データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本政府の対アフリカ開発支援‐G8サミットに向けた小泉総理大臣からアフリカへのメッセージ‐(第31回グレンイーグルズ主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] グレンイーグルズ
[年月日] 2005年7月6日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

平成17年7月6日現在

日本は、今後も引き続きTICADでの経験を最大限に活用してアフリカ開発に関する議論を主導していきます。{この文囲み線あり}

●日本政府は、冷戦終焉に伴い国際社会のアフリカへの関心低下が心配される中で、1993年にアフリカ開発会議(TICAD)を開催して以降、アフリカの自助努力(オーナーシップ)と国際社会のパートナーシップの重要性を提唱し、アフリカ開発に関する国際的な議論を主導してきています。2008年にはTICADIVを開催します。

今後5年間のODA事業量を100億ドル積み増すことを目指します。アフリカ向けODAを今後3年間で倍増します。アフリカ諸国に対し全債権国中最大級の債務削減を実施します。{この文囲み線あり}

●我が国にふさわしい十分なODAの水準を確保するため、ODA事業量の戦略的拡充を図ることとし、今後5年間のODA事業量について、2004年実績をベースとする額と比較して100億ドルの積み増しを目指します。

●日本政府は、1993年以来、100億ドルを超える二国間ODAによる対アフリカ支援を実施してきました。我が国は、今後3年間でアフリカ向けODAを倍増します。

●日本政府は、アフリカの重債務貧困国(HIPC)に対し、全債権国中最大級の総額約49億ドルの債務救済を約束しています。更に、G8間では、HIPCの国際金融機関に対する債務の100%削減が合意され、他の債権国に働きかけていくことで一致しました。

アフリカの人々の健康を守るための支援を拡充します。今後5年間で総額50億ドルを目処とする「保健と開発」に関するイニシアティブを実施します(アフリカは主要な裨益者)。世界エイズ・結核・マラリア対策基金への拠出を増額し、当面5億ドルの拠出を行います。{この文囲み線あり}

●特にサブサハラ・アフリカで改善が大幅に遅れている保健分野のミレニアム開発目標の達成に寄与するため、「保健と開発に関するイニシアティブ」に基づき、乳幼児医療の充実や、感染症対策等のため、5年間で50億ドル(※アフリカは主要な裨益者)を目処とする包括的な協力を行います。

●世界エイズ・結核・マラリア対策基金への拠出を増額し、当面5億ドルの拠出を行います。

●多くの子供が犠牲となっているマラリア対策として、2007年までに殺虫剤が浸漬した蚊帳1000万帳をアフリカ諸国で配布します。

(支援例)

●麻疹、ポリオ予防接種、エイズの自発的検査・カウンセリング普及の支援。

●予防・啓発活動、母子手帳及び妊産婦検診の普及の支援。

●安全な飲料水の供給、学校での衛生的な水場、トイレの設置。

●新興感染症の流行早期発見のための世界的な疾病監視システムの構築。{(支援例)より以下ここまで囲み線あり}

アフリカでの「平和の定着」に向け、人間の安全保障を重視しつつ、支援を拡充します。{この文囲み線あり}

●アフリカの多くの紛争が終結しつつある機会を捉え、紛争直後から復興開発まで切れ目ない支援を行うため、人間の安全保障を重視しつつ、難民・国内避難民支援、DDR(元兵士の武装解除、動員解除、社会復帰)、地雷対策・小型武器回収、民主的体制への移行(選挙支援)等の分野で支援を拡充します。

(支援例)

●アフリカで現在活動中の8つの国連平和維持活動(PKO)の活動資金全体の20%は我が国の貢献。2004年度は約5.5億ドルを拠出。

●本年3月に西部アフリカ地域、大湖地域及びスーダン、ソマリア等の14カ国を対象とした総額約6000万ドルの「平和の定着」支援を実施。

●本年1月のスーダン南北包括的和平合意成立を受け、本年4月、当面1億ドルの支援を南北双方に実施する方針を発表し、既に1000万ドルを実施済み。

●「新地雷政策」(2004年12月発表)に基づき、スーダン、アンゴラ、コンゴ(民)等の地雷重被害国における地雷対策強化。{(支援例)より以下ここまで囲み線あり}

アフリカでの「緑の革命」の実現と農村の暮らしの向上を支援します。{この文囲み線あり}

●人口の約7割が農村で生活するアフリカにおいて、農業の発展と農村生活の向上は、社会・経済の安定に不可欠です。

●アフリカの農業生産性を高める「緑の革命」を実現するため、ネリカ稲の開発・普及の推進を含め、農業政策策定、農業試験研究、農業普及体制の強化等への支援を行います。

●都市・農村間のリンケージの強化を図るべく、地方道・アクセス道路、農産物市場施設整備や地場産業振興を行います。

●人間の安全保障の観点から、農村の生計向上と自立を包括的に支援するため、基盤整備や能力強化等を組み合わせ、地域社会の開発を支援する「アフリカン・ビレッジ・イニシアティブ(AVI)」を推進します。

