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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] インド洋災害へのG8の対応及び災害リスク削減に係る将来の行動(第31回グレンイーグルズ主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] グレンイーグルズ
[年月日] 2005年7月8日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.12月26日のインド洋災害の衝撃的な悲劇に対する国際的な対応は、即時かつ圧倒的であった。最新の数字によれば、世界中から、政府と個人の双方から、90億米ドル以上が寄付されてきた。被災国政府と国際社会の最初の数か月の焦点は、食料、水、医薬品、避難所の提供などの即時の人道的救済の提供であった。パリクラブ債権者は、また、2005年12月31日まで、それら被災国からの適格な政府債権に対する例外的な債務軽減を提供することに合意した。スリランカ及びインドネシアがこの申し出に応じた。

2.G8は、現在、津波への即時の人道的対応の後、長期的な問題を検討してきている。地域社会と人々の暮らしは、今、再建される必要があり、将来のリスクは削減されると共に、地域社会は将来における同様の現象に対し、より強靭となる必要がある。

早期警戒システム

3.我々は、国連事務総長が要請したように、世界的な早期警戒能力の向上のための国際的な努力を支援する。我々は、実施の責任は、他のパートナーからの支援を得て、地方、国及び地域レベルにおける政府及び利害関係者にあると考える。また、我々は、津波早期警戒システムのための国連教育科学文化機関(ユネスコ)政府間海洋学委員会(IOC)等を通じ、国際レベルにおいては国連に調整のための強い役割があることを認める。

4.我々は、国際社会の目的は、災害の脅威に対する脆弱性を低減させることであるべきと考える。この目的のために、以下を行う。

●早期警戒システムは、津波のみでなく、できるだけ多くのハザードを対象とするべきであり、また、国及び地域レベルの既存のシステムを基に構築し、いかなるギャップをも補うものであるべきである。

●我々は、地球観測システムの主要な国及び政府間の運営者と政府間海洋学委員会等の国連機関が、世界的規模でのデータ収集の必要性を迅速かつ効果的な伝達の必要性とバランスさせるよう、観測能力の調整及び両立を確保するために参加する、全地球観測システム(GEOSS)の役割を確認する。

5.我々は、また、国際防災戦略(ISDR)、国連開発計画、国連環境計画、ユニセフ、国連人道問題調整部、国連世界食糧計画、世界保健機関、国連食糧農業機関及び世界気象機関が果たす重要な役割を認識する。これらの機関は、早期警戒システムが複数のハザードに対応し、世界規模である必要があることを認識すべきであり、活動を調整する必要がある。我々は、ドイツが、国連の後援の下で、2006年3月にドイツのボンにおいて、「第3回早期警戒国際会議(EWCIII)」を主催するとの申し出を歓迎する。

6.我々は、世界的な地球物理学的事象のための早期警戒システムが効果的であるためには、以下が必要であることを認識する。

●政策立案者及び地元レベルで最も危険な状態にある人々が効果的な行動に移すことができる、高い品質で適切な科学的助言に基づくべきである。我々は、世界的及び地域的に大きいインパクトがありそうな潜在的な自然ハザードについて、科学者が政策決定者に助言することを可能にする自然ハザード評価に関して、全地球観測システムと協力して、国際防災戦略を含めた国連が調整する既存の国際防災枠組みの範囲内で、より緊密な調整を支援する。

●既存のシステム及びメカニズムを強化ないし改革を目指すこと等を通じて、また、技術的能力及び地元の能力の存在を確保するための最大の政策ギャップの特定の支援等によって、G8に支援されるべきである。

●情報連鎖におけるギャップに対処するために、国際赤十字・赤新月社のような、地元の人々とともに地域社会レベルで主要な役割を果たしている非政府の利害関係者と協力するべきである。

●包括的核実験禁止条約機関のネットワークなどの既存の地震ネットワーク、潮位計、その他の早期警戒システムからのデータのリアルタイムでの交換により、すべての国から十分に支援されるべきである。

7.我々の各国は、災害管理の経験及び災害が起こりやすい国との作業の経験並びに津波早期警戒における実践的経験を蓄積することができ、これにより、暫定的な津波監視情報の提供を含め、必要な場所及び時期にこれらの経験を共有することができる。

災害リスク削減の支援

8.早期警戒のみが、災害リスクを根絶するのではなく、また、貧困層及び努力によって獲得した開発による利益に対して特に深刻な影響がある災害のインパクトを削減するものでもない。災害リスク削減のため、我々は、国連、世界銀行その他の多国間開発銀行及び開発途上国と協力し、これらがより効果的に災害リスク削減に取り組むことを助ける。我々は、また、我々の開発関係省庁その他の省庁における災害リスク削減に対する関心をいかに高めていくかについて検討する。

9.我々は以下のとおり考える。

●この問題は、二国間及び多国間開発計画における災害リスク削減の優先順位づけを高めること通じて、また、ハザードに直面している地域社会を動員するための人間を中心とした対応計画を通じて、対処することができる。

●2005年1月の国連防災世界会議で採択された兵庫行動枠組2005‐2015は、災害リスク削減に関する我々の作業のための重要な基礎となり得る。

●国連は、より効果的な国際防災戦略を構築するためのコミットメントを含め、防災を支援するより強力なリーダーシップを発揮すべきである。援助国は、より多くのかつ柔軟性のある資金の配分等を通じて、このプロセスを支援すべきである。我々は、二国間援助には積極的な役割があり得ると認識する。

●国際防災戦略は、教育及び地域サービス並びに適切な建設基準及び土地利用計画などの分野における最善の慣行の普及の必要性を強調しつつ、災害リスク削減における提言メカニズムとして有効に機能し得る。

人道システムの改善

10.津波の影響の重大さは、適時かつ適切な方法で危機に対応することができる効果的かつ効率的な国際人道システムの重要性を実証した。我々は、この機会に、人道システムの強化及び人道支援の人間性、公平性、中立性、独立性の決定的な重要性を強調する。

11.我々は、人道的対応の調整及び適時性を改善するための努力を支持する。我々は、先の津波災害後の効果的な災害支援の提供における国連人道問題調整部(OCHA)の強いリーダーシップを認識する。G8は、OCHA及び国連人道調整官・常駐調整官の強化を求め、最も必要とされるところへの資金配分の調整及び優先順位づけを支持する。しかしながら、我々は、一部の援助国が二国間でも資金を配分することを希望することを認識する。

12.我々は、人員、ロジスティックス、輸送及び援助を十分に配分する手段など、国連の要請に応じて個々の国連加盟国により提供された必要な資源及び能力へのアクセスの強化等を通じて、緊急時における国連の調整的役割及びより迅速かつ効果的に対応する国連の能力を強化するためのイニシアチブを探求する用意がある。

13.我々は、国連中央緊急回転基金など、既存の多国間資金供与メカニズムを強化する可能性を探求する一部の援助国の意図を歓迎し、この点に関する国連総会の役割に留意する。迅速な対応、忘れられた危機及び準備体制の強化のために使用することができるより大きな無償基金を創設するという提案は、意義があり、更に論議されるべきである。一部の援助国は、対象国での支出を行う人道調整官に資金援助を提供することを希望している。