[文書名] 気候変動,クリーン・エネルギー,持続可能な開発(総論)(第31回グレンイーグルズ主要国首脳会議‐G8サミット)
1.我々は、気候変動への対応、クリーン・エネルギーの促進、及びグローバルな持続可能な開発の達成において、深刻かつ連関した課題に直面している。
(a)気候変動は、地球のあらゆる場所に影響を及ぼす可能性のある深刻かつ長期的課題である。我々は、化石燃料エネルギーの需要及び使用の増加、その他の人間活動が、我々の地球の表面の温暖化に密接に関係し、温室効果ガスの増加の主要な原因になっていることを理解している。我々の環境に関する科学的な理解には不確定な面があるが、我々は、温室効果ガスの増加を減速させ、科学的にみて適当なレベルに抑制し、そして減少に転じさせるために今行動すべきことを理解する。
(b)全世界のエネルギー需要は、今後25年間の間に、60パーセント増加することが見込まれている。これは、気候変動に伴う温室効果ガスの大幅な排出増を潜在的に引き起こし得る。
(c)安全で、信頼性があり、手ごろな価格のエネルギー源は、経済的安定と開発の基礎である。グローバルなエネルギー市場への依存が高まっていることにかんがみ、エネルギー需要の高まりは、エネルギー安全保障にとっての課題となっている。
(d)汚染物質の削減は、公衆衛生と生態系を保護する。これは特に開発途上国について当てはまる。我々が、呼吸器系の病気による苦しみを緩和し、公衆衛生コストを削減し、寿命を延ばすためには、大気と水の質を向上させることが必要である。
(e)約20億人の人々が、近代的なエネルギー・サービスを欠いている。我々は、2000年のミレニアム・サミットで合意された目標の達成を支援するためには、パートナーと協力し、エネルギーへのアクセスを増加させるために取り組む必要がある。
2.貧困削減のための精力的な努力と共に、我々は今、温室効果ガスの排出削減、地球環境の向上、エネルギー安全保障の強化、及び大気汚染の削減という、我々が共有する複数の目的を達成するために、決意と緊急性をもって行動する。
3.我々が共に取り組み、また、主要な新興経済国とのパートナーシップによって、温室効果ガス排出の大幅な削減と、低排出なエネルギー・システムの促進を含むその他の主要な目標の達成のための方途を見いだすことは、我々のグローバルな利益に叶う。世界の先進経済国には、行動する責任がある。
4.我々の気候変動枠組条約(UNFCCC)へのコミットメント、及び大気中の温室効果ガスの濃度を気候系に対して危険な人為的干渉をもたらすことのない水準に安定化させるという同条約の究極的な目的へのコミットメントを再確認する。我々は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の作業の重要性を再確認し、同パネルの2007年報告書に期待する。
5.我々は、好機に遭遇している。今後25年間、世界のエネルギー・システムに対し、約16兆ドルの資金投入が必要となるであろう。IEAによれば、この資金を、費用対効果の高い形でクリーン・エネルギー技術とエネルギー効率化に投入できる有意義な機会が存在する。今日なされる決定が今後数十年間の投資を固定化し、排出の増加し得ることから、我々は、今、賢明に行動することが重要である。
6.我々は、そのため、更に以下について行動する。
(a)技術革新、エネルギー効率性、節約を奨励し、政策、規制及び資金枠組みの向上を促進し、よりクリーンな技術、特に低排出技術の配備の加速化を促進する。
(b)開発途上国のエネルギー需要及び優先順位を考慮しつつ、民間投資及び技術移転を促進するため、開発途上国と協力する。
(c)気候変動、その他の複数の我々の課題、及びそれらへの対策に関する認識を高め、企業及び消費者が、エネルギーをより良く利用し、排出を削減するために必要な情報を入手可能にする。
7.自然及び人的双方の要因による、気候変動の影響への適応は、すべての国、特に、北極、アフリカのサヘル地域及び他の準乾燥地帯、低地の沿岸地域、沈下に陥りやすい小島嶼開発途上国等の非常に大きな変化を経験する可能性のある地域にとり、優先度の高い事項である。我々は、自身の適応戦略につき作業するにあたり、開発途上国の強靭性を向上させ、適応戦略を持続可能な開発戦略に統合することを支援し、その能力を構築することについて、開発途上国と協力する。
8.エネルギー安全保障と持続可能な開発を追求しつつ、気候変動に取り組み、クリーンな技術を促進するためには、一定期間にわたる、協調したグローバルな努力が必要となる。
9.我々は、そのため、気候変動、クリーン・エネルギー、持続可能な開発に関する対話を進めることに合意し、関心を有する他の主要なエネルギー需要国の参加を招請する。
我々は、
(a)より安全で持続可能な未来を造るために我々のエネルギー・システムを変革するという戦略的課題に取り組み、
(b)グレンイーグルズ行動計画におけるコミットメントの実施状況をモニターし、この進展にさらに積み上げていくための方途を探求し、
(c)参加政府間で、最善の慣行を共有する。
10.我々は、我々の政府に対して、対話を進めることを要請する。我々は、2008年のG8首脳会議において、報告を受けるとの日本の提案を歓迎する。
11.我々は、国際エネルギー機関(IEA)と世界銀行を含む、適切なパートナーシップ、機関及びイニシアティブと協力する。
(a)IEAは、代替エネルギー・シナリオ及びクリーンで、賢明かつ競争力のあるエネルギーの将来に向けての戦略について助言を行う。
(b)世界銀行は、投資及び融資を含む、クリーン・エネルギーと開発への投資のための新しい枠組みの創設につき指導的役割を担う。
12.英国は、3月のロンドンでのエネルギー・環境大臣円卓会合の成功に引き続き、本年後半に、行動計画の下での各コミットメントの個別の実施計画の特定を含め、本対話を前進させるため会合を開催する。
13.我々は、ロシアの2006年のG8議長国として、エネルギーに焦点を当てるとの決定及び会合開催計画を歓迎する。
14.我々は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が、気候変動に関する将来の行動を交渉するための適切なフォーラムであることを認める。京都議定書を批准した国は、同議定書の発効を歓迎し、また、その成功に向け取り組む。
15.我々は、2005年にモントリオールで開催される国連気候変動会議の作業を周知するために本日合意した目標及び目的に向け共に取り組む。我々は、引き続き同フォーラムにおいて、気候変動に取り組むための長期的な協調行動について、世界的な議論を前進させることにコミットする。