[文書名] 第23回主要国首脳会議におけるコミュニケ
はじめに
1.我々8ヵ国デンヴァー・サミットの参加者は、21世紀を目前に控えた今、主要な民主主義工業国として、我々の市民及び世界全体の繁栄及び平和を確保するための統合の力を形成するため、必要な国際的及び国内的措置について討議した。我々は、志あるすべてのパートナーと緊密に協力し、平和、安全保障及び持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを促進することで一致した。このパートナーシップには、民主主義及び人権の強化並びに紛争の予防及び解決への支援が含まれる。
2.我々がこれまでの重要な歩みを続けていくに当たり、この8ヵ国デンヴァー・サミットは、我々の取組みに対するロシアの新たなより深い関与を印すものである。ロシアは、市場経済を有する民主主義国家への歴史的な転換を完了させるための意欲的な措置を実施した。我々は、次回のサミットまでに行われる事務当局による作業において、ロシアの参加を拡大するとの方向性が継続されることにコミットしており、ロシアのサミット・プロセスへのより完全な関与を推進することについてコミットメントを共有していることを改めて表明する。ロシア経済を世界の経済システムに組み込むための協力は、我々の最も重要な優先事項の一つである。我々は、ロシアとパリ・クラブ議長との間で、ロシアのパリ・クラブへの参加のための基礎条件について了解が得られたことを歓迎し、パリ・クラブとロシアが近い将来最終的な合意に達することを期待する。我々は、新規加盟国に対して一般に適用される条件に基づいてロシアがWTO(世界貿易機関)に早期に加入するとの目標を支持する。我々はまた、ロシアが最近設置されたロシアとOECD(経済協力開発機構)との間のリエゾン委員会のもたらす可能性を活用しながら、OECDへの加盟に向けて引き続き前進することを期待する。
経済及び社会問題
3.世界の過去50年間の繁栄の拡大を支えた主要な要因の一つであるグローバル化の過程が、いま急速かつ広範に進んでいる。グローバル化は、アイデア及び情報、物及びサービス、技術並びに資本の国境を越えた流れの拡大を意味する。世界経済の一層の開放及び統合は、一層の競争及び効率並びに技術革新の急速な普及を促進する一方で、各国がそれぞれ最も得意とする経済活動に特化する中、繁栄を拡大する機会を生み出す。21世紀を迎えるに当たり、我々の任務は、これらの機会を最大限に活用することである。
4.同時に、グローバル化は新たな課題を生み出し得る。経済が一層開かれたものとなり、また、経済において相互依存が強まることは、貿易上のつながりの深化と民間資本の流れの一層の増大とあいまって、一国における問題がより容易に他の国に波及し影響を及ぼし得ることを意味する。我々は、世界の成長及び繁栄を促進するために協力しなければならない。我々は、社会のすべての部門が、そして世界中のすべての国が、世界の統合及び技術革新により可能となった繁栄を共有する機会を与えられることをも確保しなければならない。特に重要であるのは、若年成人層が成功への道を見い出し、その道を歩むのに十分な準備を整えていることである。
5.急速な技術の変化や人口の変動もまた、世界経済に大きな影響を与えつつある。我々は、失業及び経済不安に対処していくために、成長の可能性を利用しなければならない。我々すべてが直面する多くの国内的及び国際的課題に対処するには、市場を適正に機能させるために必要とされる健全な経済政策及び構造改革が不可欠である。高い質の教育や訓練の機会を拡大し、経済情勢への労働市場の感応度を高める措置は、あらゆる種類の構造変化に国民が適応できるための助けになる。我々は、今秋日本で開かれる、構造変化への対応に関する論議に役立つであろう雇用に関するハイレベル会議に期待している。我々はまた、来年の会合において、成長、雇用可能性及び一体性という重要な問題について更に議論するための準備として、これらの問題に関する財政及び社会問題を担当する大臣の会合を来年早々に主催するとの英国の提案を歓迎する。
人口高齢化による機会及び課題
6.平均寿命の延び及び高齢者の健康状態の向上は、今世紀の2つの大きな達成事項である。これらの成功は、来世紀には、平均寿命の延び及び出生率の低下により我々の国々の高齢者人口の比率が大きく高まることに伴い、我々に機会及び課題をもたらすことになろう。橋本首相の「世界福祉構想」は、我々がこれらの展開の意味することに焦点を当てる機会を与えている。
7.我々は、「活力ある高齢化」という概念、すなわち、多くの高齢者がかなりの高齢まで労働及びその他の社会的に生産的な活動を続ける意志及び能力を有することについて議論し、高齢者が被扶養者であるという古い固定観念を棄て去るべきことで一致した。我々は、一部の国で高齢者の障害率が低下していることを示す新たな証拠について検討し、また、高齢者の健康状態には大きな個人差があることを認識した。我々は、我々の国々が、高齢者の個人的選択及び状況に十分配慮しつつ、高齢者の「活力ある高齢化」を推進する方法について討議した。この方法には、就労を妨げる要因の除去及び一部の国に存在する柔軟なパートタイム就労に対する障壁の低減が含まれる。更に、我々は、勤労生活から退職への移行、生涯学習、並びにボランティア活動の奨励及び家族介護への支援のための方途についても討議した。
8.我々は、来世紀に人口の高齢化が国の年金、医療及び介護制度に与える様々な影響について検討した。「活力ある高齢化」という戦略は、医療及び社会福祉の分野における構造改革を進めるための有益な方途となり得る。一部の国は、公的年金制度の維持に関して大きな課題に直面しており、均衡を回復するための早期の行動から恩恵を被る。この問題への対応策として、高齢者の就労の拡大や国民貯蓄率の引上げを含む様々な方法が提案された。成人がいつでも継続就労できるようにする方法として、生涯学習の機会の最大化を含む人的資本への投資が提案された。高齢者医療を賄うための財政上の需要によってより大きな影響を受ける国もある。我々は、この課題について効果的かつ効率的に対処することが、若年世代に過剰な負担を課すことなく高齢化社会のニーズを満たすことに資するとの結論に達した。
