[文書名] 水:G8行動計画(第29回主要国首脳会議)
水が生命に必要不可欠なとおり、水がなければ人間の安全保障が損なわれる。国際社会は、今やこの分野における努力を増加すべきである。被援助国が適切な水政策を追求するためには、良い統治(ガバナンス)が促進される必要があり、能力が構築されなければならない。また、水と衛生施設の分野においてミレニアム宣言の目標及び持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)の実施計画を達成するため、また、天然資源の保護と均衡のとれた管理を通じて現在の環境悪化の傾向を覆すため、資金源がより効率的かつ効果的な方法によって適切に水分野に振り向けられるべきである。
我々は、モンテレイ・コンセンサスを踏まえ、また、2003年3月に日本で開催された第3回世界水フォーラムと閣僚級会議の成果の上に、これら目標の達成に向けた国際的な努力において、より積極的な役割を果たすことを約束する。この堅固な基礎の上に、また、パートナー国のニーズと優先度に応え、我々は、特に、アフリカにおける適切な水管理の重要性を勘案して、G8アフリカ行動計画において述べたようにアフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)を支持し、個別に又は共同で次の措置を講ずることとする。
1.良い統治(ガバナンス)の促進
1.1 我々は、貧困撲滅を含む持続可能な開発を促進するための国家戦略の一環として、安全な飲料水及び基礎的な衛生施設を優先することに政治的誓約を行う国に対し、優先的に以下の取組を行うことを支援することを約束する。
−水資源の統合的管理と効率的利用のための包括的計画を策定する。
−安定的で透明性があり、法の支配に基づくものであり、人間の基本的なニーズと生態系の保全を尊重し、地方の強化と適切な費用回収アプローチを促進する、制度的枠組みを構築する。
−明確な目標を設定し、適当な場合には成果指標を策定し評価する。
1.2 我々は、これらの国が、効率的な公共サービスの提供に必要な技能を発展させるために行う能力向上の努力を支援し、さらにパートナー国が以下を行うことへの支援を図る。
−適切な法的、規制上の、制度的、及び技術的な枠組みを策定する。
−水管理における基礎的な及びさらに進んだ職業訓練施設を強化し、又は、必要な場合には、設立する。
1.3 河川流域管理の重要性にかんがみ、我々は以下の努力を強化する。
−統合的水資源管理と水効率化の計画を策定するための支援を提供する。
−共有された河川流域のより良い管理と開発を支援する。
−特にアフリカの河川流域に注目しつつ、全世界で河川流域の協力を推進する。
1.4 我々は、関係者の役割と、適当な場合の、官官或いは官民の連携(パートナーシップ)の構築と運用を含む、水と衛生サービスの供給における最善の慣行の共有を行うことを提案する。
2.すべての資金源の活用
モンテレイ・コンセンサスとWSSD実施計画に沿って、農村部と都市部の人々の異なるニーズを念頭に置きながら、我々は以下のことを約束する。
2.1 政府開発援助の配分において、開発途上国パートナーによる健全な水と衛生についての提案に対し高い優先度を与えること。
2.2 特に次の手段により、地方の資本市場と金融機関を発展させ、強化することを通じ、水関連施設に対する資金調達のための国内資源の動員を支援すること。
−適当な場合には、国家及び地方のレベルで現地通貨を提供する回転資金を設立すること。
−適切なリスク軽減メカニズム。
−地方における効率的な金融市場の発展のための技術的支援の提供、及び資金的に実行可能な事業を策定し実施するための地方政府の能力の構築。
−適当な場合に、市場金利での債務返済を完全に行うことができない最も貧しいコミュニティに対し、目的を限定した補助金を提供すること。
2.3 国際金融機関に対し、水に必要な優先度を与えるよう奨励する。
2.4 サービスを受ける経済力が最も無い人々のサービスへのアクセスを確保するため、「成果に基づく援助」の方策を用いて、費用回収を促進する。
2.5 適当かつ適切なときは、特に以下の手段により、官民の連携(パートナーシップ)(PPPs)を推進する。
− 民間部門の投資の誘致、及び現地通貨の利用の奨励。
− 国際的な商業的投資の促進、及びリスク保障制度の利用を通じた融資。
− 運用手続の調和化の奨励。
− 国内の入札と国際的な入札の実施の促進。
2.6 水と衛生の事業への援助のための、自主的な手段を適用する。これには、資金援助に関する国際的規則に合致した譲許的融資、プロジェクト・ファイナンシング、小規模及び中規模融資、債務投資スワップといった資金供与メカニズムを含み得る。
2.7 健全な潅漑事業への資金供与を奨励する。
2.8 我々の種々のイニシアティブの間の相乗効果をより高めるため、援助国(・機関)間の協力と協調を向上させる。
3.地方公共団体とコミュニティの強化によるインフラ整備
我々は、以下のような手段により、パートナー国が多様なニーズに合わせて、水と衛生の関連のインフラを整備し改善することを支援することに最善を尽くす。
3.1 公的資源の効率的活用及び、適当な場合のPPPsの推進を通じ、農村部における水管理システム、及び、都市部における水と下水の施設の構築を支援すること。
3.2 水供給、衛生施設、及び衛生管理の供給における市民社会の関与を含め、コミュニティに根ざした方策を推進すること。
3.3 家庭レベルにおいて持続可能な形で、基礎的な衛生施設や安全な飲料水の供給についての適用技術の利用を奨励すること。これには、貧しい人々のニーズに応える上で費用効果的であることが確認された利用時点での水処理を含む。
3.4 地方のコミュニティにおいて女性の果たす極めて重要な役割を認識し、地方政府や市民社会の関係者を始めとして、水分野における様々な関係者の技能と知識を強化すること。
3.5 特に「実行しながら学ぶ」形をとって、各協力事業において能力向上の要素を導入することを促進すること。
3.6 南南協力を強化すること。
4.点検、評価及び研究の強化
4.1 我々は、全ての関係者と協力し、既存の国際連合その他の制度及び第3回世界水フォーラム閣僚級国際会議において設立されたウェブサイトのネットワークを活用することにより、情報の共有と点検のためのメカニズム間の協調を促進し、関係する国際機関がそのメカニズムを運営することを奨励する。
4.2 我々は、パートナー国において現在行われている点検の努力を補完するため、その国の水の点検能力の強化を支援する。
4.3 我々は、水循環関係研究についての協力のためのメカニズムの発展を支援し、この分野における研究努力を充実させる。
5.国際機関の関与の強化
5.1 我々は、水分野において国連が重要な役割を果たす必要があることを強調する。我々は、国連システム内における協調、国連システムとブレトン・ウッズ機関、地域開発銀行及び様々な関係者との協調の強化の重要性を強調する。
5.2 我々は、世界銀行が他の国際金融機関と協議の上、水施設への資金調達に関する世界パネルが行った以下の提案を検討し、これらを実施するために必要な措置を勧告することを要請する。
− 適当なときは、国家に満たない組織(地方公共団体等)への直接の融資を可能にするよう、自己の資金供与手段をより柔軟に利用すること。
− リスク軽減のための保証及び保険スキームを発展させること。
− ソブリン・リスク及び為替リスクへの対応という課題に取り組むこと。