データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 世界経済と石油(第31回グレンイーグルズ主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] グレンイーグルズ
[年月日] 2005年7月8日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.力強い世界経済は、我々の各国及び世界全体にとって極めて重要である。2004年の世界経済は、支持的なマクロ経済政策と地域的及び世界的統合に伴う貿易の拡大に下支えされ、力強く成長した。より緩やかなペースではあるが、引き続き堅調な成長が見込まれている。

2.しかし、特に慢性的な世界的な不均衡及び高値かつ不安定な石油価格という課題は引き続き存在する。欧州、アジア及び北アメリカの多くの地域における主要な経済の間の成長率及び貯蓄・投資パターンの違いは、世界的な不均衡の拡大という結果をもたらしている。より幅広く共有された世界経済の成長への移行を促進するため、包括的な政策措置が必要である。我々は、自国の経済においてバランスのとれた成長を持続及び維持させる共通の責任を認識する。我々は、世界的な不均衡に対処し、成長を促進するための精力的な行動を通じ、我々すべてが各自の役割を果たさなくてはならないことに合意する。我々は、以下の施策を含む、具体的かつ信頼性のある行動にコミットする。

●米国における国民貯蓄を増大させるための継続的な財政健全化

●カナダにおける生産性向上のための行動

●ロシアにおける更なる構造改革、欧州連合における経済成長、雇用及び国内需要を押し上げるための更なる構造改革

●日本における財政健全化を含む更なる構造改革

3.我々は、世界的な不均衡の秩序ある解消を確保することに貢献するためのこれらの必要な行動は、同時に自国の経済の持続可能な成長と雇用を促進することからも、我々自身のためになることであると認識する。この関連で、我々は、柔軟性の増大、生産性の向上及び雇用創出の強化のための改革の重要性を強調する。これは、中期的な成長の促進、マクロ経済の安定への貢献、及び人口問題における課題への対応において重要となるであろう。

4.力強い世界経済の成長は、エネルギー需要を増加させ、また、供給能力の制約及び供給の不確実性とあいまって、石油価格の上昇と不安定性をもたらしている。我々は、持続する高いエネルギー価格が世界経済の成長にもたらすリスクにつき議論した。石油の需要は、現状では力強い増大を継続すると予測されている。成長する世界経済におけるニーズを満たすための探鉱、生産及びエネルギー・インフラストラクチャーにおける相当の投資が、短期的、中期的及び長期的に必要となる。多くの施策が石油市場の逼迫を緩和するのに貢献し得る。

5.我々は、安全で、信頼性があり、手ごろな価格のエネルギー資源が、経済の安定及び発展にとって不可欠であることに合意し、省エネルギー、効率化、技術及びイノベーションが果たすことのできる重要な役割を認識した。また、我々は、気候変動への取組におけるこれらの課題に関する行動計画を別途発表した。

6.我々は、産油国に対し、世界経済の力強い成長を支えるために十分に良好な投資環境を促進するために、必要なすべての措置をとるよう奨励する。特に、産油国は、透明性のある商慣習を持った開かれた市場を確保し、外国投資の機会増大を含め、石油部門への投資のための安定的な規制枠組みを提供すべきである。この関連で、我々は、国際エネルギー・フォーラム(IEF)での産油国と石油消費国との対話の果たす重要な役割を強調する。さらに、我々は、精製能力の拡大を奨励するための措置を検討することに合意する。

7.我々は、より包括的で透明で時宜を得たデータを通じて市場の不安定性を減少させるための具体的な行動の必要性を強調する。不確実性を悪化させる要因の一つは、市場の透明性の不足であるが、これは、産油国、石油消費国及び石油企業が運用する、石油供給及び需要についての世界的に合意された報告制度により改善され得る。供給、需要及び在庫に関する信頼性があり、適時性の高いデータは、より堅実な投資決定に貢献しつつ、需給の変化への時宜を得た調整を促進する。我々はしたがって、IEAを含む複数の国際機関によって開始され、現在IEF事務局によって運営されている共同石油データ・イニシアティブ(JODI)を歓迎、支持し、また、世界的な石油市場データの確立により市場の透明性が格段に高まるよう、すべての国々に対し、同イニシアティブの成功に貢献するよう要請する。