9.我々は、年金、医療及び介護制度を維持・強化するために、我々の政策及び制度がいかに「活力ある高齢化」を推進でき、いかに構造改革を進められるかについて相互に学び合うことが重要であるとの点で意見が一致した。我々の政府は、OECDにおいて又は他の国際機関とともに、情報交換や一国の枠を越えた調査を通じて「活力ある高齢化」を促進するために協力していく。我々は、活動的平均寿命を延ばし障害を低減するための生物医学及び行動科学に関する共同研究を奨励するとともに、事務当局に対して、我々の知識が欠落している部分を明らかにし、国家間の比較を可能にするデータの作成を探究することによって、21世紀に向けて人口の高齢化問題に取り組む能力を強化するよう指示した。
中小企業
10.中小企業が我々の社会の雇用及び経済の活力に貢献することは、広く認識されている。活力のある新興企業の成長をもたらす事業環境を生み出すことは、雇用創出の鍵である。我々は、討議において、企業の成長の重要な段階で融資や株式資本を利用できないこと、不必要な規制が存在すること、既存の革新的技術を導入することに困難が伴うこと、及び零細企業が世界市場に参入する際に様々な問題に直面することを含め、企業の成長を妨げる障壁について概観した。我々は、これらの障壁を取り除く必要性を強調する。我々はまた、中小企業における職業訓練や教育とともに、中小企業の成長を促進する我々の国々におけるいくつかの模範的な慣行について検討し、いかにすれば我々がこれらの成功例の恩恵を受けられるかについて考慮した。中小企業の発展は、雇用の創出及び社会の安定にとって好ましく、起業能力を広げ、輸出の促進と多様化に役立つことから、我々の国々の最善の慣行はまた、開発途上国及び移行市場経済にとり有益な実例となり得る。我々は、その他の分野における作業も遂行する。
地球規模の問題
11.世界的な統合の進展並びに通信及び輸送の急速な発展は、経済成長を刺激する一方で、我々に対し一国による解決を許さない複雑な問題を提起している。近年、我々のサミットは、このような問題に我々が協調して取り組むことにますます注意を向けるようになった。
環境
12.本年は、持続可能な開発の促進及び環境保護への取組みにおいて極めて重要な年である。我々は、未来の世代の生活の質に影響を与える環境問題に取り組み、また持続可能な開発の目標を達成することの重要性について一般国民、特に若者の関心を高める決意である。
国連特別総会
13.我々は、1992年のリオの地球サミット以降、持続可能な開発を定義し促進する上での進展について検討した。我々は、この課題への取組みを前進させるに当たって重要な分野で措置を講ずることをコミットしている。持続可能な開発は、環境、経済及び社会政策を完全に統合することを必要とし、民主的統治や人権の尊重に基づくものでなければならない。また、貧困の撲滅が究極の目標の一つとされなければならない。これに関連し、我々は市民社会が重要な貢献を果たすことを再確認している。我々は、来週開催される国連特別総会において、リオでのコミットメントが再確認され促進されるとともに、リオ以降の実施状況が検討され、また、最も重要なこととして、持続可能な開発に関する今後の作業への取組みの優先課題のリストが作成されることを要請する。
気候の変動
14.地球の気候システムの変動は、大気中の温室効果ガスの蓄積に関係していることが圧倒的な科学的根拠によって示されている。仮に現在の傾向が来世紀に入っても継続すれば、人の健康及び地球環境に対する影響は受容し難いものとなろう。このような傾向を反転させるには、すべての市民の参加と消費及び生産パターンの変化とを伴った数十年にもわたる地球規模の持続的な取組みが必要である。
15.我々は、気候変動の問題に対処するための国際的な取組みを強化するに当たって、主導的役割を果たすとともに目的の重大さを示す決意である。我々の究極的な目標は、大気中の温室効果ガスの濃度を許容し得る水準に安定させることでなければならない。これには、排出の相当の削減につながるのに十分な、効率的でかつ費用対効果が高い政策及び措置が必要である。
16.国際的な協力は不可欠である。京都での「気候変動に関する国際連合枠組条約」第3回締約国会議において、ベルリン・マンデートに合致し、数量化された、かつ、法的拘束力のある排出の目標を含む強力な合意を形成しなければならない。我々は、2010年までに温室効果ガスを削減する結果をもたらすような意味のある現実的かつ衡平な目標にコミットする意図を有している。この合意は、責任及び透明性を確保しなければならず、目標達成の方法において参加国に柔軟性を認めるものでなければならない。
17.この目標を達成するためには、先進国の措置だけでは十分ではない。開発途上国もまた、経済成長に伴ってその義務が重くなることを認識しつつ、目に見えるような措置をとらなければならない。我々は、そのために、技術の開発及び普及を実施し、また、環境教育及び能力造りを支持することにより、開発途上国とパートナーシップを組んで作業することで意見が一致している。
18.我々は、監視及び締約国による遵守の確保のための適当なメカニズムを設けることの重要性を強調する。我々はまた、気候の変動その他の環境上の動向を監視することを目的とする地球規模のシステムを更に発展させるために国際的な努力を高めるべく協力することで一致した。
森林
19.森林は、世界の多くの地域において、警戒すべき速度で破壊され、劣化し続けている。この傾向を逆転させるため、我々は、すべての国に対し、持続可能な森林経営の慣行を世界中で実現することへの長期的な政治的コミットメントを行い、我々とともに、国連のCSD(持続可能な開発委員会)の森林に関する政府間パネルが作成した提案を直ちに実施するよう要請する。我々は、デンヴァーにおいて議論し、現実的な行動計画を支持することにつき一致をみた。この行動計画には、国ごとに計画を実施し持続可能な森林経営のための能力を構築すること、保護地域のネットワークを設立すること、合意された基準と指標を用いて各国の森林の状態を評価すること、民間による森林経営を促進すること及び不法伐採を排除することが含まれる。我々は、事務当局が、この行動計画の実施の進展を評価するため、来年早々に会合を持つことを要請し、次回のサミットに報告書を提出することを求める。
20.国連特別総会において、我々は、これらの目標を達成するため、環境団体の積極的な関与を得つつ、適切な高さの国際的基準を伴った国際的合意についてコンセンサスを築き上げるよう努める。我々は、ヒューストンで提唱されたブラジルにおける試験プログラムの実施に進展がみられたことを歓迎する。これは実際的な国際協力の一例である。
淡水
