データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 腐敗との戦いと透明性の向上

[場所] シーアイランド、ジョージア州
[年月日] 2004年6月10日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 昨年エビアンにおいて我々は、腐敗との戦い及び透明性の向上のために共に行動し、また途上国のパートナー及び国際社会と共に行動することを決意した。我々は、腐敗が経済成長に及ぼす負担の解消を支援するために、更なる取組みを行う。以下は、エビアンでの約束のフォローアップ報告である。

途上国主導による透明性向上のための協約の開始

 G8政府は、透明性の向上及びそれにより公的資源を賢明に使用する各国の取組みを支援するため、数多くの途上国政府との間で自発的なパートナーシップの構築に向けて協力している。これらの取組みは、歳入及び歳出を含む公的予算、政府調達、公的コンセッションの付与、許可の付与における透明性に焦点を当てている。大きな採取産業部門を有する国との協力には特に重点を置く。これらのパートナーシップは自主的な協約を通じて実現されるが、その協約は、その国自身の戦略を支持するという双方の約束を示し、現行のイニシアティブ及びプログラムと全面的な補完性を有するものである。

・グルジア、ニカラグア、ナイジェリア及びペルーの各国政府は、これらの重要な目標を達成するために、そのような協約としては初めてのものを提示した。他の関心を有する国は積極的に協約を追求している。我々は、関連する各省に対し、これら諸国と協力して実施計画を策定することを指示する。

・パートナー国政府は、より大きな透明性と説明責任を公的資源の管理に導入するために、何を行う意向であるかを具体的な文言で定めた。

・協約に参加するG8諸国は、二国間技術援助及び政治的な支持により、パートナー国政府を支援する。参加国は、各協約の相手国と、これらの分野における測定可能な改善を達成するための共同の取組みを規定した行動計画を策定する。

・協約に参加するG8政府は、民間企業、機関、市民社会及び国際機関の支持及び関与を取り付けるために、パートナー国と協力する。

・石油、天然ガス、鉱物資源に富むパートナー国に対しては、協約は、事業運営に必要な秘密を保持しつつ、これらの部門における歳入の流れ及び支払いに、特に注意を払う。我々の共通の目標は、国家資源及び歳入が悪用された場合に、開発に与える悪影響との戦いを支援することである。透明性を向上させるための補足的な取組みは、採取産業透明性イニシアティブに参加する諸国によっても進められている。

国連腐敗防止条約の合意

 G8政府は、国連腐敗防止条約の妥結というエビアンでの目標を達成した。同条約は、公的な誠実性、透明性及び説明責任について高い国際的な基準を設定し、不正に取得された財産が国際的に移転した際の財産の回復を促進する。この重要な新しい国際協定が効果的に実施されることを確保するため、我々は、

・この条約の締約国となることに引き続きコミットし、この条約の早期署名並びに批准及び実施に必要な全ての措置を完了させることを要求し、積極的で効果的な実施を推進するため国連腐敗防止条約非公式フレンズ会合プロセスをウィーンで招集することを支持する。

・我々は、この条約の文言に基づいて効果的な措置をとること及び、第三国、特に途上国が、この条約の目的を達成できるように支援することを約束する。

・我々は、腐敗行為によって生じた収益の回復に関する法務大臣及び内務大臣の意見の一致を歓迎する。

・我々は、不正に取得された財産を探知し、回復し、返還するという閣僚達の決意を支持する。その手段としては、以下を含む。

 −G8迅速対応チームの設置。

 −G8財産回復事例における調整の促進。

 −G8財産回復ワークショップの開催。

・これらの目標を達成するため、我々は以下のことを確保する。

 −G8各国は、2005年夏までに法律を整備し、可能であれば、「重要な公的任務に就いている者」の口座につき、厳重な監視を求める。

 −G8各国が、電信振替の最初の振込人についての情報を要請する規則を、出来れば2004年12月31日までに制定する。

 −処分及び返還のモダリティーについて、G8の最善の慣行を作成する。

 −腐敗事件において財産を回復できるように効果的な手段を検討する。

腐敗の罪を犯した公務員への安全な避難先の拒絶

 我々は、自国の法令に基づき、適当な場合には入国を拒否することにより、腐敗の罪を犯した公務員に安全な避難先を与えないように努めるというエビアンにおける我々の約束を再確認する。我々は、専門家に対してこの目的達成のために取組みを精査し、向上させるように指示し、その進捗状況を次回サミットにおいて検討する。

