこの緊急の問題に対処するためのイニシアティブを歓迎する。

 したがって,我々は,地雷の探知及び除去のための努力,並びに,犠牲者援助に対して国際的な支持を強化することの重要性を強調する。

 我々は,すべての国に対し,地球的及び地域のレベルでの国家間の透明性向上及び信頼醸成のための重要なメカニズムである国連軍備登録制度の継続的な実施を支持するよう再度要請するとともに,国連憲章第26条が「世界の人的及び経済的資源を軍備のために転用することを最も少なくすること」を求めていることに留意する。地域的組織は,通常兵器の過剰な蓄積を抑制するための透明性及び信頼醸成措置を促進する一助となり得る。我々は,通常兵器並びに関連汎用品及び技術の移転に関して透明性と責任ある管理を促進するために,1995年12月にワッセナーにおいてその設立について合意されたアレンジメントを満足の意をもって歓迎するとともに,同アレンジメントの迅速かつ完全な実施のために協力する。我々は,欧州通常戦力(CFE)条約の第1回再検討会議の成果を歓迎する。この会議において,締約国は,同条約の一体性を確保し同条約上のすべての義務を履行するとのコミットメントを新たにした。締約国は,将来における同条約の履行可能性を維持するために,同条約を適応させるプロセスを開始することにコミットした。我々は,CFE条約の「側翼部問題」の協調的解決に対し敬意を表する。

4.原子力安全

 我々は,本年4月のモスクワ・サミットにおいて原子力安全の分野で達成された相当な進展を満足の意をもって歓迎する。

 我々は,世界中で原子力の利用が原子力安全の基本的な原則に従って行われるよう国際協力の強化に向けて重要な一歩を進めた。我々は,原子力に関し国際的に認知された最高の安全水準へのモスクワでのコミットメントを再確認する。この点について,我々は,原子力の安全はその他のすべての考慮に優先しなければならないことを強調する。我々は,原子力の安全に関する条約に定められたすべての原則への我々のコミットメントを再確認するとともに,すべての国々に対し,できるだけ早期にこの条約を批准し,また,ピア・レビュー制度に参加するよう要請する。我々は,関連国内法制の整備,国際的な原子力損害賠償責任制度の強化,及び放射性廃棄物管理の安全に関する国際条約の準備において,更なる進展が必要であることを強調する。我々は,移行諸国が効率的でかつ安全性を全面的に指向するエネルギー政策を策定するのを支援することに引き続きコミットする。

 我々は,核物質密輸防止プログラムの採択を歓迎するとともに,ウクライナの例に倣って他の諸国もこの計画に加わるよう強く求める。我々は,核物質の計量管理及び防護を確保する手段を強化する必要性を再確認する。我々は,また,防衛用には不要となった核分裂性物質の管理のための適切な戦略を明らかにする必要があることを認識する。この点については,本年10月にパリで開催予定の専門家会合の機会に討議される。我々は,核兵器国が,防衛上の要請に応じた利用が意図されていないとされたすべての機微な核分裂性物質(分離プルトニウム及び高濃縮ウラン)を国際原子力機関(IAEA)の保障措置の下に置くことを確保すべく払っている努力を支持する。

 モスクワ・サミットで採択された不拡散問題に関する決定を迅速かつ効率的にフォローアップするため,我々は,以下のイニシアティブをとってきた。

−我々を代表して,フランスは,より多くの国が核物質密輸防止プログラムを採用するよう働きかける。−このプログラムの実施のための会合を,密輸の防止及び対

策に関与する当局の参加を得て,可能な限り早期に開催する。 保障措置システムを強化するために「93+2計画」によって提案されている措置については,そのためのモデル議定書がIAEA理事会により設置され特命を帯びた委員会において引き続き検討されているが,我々は,すべての国に対し,この措置の効率的かつ効果的な実施に貢献するよう要請する。この計画は,核不拡散のための規制をより厳格なものにする上での重要な貢献である。この計画は,包括的な保障措置の下にある国が未申告の原子力活動を行い得るという状況の再発を防ぐのに役立つ。

