データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アフリカ(第31回グレンイーグルズ主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] グレンイーグルズ
[年月日] 2005年7月8日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

歴史的機会

1.今はアフリカにとって好機である。アフリカの指導者は、この大陸の課題への対処とその機会を現実のものにする上で彼らが果たす主導的役割を認める、この大陸にとっての新たなビジョンを受け入れた。

2.全ての開発途上国が、2000年のミレニアム・サミットで合意した目標を達成するために必要な行動をとる期間は、今日では、10年を残すのみとなっている。我々は、2015年までにミレニアム宣言の目標のいずれをも達成できない見込みの唯一の大陸であるアフリカに、引き続きG8としての焦点を当てるべきである。

3.重要な進展がみられた。過去5年間で、サブサハラ・アフリカの3分の2以上の国が民主的な選挙を実施した。インフレは、10年前の5分の1の水準である。過去10年間の16のアフリカ諸国の成長率は平均4%以上であり、どの主要先進国よりも高い。これまでに24のアフリカ諸国が、自分たちの進展を相互に評価検討することに合意した。そして、良い統治の促進、平和と安全保障、及び経済発展は、アフリカ連合(AU)及びそのプログラムである「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(NEPAD)の核心にある。

4.G8は、1990年代後期以降の全てのサミットにおいて、アフリカにとって重要な事項に焦点を当ててきた(別添I参照)。

進展に基づいて:アフリカへの新たなコミットメント

5.アフリカの更なる進展は、何よりもその指導者と人々にかかっている。我々は、自らの大陸の開発に責任を持ち、また、自らの国における良い統治を促進し汚職対策のための行動をとることに対する彼らのコミットメントを歓迎する。我々は、彼らがアフリカにおける諸改革が弾みを増すことを確保することを支援したい。本日、我々は、アフリカ諸国と人々がこのような努力を行うことを支援するための我々自身のコミットメントを新たにする。

6.我々は、したがって、我々皆が待望する成功した将来をアフリカが築くことを支援することを目的とした、そのうちの多くが他の貧困国にも適応可能な、更なる一連の措置に合意した。これらの行動は、協調的かつ整合的に実施される必要がある。より良い統治及び安定と平和は、民間部門が成長し、雇用を創出するために不可欠である。民間部門の成長は、保健及び教育分野へ投資するための収益の増加をもたらす。そして、健康で優れた技術を有する人々の増加は統治のための能力の向上につながる。これらの相互に補強しあう行動により、アフリカの自立的成長が加速化され、長期的に援助への依存を終わらせるであろう。

7.本日の我々のコミットメントは、AUとNEPADの戦略及びプログラムに規定されたアフリカ自身の努力とG8の過去及び現在のコミットメントに基づくものである。カナナスキスで合意されたアフリカ行動計画の進捗は、アフリカ問題首脳個人代表によりレビューされてきた。我々は、また、アフリカ委員会の最近の報告書の結論に留意した。他の国々は、アジアを含む成功した経済成長の経験を共有する意思を有しており、また、我々は、南南協力が重要な貢献をなしうることを認識する。幾つかの分野において我々は、既に上手く機能している取組への我々の支援を強化することを目指している。他の分野においては、強化された努力が必要である。

平和と安定

8.平和は、開発の成功にとって第一の条件である。我々は、平和で安定したアフリカを築くためのアフリカの努力を支援する。我々は、アフリカの脆弱な国々が危機と紛争から成功裏に抜け出すことを助ける。我々は、国連憲章の精神に則って、紛争を予防、調停、解決し、平和を定着させるためのアフリカのイニシアティブを支援する。そして、我々は、この大陸における永続的な平和と安定を促進するための能力を引き続き高める必要のあるアフリカ連合及びその他のアフリカ諸機関を支持する。この点で、我々は、引き続きアフリカに集中しつつも、世界中で実施される平和支援活動に参加するために2010年までに約75,000人の兵士を訓練し、適切な場合には装備を施すとのシーアイランドでのコミットメントを進めている。我々がスーダン南部での国連スーダン・ミッション(UNMIS)の活動に貢献しているように、我々は、スーダン(ダルフール)におけるアフリカ連合のミッションを賞賛し、引き続き支援する。

