[文書名] G8行動計画:世界的な平和支援活動能力の拡大
世界における平和支援活動の数は増加し続けており、危機にある国において、社会的、経済的及び政治的進展の基礎となる安定と安全をもたらすために、国際社会が軍事的及び関連する複合的な安全保障活動をもって対応する必要性が増大している。
アフリカはより大きな平和支援の必要性に直面しており、国際社会は平和を確保するための一層包括的な措置の重要性を認識している。この認識を踏まえ、我々はカナナスキスにおいて、アフリカ行動計画の中で「2010年までにアフリカ諸国並びに地域的及び準地域的な機関が、アフリカ大陸における暴力的紛争の予防及び解決をすることがより効果的に出来るように、また、国連憲章に従った平和支援活動の実施により効果的に取り組むことが出来るように、技術的及び資金的な支援を提供する」ことを決意した。
エビアンでは、「アフリカの平和支援活動能力向上のためのG8・アフリカ共同計画」により、それ以前の誓約のフォローアップを行った。我々は同共同計画において、アフリカのパートナーと、平和と安全保障構築のためのより長期的なアフリカのビジョンを支援するにあたり、既存資源を一層効果的に運用することに資する重要な基本的要素を発展させる作業を着実に進めることを約束した。既に多くのG8諸国が、アフリカの諸機関及び諸国が平和支援活動及び関連活動を実施する能力の向上のための活動を行ってきている。EUは最近、「アフリカのためのピース・ファシリティー」を設置した。2億5000万ユーロを約束したこの構想は、多くのアフリカ諸国が国際的な平和支援活動を展開する際に直面することがよく知られている財政的及び兵站上の困難に対処し、アフリカの組織上の能力構築プロセスを支援する。米国、フランス、カナダ、ドイツ及び英国は、アフリカの平和支援活動部隊の訓練と装備並びにアフリカの諸機関が平和支援活動を開始、管理及び維持出来る能力の構築のために二国間支援を行ってきている。イタリアは、トリノにある国連職員研修所での訓練活動やブリンディシにおける国連兵站支援基地での活動を含め、アフリカの平和支援活動に対する援助を行ってきている。日本とロシアは、アフリカの平和支援活動努力と武装解除、動員解除及び元兵士の社会復帰を含むその関連活動への支援を行ってきている。アフリカにおける一層の平和と安定のための枠組み創設の面では進展があったが、アフリカの平和支援活動能力を強化するための我々の個別の取り組みを最大限のものとするためには一層の調整が必要である。
平和支援活動及びその関連活動の能力を向上させるための同様の措置は、至る所でも必要とされている。多くの国々の間には、時宜を得て平和支援活動を行う能力に大きな隔たりがある。平和支援活動を効果的に計画し実施するために必要な訓練や専門知識を持たない地域的及び準地域的機関の本部職員には、組織上の能力構築が特に重要である。複合的な平和支援活動の数が世界中で増加している今日、拡大する需要に対応可能な十分な訓練を受け装備を有する部隊が欠如している。平和支援活動に参加する能力を有している国の多くは、部隊を輸送し維持する能力がないために平和支援活動に参加が出来ないのである。訓練を受けた部隊は、その技能を平和支援活動への展開まで維持する必要がある。
最近の平和支援活動においては、イタリアの軍警察やフランスの憲兵に類似した部隊がその特異な技能をますます発揮してきている。これらの部隊は、軍隊と文民警察の間の安全上の間隙を埋め、軍隊の重責を軽減し、文民警察が法の支配の範囲内で効果的に活動する環境を創設している。より相互に運用可能なこのような部隊がより多く、国際的な平和支援活動及びその関連活動に参加する必要がある。
世界的な平和支援活動能力の拡大のための行動計画{前23文字下線有り}
本日、我々は、いかなる国際的な平和支援活動やミッションに対しても時宜を得て利用出来る世界的な平和支援活動能力の拡大のための行動計画に誓約した。訓練及び支援を受けている国は、その部隊をある特定の平和支援活動に展開するかにつき自らの独立した決定を行う。本構想の下でG8が実施する全ての平和支援活動及びその他の関連活動は国連憲章に合致したものである。さらに、世界の多くの平和支援活動、特にアフリカにおけるものは、国連の指導の下で国連安保理の権限によって行われていることを踏まえ、世界的な平和支援活動能力の拡大のためにG8によって行われるすべての行動は、国連との緊密な協力によりその技術的基準に従って、また、ブラヒミ報告書の勧告を考慮に入れて、実施されるべきである。アフリカでは、更に、これらの活動はアフリカ連合及び準地域機関との緊密な協力により、アフリカのオーナーシップの原則に従って実施されなくてはならない。