5.環境

 環境の保護は,持続可能な開発を促進する上で決定的に重要である。地球温暖化,砂漠化,森林破壊,資源枯渇,絶滅の危機に瀕した種,持続不能な都市開発等の脅威に鑑み,我々は,環境保護をすべての政策に一層徹底して統合していくことを最優先する。我々は,森林,鉱物,魚等の資源並びに空気,水及び土壌の質の経済的価値をよりよく評価するために,国民所得勘定を補完する可能性を探求する。我々は,長期的な経済成長と雇用に対して好ましい効果を有し得る環境保護産業の大きな潜在的可能性を歓迎する。1997年は,環境にとって極めて重要な年となる。我々は,リオにおけるすべての合意事項に対するコミットメントを新たにし,それらのより適切な実施につながるであろう1997年の国連環境特別総会の成功に向けて作業することを誓う。我々は,力強い行動をとることにコミットし,1997年においては次のことを期待する。

−気候変動枠組条約締約国会議の成功。

−実施のための適切なアレンジメント又は文書を含め,森林の持続可能な管理を促進するための行動に関する合意を得ること。

−特定の,残留性の高い有機汚染物質(POPs)に関し,世界を対象とした法的拘束力のある文書につき交渉を行うこと。

−生物多様性条約及び砂漠化防止条約を迅速に実施すること。

 環境に関する条約の遵守が確保されることが重要である。クロロフルオロカーボンズ(CFC),絶滅の危機に瀕した種及び有害廃棄物の違法な取引等の分野における国際犯罪は,特に懸念される。我々は,環境に関する国際条約の履行の状況を評価し,履行を一層促進するための選択肢につき検討する。

 我々は,環境と持続可能な開発について責任を有する国際機関が一層効果的に機能することを希望する。特に,「持続可能な開発委員会(CSD)」の政策的な役割が,国連諸機関の間で確認されることを希望する。CSDは,全世界,地域及び各国のそれぞれのレベルにおけるアジェンダ21の実施の促進,新たに出現してくる課題及び隙間の特定,並びに持続可能な開発の概念についての共通の理解の確保を任務として,国連の経済関係機関やブレトン・ウッズ金融諸機関と協力して活動するハイレベルの政策フォーラムとして活動すべきである。

 CSDと国連環境計画(UNEP)との間には,より明確な役割分担が必要である。UNEPについては,環境面での政策策定,科学的分析及び監視評価に責任を有し,国連での環境面の声として触媒的役割を果たすことが明確に確認されるべきである。我々は,UNEPとその管理組織を改組すべく現在行われている努力を支持する。

 我々の政策は人々に焦点を当てたものであるべきである。人の健康は,時として環境悪化により危険にさらされている。我々は,深刻又は回復不可能な被害を及ぼす脅威がある場合には,健全な科学と予防の原則に基づいた措置をとることを支持する。

6.情報社会

 我々は,南アフリカのミッドランドで開催された「情報社会と開発会合」の議長総括を歓迎する。この会合は,すべての国が技術の変化から裨益することを確保していく上で重要な一歩である。 情報通信技術及びサービスは,すべての国における持続可能な開発の推進に大きく貢献し得る。これらは,人間の基本的なニーズを満たし,人的資源を開発し,経済成長を促進し,参加型民主主義と自由なメディアを奨励していく上で大きな潜在力を有する。これらは,文化面及び言語面での多様性と活力ある競争を促進する。

 我々は,関連する多国間フォーラムで行われている交渉が速やかに妥結することを待望する。我々は,情報通信技術の活用法を紹介するプロジェクトを促進するため,国,既存の国際機関及び既存の非政府組織の間で十分な協力が行われるよう奨励する。我々は,官民間のパートナーシップを促進することにコミットする。

 我々は,このような技術への普遍的なアクセスを促進する協力的なアプローチがとられることを求める。我々は,知的所有権の適切な保護の重要性を強調する。我々は,世界規模の通信ネットワークによって生じた倫理面及び犯罪面の問題を検討する用意がある。我々は,情報及び通信技術を開発のために一層利用するための官民の努力を支持し,また,国際機関が自身の果たし得るそのための適切な役割を評価するよう奨励する。

7.ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム

 我々は,「ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム」が1987年にヴェネチアで提唱されて以来達成した成果を賞賛し,また,このプログラムの更なる進展に関する1996年秋の政府間会合の結果に関心を有する。