9.我々は、国内法とも合致した形で、紛争解決及び平和維持のためのアフリカの能力開発のための支援を、以下により強化する。

(a)アフリカ待機軍への協調的な技術支援の供与、アフリカ連合本部及びその地域旅団における作戦立案部門の設置のための支援。

(b)AUが、安定化及び平和支援活動の一環として、非武装の軍事監視団、文民警察活動、及びイタリアの軍警察やフランスの憲兵に類似した部隊を展開する能力への支援。

(c)輸送、兵站及び財政管理上の能力を含め、アフリカの平和支援活動のため、柔軟な資金供与を含む、支援を供与

(d)アルジェのAUテロ対策センターとの協力を通じたものを含め、アフリカにおけるテロへの対策。

(e)平和と安定を促進するためのアフリカの能力を強化するための地域・国際機関の努力への支援。

10.我々はまた、アフリカが、紛争を予防し過去の紛争の再発を防止することを確保するために、以下の方法により、支援する。 

(a)紛争が武力化する前に紛争に対処し調停するため、計画済の大陸早期警戒システムの整備及びアフリカ連合賢人パネルの実施のために資金を供与することを含め、AU及び準地域機関と連携して取り組む。

(b)エビアン及びカナナスキス・サミットからのコミットメントと共に、既存の「世界的な平和支援活動能力の拡大に関するG8行動計画」に基づき、AU及びアフリカの準地域機関の能力向上を図る。これを支援するため、我々は、我々各国政府内における、より効果的で柔軟な危機対応のメカニズムを促進し、また、我々自身及び国連、主要な地域機関、その他のパートナーが関与する、より迅速、包括的かつ調整のとれたパートナー間での対応を促進するよう取り組む。

(c)国連グローバル・コンパクトとの協同や、脆弱な統治の地域で活動する企業のためのOECD指針の策定等を通じた、地元企業及び多国籍企業による平和と安定のための貢献の最大化。

(d)既存の監視メカニズムの連携の向上及び独立の知見のより効率的な利用による、国連の制裁制度のより効果的な実施のための取組。

(e)石油、ダイアモンド、木材その他の希少自然資源等の「紛争資源」が紛争を勃発させ、激化させる原因となることを防ぐための、国連及びその他のフォーラムにおける効果的な行動。

(f)特に2006年の小型武器に関する国連行動計画レビュー会合等において、小型武器の移転管理の実効性の向上、また、アフリカにおける違法小型武器の回収・破棄のための効果的な行動の実施。政府の責任についての共通理解を含む武器移転に係る国際的な基準の策定は、通常兵器の望ましからざる拡散への対処に向けての重要な一歩となる。我々は、通常兵器の望ましからざる拡散に対処するための行動に関し、コンセンサスを構築するために更に作業する必要性に合意した。

(g)国連事務総長提案による新たな平和構築委員会を支持するための取組。

11.我々は、以下の方法により、紛争後の国々における復興と和解により大きな関心と資金を与える。

(a)適切な場合には、紛争後の国々へ迅速で柔軟な多国間及び二国間の債務救済を実施。

(b)元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)を含む復興上の要請のために無償資金を配分。

12.我々は他のパートナーとともに、以下の方法により、人道支援の適時性、予測可能性、効果及び利用可能性を向上させるよう緊急に取り組む。

(a)協調的な緊急資金援助が危機下にある生命を救うのに間に合うよう利用可能となるために、国連により特定されたアフリカにおける人道上の緊急事態、特にいわゆる「忘れられた危機」の下にある何百万人ものアフリカ人の緊急の要請を十分に満たすことに貢献。

(b)人道上の緊急事態のために供与された資金等の追跡、報告及び連携を強化するための国連と共同での取組。

(c)国際的な人道問題対処体制を強化するための国連事務総長の取組への支持。G8諸国は、人道支援の人道、公平性、中立性、独立性の原則を尊重しつつ、実地の人道支援活動の対応の迅速さ、効率性、責任、説明責任及び透明性を向上させるための事務総長の取組を支援。

(d)人道支援要員の安全で妨害のない形での住民へのアクセスの確保及び人道上の危機への支援、対処、解決へのアフリカ諸国政府の関与の強化を促進するためのアフリカ連合との共同での取組。

良い統治・反応の良い統治の促進

13.我々は、民主主義及び人権を支援するNEPADの力強い宣言を含む、効果的な統治を促進、向上させるためのアフリカ諸機関の関与を歓迎する。良く統治された国家は、平和と安全保障、経済成長と繁栄、人権尊重と男女平等促進の確保、及びアフリカ市民に対する必要不可欠なサービスの提供にとって極めて重要である。我々は、より透明で能力が高く国民の意志に応える政府の実現、地域レベル及び大陸全体での統治の向上、また、そのために不可欠なアフリカ諸機関の強化するためのアフリカ諸国の努力を支援する。