21.世界の多くの人々が安全な水にアクセスできない状態にある。人、産業及び農業の廃棄物の増加により、水質が低下し生態系や人、特に児童の健康や安全に悪影響を与える可能性がある。国連特別総会は、CSDに対し、実際的な行動計画を立案して水の効率的な使用の促進、水質及び衛生の改善、技術開発及び能力づくり、国民の意識、並びに制度の改善を含む淡水に関連する問題に取り組むよう呼びかけるべきである。これらの目標を達成するために、我々は、淡水の問題に関する二国間及び地域の協力を促進し、この分野での我々の取組みを調整し強化することで一致した。
海洋
22.我々は、世界の海洋を保護するための努力を強化しなければならない。我々は、持続可能な漁獲、海運、陸及び沖合における活動からの海洋汚染並びに油流出の防止及び緊急時における対応を含む主要な関心事に効果的かつ総合的に対処できることを確保すべく協調する。これに関連し、我々は、北部太平洋での生態系の監視並びにこの地域の地震及び津波の予知に関する協力を強化する。
砂漠化
23.我々は、砂漠化防止条約の発効を歓迎するとともに、締約国に対し、今秋ローマにて開催される第1回締約国会議においてこの条約の履行のための具体的措置を策定することを求める。
輸出信用機関のための環境基準
24.先進国からの民間資金の流れは、世界全体の持続可能な開発に対して重要な影響を有する。各国政府は、インフラ及び設備投資に対する金融上の支援を供与する際、環境要因を考慮することによって、持続可能な慣行の促進を助長しなければならない。我々は、これに関するOECDにおける作業を重視し、来年の会合においてその進捗状況を検討する。
児童の環境衛生
25.我々の児童の健康を守ることは、共有された基本的価値の一つである。世界中の児童は、環境上の様々な危険要因により健康に対する大きな脅威に直面しており、我々は、児童が環境の脅威に対して特に脆弱であることを認める。我々の政府は、環境リスク評価及び基準設定の作業の対象に明示的に児童を組み込むとともに、情報交換の強化、微生物学的見地からも安全な飲料水の提供、児童が鉛、タバコの煙その他の大気汚染物質にさらされるのを減らすために協力して取り組む。
機構
26.環境の保護と持続可能な開発の達成のためには、地球規模の努力を調整するための強力な国際的な機構が不可欠である。
27.国連特別総会においては、持続可能な開発における社会、環境及び経済的側面を統合する戦略的なフォーラムとしてのCSDの役割が確認されるべきである。CSDは、合意された4つの優先分野、すなわち、淡水、海洋、陸上資源(森林を含む)及び持続可能なエネルギーの使用に関する作業の指針となる具体的な目標及び予定を含む行動計画を作成すべきである。
28.地球規模の緊急の環境問題に効果的に対処するため、ナイロビでの今年のUNEP(国連環境計画)管理理事会で確認されたとおり、地球規模の環境問題の主導的機関であるUNEPの再構成された任務を支持してきた。UNEPは、国連システムにおける環境保護の実施を一貫して推進し、地球規模の環境に関する権威ある支持者たるべきである。新たに設置されたハイレベル委員会は、国際的な環境に関する課題について詳細に検討するとともに、より巨視的な政策、プログラム及び財政の責任の問題に重点をおいて、UNEPの効率化にとり必要な改革を促進すべきである。我々は、再活性化されたUNEPが、その必要とする資金を確保できるよう期待する。
29.環境に関する国連の取組みの長期的一貫性や効率性を確保するための一層の努力が必要になり得る。我々は、事務総長が国連システムにおける環境問題の取扱いについて見直し、関連機関間の調整及び効率性を改善するための方策を探求することを勧奨する。
30.我々は、地球環境のための主導的な多数国間の資金メカニズムとしてのGEF(地球環境ファシリティ)の重要性を再確認する。我々は、その融資を強化し、効率を高めることを目指す。これに関連し、我々は、GEFの増資が成功するよう支持する。
感染症
31.薬剤耐性結核、マラリア、HIV/エイズを含む感染症を原因とする死亡は、全世界の死亡の3分の1に達する。これらの感染症は、国際社会の健全性、安全及び財政資源に重大な課題を投げかけている。過去10年間に世界の多くの地域で、薬剤耐性菌の出現や、人口や製品の移動の拡大など、様々な原因により感染症及び感染症による死亡が急増した。
32.これからの1年、我々の政府は、感染症の発生に対する国際的な対応のより効果的な調整を推進し、国内及び地域の既存のサーベイランス・ネットワークを基礎として世界的なサーベイランス・ネットワークの開発を推進し、必須ワクチン、治療法、診断法等の地域における蓄積の活用を探求することを含め、感染症の予防、調査、抑制を世界的規模で行い得る公衆衛生に関する能力の養成を支援する。この取組みの中心となるのは、我々の国内及び各国間の既存の活動、開発途上国との活動及びその他のフォーラム、とりわけWHO(世界保健機関)における既存の活動を強化し、関連づけることである。我々は、世界保健機関の取組みを支持するとともに、生物製剤及び医薬品製剤の質に関する世界保健総会の最近の決議を支持する。
33.HIVの感染やエイズの拡大防止は、世界的な公衆衛生上の緊急の要請となっている。予防や治療の方法が追求されねばならないが、長期的には、安全で入手可能かつ効果的なエイズ・ワクチンを開発することが、エイズの脅威を抑制し究極的にこれを撲滅する上で最も成功の可能性が高い。我々は、エイズ・ワクチンの研究を加速するのに必要な資源を供給するための努力を行うとともに、国際的な科学協力と共同研究を強化する。先進国や開発途上国の科学者及び政府並びに国際機関の間の協力が不可欠である。我々は、他の国に対しても、我々の取組みに参加するよう呼びかける。
34.UNAIDS(国連エイズ共同プログラム)は、HIV/エイズへの対応の規模の拡大及び質の向上を支援すべきである。我々はグループとして、また他の国とともに、UNAIDSがその任務を果たす上で適切な資源を確保するよう努める。
原子力の安全
35.我々は、1996年の原子力安全モスクワ・サミットで示された、原子力エネルギーの利用に当たって安全を絶対的に優先するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、中・東欧諸国及び新独立国家においては、特に規制当局を強化し、原子炉の安全を促進し、安全に対する考え方を改善することを通じ、なお相当な前進が必要であることを指摘する。我々は、この目的のための更なる共同の取組みが大きな優先事項であると考える。この点に関して、我々は、原子力安全基金の諸取極の完全な実施を最も重視している。
