データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 世界HIVワクチン事業を承認し設立するG8の行動(仮訳)

[場所] シーアイランド、ジョージア州
[年月日] 2004年6月10日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1.我々は、世界的に蔓延するHIV/エイズとの闘いに対する我々の約束を再確認する。単独及び共同で、我々は、HIVの治療、介護及び予防を目的とする努力を拡大してきた。我々は、この疫病と闘うにあたって、世界エイズ・結核・マラリア対策基金、UNAIDs、WHOの重要な役割を認める。しかし、エイズという疫病の人的及び経済的な犠牲は、HIVワクチンの開発のための努力の加速化により、これら諸機関の活動が補完されるべきであることを求めている。2001年及び2002年に臨床試験に入ったワクチン候補はわすか7つであり、たった1つのみが更に進んだ人体実験に入ったが、効果がないことが判明した。ワクチン開発の努力は、主として非常に大きな科学的な課題のために、これまでゆっくりとしか進行しなかった。この課題に取り組む最善の方法は、世界中の科学者が補完し合いながら共同の作業を行うことにある。

2.我々は、途上国及び先進国における公的部門及び民間部門双方の主要な科学その他の他の関係者が、より組織化された形で参集する時がやってきたと信じる。この概念は、国際的な科学者のグループによって提案された。我々は、この概念を確認し、世界エイズワクチン事業−世界的に調整、情報共有及び協力を強化することによりHIVワクチンの開発を加速化させる事実上の提携−の設立を呼びかける。

3.事業は、取り組むべき科学的課題の優先順位を決め、研究及び製品開発の努力を調整し、情報共有のネットワーク及び技術をより活用することを奨励する戦略的計画を確立すべきである。この計画は、既存の資源をより連携し、また新たな資源が利用可能になった際により効果的に手近なニーズに注入することを支援するための青写真として、役に立つべきである。特に戦略的計画は、以下を目的とすべきである。

3.1.多くの連携する世界的なHIVワクチン開発センターの展開を奨励する{前32文字下線有り}:各センターは、特定のHIVワクチン・アプローチを進めるためのクリティカル・マス及び科学的知見を有するべきである。これらのセンターは、米国国立衛生研究所の国立アレルギー・感染症研究所(NIAD)のワクチン研究センターや欧州研究機関のように自己充足でもあり得るし、あるいは、国際エイズワクチン推進機構(IAVI)や、欧州・開発途上国臨床試験プログラム(EDCTP)、ゲーツ財団及びその他の官民パートナーシップにより資金拠出されたもののように、事実上のセンターでもあり得る。

3.2.HIV/ワクチンに特化したワクチン製造力の向上を刺激する{前28文字下線有り}:より進んだ臨床試験に向けたHIVワクチン製造のためには、既存の生産力では不十分である。したがって、EDCTPのように、特に、現時点で開発のパイプラインに入っているか、またはいずれ開発のパイプラインに入ることになるワクチン候補の検査のため、潜在的なHIVワクチンの製造に関与する資源及び施設は増加されなければならない。

3.3.規格化された臨床前及び臨床における研究の評価を確立する{前27文字下線有り}:与えられたワクチン候補について臨床試験から集められたデータは、利用可能であるべきであり、他のワクチン候補について行われる試験にも適用可能であるべきである。したがって、臨床前の及び臨床段階でのワクチン開発において、規格化された手続き及び効果的な手段が採用される必要がある。そのかわり、研究所は、臨床試験により連結され、新しい秘密保持協定及び情報共有技術をより幅広く活用することが必要になる。

3.4.統合された国際的な臨床試験制度を拡大する{前20文字下線有り}:潜在的なHIVワクチンの第I、第II及び第III段階の試験実施を可能とする大規模な臨床プログラムが、米国のNIAID、フランスの国立エイズ研究機構、イタリアの国立エイズ・プログラム、IAVI及びEUにより確立された。この世界的な臨床試験制度は、拡大され調整されるべきである。これは、学際的なアプローチを促進し、生物医学チームと並んで社会科学者及び行動科学者からの入力情報も組み入れるべきである。

3.5.規制当局間の交流を最適化する{前14文字下線有り}:HIVワクチンの許認可に関与する各国・各地域の規制当局間の協力、連絡及び情報共有の増加は不可欠である。これは、安全性及び製造基準を低下させることなく、達成することが出来る。

3.6.途上国の科学者の関与の増大を奨励する{前18文字下線有り}:大部分の第III段階の試験は、この疾病により最も被害を受けている途上国において実施されることが必要であるため、国際的試験制度は、現地の科学者、現地の代表及び国際的な代表から構成される倫理検討委員会並びに規制機関の関与を必要とする。

4.我々は、世界HIVワクチン事業の全ての関係者に対し、我々の次のサミットまでにこの戦略的計画の策定を完成することを求める。

5.米国は、G8議長国として、HIVワクチン開発における共同の努力を奨励するため、本年後半、この事業に関心のある全ての関係者による会合を開催する。この会合では、戦略的計画がいかに実行されるべきかを明確にすべきである。我々は、この会合が年次行事になることを支援し、次のG8サミットにおいて、このイニシアティブのフォローアップに関する報告書を期待する。