データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 9月11日以降のG8テロ対策協力背景説明書

[場所] カナナスキス
[年月日] 2002年6月26日
[出典] http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/kananaskis02/g8_terro.html
[備考] 仮訳
[全文]

テロと闘うための共同コミットメント

●昨年9月19日に発出された宣言において、G8首脳は、

○9月11日の攻撃を非難し、

○犯人を法に照らして裁き、あらゆる形態のテロと闘い、更なる攻撃を防止し、及び国際協力を強化するとの決意を強調し、

○12の国連テロ防止関連条約を直ちに実施するよう要請し、

○全ての関係閣僚に対し、一連の主要分野におけるテロ対策協力を強化するための具体的な措置を特定し実施するよう要請した。

●この宣言を受けて、G8司法内務大臣、G8外務大臣及びG7財務大臣は、それぞれ、テロ対策及び犯罪のG8専門家からなるローマ及びリヨン・グループにおける協力を通ずることを含め、以下の措置を策定し実施している。

グローバルな対応のためのグローバルな取組

●G8にとって主要な優先課題は、2001年9月28日に全会一致で採択された国連安保理決議1373、及び国際行動の基準を定めた12の国連テロ防止関連条約のグローバルな実施である。

○爆弾使用、ハイジャック、人質をとる行為のようなテロ行為を防止し、これと闘い、

○テロリストへの資金供与、テロリストの採用、及びテロリストへの武器の供与を防止し、これと闘い、

○テロリストを引渡しまたは訴追し、彼らに安全な避難所を提供することを拒否すること。

●G8諸国は、決議1373を実施しており、また、履行を確保するために必要な国内法令の改正を行った。すべてのG8諸国は、決議1373において要請されているように、国連安保理テロ対策委員会に対し、自国の実施状況を報告した。

●G8は、決議1373の実施をモニターし促進することにより、国際テロのグローバルな脅威に対処するため、国連安保理テロ対策委員会と緊密に協力している。

●G8諸国は、決議1373が取り扱う分野における訓練及びキャパシティー・ビルディングのために、地域機関のような国際的枠組みを通じて、国連安保理テロ対策委員会と協力しつつ、第三国に対し技術的及び法的支援を行っている。

●G8は、「テロ対策に関するG8の勧告」を策定した。この勧告は、テロの脅威から社会を守るための既存のメカニズム、手続き及びネットワークを改善することによって、テロと闘う能力を強化するための指針を提供する一連の原則及び優先事項である。

●G8諸国は、12の国連テロ防止関連条約を実施しているが、国連において、「国際的なテロリズムに関する包括的条約」についてコンセンサスを形成し、「テロリストによる核の不法所持等の防止に関する国際条約」の採択作業を完了させるべく、作業を継続する。

テロリスト及びそのネットワークの根絶

テロリストから資金を遮断すること

資金は、テロリストの生命線である。彼らの活動に資金を供与する手段を遮断することは、テロと闘うG7及びG8の取組の重要な焦点である。

●G7財務大臣による2001年10月の行動計画は、ロシアも支持しており、優先課題を特定し、以下の具体的措置を要請することにより、こうした取組を前進させた。

○テロリストから資金を奪うために、即座にテロリストの資産を凍結し、

○テロリストによる金融システムの濫用を防止するための国際基準を迅速に策定し実施すること。

●9月11日以降、全世界において約1億1600万米ドルが凍結され、160以上の国及び地域においてテロリストの資産を凍結するための行動がとられた。

●G8諸国はすべて、テロリストの資産を凍結する法的手段を有しており、そのような資産に対する制裁の協調及び有効性を向上させるために協力してきた。G8諸国は、テロリストの資産を凍結するための同時行動を確保するため、十分な事前通報をもって情報を共有するためのコンタクト・ポイントを指定している。G8諸国はまた、テロリストから資金を永久に奪うため、凍結資産を押収するための措置をとっている。

●国連は、国連加盟国が金融資産を凍結しなければならない293の個人及び団体のリストを作成した。G8諸国はまた、制裁を適用する目的でテロリストを特定し、そのリストを作成した。2002年4月19日、G7が共同して特定したテロ団体及び個人が発表され、すべてのG7諸国は協調してその資産を凍結した。

●G7財務大臣が要請し、ロシアが支持したように、資金洗浄に関する金融活動作業部会(FATF)は、テロ資金供与に関する8つの特別勧告を採択し、参加国及び非参加国による即座の実施を奨励する大胆な行動計画を作成した。G8は、これらの勧告を実施している。

●G8諸国は、1999年の「テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約」を実施している。9月11日以降、100以上の国が同条約を署名または批准した。同条約は、2002年4月10日に発効した。

テロ攻撃を計画するための通信手段を遮断すること

インターネットは、テロリストが連絡をとり攻撃を計画するために使用されてきた。テロリストの通信ネットワークを破壊することもまた、G8の取組の重要な部分である。

●G8は、ネットワーク上の通信の追跡に関する勧告を策定した。この勧告は、警察及び治安当局が、国際通信ネットワークを違法目的に使用する犯罪者及びテロリストの所在及び身元を迅速に特定することを支援する。