36.我々は、原子力安全条約が発効し、1999年4月の最初の再検討会議の準備が進んでいることにつき満足の意をもって留意する。我々は、使用済み燃料の管理の安全及び放射性廃棄物の管理の安全に関する合同条約の起草が急速に進んでいることを賞賛し、その完了を奨励する。我々はまた、原子力損害の民事責任に関するウィーン条約を改正する議定書及び新たな補完基金条約が採択される運びになったことを歓迎する。これらの条約は、安全に関する国際協力を促進するとともに、原子力事故の際の犠牲者に対する補償を強化する。
世界的エネルギー問題
37.我々は、来年モスクワにおいてエネルギー問題に関する閣僚会議を開催することを決定し、事務当局に対し、そのような会合のための準備を開始するよう要請する。その結果については、次回サミットにおいて討議する。
国際組織犯罪
38.我々の国際犯罪との闘いは、当面は、このグループの優先事項である。国際犯罪組織は、しばしば世界の変化に対し政府よりも迅速かつ効率的に適応することがある。国際犯罪は、我々の市民にとっての脅威であるばかりでなく、若い民主主義国や移行国をも危うくする。
39.昨年、我々は、国際組織犯罪と闘うため、リヨンにおいて40の勧告を採択した。我々は、自国内で又は相互に措置をとりつつ、これらの勧告を相当程度に実施してきた。我々はともに、司法共助及び犯罪人引渡しを通じて犯罪人を法の裁きにかからしめ、法の執行機関の間の協力を推進し、渡航文書の安全を強化しつつ人の密輸と闘うための戦略を改善し、また、銃器の違法取引を防止するために、二国間又は多数国間であるいは我々以外の国やグループとの間で協力を強化してきた。
40.我々は、リヨンでの勧告を実施するための取組みを強化しなければならない。これからの1年、我々は、重大な関心を有する2つの領域に焦点を当てる。1つは、コンピュータ及び電気通信技術に対して国境を越えて介入するようなハイテク犯罪者についての捜査、訴追及び処罰である。もう1つは、犯罪者の所在地にかかわらず、すべての政府がハイテク犯罪に対応する技術的及び法的能力を有することとなる体制である。
41.我々は、また、国境における取締りのための追加的な手段を開発する。国境での取締りは、国際犯罪、薬物の取引及びテロリズムと闘うためのあらゆる取組みにおいて中心的な位置を占める。この目的のため、我々は、新たな国際文書について検討を行うことにより、銃器の違法取引と闘う。我々は、銃器の特定のための標準化されたシステムと、銃器の輸出入の許認可のためのより強力な国際的体制とを採用することを追求する。我々は、発生地、中継地及び目的地の国において問題に対処することによって、渡航文書に係る不正防止の強化及び、人の密輸と闘うための戦略の改善に引き続き努力する。我々の政府はまた、世界のいかなる場所にも犯罪人にとって安全な避難先が存在しないことを確保すべく、犯罪人の引渡し及び司法共助に係る国際的な法体制を強化するための取組みを更に推し進める。
麻薬系薬物
42.我々は、麻薬系薬物の生産、取引及び使用と闘うための取組みを強化する決意である。麻薬系薬物は、我々の市民の安全と、社会及び組織の福利に対する世界的脅威となっている。我々は、関係するすべての国の共通の責任を再確認しつつ、麻薬系薬物に勝利し得る戦略にはこうした薬物の供給と需要の双方に対する効果的措置が必要であることを認識する。我々は、需要の削減の重要性を強調する。薬物に関連する法律を厳格に執行するとともに、治療及びリハビリテーションと、教育及び予防を目的とするプログラムが、我々の薬物との闘いにおいて枢要な役割を果たす。
43.我々は、我々の適切な政府機関に対し、これまでに確立された協力形態を基礎としてこの共通の脅威に取り組むことを要請した。中でも、我々は、すべての国において健全で薬物と無縁な経済の発展を支援するような仕組みについて研究し、資金洗浄、原料物資、新しい合成薬物、取引のパターン及び方法、並びにその他の関連情報を共有するための一層の取組みを支持し、麻薬系薬物と闘うための法執行機関の能力を強化するために力を合わせる。我々の政府は、1998年6月に開催される薬物に関する国連特別総会の議題を策定するために一致して取り組む。
テロリズム
44.我々は、その動機のいかんにかかわらずあらゆる形態のテロリズムと闘う決意を再確認する。我々は、テロリストの要求に譲歩することに反対し、また、人質をとる者がその行為からいかなる利益も得ないようにすることを決意する。我々は、テロリズムに対抗するために効果的かつ合法的な手段をとることについてコンセンサスが広まっていることを歓迎する。
45.昨年、我々の閣僚はテロリズムと闘うための25項目の勧告を採択した。我々は世界中から、特に国連総会において積極的な反応を得た。我々は、これらの勧告の多くについて、実質的な進展を達成してきた。それには、爆弾テロに関する国連条約を起草し交渉すること、空港保安、爆発物探知及び車輌識別に関する国際基準の改善を促進すること、爆発物の製造、取引及び輸送に関するより強力な法律及び輸出管理を促進すること、各国のテロ対策能力の要覧を創設すること、暗号の使用に当たって、テロリズムと闘うための政府の合法的なアクセスが、OECDガイドラインに沿って可能となるよう、すべての国に対し奨励することが含まれる。
46.我々は、閣僚に対し外交努力を強化することによって、すべての国が、2000年までに、テロリズムに対抗するための手段に関する1996年の国連決議に明記されたテロ対策の国際条約の締約国となることを確保するよう求めた。我々は、政府関係者に対し、次の追加的な措置をとるよう指示した。即ち、人質交渉専門家及びテロ対応部隊の能力を強化すること、テロ攻撃における大量破壊物質の使用を探知し、抑止するための技術に関する情報を交換すること、電子・コンピュータ・インフラへのテロ攻撃を抑止するための手段を開発すること、海上保安を強化すること、国際的な特別行事のための警備の実践に関する情報を交換すること、並びに国際協力及び協議を強化し拡大することである。
人間のクローン
47.我々は、子孫をつくり出すことを目的に体細胞核の移植を用いることを禁止するために適切な国内措置及び緊密な国際協力が必要であるとの認識で一致している。
宇宙基地