公的財政管理と説明責任の強化

 我々は、国際開発金融機関(IFIs)における公的財政管理及び説明責任プログラムの強化が、真の進展をみたことを歓迎する。IMFは、2004年7月より、プログラム文書及び監視報告を公表することに同意した。

 米州開発銀行も情報公開政策の改善に同意した。我々は、IFIsによって設定された高い情報公開及び透明性基準を各国が満たすよう奨励し、

・世界銀行の国際開発協会(IDA)国別政策・制度評価の結果を、2005年格付けから全面開示することにつき合意を取り付ける。

・地域開発銀行の実施評価について、全面開示を求める。

・本年の世界銀行及びアジア開発銀行において、また他の地域銀行については将来において、国別援助戦略の義務的公表に対するG8の堅固な支援を維持する。

・透明性及び説明責任の水準を決定するために、各国の予算手続きを検討するIMF報告/審査をIMF加盟国が完成し公表することを奨励する。

・途上国が財政及び歳出における説明責任を向上させることへの支援と、途上国の公的財政及び説明責任システムの評価と改革に統一されたアプローチを継続するため、世界銀行における公的支出及び財政に関する説明責任(PEFA)プログラムの取組みを支持する。調達は、合理化によって包含されたり、疎外されることがないよう、強力で、並行した筋道に沿って行われるべきである。

・地域的及び国際的な条約における約束を実施するために、腐敗対策行動計画の準備を途上国に呼びかける。

OECD外国公務員贈賄防止条約における審査促進及び企業による遵守プログラムの奨励

 我々は、外国公務員贈賄防止条約のOECDによる審査を強化するというエビアンでのG8諸国の誓約を達成する上で、大きな進展をみた。2004年2月、OECD理事会は、贈賄作業部会(WGB)に資金供給を行うメカニズムを含む、改革パッケージを承認した。同パッケージは、締約国の実施実績を審査する重要なピア・レビューの全行程を終了させるため、2007年までの安定した資金を達成する。

・我々は、最新の2004−2007年の審査実施日程を厳格に遵守し、審査国又は被審査国としての参加の誓約を尊重し、ピア・レビューに参加すべき検事及びその他の法執行関係者を派遣する。

・我々は、外国公務員贈賄防止関連法令の遵守を促進するために企業による遵守プログラムを策定し実施する民間部門の努力を奨励し、このような遵守を促進するために、いくつかの業界がその特定の活動に関連して特定の原則を策定するという積極的な措置を既にとったことを歓迎する。

金融犯罪、資金洗浄、テロ資金供与の闘いのための枠組みの強化

 全てのG8諸国は、金融活動作業部会(FATF)が2003年6月に採択した、改訂された40の勧告の実施を約束する。

 我々は国連国際組織犯罪防止(TOC)条約の実施を推進している。我々は、TOC条約の批准の迅速な検討を促すための外交戦略を策定し、同条約の実施を推進するための技術援助の提供を行うべく、国連薬物犯罪事務局への拠出国を含む他の関係者と調整を行う。

 我々は、各国・地域の資金洗浄対策及びテロ資金対策の(AML/CFT)基準の遵守状況を評価するために、IMF/世界銀行、FATF及び他の国際機関によって行われている広範な国際的な取組みを強く支持する。我々は、全ての国・地域が、それぞれの制度の弱点に取り組むため迅速に行動することを促す。我々は、国際的な取組みの一環として、各国・地域がそのAML/CFT制度において短所と認識された問題への取組みを支援すべく技術援助が実施されることを期待する。

透明性に焦点を当てた貿易協定の再確認

 我々は、「地域的な及び二国間の貿易協定に、政府調達及びコンセッションの付与における透明性を要求する規定並びに貿易円滑化に関する規定を含めるよう、作業を進める」というエビアンでの誓約を再確認する。

オフショア金融センター問題の検討の継続

 我々は、特に非協力的なオフショア・センターに関して、金融市場の透明性及び監督の基準を更に高めることへの約束を再確認する。我々は、財務大臣に対し、この作業を進めることを求める。この点に関し、我々は、オフショア金融センターの国際基準の遵守状況についてIMFによる定期的なモニタリング及び評価を歓迎する。我々は、オフショア及びオンショア双方の全ての金融センターが、高い透明性基準を採用し、全ての税に関する情報を交換することについても促す。