14.アフリカのコミットメントに対応し、我々は以下を行う。

(a)以下の方法等によるAU及びNEPADの強化の支援。

●アフリカ連合及び全アフリカ議会等の汎アフリカの諸機関に対する、柔軟な資金供与を含めた支援の実施。

●アフリカの主体性を尊重しつつ、アフリカン・ピア・レビュー・メカニズム(APRM)事務局信託基金に対する拠出等を通じて、APRMを支援

●APRMの諸提言の実施のための国別行動計画を含む、良い統治のための国別戦略の実施に際し、アフリカ諸国を適切かつ協調的に支援。

(b)信頼できる汚職対策をとり、また、透明性と説明責任の向上に取り組んでいるアフリカ諸国における能力構築への支援強化等を通じて、収入、予算・歳出、許認可、調達・権益譲渡を含む公的な財政管理における透明性の向上を支援。

(c)アフリカ諸国がアフリカ連合腐敗防止対策条約に署名、批准することを支持し、また、同条約の実施に向けた支援を提供する。

(d)我々の腐敗対策及び透明性向上のための取組の一貫として、資金的及び技術的施策等を通じて、採取産業に関する透明性イニシアティブ(EITI)及びEITIを実施する国々への支援を拡大。我々は、アフリカの資源が豊富な国々に対し、EITI又は類似の透明性に関する原則を実施すること、また、世界銀行、IMF及び地域開発銀行に対し、これらの取組を支援することを要請する。我々はEITIの実施を検証するための適切な基準の作成を支持する。G8がパイロット・プロジェクトで実施しているように、透明性はその他の分野に拡大されるべきである。

(e)少数民族、女性及び子供の権利の尊重を奨励するため、アフリカ諸国に対し、人及び人民の権利に関するアフリカ憲章及びその議定書の実施を要請。

(f)国連腐敗防止条約の早期批准のため精力的に取り組み、その効果的な実施を確保するためのメカニズムについての議論を開始。国連腐敗防止条約の規定及びこれまでのG8のコミットメントと整合性を保ちながら、適切な場合には、押収された物品の最終処分を考慮に入れつつ、汚職を通じて奪われたものを含む資産の回復についての我々自身の行政機関内の効果的なメカニズムの構築、及び正当な所有者への資産の返還に取り組む。我々は、全ての国々が、適切な場合には、汚職で有罪が確定した公務員及び個人、これらの者を買収した者並びにそれらの者の資産の入国等を拒否し、安全な逃避先を与えないためのルールを施行するよう奨励する。

(g)違法な汚職行為による収益から国際金融システムを更に保護するために、我々は、全ての国々が、政治的に公表された人々が関与する金融取引に対してより厳重な管理を義務づけるよう奨励する。加えて、我々は、全ての国々に対し、指定を受けた人々の資産を特定及び凍結するための国連安全保障理事会決議1532を履行することを強く要請する。

(h)汚職に関与した者の訴追を含め外国公務員への贈賄に対する法を厳格に執行すること、OECD条約に沿った形での輸出信用及び信用保証の申請者に対する賄賂禁止要件を強化し、また、ピア・レビューを引き続き支援すること、企業が賄賂禁止遵守プログラムを採用し、贈賄要求を報告することを奨励すること、そして、贈賄及び贈賄要求に関与した者の訴追を確実に行うためのアフリカ諸国政府との協力にコミットすることにより、民間部門による贈賄を削減する。

(i)全ての金融センターが透明性及び情報交換に関する最高の国際基準を保持、実施することを強く要請することにより、金融市場を贈賄及び汚職を含む犯罪行為に該当する濫用から保護するための具体的な措置をとる。我々は引き続き、国際基準の実施に関する進捗の促進及び評価検討のために金融安定化フォーラムで進められている作業、特に2005年3月に合意されたオフショア金融センターに関する新たなプロセス、及び、全ての税事項に関する透明性及び情報交換に有利なOECDの高い基準を支持する。

人々への投資

15.平均寿命は、過去20年間低下し続けているアフリカを除く全ての大陸で向上している。我々は、保健、教育、食糧安全保障を改善するためのアフリカの戦略を引き続き支援する。

16.アフリカの巨大な人的潜在力を発揮させるために、我々は、教員及び保健医療労働者を含む最も有能な市民が、この大陸に長期的な将来を見いだすことができるような環境を創出するためにアフリカと共に作業する。我々は、そのような環境を創出するのを支援するためにコミットを行った国々の政府と共に取り組む。

