[文書名] 第25回主要国首脳会議におけるケルン憲章‐生涯学習の目的と希望‐
すべての国が直面する課題は、どのようにして、学習する社会となり、来世紀に必要とされる知識、技能、資格を市民が身につけることを確保するかである。経済や社会はますます知識に基づくものとなっている。教育と技能は、経済的成功、社会における責任、社会的一体感を実現する上で不可欠である。
来世紀は柔軟性と変化の世紀と定義されるであろう。すなわち、流動性への要請がかつてないほどに高まるだろう。今日、パスポートとチケットにより人々は世界中どこへでも旅することができる。将来には、流動性へのパスポートは、教育と生涯学習となるであろう。この流動性のためのパスポートは、すべての人々に提供されなければならない。
第1部:基本原則
我々の社会的、経済的目標を達成するためには、生涯学習への投資に対する更なるコミットメントが必要となる。
・政府による、あらゆるレベルでの教育及び訓練の向上のための投資
・民間セクターによる、既存及び将来の労働者への訓練
・個人による、自己の能力及び職務経験の開発
人々への投資に対する見返りは、これまでになく大きいものであり、また、その必要性はこれまでになく高まっている。それは、雇用、経済成長、社会的・地域的不平等の縮小のための鍵である。来世紀に移行するにつれ、知識へのアクセスは収入と生活の質の決定要因として最も重要なものの一つとなるであろう。先進国も開発途上国も同様に、世界的により高度な水準の技能や知識から恩恵を受け得ることをグローバリゼーションは意味する。
人々への更なる投資へのコミットメントは3つの原則によって支えられねばならない。
・第一に、知的才能に恵まれた人や経済的に恵まれた人だけでなく、すべての人々が学習や訓練へのアクセスを持つべきであり、基礎教育は無料であるべきこと。障害者のニーズに対して特別な考慮が払われるべきこと。
・第二に、すべての人々が、義務教育期間だけでなく、生涯を通じて学習を継続することを奨励しまた可能とすべきこと。
・第三に、開発途上国は包括的で近代的かつ効率的な教育制度を確立するための援助を受けるべきであること。
第2部:不可欠な要素
生涯学習と訓練の戦略における不可欠な要素は次の点である。
・質の高い初期教育
・すべての子供にとって、読み、書き、算数、情報通信技術(ICT)の十分な能力を達成するとともに、基本的な社会的技能の発展を可能とする初等教育
・労働市場のニーズを認識している学校により提供される、高等教育や専門的職業へ進む学生のみでない、すべての学生の素質や能力を開発するような中等教育
・労働市場のニーズに合致した技能や最新の技術を授けるとともに、より高水準の資格への道を開く職業訓練
・恩恵とすることができるすべての人々にとってのアクセスを確保するために必要な資金的支援を備えて、学位レベルの活動からの恩恵を受けうるすべての人々に機会を提供する高等教育
・適切な公的なあるいは雇用者からの支援を受け、家庭のニーズにかない、また、生涯を通じて技能の再修得の身近な機会を提供する成人にとっての技能の習得。これには、高度な職場での学習制度や自己啓発学習に必要な技能を備えさせることが含まれるべきである。
学習のあらゆる段階において、創造性や、起業家精神、そして、すべての人々にとっての政治的権利、社会的権利及び人権の尊重、寛容さや多元的共存の価値、異なるコミュニティー、見解、及び伝統の多様性への理解と敬意を含んだ民主的な市民であるための教育の重要性が強調されるべきである。
第3部:具体的施策
教育制度は各国ごとに強い特徴があり、文化的多様性を育てる上で極めて重要な役割を果たしている。しかし、すべてのレベルにおいて水準を高めるために教育・訓練制度を近代化する上で、各国間で共通した優先事項やアプローチが存在したり、あるいは、特に効果的な戦略を特定化したような重要な領域がある。次に挙げられているのは主要な具体的施策である。
・教員は、近代化やより高い基準を推進する上で、最も重要な資源である。教師の採用、訓練、配置、的確なインセンティブは、いかなる教育制度が成功する上においても極めて重要である。
・公的及び民間の資金による相互支援的な役割及び教育・訓練への投資の全体的水準の向上の必要性。
・伝統的な教育・学習方法を支えるとともに、例えば遠隔地学習を通じた教育・訓練学習の量及び範囲の拡大のための近代的で効果的な情報通信技術(ICT)ネットワーク
・生徒の習熟度を測るための国際的に認められた試験の更なる開発と改善。
・専門的資格及び就労経験の認知。
・グローバル化した世界において、異なる文化への理解の向上や流動性の増加のための外国語学習の増進。より高度な基準や達成度についての明確な目標の確立に対するより一層の関心。
・より高度な基準や達成度についての明確な目標の確立に対するより一層の関心。
・研究開発における大学と企業との間での極めて緊密な連携の発展を始めとする、教育における起業家精神文化の発展の必要性。