48.我々は、国際宇宙基地の建設に関する協定への署名を期待している。これは、宇宙空間の探査及び平和利用の分野における大規模で将来性のあるプロジェクトの実施に関する国際協力の優れた事例の一つである。
国連改革
49.我々は、国際の平和及び安全を維持する上での及びグローバル・パートナーシップを育成し、持続可能な開発を促進する上での国連の枢要な役割を再確認する。我々は国連の強化という目標に向けた全体的な改革を支持する。我々は、ハリファックス及びリヨン・サミット以降にみられた経済社会分野における進展を歓迎する。この関連で、我々は、コフィ・アナン事務総長の最近の改革案を歓迎しその迅速な実施を支持するとともに、来月のより広範な改革案に期待する。我々は、これらの改革の実現に向け、引き続き国連のすべての加盟国と協力することにコミットしている。
50.国連が21世紀の諸課題に対処し得るものとなるためには、他の諸分野での必要な改革とともに財政改革を進める必要がある。国連システムは、分担金の完全かつ時宜にかなった支払い及びより論理的かつ衡平な分担率の採用により、確固たる財政的基盤を築かなければならない。国連システムの予算はすべて、優先順位や活動効率の最大化を強調しつつ詳細に検討される必要がある。我々は、費用効率を高めることにより節約された資金を優先度の高い開発分野のプログラムに再投資するための具体的な提案が事務総長よりなされることを期待する。強力な監査のメカニズムや健全な人事政策は、成功のために不可欠である。
51.経済・社会開発の分野における緊急の課題に対応するため、国連が専門機関を含む各種の機関の政策及び活動をより効果的なものとするため調整することが必要となっている。このためには、ECOSOC(経済社会理事会)は、経済・社会問題担当の事務次長の支援の下、特にその付属機関の合理化、国際金融機関及びWTOとの協調関係の改善を通じて、その政策形成や調整の役割を強化すべきである。我々は、国連の基金及び計画等と称される各種の機関、特にUNCTAD(国連貿易開発会議)及び各地域経済委員会の最近における組織管理の改革を歓迎する。これらの努力を持続し、拡大することが必要である。
52.我々は、国連の基金及び計画等と称される各種の機関の緊急かつ徹底した再検討と同時に、すべての専門機関と各種の委員会の役割及び任務がシステム全体として再検討されるよう要請する。我々は、カントリー・レベルでの統合を強化し、本部における調整を改善すべきとする事務総長の勧告を歓迎する。これに関連して、我々は、国連がいくつかの代表的な国において開発分野の活動の調整の実績について評価を行うよう勧告する。我々は、開発途上国が国連の開発分野の活動の効率化による主たる受益者となることを期待している。
53.我々は、国連が、国際の平和及び安全に対する脅威に対処するために迅速かつ効果的に行動する能力を更に改善すべきことを再確認する。我々は、引き続き、紛争の予防及び解決に関する国連の能力を向上させることに貢献する。我々は、早期警戒段階から、新たな及び既に承認された平和維持活動の迅速な展開段階にいたる機敏な対応能力の強化に向けて国連が最近とった措置を支援し、これらの分野での改善が引き続き行われるよう要請する。
アフリカ:開発のためのパートナーシップ
54.我々は、リヨンで「開発のための新たなグローバル・パートナーシップ」を提唱し、開発途上国は自らの開発の促進に基本的責任を有し、先進国はその努力を支援すべきことを指摘した。我々は、サハラ以南のアフリカ諸国の問題に特に関心を払った。それらの国々の多くは、引き続き極めて厳しい課題に直面している。今年、我々は、アフリカ諸国が、世界の繁栄の拡大に完全に参加し、その恩恵を社会全体に広めるための努力を支援するため、このパートナーシップの原則を具体的な行動に移すことを目指す。我々は、アフリカ諸国を世界経済へ漸進的に統合していくことだけでなく、これら諸国の貧困層をその国の経済、社会、政治へ統合していくことをも目標とする。
55.我々は、サハラ以南の多くのアフリカ諸国において、民主的、経済的改革の採用を含む前向きの進展が見られることに意を強くしている。1990年以降、20以上のアフリカ諸国が自由で公正な選挙を実施した。民主的統治及び法の支配は、他の地域と同様アフリカにおいても、女性の権利を含む人権及び持続可能な開発の基礎をなす。我々は、民主的改革に着手し、法の支配及び法の執行を改善し、(過剰な軍事支出を含む)非生産的支出を避け、公的機関及び市民社会を強化することにより模範を示したアフリカ諸国を称賛する。我々は、アフリカ諸国が、民主主義や良い統治を促進し、公的機関の信頼性を高め、政府支出、中でも調達の透明性を高め、贈賄対策のための国内規制を設けるために行っている努力を支援する。
56.繁栄の増大は、究極的には、国内資本の形成、民間主導の成長及び世界市場への成功裡の統合に資する環境を作り出すことにかかっている。我々は、ますます多くのサハラ以南アフリカの国が、財政、金融措置を通じて財政の持続可能性に向けて前進し、貿易の自由化や投資環境の改善を含む成長及び市場指向の経済政策を採用するようになったことに勇気づけられている。こうしたイニシアティブは、1994年以来、歓迎すべき成長の促進をもたらした。我々は、IFIs(国際金融機関)がサハラ以南のアフリカ諸国の改革を支援するために重要な役割を果たすことを期待している。IFIsの支援は、生産的な外国からの直接投資及び国内の資本形成の促進に役立つものでなければならない。我々は、IFIsが、香港での世界銀行・IMFの会合までに、その取組みについて報告することを期待する。
57.我々の市場へのアクセスは、サハラ以南アフリカの経済成長を促す極めて重要な手段である。我々は各々、引き続き、各種の手段を通じて、アフリカからの輸出の我々の市場へのアクセスを改善する。我々は、後発開発途上国の世界貿易体制への一層の統合を支援する。この関連で、アフリカ諸国は、能力構築を促進し後発開発途上国に対して予測可能で有利な市場アクセス条件を特に提供する行動計画に関するWTOの取組みの主たる受益国となる。我々は、この計画の効果的実施にコミットしており、今年後半に開催されるWTO・UNCTAD・ITC(国際貿易センター)のハイレベル会合に積極的に参加する意向である。更に、アフリカ諸国による貿易自由化は、より効率的な資源の利用を促進する。我々はまた、地域的な貿易自由化及び経済協力に向けたアフリカのイニシアティブを歓迎する。