17.教育と保健に関する中核的な目標は国連ミレニアム宣言に述べられている。我々は、2015年までに全ての子供が、良質で無償の初等義務教育にアクセスし、これを終了できること、及び、特に女性と子供等、予防可能な原因により死亡するリスクが最も高い者の死亡率を減少させ、さらに、HIV/エイズ、マラリア及びその他の死に至る疾病の拡大を阻止、逆転させ、また、人々が安全な水と衛生にアクセスできるように、(提供することを選択した国においてはどの国でも無償の)基礎保健医療にアクセスできることを確保するとのアフリカのパートナーのコミットメントを支援する。

18.我々は、以下の方策により、これらの目的を達成するために取り組む。

(a)アフリカ諸国政府のオーナーシップを尊重しながら、教育の改善、教員の増加、学校の新設への投資を増やすようアフリカ諸国政府と共に取り組む。これは、エイズにより死亡する教員の数によって、より重要な問題となっている。この努力の一環として、我々は、アフリカにおいて「万人のための教育」の課題を支援し、これには、ファスト・トラック・イニシアティブ(FTI)に対する継続的支援、及び、FTIに認められた国々が持続可能な能力を発達させ、また、自らの持続可能な教育戦略を追求するのに必要な資金を特定することを助けるための努力が含まれる。我々の目標は、全てのFTI選出国が自らの持続可能な教育戦略を追求するために、能力を発達させ、また、必要な資金を得ることである。

(b)アフリカと他国の高等教育機関間、及び科学技術の拠点研究機関間の優良ネットワークを支援することを通じて、アフリカの民間及び公共部門のための熟練した専門家の養成を支援。この点について、我々は、11月にチュニスで開催される「情報社会に関する世界サミット」第2期会合の結果を心待ちにしている。

(c)アフリカによる医師、看護師及び地域の保健医療労働者の訓練、国外流出防止を支援することにより、アフリカ諸国政府とのパートナーシップの下で、保健医療システムの改善のために投資する。我々は、保健医療全体の長期的改善にとって不可欠であるため、我々の行動により、国及び地方レベル双方の全ての分野における保健医療制度を確実に強化し、また、ドナーが、保健医療分野における能力の構築を支援することを奨励する。

(d)アフリカにおけるエイズのない世代の実現に向け、HIV感染を大幅に減少させ、また、2010年までに必要とする者全てに治療への可能な限り普遍的なアクセスを与えることに向けて、HIV予防・治療・介護のための措置パッケージを開発、実施するために世界保健機関(WHO)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)その他の国際機関と共に取り組む。限定的な保健医療体制の能力は、これを達成するための大きな障害であり、我々はこれに対処するため、信頼に足るかつ説明責任を果たしうる供給チェーンの管理及び報告体制の構築への支援等により、我々のアフリカのパートナーと共に取り組む。我々は、エイズその他の流行病により孤児となった又は脆弱な立場に置かれた全ての子供が適切な支援を与えられることを確保するため、それらパートナーと共に取り組む。我々はまた、世界エイズ・結核・マラリア対策基金への本年の増資、及び全ての国においてスリー・ワンズ原則を実施するために地方の関係者と共に積極的に取り組むこと等を通じてHIVエイズへの資金的要請を満たすよう取り組む。

(e)有益なG8の世界HIVワクチン事業に基づきつつ、直接投資を増やし、また、エイズ、マラリア、結核、その他忘れられた疾病に対するワクチン、殺菌剤及び医薬品の開発を奨励するため、基礎的な研究を補完するものとして、官民パートナーシップ及び事前買取制度等のメカニズムを通じて、市場のインセンティブに関する取組を前進させる。我々は、アフリカ大陸に被害を及ぼしている疾病に対するワクチンの研究を支援するため、国際遺伝子工学・バイオテクノロジー・センターのアフリカへの設立を模索する取組を継続することに留意する。

(f)8億2,900万ドルの目標に向けた我々自身の拠出を継続あるいは増加、及び他の国々の支援の動員により、2006年から2008年のポリオ撲滅後の期間のためのポリオ撲滅イニシアティブを支援する。我々は、2005年の資金ギャップが埋められようとしていることを喜んでいる。

