データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8外相会合 テロ対策に関する進捗状況報告

[場所] ウィスラー
[年月日] 2002年6月12日
[出典] http://www.kantei.go.jp/
[備考] 仮訳
[全文]

 我々G8外相は、昨年の議長国イタリアの主宰の下で、昨年9月11日の米国に対する凶悪なテロ攻撃に共同で対処する必要があるとの点で一致した。また、更なるテロ攻撃の危険がなお極めて現実の下で、引き続き警戒を要するとの共通の認識にも変わりはない。このため、我々は、G8首脳の要請により、またテロ対策に関する四半世紀にわたる我々の協力関係に依拠して、テロリズムと闘うための具体的な措置を策定すべく昨年秋から取組を続けてきている。我々の目標は、9.11事件のようなテロ攻撃が二度と起こらないよう確保することである。

 我々は、自国内及びG8諸国間の対テロ保安措置の強化、国際的なテロ対策措置の実施及び強化、G8以外の諸国のテロ対策措置の実施に対する支援という、G8が現在努力を払っている主要な3つの領域の進捗状況につき報告する。これらの取組は、G8の財務相及び司法・内務相による作業と連携しつつ行われている。

自国内及びG8諸国間の保安措置の強化

 我々は、まず自国内の対策を徹底することから始めた。G8各国は、政治、外交、軍事、法律、諜報、法執行及び金融面でテロ対策活動を強化する新たな法令及び政策を実施した。また、対テロ保安水準を高めるためG8全体で数10億ドル規模の資金を投入した。こうした、国内でとられた新たな措置は、全てのG8諸国相互の間で比肩し得る保安水準を確保し、平素及び危機に際しての協力を円滑にすることを念頭に策定されたものである。

 薬物の不正取引、組織犯罪、不法移民とテロ資金供与との結びつきの実態を明らかにし、そのような結びつきが存在する場合にはこれを壊滅するため、G8の警察・司法関係者その他全ての関連の専門家が今やより多くの情報を共有し互いの活動を調整している。テロリストの側もまた犯罪ネットワークにかなりの程度入り込んでいるので、このことは大切である。

 更に我々は、空路、陸路、海路を問わず、一般旅行者の安全を国内的にも国際的にも確保するための新たな基準を実施してきている。G8の航空会社は厳格な新保安標準と厳しい実施状況試験を設けている。我々は、国際民間航空機関、とりわけその航空保安プログラムに対し相当額の新たな任意拠出を行っている。この拠出金は、各国の航空保安システムが国際標準と一致することを確保し、新たな保安措置の策定を促進するための監査経費に充てられる。

国際的なテロ対策措置の実施及び強化

 我々は、国連安全保障理事会決議第1373号及びすべての国連のテロ防止関連条約を実施するとともに、この分野における国際的な義務を更に強化すべく努力している。我々は、特に、各国が爆弾使用、ハイジャック、人質行為のようなテロの脅威を防止し、これと闘うための具体的措置を実施することを求めている、これらの国連のテロ防止関連条約の遵守が確保されるよう取り組んでいる。これらの条約はまた、安保理決議第1373号とともに、各国に対し、テロリストに安全な避難所を提供することを拒否し、並びに資金供与、要員募集、武器供与その他の支援を防止するための措置を講ずるよう求めている。国連は、テロリズムとの闘いのための共通の努力において枢要な役割を有している。我々は、また、包括テロ防止条約案及び核テロ防止条約案につき国際的な合意形成を促進するための努力を粘り強く続けていく。

 テロリストが海上輸送、航空輸送又は陸上輸送の攻撃により国際貿易を混乱に陥れることを許すことはできない。これに対し我々は、こうした貿易ネットワークの安全確保のための手続の策定を行ってきている。また、テロリストが大量破壊兵器にアクセスすることも許されない。これに対し我々は、テロリストやこれを匿う者が化学・生物・放射性・核兵器及びミサイルへのアクセスを手に入れることを防止するために何をなすべきかについて議論した。また、G8諸国は、世界の全ての国に対し、核兵器不拡散条約、化学兵器禁止条約、生物兵器禁止条約のような多数国間条約を完全に遵守し、及び必要なときはそれらを強化するよう呼びかける。我々は機微な物資の不法な流れに関する情報と専門的知見を交換し、関連物資・施設の防護措置をとるとともに、密輸のネットワークに対抗する国内の及び国際的な輸出管理措置を強化している。我々は、国際原子力機関のテロ対策上の責任の強化を支持し、保障措置のより広範な遵守を促している。我々はまた、国防上の目的では不要となったプルトニウムを処分しようとの提案を含め、不拡散のための国際的な努力を促進している。

G8以外の諸国のテロ対策措置の実施に対する支援

 しかしながら、国内の措置と国際的な制度の強化だけではテロ対策として十分ではない。我々は、国連の諸文書に基づくテロ対策上の義務をG8以外の諸国が実施できるよう支援することにコミットしている。我々は、訓練、体制作り、法執行・情報機関間の協力及び技術的知見の共有を通じて、これらの諸国がテロ対処能力を構築できるよう支援を行っている。また、これらの努力においては国連テロ対策委員会と緊密に協力をしてきており、今後もこれを継続する。我々は、テロ対策に関する新たなG8勧告を策定したところであり、今後G8以外の諸国と関わっていく中でこの勧告を促進しようと考えている。この勧告は、去る5月14日にG8司法・内務相により発表された国際犯罪に関するG8勧告を補完するものである。また、G8外相は、テロ対策の実践と標準に関する更なる作業を要請する。

 テロ対策の取組はこれらに尽きるものではない。地球規模で真に効果的な対テロ攻勢を続けるために、全ての国が個別に、そして共同で更なる措置をとることが求められている。我々は、より安全な世界を築くためのこの継続的な努力において、国際社会と協力していくことにコミットする。