58.我々は、最も機会を必要としかつ効果的な改革措置を実施しているサハラ以南のアフリカ諸国に対し、より多くの機会が与えられるような方策を検討する。我々は、自らの二国間援助や貿易促進プログラムを見直し、これらが、能力の構築を含め、経済成長や民間投資に資する環境を支援するものとなるようにする。
59.相当規模の政府開発援助は、サハラ以南のアフリカ諸国が自らの持続可能な開発のための目標を達成する能力を構築する上で、引き続き不可欠な役割を果たす。我々は、特に極端な貧困と闘うことを目指して、開発政策における成果重視型のアプローチにコミットしている。しかし、不適切な政策は、開発援助のみでは克服できない。我々は、アフリカ諸国と協力して、援助を最も必要とし、しかも必要とされる広範な改革を実施する国に対して、適切かつ的を射た援助を確保する。このような援助には、民主的統治、人権の尊重、健全な行政、効率的な法制度及び司法制度、インフラ整備、農村地域開発、食糧安全保障、環境保護及び国民の保健、教育を含む人的資源開発のための支援が含まれる。この関連で、我々は、能力構築のための取組みを促進し、調整するため、関連機関の間の協力を強化するよう努める。
60.我々の努力の効果を最大化するため、我々は、アフリカのパートナーと対話を深め、彼らが自らの開発戦略に対するオーナーシップを高めるよう努めるとともに、政府以外からの参加を奨励する。我々はまた、新興援助国を含むドナー間の協調を強化する。我々は、アフリカ開発を更に促進するためにアフリカ地域内及びアフリカ地域と他の地域との協力の新たな流れが現れつつあることを歓迎し、これを十分に支援する。
61.国連は、アフリカの開発に主要な役割を果たしており、アフリカ諸国は、国連の経済社会開発活動の改革の主たる受益者となるであろう。我々は、国連の開発基金及び計画並びに専門機関が、アフリカにおいて現場の活動に重点を置き、本部と現場の双方でその取組みを十分に統合、調整することを奨励する。我々は、アフリカ経済委員会が、その活動を活性化するとともに活動の焦点をしぼる努力を行っていることに意を強くしている。資金の一部をプログラムの質に基づいて配分するとのUNDP(国連開発計画)の決定は、効果をあげるための一つの有用なアプローチであり、我々は、この方法が国連の活動により広く採用されるよう要請する。
62.多くのアフリカ諸国は、民主主義及び持続可能な開発を支えるために情報革命を活用する目覚ましい努力を払っている。我々は、アフリカ情報社会イニシアティブを歓迎する。我々は、アフリカ諸国が、アフリカ諸国相互間及びアフリカ諸国と世界とを結ぶために、情報ネットワークを設ける努力を行っていることを支持する。これに関連して、我々は、トロント世界知見会議97を歓迎する。
63.我々は、紛争の予防、平和維持並びに、紛争後の和解及び復興に関して、効果的な地域の能力の構築を目指すアフリカのリーダーシップを称賛する。我々は最近の「紛争、平和及び開発協力に関するOECDのガイドライン」を考慮しつつ、特にOAU(アフリカ統一機構)によるアフリカのリージョナル、サブ・リージョナル及び国レベルの平和構築のイニシアティブを支援し、国連その他のドナーとの積極的なパートナーシップの形成を支援する。我々は国連事務総長に対し、その改革努力の一環として、国際社会がアフリカのイニシアティブを強化する方法を示すよう奨励する。我々はまた、アフリカの平和維持と紛争予防のための既存の国連信託基金やその他の適切な国連基金の活用を拡大し、紛争仲介のための特別のメカニズムを有するOAU及びサブ・リージョナルな機関並びに国連・OAU共同大湖地域特使に対するドナーのより幅広い強固なコミットメントを呼びかける。
64.我々は、迅速に展開できるアフリカの平和維持能力の促進に向けた長期的取組みへの支持を表明する。我々は、インターオペラビリティを確保するための訓練、合同演習、共通の平和維持ドクトリン及びその他の努力を強化するため、アフリカの要員提供国、リージョナル及びサブ・リージョナルな機関、ドナー及び国連が緊密な調整を行うことを歓迎する。我々はまた、最近、国連においてアフリカ平和維持支援グループの設立に向けて進展が見られたことを歓迎し、関心あるすべての国に対し、運用問題を調整するためのメカニズムを積極的に探求するよう要請する。
65.我々は、難民及び難民・人道機関の職員に対して最近危害が加えられていることに重大な懸念を表明する。我々は、受入れ国はそのような行為を予防し、犯人を訴追しなければならないことを強調する。
66.我々は、我々の当局者に、こうしたパートナーシップのあらゆる側面の実施に向けた共同の取組みについて、来年のサミット以前に我々に報告するよう要請した。
政治問題
67.我々は、より安全で安定した国際社会を築くため、協力して、グローバルな統合に向けた戦略を追求する。我々は、すでに政治的協力を通じて、開かれた市場及び開かれた社会から成る共同体を拡充し、深化させてきた。我々は、これからの1年においても、協力してこのような取組みを更に進める。我々の「開発のためのパートナーシップ」は、統合の過程から取り残されるリスクを負っている国々の経済及び政治上の発展をも支持することを明確に企図している。我々は、国際協力の規範及び原則の遵守を一層確保することに我々のエネルギーを集中し、これらの目的を脅かすものに対しては協力して効果的な措置をとる。我々は、国際平和を攪乱し我々の深められた協力を損なう虞れのある紛争の終結を促進することが、我々の共通の利益及び責任であることを認める。
民主主義と人権
68.世界は近年、民主主義のかつてない程の拡大を眼の当りにした。しかし、若い民主主義国は、脆弱で短命となり得る。我々は、民主主義的価値及び基本的自由が定着した地域においてはこれらを更に強化し、定着していない地域についてはこれらを拡大する責任を負っており、また、機会を手にしている。
69.人権は、我々の中心的関心事である。紛争の解決や平和を促進するには、人権侵害及び国際人道法違反に対する責任を明確にすることが不可欠である。そのために、新しい国連人権高等弁務官は重要な役割を果たすこととなろう。我々は、引き続き旧ユーゴースラヴィアとルワンダに係る国際刑事裁判所を全面的に支持し、国際社会や関係諸国が正当な手続きを通じて、人権侵害を行い国際人道法に違反した者を確実に法の裁きにかからしめるよう努力する。