(g)2015年までに年60万人の子供の命を救い、また、予防及び治療可能であるこの疾病がアフリカ経済へ与える負担を軽減させるための重要な措置が、脆弱な人々の85%に届くようにするために、アフリカ諸国と共にマラリア対策の強化に取り組む。我々は、マラリア対策用蚊帳へのアクセス、アルテミシニンを含む併用療法の十分かつ持続可能な供給、妊婦や乳児について感染が疑われる際に自己が行う治療、屋内残留散布、及びこれらの効果的使用のためのアフリカの保健サービスの能力の確保を支援するために必要な年間15億ドルを追加的に拠出することにより、サブサハラ・アフリカにおける子供の主要な致死病であるマラリアの負担を軽減できる。

(h)「ストップTBパートナーシップ」により特定された要請を満たすことに貢献する。我々は、また、2006年に結核のためのハイレベルの保健大臣会合を開催するとの呼びかけを支持する。

(i)水分野の援助の増大、水問題に関する政治的機運とコミットメントの維持、及び調整・監視メカニズムの強化等を通じて、農村の水と衛生に関するアフリカ開発銀行のイニシアティブとの連携の下、エビアンで合意された「水に関するG8行動計画」を実施する。

(j)食糧安全保障と飢餓防止に関する包括的な計画の策定に政治的にコミットする意向のある国々を支援するとの我々のシーアイランドでのコミットメントを再確認する。

成長の促進

19.民間企業は、成長と開発の最重要の原動力である。統治及び法の支配の向上は、参加型の成長の基礎的な条件である、より多くの幅広い外国直接投資を含む民間投資を引きつける。アフリカ諸国は、より強固な投資環境を整備する必要がある。我々は、このようなアフリカの努力を、アフリカ商法調整機関におけるビジネスの法制度統一作業及びOECDとNEPADの投資イニシアティブを通じた投資環境の改善に留意しつつ、安定的で効率的で調和のとれた法的ビジネス枠組や、アフリカにおける零細金融の発展に向けた強力な支援を含む資金へのアクセスの拡大の促進等を通じて、支援する。公的及び民間部門間のパートナーシップは、極めて重要である。

20.大部分のアフリカ人にとって最も重要な経済分野である農業の持続性にとっては、投資が必要である。アフリカ諸国政府は、政府予算の10%を農業に投資することにコミットしている。我々は、このコミットメントへの支援を強化する。

21.ドーハ・ラウンドにおいて野心的でバランスのとれた結論を得ることが、アフリカにとって貿易を役立たせ、また、アフリカ諸国の世界経済への統合を進展させるために最良の方法である。12月の香港閣僚会議は、2006年のドーハ開発アジェンダ(DDA)の成功裏の妥結に向けた極めて重要な一歩となる。DDAに関する我々の別途の声明が、その潜在的な利益についてより詳細に述べている。世界銀行の推計によれば、交渉の妥結により、1.4億人の人々を貧困から脱却させ得る。

22.我々は、以下に合意した。

(a)貿易円滑化措置を含む、貿易のための物的、人的及び制度的能力の構築のため開発途上国への支援を増加させる。我々は、後発開発途上国、とりわけアフリカの後発途上国が、ドーハ開発ラウンドの前向きな妥結により得られる新たな貿易の機会を活用できるよう、貿易能力構築のための追加的な支援を供与することにコミットしている。我々は、国際金融機関に対し、貿易のための各国の能力開発や経済調整を容易にするための追加的支援についての提案を年次総会へ提出することを要請する。

(b)食品の輸出及びその他の物品に関する現行の基準及び新たな健康と安全に係る基準を、アフリカの生産者が満たすことができるよう支援するための資金及び訓練を供与。アフリカから我々の市場への輸出を円滑化するため、我々は、自国の基準設定及び規制機関がアフリカの貿易主体及び政府当局と協力することを奨励し、また、アフリカ諸国が関連の国際基準設定機関において十分に役割を果たすことを支援。

(c)南南貿易及び地域統合の拡大、特化の進展及び雇用と繁栄の創出のためのアフリカの努力を支援。

(d)我々の特恵制度に関し、規則(特に原産地規則)を透明かつ遵守上で簡素なものとし、それらの制度の恩恵を受けることが可能な開発途上国が活用することを意図せず排除するものにならないことを確保することにより、制度の活用度を向上させる。我々は、貿易特恵制度の浸食に関する懸念に対処するための世界銀行その他によりとられている努力を支持する。我々は、更に、将来の議長国に進捗を報告することに合意する。

23.インフラ及び供給側の弱みが、しばしば、最貧国が貿易機会を活用することを妨げており、それに対処する必要がある。成長を促進し、新たな投資を引き寄せ、また、アフリカの貿易能力の構築に資するため、我々は以下を行う。 