●G8は、一般市民のプライバシーへの懸念と通信産業の利益とのバランスを保ちつつ、通信データの入手を容易にする政策を政府が策定する際に役立つ一連の原則を定めた。

●G8は、ハイテク犯罪及びテロに関する捜査協力のための専門家間の常時利用可能な連絡網を設定した。9月11日以降、連絡網への参加国は、16から28に拡大した。

アフガニスタン内のテロリストのネットワークを遮断すること

アフガニスタンにおいて安全な状況をつくることは、同国の政治的安定及び復興、並びにテロに対する闘いにとって重要である。

●G8諸国は、アル・カーイダ及びタリバーンに対する軍事行動を含むテロに対するグローバルなキャンペーンにおいて、並びにアフガニスタンに安定及び民主主義を根づかせる条件を作り出す取組において、主導的な役割を果たしてきた。G8諸国は、アル・カーイダ及びタリバーンの施設の大部分を破壊するのに成功し、テロリストに対して活動の場を否定し、大量の爆発物、武器及び弾薬を破壊した。さらに、国際治安支援部隊(ISAF)の参加国は、カブール市内及び周辺地域の平和及び安定の維持に極めて大きな貢献をした。

●G8諸国は、1月21〜22日に東京で開催され、累積総額約45億米ドルが約束されたアフガニスタン復興支援国際会議において、多額の貢献をコミットした。

●G8諸国は、アフガニスタン暫定政権及び他のドナーと緊密に協力し、治安分野における戦略を策定し資源を動員するのに主導的な役割を果たしている。主要な分野は、国軍及び警察の設立及び訓練、司法分野のニーズの評価、兵士の動員解除及び地域社会への復帰、地雷の脅威の除去、並びにあへんの収穫の根絶である。

●G8は、アフガニスタン暫定政権による本年のあへんの収穫を根絶するプログラムの実施を支援しており、現在までに、本年の収穫の20%から25%を駆除することに成功した。G8諸国は、同国から広がる麻薬の不法取引を抑制すべく薬物対策「安全地帯」をアフガニスタン周辺に設置するために積極的に行動している国連薬物統制計画(UNDCP)と緊密に協力した。

テロ攻撃の脅威の削減

旅行の安全性を向上すること

●G8諸国は、一般市民の旅行の安全性を確保するための新たな基準を実施してきている。G8諸国の航空会社は、厳格な新保安基準を有しており、その運用を毎日検査している。

●G8諸国は、国際民間航空機関(ICAO)、特にその航空保安プログラムに対して、相当額の新たな任意拠出を行っている。この貢献は、国際標準の履行を確保し、旅行者を守るための新しい保安措置を策定するのに役立つ。

テロリストに聖域を与えないよう確保すること

テロリスト及び犯罪者の移動を制限し、彼らが入国手続及び庇護の制度を濫用するのを防止することは、G8の共通の目標である。

●G8は、渡航文書及び身分証明書の安全を確保するために、世界標準の改善を促進し、新技術を利用している。これは、テロリストによる不法な渡航及び身元の偽装を防止するのに役立つ。

●G8は、国境管理の改善並びにテロリスト及び犯罪者の国境到達前の捕捉に関する最善の慣行を共有している。G8諸国は、他の諸国による管理措置の改善を支援している。

●国際条約を補完する国内法令は、証拠の交換を改善し、テロリストの訴追または引き渡しを成功裡に行うことを一層容易にしている。またG8の治安及びインテリジェンス部門の担当者は、特定の脅威及びテロリスト・グループに関する最善の慣行を共有している。

テロの脅威を評価し、予期せぬ事態に備えること

●G8諸国は、薬物の密輸、移住者の密輸、渡航文書の偽造、火器の不法取引及び資金洗浄のような犯罪活動とテロ組織との潜在的な結びつきを明らかにすべく、情報を共有するとともに協調して活動している。

●「国際犯罪に関するG8の勧告」は、国際犯罪及びテロの脅威から社会を守るために国際的に策定すべき捜査技術、法令、協力手段に関する最新の分析を反映するよう改訂された。

●G8諸国は、化学、生物、放射性及び核物質によるテロの潜在的な脅威に関する評価を改善するために、インテリジェンス情報及びその他の情報の交換を強化している。

●G8は、毒性物質の工業用プラント及びその輸送に関する事件が発生した際の対応並びにシミュレーション訓練の実施に関する作業を開始することに合意した。化学、生物、放射性及び核物質からの脅威に対して国際的なヘルス・セキュリティーを強化するため、世界保健機関(WHO)との作業が進められている。

●G8諸国は、化学、生物、放射性及び核兵器が関係するテロ事件に対応するための、国家の能力及び技術に関する情報を共有している。G8専門家は、化学及び生物物質が関係する事件に対応するための最善の慣行を策定した。また、放射性及び核物質が関係する事件に対応するための最善の慣行を検討している。