8.伝染病

 HIV/エイズ,マラリア,コレラ,エボラ熱,抗生物質に対する耐性を持つ結核及び肺炎等の伝染病は,すべての国の人々に受け入れ難い脅威となっており,最貧国の国民にとりわけ大きな影響を及ぼしている。我々は,感染症の新興及び再興についての予防,調査,監視及び対応を支援するためのメカニズムの構築及び実施を支持する。我々は,これらの疾病の治療及び抑制に関し,研究,予防,利用可能でかつ支払い可能な保健サービス及び診断の領域におけるあらゆる形態の協力の拡充を改めて呼びかける。 我々は,研究者によるこれらの疾病の治療法の探求を奨励するために既に我々の各国でとられている措置に注目する。我々は,国家レベルでこの努力を継続すると同時に,この分野における研究者間の国際協力を促進することを誓う。

 さらに,我々は,特にHIV/エイズ及びその他の感染症によって最も大きな打撃を受けた国々のために,様々な種類の支援プログラムを引き続き実施する。我々は,また,これらの疾病の監視,防止,研究,診断及び治療についての専門知識の移転によってアフリカ,東南アジア,中南米及びカリブ海地域に協力プロジェクトを実施しているが,我々の間についても協力を奨励する。我々は,多くの場合致命的となるこれらの疾病に対する安全で効果的な治療が利用可能となることを確保すべく作業を継続する。

 我々は,新興・再興感染症と闘う世界保健機関(WHO)の努力,及び,世界的なHIV/エイズの蔓延を防止するための国際的な取組みを調整する国連エイズ共同プログラム(UNAIDS)の努力を強く支持する。

9.麻薬

 麻薬は,若い世代の将来,市民の健康及び社会の保全にとって重大な脅威である。我々は,あらゆる種類の麻薬取引,及び,資金洗浄を含め麻薬取引に関係するあらゆる形態の犯罪と闘うために一層努力する決意である。我々は,したがって,すべての国に対して,麻薬濫用及び向精神薬物の不正取引を対象とする国際条約の下での義務を完全に履行するよう要請するとともに,このような麻薬に対する闘いに関係するすべての国との協力を強化する用意がある。我々は,国連による努力を全面的に支持するとともに,この問題に取り組む国連総会の特別会合によって,一層の一貫性があって効率的な形でこの惨害から世界を解放するための一連の行動をとることを期待する。

10.国際組織犯罪

 我々は,ハリファックスにおいて,専門家グループに対し,我々の主要な懸念の一つである国際組織犯罪の急速な発展にいかに対抗するかにつき検討するよう要請した。この現象は,まったく新しいものではないが,先進工業国と開発途上国の如何を問わず国家を脅かしている。

 したがって,我々は以下のことにコミットする。

−このような国際組織犯罪のもたらす危険と闘うために十分な資源と影響力を動員すること。

−国連,国際刑事警察機構(Interpol)及び関税協力理事会を含め,国際組織犯罪に取り組んでいる既存の機関を支持し強化すること。

−すべての国に対し,国際組織犯罪に関係する既存の協定,条約及び取決めを遵守し,完全に履行するよう奨励すること。

−麻薬関連の国連諸条約を履行し,また,麻薬取引者を逮捕し資金洗浄を行わせないための努力を強化することで,麻薬取引者のもたらす巨大な脅威に対抗すること。

−犯罪人の探知,捜査及び訴追のために情報及び専門知識を共有すること。

−関連当局間の任務遂行上の協力を強化すること。

−我々の領域を国際組織犯罪に使用させないこと。

−逃亡者を法の裁きにかからしめるためのあらゆる可能な措置,特に引渡措置をとること。

−司法共助を可能な限り広く行うこと。

−適切な立法措置を講じ,また,金融活動作業部会(FATF)の勧告を実施することにより,犯罪人が不法収益を得ないようにすること。

−腐敗と闘うために必要な立法及び規制措置を講じること。

 したがって,これらの目標を達成するため,

 我々は,国際組織犯罪に関する上級専門家グループの作業を歓迎する。

 我々は,同グループが作成した40の勧告を支持する。

 我々は,すべての国に対し,これらの勧告を推奨する。

 我々は,上級専門家グループに対し,これらの勧告の実施が積極的にフォローアップされることを確保し,この分野における進捗及び進展を次回のサミットに報告することを要請する。