(a)アフリカにおける国境を越えたインフラを含むインフラへの投資促進を目的とし、AU、NEPAD、世界銀行及びNEPADによりインフラの主導機関として認められたアフリカ開発銀行が参加する、国際的インフラ・コンソーシアムを構築するための我々の作業を継続する。これは、アフリカの優先事項を支持し、また、各ドナーと民間部門の比較優位を認識しつつ、プロジェクト開発、資金調達、ビジネス環境上の制約を特定、克服するために、より効果的かつ大規模なインフラ活動の実現につながるはずである。

(b)例えば、中小企業及び零細金融への投資を目的としたAU/NEPAD投資環境ファシリティ、アフリカ開発銀行との連携によるアフリカの民間部門開発のための共同イニシアティブその他の適切な制度への支援を通じて、また、貧困層が利用可能な金融サービスの多様化や送金の効果的な利用に向けた支援によることを含む、商業銀行と零細金融供与機関との連携強化を通じた金融サービスへのアクセス向上を目的とする関連の国際金融機関及びアフリカ諸国政府の措置を通じて、投資、企業発展及び技術革新を支援。

(c)各国のイニシアティブに基づき、また、AU/NEPAD包括的アフリカ農業プログラム(CAADP)及びその他のアフリカのイニシアティブとの協力の下で、農業生産性を向上させ、都市と農村の繋がりを強化し、また、貧困層の能力強化を図るための一連の包括的な行動を支援する。

(d)国連グローバル・コンパクトへの支援を含め、アフリカの民間部門のネットワークを通じ責任ある投資についての最善の慣行を奨励する。

(e)フェア・トレード商品の市場の拡大、及び、それらが人々の生計を助け、また、開発における投資の前向きな役割についての一般市民の意識を向上させる上での積極的な効果を歓迎。

(f)市場の需要に応じた職業教育及び訓練を含め、アフリカにおける男女双方の若者の雇用を支援する。

開発のための資金

24.開発の成功のためには、平和と安全の強化、より良い統治、改善された保健医療及び教育、拡充された成長、市場アクセス及び貿易のための能力といった、我々が特定してきた一連の分野全般についての持続的かつ一貫した進展が必要である。実施のためには、アフリカ及び他の開発途上国にとって追加的な資金へのアクセスが必要である。資金の一部は、途上国の国内資金、外国直接投資及び他の民間資金の流入、並びに貿易の増加により提供されうるし、またそうされるべきである。このような資金は、途上国経済が成長するにつれて増加するだろう。このための第一義的な責任は途上国側にある。追加的な資金は、先進国に住む民間人からの送金や寄付によっても提供される。我々は、津波、スーダン及びその他の緊急事態における支援要請への我々の市民の惜しみない対応を歓迎する。この資金の一部は、環境上の諸イニシアティブから提供されうる。平和と安全保障のための支援も開発のための基礎の構築に関連するものである。我々は、OECD開発援助委員会が開発途上国に対する様々な資金流入が考慮されるための方法に関する作業を追求することを要請する。

25.我々が2002年にモンテレーで合意したように、2015年までにミレニアム宣言(ミレニアム目標)に包含されるものを含む国際的に合意された開発の目標と目的を達成するためには、他の資金に加えて、政府開発援助の大幅な増加が必要である。このコミットメントを実現することは、アフリカにおける最近の進展を定着、発展させ、その他の資金を増加させるような成長を刺激し、そして、アフリカその他の貧困国がやがて援助への依存を減少させることを可能とするために、必要とされている。

26.G8諸国及びその他のドナーは、伝統的な開発援助、債務救済、革新的な資金調達メカニズムを含む様々な方法を通じて援助を増やすとの重要なコミットメントを行った。我々のコミットメントは、別添IIに掲載されている。

27.G8及びその他のドナーのコミットメントは、2010年までに、アフリカ向け政府開発援助を年間の総額で250億ドル増加させることに繋がり、この結果、アフリカ向けの援助額は2004年と比較して2倍以上に増加する。

28.我々は、我々がアフリカにおける開発上の挑戦に直面しているのと同時に、世界全体が世界的な開発上の挑戦に直面していることを認識する。ドナーのコミットメント及びそのほかの関連の要素に基づくOECDの推計によると、G8及びその他のドナーからすべての開発途上国への政府開発援助は、2004年と比較して、2010年までに、年間の総額で約500億ドル増加することが見込まれる。