70.民主主義を強化することが平和及び人権の強化に不可欠であることを認め、1998年の世界人権宣言の50周年記念を待望しつつ、我々は今後1年間、我々の政府が、民主的発展、平和構築及び人権のために最も効果的なプログラムを進めるよう協力する。我々の取組みは、特に若い民主主義国や紛争下の社会における、良い統治及び法の支配の促進、市民社会の強化、女性の政治参加の拡大、民主主義に対する企業及び労働者の支持の拡大に焦点を当てる。十分に代表されていない人々または弱い立場の人々を保護することが、民主的な過程への参加を拡大し、社会的な対立を防ぐ上で極めて重要である。我々は、このような人々を保護するための国際文書の採択及び批准、特に、容認できない形態の児童労働の撲滅に関するILO(国際労働機関)条約の迅速な採択を目指す。我々は、多数国間機関及び地域機関、特にOECDの開発援助委員会を通じて、また、NGO及び若い民主主義国とのパートナーシップを保ちつつ努力する。我々は、民主主義が確立していない地域で民主主義を促進するための共通の取組みについても検討する。
71.我々は、閣僚に対して、これらの取組みを推し進め、次回のサミットで検討するための勧告を作成するよう要請した。
72.民主主義、経済成長及び開発は、良い統治、特に政治指導者及び公務員の責任、なかでも腐敗に関する責任が確立されない限り十分に達成され得ない。我々は、援助資金によって行われる調達における腐敗の排除に積極的に取り組む。我々は、外国公務員に対する贈賄を効果的でかつ調整された方法で刑事処罰の対象とし、そのような賄賂の税控除に関する従来からの取組みを実行に移すために迅速な措置を講じる。我々は、他のすべての国が同様の措置を講じるよう呼びかける。
不拡散、軍備管理及び軍縮
73.我々は、「モスクワ原子力安全サミット」以来、そのサミットで作成した「核物質密輸防止プログラム」の実施に向けて重要な措置をとった。我々は、このプログラムへの参加を拡大し、中・東欧、中央アジア及びコーカサスの諸国の参加を得る。
74.更に、核分裂性物質の安全かつ効果的な管理に関しては、我々は、防衛目的にとり不要とされた核分裂性物質に関する具体的なイニシアティブ、特にフランス、ドイツ及びロシアによる兵器用プルトニウムからMOX(混合酸化物)燃料を生産するパイロット・プラントをロシアに建設する計画(この計画は他国の参加にも開かれる)、及び兵器用プルトニウムの転換に関する米国とロシアの協力を通じて、引き続き協力していく。
75.我々は、共通の目標である不拡散、軍備管理及び軍縮に向けて前進するために協力してきた。CTBT(包括的実験禁止条約)は歴史的な一里塚であり、我々は、すべての国に対して、CTBTを早期に発効させるため、同条約を速やかに署名及び批准するよう呼びかける。我々は、化学兵器禁止条約の発効を歓迎する。我々は、同条約の完全で効果的かつ普遍的な実施の重要性を訴えるとともに、未批准国による同条約の早期批准を待望する。条約遵守に関する信頼性の向上は生物兵器禁止条約を強化すると認識し、我々は、交渉を通じて、法的拘束力のある効果的な検証メカニズムの策定を可能な限り早期に完了させる決意であることを再確認する。
76.我々は、NPT(核兵器不拡散条約)に示された目的の完全な実施についての我々の揺るぎないコミットメントを再確認する。そのためにIAEA(国際原子力機関)が、最近、保障措置制度の強化及び効率化に関する計画を採択したことを歓迎する。我々は、すべての国に対し、可能な限り早期にIAEAとの間で追加議定書を締結するよう要請する。我々は、核兵器またはその他の核爆発装置のための核分裂性物質の生産を禁止する条約に関する交渉を直ちに開始し、同条約を早期に終結することにコミットしていることを再確認する。
77.我々は、3月のヘルシンキでの戦略兵器管理に関する前進を歓迎し、START II(第二次戦略兵器削減条約)の早期発効と、START III交渉の開始を待望する。我々は、欧州の安全保障を強化する上で欧州通常戦力条約が重要な役割を果たしていることを再確認し、可能な限り迅速にその適応を終えるという決定を歓迎する。我々は、国境沿いの兵力削減に関するロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン及び中国の最近の合意を歓迎するとともに、これがこの地域の安全保障に大きく貢献するものと考える。
78.我々は、イラクの大量破壊兵器能力を除去し、その遵守を監視する国連特別委員会とIAEAの努力を明確に支持する。我々は、米国と北朝鮮との間の「発表された枠組」の実施や、北朝鮮が不拡散の義務を完全に遵守することの重要性を再確認する。我々は、そのため北朝鮮の核開発計画の凍結を監視し、保障措置を実施し、北朝鮮の過去の活動に関するすべての情報の保全に協力するIAEAの継続的役割を重視する。我々は、KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)へのEUの参加のための交渉が妥結したことを歓迎し、また、KEDOに対する資金提供を含む一層の国際的支持を呼びかける。我々は、四者協議の重要性及び南北対話の必要性を強調する。我々は、北朝鮮に弾道ミサイルの開発、配備及び輸出を停止するよう求める。
79.我々は、インドとパキスタンのハイレベルの対話が始まりつつあることを歓迎する。我々は、両国が自国の活動を国際的な不拡散の規範に沿ったものにすることを奨励する。我々は、CTBTの早期発効を支持するとの立場から、両国が同条約に従うことを奨励する。
80.我々は、武器及び機微な技術の移転に関する国際的責任の促進により世界の安全保障及び安定が強化されることを認識し、そのような目的のためにワッセナー・アレンジメントに対する支持を再確認する。我々は、国連軍備登録制度の下で軍備の透明性の促進に関し着実に成果があげられていることを歓迎する。我々はまた、「小火器に関する国連政府専門家パネル」がその作業を通じて小火器や軽火器の過剰でかつ不安定化をもたらすような移転を防止し減少させる方法及び手段を明らかにすることを奨励する。我々は、引き続き協力して、火器の違法取引の抑制に取り組む。
輸出管理体制
81.我々は、国際的な輸出管理体制を構成する取決めに対する我々の支持を強調する。ザンガー委員会及びNSG(原子力供給国グループ)、MTCR(ミサイル関連技術輸出規制レジーム)並びにその参加国にとってオーストラリア・グループは、すべて、国際的な輸出管理規範のグローバルな適用及び実施に大きく貢献している。
対人地雷