II.地域情勢

1.我々は,地域の及び異なる地域間の組織及びフォーラムが世界のすべての地域において,平和,安定及び繁栄のために大きく寄与してきたことに満足の意をもって留意するとともに,これらがその加盟国の領土保全及び主権を尊重しつつ,任務を遂行するよう強く奨励する。我々は,政治,経済及び文化の分野において,世界の異なる地域間の協力を発展及び強化させることを目的とした,これらの組織によるすべての努力及びあらゆる地域間のイニシアティブを引き続き支持する。

 この関連で,我々は,リスボン・サミットで更に検討される欧州安全保障・協力機構(OSCE)の共通安全保障モデルに向けた作業,及び,独立国家共同体(CIS)における紛争の平和的解決のための継続的努力に留意する。我々は,地域内協力の増大,特に,欧州における欧州連合(EU)と中・東欧諸国との間の協力,米州における米州機構内の協力,並びに,アジア太平洋地域における東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大への動きを通じた協力及びASEAN地域フォーラムにおける協力を歓迎する。また,我々は,EUと北米との間の大西洋にまたがる関係を新たなものとすること及びEUとロシアとの関係を発展させることを目指した最近のイニシアティブを賞賛するとともに,本年バンコックで開催された第1回アジア欧州会合(ASEM)を賞賛する。我々は,政治的,経済的及び人的側面に係わる分野におけるEUと地中海諸国との間の新しいパートナーシップの進展を歓迎する。

2.我々は,中・東欧において5年余りにわたり進んできた経済的及び政治的な移行プロセスを積極的に支持する。我々は,法の支配の及び市場経済の確立に向け,これらの国が上げてきた成果を歓迎する。我々は,EUの中欧及びバルト諸国への拡大の展望を歓迎し,また,これら及び他の国が,提供された様々な統合の可能性を十分に利用することを奨励する。我々は,善隣関係を構築する努力を支持し,また,南東欧州の安定化に資する種々のイニシアティブを奨励する。

3.我々は,ここ数年にわたり中東和平プロセスにおいて達成された多大な成果を歓迎する。これらの成果は,イスラエルとパレスチナ人の間の画期的な諸合意,ジョルダンとイスラエルの間の平和条約,イスラエルとシリアの間の真剣な交渉,及びイスラエルとその周辺アラブ諸国との関係の拡大を含む。また,我々は,地域における経済協力の拡大を歓迎するとともに,アラブ連盟が早期にイスラエルに対するアラブ・ボイコットを終了することを信頼する。我々は,達成されたすべての合意の完全な実施に強くコミットしており,また,平和を得るために危険を冒す者を引き続き全面的に支持する。 1993年の原則宣言に踏まえて,西岸及びガザ地区に関するイスラエルとパレスチナ人の暫定合意が1995年9月28日に締結されたことは,中東和平プロセスにおける重要な前進であった。我々は,最終的地位に関する交渉が1996年5月5日に開始されたことを歓迎する。我々は,この交渉の再開を待望する。

 我々は,パレスチナ評議会及びその行政機関の選挙を歓迎する。我々は,ヤセル・アラファト氏を長とするパレスチナ機構に対し,民主的制度の発展,法の支配,行政の透明性及び人権の尊重を促進するよう求める。

 我々は,1月9日にパリで開催され,パレスチナ経済に対する国際社会の支援を再確認した経済支援会合を含め,支援国のあらゆる努力を歓迎するとともに,支援国が意図表明した支援を実施するよう要請する。我々は,平和を支えるための経済成長と繁栄の重要性を認識するとともに,域内の経済協力と開発の進展が必要であることに留意する。我々は,西岸及びガザ地区における経済活動を促進するための措置を歓迎する。我々は,イスラエル政府が西岸及びガザ地区における封鎖を緩和する措置を講じたことを歓迎する。我々は,イスラエルが安全確保のための正当なニーズを有していることを認識しつつこの封鎖の完全な解除を待望する。我々は,多国間協議がそのすべての側面において和平プロセスに大きく貢献していることを認識する。また,我々は,多国間の作業部会から生み出された経済関連の機関及び施設の設立を歓迎する。