29.G8は、6月11日の声明で述べられているとおり、適格な重債務貧困国がIMF、IDA及びアフリカ開発基金に対して抱える債務残高を100%削減し、また国際金融機関の貸付能力が減少しないことを確保するために追加的な資金を供与するとの提案に合意した。我々は、ナイジェリアが自らの債務問題から持続的に脱却することを達成するとのパリクラブの原則的な合意を歓迎する。

30.これらの大規模な追加的な資金は、ミレニアム目標の達成に向けた進展を加速化するために、また我々が本声明に規定された目的を達成することに資するために、資金が違いを生むような国々へ集中される。援助は、人道上の危機及び紛争に影響を受けた、あるいはその危険に瀕している国へ対処するためにも重要であるものの、我々は、成長及び貧困削減のほか、民主的で、説明責任を果たし、透明性のある統治、また、健全な公的財政運営にコミットしている低所得国に援助を集中させる。

31.開発を主導するかどうかは、途上国自身、またその政府次第である。これらの国々は、国民全てに説明責任を負うべき自らの開発戦略に適合するように経済政策の決定、計画及び順序立てを行う必要がある。

32.z我々は、援助が最も効果的に活用されることを確保するため、健全な開発戦略をより良い援助で支援する必要がある。我々は、援助をアンタイド化する努力の向上、可能な場合にはパートナー国の制度を通じた、時宜を得た、予測可能性のある形での援助の実施、プログラム・ベースのアプローチをより採用することを含む調和化及びドナー間の協調の向上を含め、「援助効果向上に関するパリ宣言」で我々が行った全てのコミットメントを実施し、また、モニターされる。

パートナーシップ及び相互の説明責任:グレンイーグルズとその後

33.我々は、我々の共同の努力の結果に焦点を当てつつアフリカとのハイレベルの戦略的対話を前進させる効果的なメカニズムを必要としている。我々は、アフリカ問題首脳個人代表及びアフリカ・パートナーシップ・フォーラム(APF)が果たしている生産的な役割を認識する。我々は、APFが強化されるべきことに合意する。我々は、APFが年2回適切なハイレベルで会合し、この共同の取組に関与している全てのパートナー、すなわちG8のみならずアフリカ諸国及び他の開発パートナーによる進捗を評価すべきことを勧告する。我々は、APFが、目標や基準に照らして進捗を監視、報告、評価検討するための過程を開発し、是正措置の実施を可能にすることを奨励する。AU/NEPAD、OECD開発援助委員会、国連アフリカ経済委員会(ECA)その他の組織と協力して、APFが、G8によるものも含め、各会合間における実施について効果的なフォローアップを可能にするための十分な支援が存在すべきである。

結論:グレンイーグルズからニューヨーク、香港へ

34.我々の本日の合意及びこれまでのG8のコミットメントを通じて、我々は、永続的な平和と繁栄を築くためのアフリカ諸国の努力への支援を継続する。提案された施策の多くが、途上国全体にとっても幅広く適用可能なものであり、国連事務総長の諸提案に規定されたビジョンと整合的である。我々は、世界の他の首脳及び機関に対し、本日我々が作り上げた弾みを基に、このアジェンダを前進させる9月の国連サミットの成功を達成するために共に取組むよう要請する。

35.我々は、また、世界の他の首脳に対し、数百万の人々を貧困から救うことに資する可能性を有する貿易のパッケージについての合意を伴った2006年のドーハ開発ラウンドの妥結に繋がる、12月の香港でのWTO閣僚会議の成功を確かなものとする我々の作業に加わるよう要請する。我々の成功は、我々全ての人の利益である。

別添I

G8及び国際的な対応

●1998年のバーミンガム・サミットは、より貧困な国々に更なる救済を与えるため、1996年のリヨン・サミットで立ち上げられた重債務貧困国(HIPC)イニシアティブを拡大する必要性につき合意した。

●1999年のケルン・サミットは、拡大HIPCイニシアティブを打ち出した。これは、大部分はアフリカの27カ国における社会的支出を毎年約40億ドル増加させることに貢献してきた。

●2000年の沖縄サミットは、アウトリーチ対話にアフリカ首脳を招待した初めてのG8サミットとなった。このサミットでは、2001年のジェノバにおける世界エイズ・結核・マラリア対策基金の設置に繋がるプロセスを開始した。

●2001年のジェノバ・サミットでは、G8は、「アフリカのためのジェノバ・プラン」を通じてNEPADに呼応する必要性を認識し、具体的な行動を提言するアフリカ問題首脳個人代表を任命した。