●農耕環境の異なるアフリカの各困窮地域から10村を選定し、農業生産性向上に資する研究、革新技術の導入及び右を軸としたコミュニティの能力開発を目指して、サックス教授率いる国連ミレニアム・プロジェクトが実施するアフリカン・ミレニアム・ビレッジ(AMV)を支援。

(支援例)

●農業政策策定、ネリカ稲の開発・普及研究等に対する支援(専門家派遣等)。

●国際農業研究グループ(CGIAR)への拠出による農業試験研究への支援。

●農業普及体制の強化のため、農業普及員を対象とした研修の実施。

●小規模灌漑(水田開発)支援(WFP等との連携)、肥料・農機具の供与。

●農村基盤整備(農道、市場の整備)。{(支援例)より以下ここまで囲み線あり}

アフリカ諸国の貿易・投資の促進のため、包括的な支援を実施します。{この文囲み線あり}

●アジアの経験に照らしても、経済発展の鍵は貿易・投資の促進を通じた民間部門の育成にあると考えています。我が国は、昨年11月のTICADアジア・アフリカ貿易投資会議において、産業基盤整備のための「適切な政策」、競争力を高めるための品質向上に着目した「商品開発」、地域社会における収入増大・雇用創出につながる「地場中小企業の振興」、衡平な成長を促すための「民間企業の社会貢献の促進」、という4つのコンセプトを提示しました。

●アフリカ開発銀行グループと共同で、中小零細企業育成や投資基盤整備等のため、5年間で最大12億ドルに及ぶ、アフリカの民間セクター開発のためのイニシアティブ(EPSA for Africa)を実施します。

●貿易保険の活用や、企業関係者の交流促進、商品開発・対日輸入支援等を通じて、日・アフリカ間の貿易投資を促進します。

●アフリカ諸国が大半の後発開発途上国(LDC)産品の市場アクセスの拡大に努めます。

(支援例)

●国際協力銀行(JBIC)による「海外直接投資環境改善に関する政策提言書(ブルーブック)」の作成、実施支援(ケニア、タンザニア、ウガンダ)

●日本貿易保険(NEXI)による日本企業の対アフリカ貿易・投資に係る保険引受の拡充(対象国の拡大、アフリカ諸国の貿易保険機関との連携・協力)

●多国間投資保証機関(MIGA)に100万ドルを拠出し、民間企業の環境・社会問題への対応能力強化の支援を目的とした資金供与の枠組を創設。

●2006年に第4回アフリカ・アジア・ビジネスフォーラムを開催(過去3回で合計約190件、1.4億ドル相当の覚書締結実績)。

●「TICADエクスチェンジ・ネットワーク」を拡充し、インターネット上でビジネス関連情報を提供。

●国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構(JETRO)、海外技術者研修協会(AOTS)等による研修事業、セミナー開催、専門家派遣等を通じた、中小企業・起業家育成、商品開発、販路開拓(アフリカ版一村一品運動等)、市場アクセス拡大支援。{(支援例)より以下ここまで囲み線あり}

アジアの経験をアフリカ開発に活かすため、アジア・アフリカ協力を強化します。{この文囲み線あり}

●戦後復興と発展に成功したアジアの経験は、現在我々がアフリカ開発に取り組む上で、貴重な財産であり、アジアとアフリカの連携を更に育みます。今後4年間で1万人を目標として、アフリカの人々の人材育成を実施します。

(支援例)

●アジアの若者をアフリカに派遣し、青年交流と人造りを推進する「アジア青年海外協力隊」の創設。

●アフリカ諸国の研修員を東南アジアをはじめアジアに招き、各種技術協力を支援。

●日本およびアジアの生産性運動の意義・経験・成果及び優良事例や経営管理技術をアフリカへ伝播するための、シンポジウム、セミナー開催を支援。{(支援例)より以下ここまで囲み線あり}