それ故、我々のパートナー及び我々自身にとって最大の利益を確保するため、我々は具体的な活動を実施し、我々の取り組みを緊密に調整する。従って我々は、国内法とも合致した形で、以下について誓約する。
・カナナスキス及びエビアンでなされた約束に従い、2010年までに世界中で合計約75,000人の部隊を訓練し、適当な場合には装備を施す。この努力は、アフリカ及びその他の地での平和支援活動の双方に貢献できるアフリカ及びその他の諸国に集中して継続する。我々はまた、これらの部隊が当初の訓練後にその技能を維持できるような訓練や演習を約束する。活動の中には、平和支援活動を立案及び実施する地域的及び準地域的機関の組織上の能力の向上も含む。
・アフリカの平和支援活動能力及びその関連活動を向上するための我々の個別の取り組みを最大化すべく、アフリカのパートナー、国連、EUその他と調整を行う。アフリカ連合(AU)が主催する年次協議への積極的な参加や、(エビアン計画で予見されたように)アフリカの首都における支援国コンタクト・グループの設立、及び関係者の間での調整会合の開催により、我々は平和支援活動及びその関連活動に関するG8メンバーその他による支援を一層十分に調整していく。このため我々は、情報交換のための情報センターとして機能するG8専門家レベル会合を、この目的を達成する上で必要な限りにおいて、設置する。
・2010年までに、他の地域において平和支援活動能力を構築する。これら平和支援活動部隊の多くは、自らの地域における危機と並びアフリカにも展開出来るものとする。メンバー諸国は、これらの部隊が新たに学んだ技能を確実に維持することを支援するための訓練や演習の提供も誓約する。
・関心のある当事者と協力し、平和支援活動に展開を行う国への輸送の提供や、活動地における部隊維持のための兵站支援の提供を援助できるように、輸送及び兵站支援取決を次回サミットまでに策定する。既存の取り組みを考慮に入れたこの種の取決は、危機への時宜を得た介入をしばしば妨げている主要な能力不足に取り組むべきである。
・イタリアの軍警察やフランスの憲兵隊のような部隊の訓練については、この目的を遂行する既存のセンター、特にフランス、イタリア及びアフリカにおけるセンターに対する支援の継続、及びこの観点からの新しい構想を支持することによって、我々の貢献を拡大する。具体的には、我々は拠点センターとして平和支援活動の訓練と技能を提供する国際的な訓練センターを多国間ベースで創設しようとするイタリアの構想を支持する。同センターは、イタリアの軍警察やフランスの憲兵隊その他の同様な部隊の経験と専門知識を基に、アフリカ諸国を含めた関心国において平和支援活動のためにイタリアの軍警察やフランスの憲兵隊に類似した部隊を設立するべく、以下の活動に従事する。
−「指導官の訓練」コースや具体的ミッションの展開前訓練を含め、訓練プログラムを実施する。
・特に群衆管理、組織犯罪との闘い、危険の高い逮捕、刑務所の保安、機微な施設の保護、選挙の安全、VIP警護及び国境管理に関し、軍警察や憲兵隊のような部隊を平和活動で運用する上での共通の教養及び共通の運用基準を策定する。
−関連する軍と相互運用可能な訓練を提供する。
−人道法、人権、刑法、刑務所管理、軍民協力等の関連ある分野において、学術界及び研究機関と交流する。
この取組みは、軍隊の能力構築の目的を補完するものであり、平和支援活動では双方が必要とされている。
我々は、世界的な平和支援活動能力及びその関連諸活動を向上する現在の努力を加速し拡大するために、上記の行動に引き続きコミットする。そのためにG8メンバー国は、これらの目的を達成するべく多大な支援を提供しており、今後も引き続き提供していく。我々は、こうした部隊が不要となる日を楽しみにしているが、それまでは、より安全で安心できる世界のために、世界的な平和支援活動能力の拡大は重要な要素であることを認識する。