 我々は,イスラエルとジョルダン両国民の間で平和が顕著に深化し拡大していることとともに,平和の具体的利益が均霑すべく支援することの重要性に留意する。

 1996年3月13日に行われたシャルム・エル・シェイク・サミットは,世界のすべての首脳に対し,テロリズムへの非難を再確認するとともに,また包括的和平を追求し,地域の安定を支持し,その動機及び犯人如何を問わずテロリズムと闘うという意欲を再確認する機会を提供した。我々は,国際社会に対し,「平和創設者」の考え方を堅持し続けるよう要請する。我々は,テロリストの脅威は,特にパレスチナ地域においては,孤立及び貧困の除去により封じ込められ,また,信頼の漸進的な回復及び和平交渉が成果を上げることにより封じ込められると考える。

 我々は,イスラエルの最近の選挙活動において安全保障というテーマがとりわけ大きくとり上げられたことに留意する。我々は,この地域のすべての人々の安全は,最終的には包括的で,公正かつ永続的な平和を通じてのみ達成され得ると確信する。

 1995年12月末のシリアとイスラエルの間の交渉の再開は,維持しなければならない平和の力学の一部を形成するものであった。我々は,この交渉の再開を促進するための環境を整備すべく作業している。我々は,すべての当事者に対し,二国間交渉を可能な限り早期に再開するよう要請する。我々は,また,シリア及びレバノンに対し,現在進行中の多国間協議に参加するよう招請する。

 我々は,すべての当事者に対し,レバノンとイスラエルの間の国境に平穏を回復させた1996年4月26日の了解を遵守するよう求める。

 我々は,レバノンの復興ニーズを支援する予定の支援国会合がその作業を加速化するよう要請する。 中東和平プロセスが新たな弾みを必要としているこの時期に,我々は,すべての当事者に対し,既に署名されている諸合意を含む義務を履行し,また,マドリード・プロセス,平和と領土の交換の原則及び関連の国連安保理の決議に定められている他の原則に基づいて包括的な平和のために努力を継続するよう求める。

 昨年と同様に,我々は,イラン政府に対し,地域及び世界の問題について建設的な役割を果たすとともに,中東和平プロセスを破壊し,この地域の不安定化を図ろうとしている過激派グループに対する物質的及び政治的支持を差し控えるよう要請する。さらに,我々は,イラン政府に対し,テロリズムを拒否し,特にサルマン・ラシュディ氏及び同氏の著作に関係した者の生命を継続的に脅かす行為への支持を慎むよう要請する。我々は,すべての国家に対し,イランによる核兵器能力の取得に寄与し得る同国とのいかなる協力も避けるよう求める。

 我々は,イラク及びリビアに関するあらゆる国連安保理決議の完全な実施を推進するとの決意を再確認する。これらの安保理決議が完全に遵守されてはじめて,すべての制裁措置の解除が実現され得る。我々は,国連安保理決議986の実施についてイラク政府と国連事務局との間で了解覚書が締結されたことを歓迎する。

4.北朝鮮に対し,韓国との対話及び協力を進展させるよう求める。これは,朝鮮半島における永続的平和を達成するとともに,南北双方の人々のためにより安定し,かつ,より安全な未来を確保するための唯一の手段である。この文脈で,我々は,四者会合開催に係わる1996年4月16日の米国と韓国による提案等,現行の休戦協定に代わる朝鮮半島における永続的平和協定を目的としたプロセスの開始に向けてとられるイニシアティブを支持する。

 我々は,核兵器不拡散条約の下での義務に合致するように北朝鮮の核開発計画を方向転換させるために,1994年10月21日の「合意された枠組み」に沿って行われている努力を歓迎する。我々は,北朝鮮に対し,IAEA保障措置協定の下でのコミットメントを完全に満たし,その核開発計画の経緯に関する事実をすべて開示するよう求める。我々は,国際社会に対し,我々とともに朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)に対し政治的及び財政的支援を行うよう求める。