●2002年のカナナスキス・サミットでは、G8は、「G8アフリカ行動計画」を打ち出し、G8とアフリカの新たなパートナーシップを開始した。我々はその際、この計画は、貧困削減、良い統治及び経済改革にコミットしているいかなる国も、資金不足によってミレニアム目標の達成の機会を否定されることはないことを確実にすることに貢献すると発言した。

●2003年のエビアン・サミットでは、G8は、これらを前進させるための具体的措置、「水に関するG8行動計画」及び新たな「アフリカの平和支援活動能力向上のためのG8・アフリカ共同計画」を発表した。また、アフリカ側とG8を超えた開発パートナーの間の対話のためのアフリカ・パートナーシップ・フォーラムを創設した。

●2004年のシーアイランド・サミットでは、G8は、HIVとポリオに対処し、開発における民間部門の役割を向上させ、透明性を高め腐敗と闘い、生産性向上の追加的な措置をとり、グローバルな平和支援活動能力を拡大させるための、更なる措置に合意した。

●加えて、G8各国政府は、アフリカを支援するため各々具体的なコミットメントを行った。我々は、共同で、2001年以降、アフリカ向け援助額を倍増させた。

別添II

資金に関するコミットメント(G8各国毎に提出されたもの)

●EUは、2010年までのODA/GNI比0.56%到達を新たな共同中間目標としつつ、2015年までにODA/GNI比0.7%に到達することを約束した。EUは、2004年から2010年で345億ユーロから670億ユーロへODAをほぼ倍増させる。この増加分の少なくとも50%がサブサハラ・アフリカに向けられることになろう。

●(革新的方法に支援される)ドイツは、2010年にODA/GNI比0.51%、2015年に0.7%に到達することを約束した。

●イタリアは、2010年にODA/GNI比0.51%、2015年に0.7%に到達することを約束した。

●フランスは2007年にODA/GNI比0.5%(これは、うち3分の2がアフリカ向けで、2000年以降少なくともODAの倍増となる)及び2012年までにODA/GNI比0.7%に到達するスケジュールを発表した。

●英国は、2013年までにODA/GNI比0.7%に到達するスケジュールを発表し、また2003/04年から2007/08年の間にアフリカにおける二国間拠出を倍増する。

●上記の国々は、革新的な資金調達メカニズムが、ミレニアム開発目標を達成するために必要な資金を調達し、また前倒しでもたらすことに貢献すると強く信じる。これらの国は、国際金融ファシリティ(IFF)、予防接種のための実験的なIFFのほか、特に保健医療分野における開発プロジェクトの資金を手当てし、またIFFへの資金手当を行うための航空券についての連帯した貢献を引き続き検討する。作業部会がこれらのメカニズムの実施につき検討する。

●米国は2004年から2010年の間に、サブサハラ・アフリカ向け援助を倍増することを提唱する。同国は、年間総額50億ドルまでの供与を目標としたミレニアム挑戦会計、150億ドルのエイズ救済のための緊急計画、アフリカにおける人道上の緊急事態へ対処するための2005年における20億ドル以上のイニシアティブ、及び12億ドルの新たなマラリア・イニシアティブを立ち上げた。米国は、5年間で6億6千万ドルの世界的な平和活動イニシアティブ等を通じて、紛争の予防及び緩和に引き続き取り組む。

●日本は、今後5年間のODA事業量について、100億ドルの積み増しを目指す。日本は、今後3年間でアフリカ向けODAを倍増することにコミットし、また、今後5年間で50億ドルの「保健と開発に関するイニシアティブ」を立ち上げた。日本は、アフリカ開発銀行と連携し、「アフリカの民間セクター開発のためのイニシティブ」の基金に対し、今後5年間で10億ドル以上を供与する。

●カナダは、2001年から2010年に国際的支援を倍増し、2003/4年から2008/9年にアフリカ向け援助を倍増させる。さらに2005年の予算により、主にアフリカが影響を受けている疾病と闘うため3億4,200万加ドルが追加的に供与された。2億加ドルのアフリカのためのカナダ投資基金は、民間投資に対して官民の危険負担資本を供与する。また、カナダは、ダルフールにおけるAUの努力に対して1億9,000万加ドル及び人道上の要請に対して9,000万加ドルを供与する。

●ロシアは、HIPCイニシアティブへの22億ドルの債務救済を含め、アフリカ諸国が負う113億ドル相当の債務を削減、また削減へのコミットを行った。これらに加え、ロシアは、HIPC諸国の非ODA借款による全債務残高を帳消しにすることを検討している。これにより、これらの諸国の債務救済額は7億5千間ドル増加する。