データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8外相会合 議長声明

[場所] ウィスラー
[年月日] 2002年6月13日
[出典] http://www.kantei.go.jp/
[備考] 仮訳
[全文]

1.G8外相は、重要な世界的及び地域的な問題について意見を交換し、行動を調整するため、6月12日〜13日、ウィスラーで会合した。議論の中では、特に、テロ対策、アフガニスタン、インド・パキスタン間の緊張、中東紛争、大量破壊兵器(WMD)の問題を含む軍備管理・軍縮・不拡散(NACD)そしてバルカンの問題に焦点が当てられた。我々は、危機に対してただ単に対応することを越えて、その原因となりうる統治や開発に関する問題に取り組む必要を認識した。

テロ対策

2.昨年9月19日、米国におけるテロ攻撃をうけて、昨年の議長国イタリアのイニシアチブにより、G8首脳は閣僚たちに対して、テロと闘う具体的な措置を策定するよう指示した。昨日、我々は、2001年9月11日以来我々がとってきた対応の概要を「テロ対策に関する進捗状況報告」として発表した。これらの努力は、財務相や内務・司法相の作業との調整のもとに進められてきた。我々は、テロとの闘いを続けることで我々の価値観と自由を守ることを改めて誓ったが、同時にそれが不断の警戒と努力を必要とすることでも一致した。我々は、化学、生物、放射性、核(CBRN)兵器へのテロリストのアクセスを防止するため、G8諸国が一層協力する重要性を強調した。G8各国は、また、国連や関係する地域機関と緊密に協力しながら、G8として付加価値のある貢献が可能な分野に重点を置いて、各国や地域がテロと闘うための自らの能力を向上するのを支援することにもコミットしている。我々は、この支援を提供するにあたって、お互いの取り組みを調整することにより、重複を回避するとともに我々の知見が最大限に活かされるよう確保する。

アフガニスタン

3.G8外相は、アフガニスタンにおける情勢について議論し、昨日、別途の声明を発表した。我々は、現在アフガニスタンで開催されている緊急ロヤ・ジェルガに対する強い支持を表明するとともに、ハミド・カルザイ氏に対し、本日のカブールでの選出について祝意を表した。我々は、カルザイ議長、その閣僚、そしてアフガニスタンの人々がアフガニスタン国家の再建のために過去数ヶ月の間に成し遂げた驚くべき前進を称える。このロヤ・ジェルガは、代表性があり、包括的で、効果的な移行政権の創出にとって極めて重大な一歩であり、また、2004年に予定される民主的な選挙に向けた決定的な一歩でもある。我々は、前進が継続するために必要な統治機構を構築するにあたり、アフガニスタンの政権が提示するニーズに応えていく重要性を議論した。人道支援を供与する環境を整えるとともに、より長期的な復興を可能にするため、G8は、アフガニスタンにおける治安分野の課題に関心を払ってきた。我々は、元戦闘員の動員解除と社会復帰、国軍の設立、国家及び地方警察の創設、司法部門の再建に向けた取り組みを支援するため、アフガニスタン暫定政権、ラフダール・ブラヒミ国連事務総長特別代表、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)と協力してきた。アフガニスタンにおけるケシの栽培及び取引という課題に対処することに、特に注意が払われた。我々は、また、アフガニスタンにおける前向きな移行を補強するとともに、アフガニスタンの人々に安全で安定した未来への希望を与えるために、東京で行われたアフガニスタン復興支援国際会議でのプレッジを遅滞なく具体的な支援に転化していく重要性を認識した。

インド、パキスタン

4.G8外相は、インドとパキスタンの間の緊張状態について議論し、これらの核兵器の能力を有する国の間における紛争の危険性、及びこのことが地域及び国際の平和と安定にもたらす脅威についての継続的な懸念を提起した。我々は、緊張が引き続き緩和されること及び両国間の政治的対話の重要性を強調した。我々は、パキスタンの管理下にある地域に源を発するテロ行為をパキスタンが恒久的に終結させること、及び両国が現在の危機に対する外交的解決を確保するため国際社会との協力を継続することを求める5月31日の我々の呼びかけを改めて強調した。G8外相は、また、現在の危機の根本にある本質的な問題に対処するため、インド及びパキスタンとともに引き続き取り組むこと、及びこの地域における協調的外交努力の継続にコミットする。

中東

5.G8外相は、中東における状況につき議論を行い、テロと暴力の即時停止を呼びかけた。我々は、イスラエルとパレスチナという二つの国家が、安全かつ承認された国境の中で共存するという、この地域の将来像を再確認した。我々は、この地域の平和、繁栄と経済の復興、尊厳及び安全のための条件を支えるために、お互いに、また関係国とともに協力するとの我々のコミットメントを強調した。我々は、ベイルートで行われたアラブ連盟首脳会議において採択されたアラブ連盟のイニシアチブ及び中東に関する国際会議を開催するとの米国の意向を歓迎した。

不拡散、軍備管理、及び軍縮

6.G8外相は、変化した国際安全保障環境、及び大量破壊兵器の拡散がグローバルな安定と安全にもたらす課題について議論した。我々は、国際的な不拡散・軍備管理・軍縮の課題について意見を交換し、米露間の核兵器削減に関する最近の合意を歓迎した。我々は、これらの前向きの動きが、他の不拡散・軍備管理・軍縮の課題における進展のきっかけとなりうるとの認識で一致した。これに関連して、我々は、多数国間のメカニズムや法的拘束力を有する枠組みから輸出管理に至るまで、全ての利用可能な手段を用いることの必要性を再確認した。プルトニウム処分については、我々は余剰軍事用プルトニウムが核兵器に恒久的に利用不可能となるよう確保することの重要性を確認した。支援国は、ロシアのプルトニウム処分プログラムのための多数国間の枠組みに関する交渉を2003年に完了すべく取り組んでいる。

バルカン

7.G8外相は、バルカンにおける平和、安定、民主主義及び効果的なガバナンスの能力の向上に向けた地域協力の進展に留意した。我々は、この地域内における国際社会の強いプレゼンスを引き続き支持することを表明した。我々は、コソヴォ担当事務総長特別代表より安全保障理事会に提起されたベンチマークを全面的に支持した。このベンチマークは、安保理決議1244の目的を果たす上で、また、民主的で多民族からなるコソヴォをうち立てるために重要である。

紛争予防

8.我々は、紛争予防に貢献するための新たな方法を見出すとの昨年のローマ会合におけるコミットメントを実現し、これに関し、専門家は、共有された水資源の管理並びに元兵士の武装解除、動員解除及び社会復帰に関する作業を終了した。

他の地域問題

9.我々は、サイプラス問題の公正、実行可能かつ包括的な解決を目指した対話の再開を歓迎した。我々は、サイプラスの両指導者及び全ての関係者に対し、合意に到達するための努力を強化し、持続的な解決に向けて残されている障害を克服するよう呼びかけた。我々は、国連事務総長のサイプラスへの最近の訪問を歓迎するとともに、合意が近々達成されること、また、この目的の達成を促す上で国連が完全に役割を果たすことに対する事務総長の期待を支持した。

10.G8外相は、朝鮮半島において、緊張を緩和し、永続的な平和を樹立するための努力がさらに促進されるべきであることについて合意した。我々は、韓国の関与政策に対するG8の支持を改めて表明した。

我々は、北朝鮮に対して、安全保障、不拡散、及び人道問題に関する国際社会の懸念に対して建設的に対応するよう引き続き求める必要性を認識した。

11.我々は、9月にニュー・ヨークで行われる国連総会の際に次回の会合をもつことに合意した。