82.我々は、昨年、対人地雷の全世界的な禁止を実現するための努力を惜しまないことにコミットした。そのため、我々は、軍縮会議及びこのような禁止を本年中に達成するとの目標を設定したオタワ・プロセスの一環として9月にオスロで行われる公式の交渉を含む様々な場における有益でかつ相互補完的な取組みに留意する。我々は、EU諸国を含む各国が、対人地雷の自主的規制を宣言したことを歓迎する。我々は、対人地雷を禁止する効果的で法的拘束力を有する国際約束を可及的速やかに締結することを呼びかけ圧倒的多数で採択された国連総会決議を支持することを再確認する。すべての国は、強化された「地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置に関する議定書」に従うべきである。我々は、国際社会が地雷の探知及び除去のための技術的手段を開発し、また、人道的な地雷除去活動及び地雷の犠牲者への支援に対する支持を強化することを奨励する。
政治情勢
香港
83.我々は、間近に迫った香港に対する中国の主権回復が歴史的性格を帯びていることを認識している。この金融・経済センターに対して我々が有する長期的利害関係に鑑み、我々は、1984年の英国と中国との間の共同声明及び中国の1990年の基本法に記された中国の約束を歓迎し、その約束を重視する。これらの約束には、香港の持続的な安定及び繁栄を確保すること並びに香港の生活様式、独立した通貨・経済制度を含む高度の自治、基本的自由及び法の支配を維持することが含まれる。これらは、香港の将来の経済的成功にとって不可欠な基盤を提供する。我々は、香港で新しい立法会のための民主的な選挙が可及的速やかに行われることを期待する。我々は、中国が共同声明及び基本法において「市民的及び政治的権利に関する国際規約」及び「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」の規程が引き続き香港において適用されることを保証したことについて真剣に留意する。
中東
84.中東和平プロセスは危機に直面しており、我々はこのプロセスに再度モメンタムを与える決意である。イスラエル人とパレスチナ人の間に安心感と信頼感を取り戻すことが不可欠である。我々は、オスロ合意の実施を再活性化し、領土と平和の交換を含むマドリード会議の原則を支持するために、最大限の努力を払う。すべての問題に、真剣かつ信頼できる交渉を通じ平和的に取り組む必要がある。両当事者は、恒久的な地位の交渉に先立って和平プロセスを阻害するような行動をとることを差し控えなくてはならない。我々は、この地域において包括的な解決を達成するため、イスラエル、シリア及びレバノンとともに協力して直接交渉を再開することが重要であると強く確信する。我々は、停戦監視グループが、1996年4月26日の了解事項をより強固なものとする上で、また、南部レバノンやイスラエルの民間人が危険にさらされる度合いを減少させる上で重要な役割を果たしてきていることを歓迎する。我々は、和平プロセスのための多数国間の枠組みの下での取組みが重要であることを確認する。
85.経済成長と繁栄は、平和にとって極めて重要である。我々は、この地域の各当事者に対し、相互の経済協力と世界経済への統合を追求するよう求める。我々は、パレスチナ人への支援を含む、この地域の実行可能かつ持続可能な経済発展を促進するすべての取組みを歓迎するとともに、ドナーに対し既に意図表明された措置を実行に移すよう要請する。
86.我々は、最近のイランにおける選挙の結果に関心を持って留意した。我々は、イラン政府に対して地域及び世界の問題について建設的な役割を果たすよう改めて呼びかける。この関連で、我々は、イランが、国連及び地域の他の当事者とともにタジク間協議において果たした役割に留意しつつ、イラン政府に対し、中東和平プロセスを破壊し地域の不安定化を図ろうとしている過激なグループへの物質的及び政治的支援を差し控えるよう要請する。我々は更に、イラン政府に対し、すべてのイラン市民の人権を尊重し、また、イラン国外に居住するイラン人に対するものを含めテロリズムを放棄するよう呼びかける。この関連で、イラン政府がサルマン・ラシュディ氏及び同氏の著作に関係した者の生命を継続的に脅かす行為への支持を慎むよう要請する。我々は、すべての国に対し、イランによる核兵器保有能力の取得及び国際条約又は取決めに違反する化学兵器、生物兵器又はミサイル兵器能力の強化を助長し得るような同国との協力を避けるよう求める。
87.我々は、イラク及びリビアに関する国連安全保障理事会のすべての決議の完全な履行を達成するとの決意を確認する。これらの決議が完全に遵守されない限り、制裁措置は解除され得ない。我々は、国連安全保障理事会986の下での食糧及び医薬品の配給が、イラクの人々に一定の人道的救済を与えていることを喜ばしく思う。
サイプラス
88.サイプラスの紛争は、あまりにも長い間未解決のままになっている。我々は、サイプラスの2つのコミュニティーが、関連する国連の諸決議及びハイレベル合意に従って包括的な解決を達成するために交渉を行うことを目標とする、サイプラスについての国連事務総長の仲介努力を完全に支持する。我々は、最近の事務総長による両コミュニティーの指導者に対する呼びかけを強く支持し、また、これら指導者に対し、建設的にかつ誠意を持って交渉に臨むよう求める。我々は、トルコ及びギリシャ政府に対し、サイプラス問題の解決に資するすべての方途を尽くすとともに、「賢人会合」の早期の開催を通じエーゲ海に関する両国間の紛争の解決に向けて努力するよう呼びかける。
アルバニア
89.我々は、アルバニアの情勢及びそれが地域の安定に及ぼす影響に留意し、フランス・フランニツキー氏の強力な指導の下にある、OSCE(欧州安全保障・協力機構)の調整の枠組みの中で、国民和解政府と協力して同国の正常化に従事している諸機関、特にEU並びにWEU(西欧同盟)、UNHCR(国連難民高等弁務官)及び赤十字に対して、謝意を表明する。また、我々は、イタリアの指導及び国連安全保障理事会の権限の下で、多国籍防護部隊が派遣されていることを賞賛する。我々は、アルバニアの当事者が、民主主義の強化を確保すべく選挙で協力し、そしてこの選挙の終了後に、秩序と公共の安全の回復、経済改革の推進及び健全な財政制度の構築に努力することが必要であることを強調する。
次回のサミット
90.我々は、バーミンガムにおいて来年5月15日から17日まで会合するとの英国の首相の招請を受諾した。