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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国連のテロ対策プログラムの強化に関するG8声明(第32回サンクトペテルブルク主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] サンクトペテルブルク
[年月日] 2006年7月16日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.我々G8首脳は、世界的なテロの苦難に対する継続的な闘いにおける連帯を改めて誓う。グレンイーグルズにおいて、我々は全てのテロ行為をいかなる弁明も正当化もあり得ない犯罪として非難した。我々は、テロリストがどこにいようと裁きにかけるべく断固として対応することに合意した。そして我々は、国連並びにその他の国際的及び地域的機関におけるパートナーとともに協力するという我々のコミットメントを再確認した。

2.エビアンにおいて、我々は、世界的なテロとの闘いにおける国連の重要な役割を認識し、その取組みの実効性を強化、拡充することにコミットした。その関連で、我々は国連安保理テロ対策委員会(CTC)を、その所掌範囲を広げ実効性を高める様々な手段で支援することに同意した。テロと闘うために十分な能力を構築することが全ての国家にとって不可欠であるとの認識の下、我々は、CTCと緊密に協力しつつ、政治的意思の構築及び能力向上支援の調整に焦点を当てるテロ対策行動グループ(CTAG)を創設した。我々は、他のパートナーとの間にこのような調整活動を拡大すべく取り組んでいきたい。

3.今日、サンクトペテルブルクにおいて、我々はあらゆる形態のテロリズムに対する非難を明確にかつ断固として再確認する。唯一の真の世界的機関として、国連はテロの非難につき普遍的合意を達成する資質と影響力を有する唯一の機関である。我々は、国連事務総長に対し、この点を強化するために事務総長職に固有の国際的な権威を引き続き活用することを求める。

4.テロという喫緊の脅威への包括的対応に、国連は最も焦点を当てなくてはならない。グレンイーグルズ以降の決議1617、1624及び1673の採択により明らかなように、安保理が引き続き重要な役割を担果たすべきである一方、国連の他の各機関・機構・組織もまた、キャパシティー・ビルディング、教育、経済開発を通じ、並びにテロリスト育成の促進要因に対処することで、より広範なテロ対策に貢献するべくその取組みを強化しなくてはならない。テロ対策、国造り及び開発は相互に依存し支え合っている。テロ対策は、国連システム全体の中で整合性があり、かつ調整された方途でなされるべきである。従って、我々はこれを達成することを支援する事務総長のコミットメントを歓迎する。国連のテロ対策能力の強化は広範な利益をもたらす。それは、紛争や社会不安の可能性を減少させ、対外投資の拡大、良い統治、及び長期的な発展に貢献する。

5.2001年以降、国連のテロ対策関連プログラムの数は大きく増加し、監視やキャパシティー・ビルディングへの取組みに重複が生じている。異なるプログラムを統合するためにより多くのことがなされるべきであり、我々はこの分野において事務総長により開始された作業に特に留意する。我々は、各プログラムが成果重視のものとなり、かつその影響を最大化するよう調整されること、及び補助機関及びその職員が合理化され、強化された協力と組織的な整合性をもって、相互に及び他の関連する国際機関と協働することを確保するために、国連とともに取り組むことを誓う。

6.2005年の国連首脳会合の成果文書において、我々は他国の首脳とともに、国連が「テロと闘う各国及び地域の能力の構築を支援するために」より多くのことをしなければならないことを強調し、また「多くの国家が関連する安保理決議を実施するために引き続き支援を必要としていること」を認識した。我々は、国際的テロ対策戦略に関する事務総長の勧告の中で、キャパシティー・ビルディングに重点が置かれていることを心から歓迎する。国連は、ドナー側と協力しつつ、最も脆弱な国家に焦点をあて、優先度の高いニーズを特定しそれを満たすことにより、限られた資源を最大限に活用しなくてはならない。国連は、専門組織及び機関、特にICAO、WCO、IMO、及び関連する地域機関及び国際金融機関を、積極的に取り込まなくてはならない。我々は、国連テロ対策委員会事務局(CTED)に依拠しつつ、CTCの作業がドナー側及び裨益側の双方にとり一層関連しかつ利用可能なものとなるために必要な措置を講じることをCTCに求める。

7.我々は、各国が国連安保理のテロ対策諸決議に基づく義務を遵守しない場合があまりに多いことに着目する。我々は、安保理とそのテロ対策機関に対し普遍的な義務履行確保のための取組みを更に強めるよう求める。我々は、国際的なテロ対策における義務の履行を確実なものとするため、各国の遵守努力を測定し得る説明責任の基準が必要であることについて、事務総長と意見が一致している。我々は国連がこのような具体的な基準を策定することを慫慂する。テロ対策に関する義務の履行を確保する第一義的な責任は加盟国にあることを念頭に置きつつ、我々は、そうした履行に対するコミットメントを再確認し、すべての国に対しその義務を果たすよう求める。

8.各国による国連安保理のテロ対策諸決議に基づく義務の履行を支援するために、我々は、安保理が、CTC、1267委員会及び1540委員会等を通じ、IAEA、ICAO、IMO及びWCO、並びにFATFといった国際機関によって作成されたテロ対策に関連する勧告を早期に支持することを慫慂し、また最も重要なこととして、我々は、現在ベスト・プラクティスが存在しない分野においてその策定を支援する。

9.国連とその専門機関において採択された国際テロ防止関連条約は、テロ行為の捜査及び訴追における国際協力のための重要な法的枠組を確立してきた。我々は、各国に対しこうした枠組への参加と実施を可能とする技術支援を提供するための、国連薬物犯罪事務所(UNODC)テロ防止部の取組みを歓迎する。しかし、現在発効している12の基本的な国際条約全てを批准しているのは国連加盟国の半数にも満たない中、なすべき作業がまだ多く残っている。我々は、地域的な条約の締約国であるか否かに関わらず、各国が早急に取組みを強化し、批准するよう求める。

10.グレンイーグルズにおいて、我々は、ロシア連邦により提案された「核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約」を国連総会が採択したことを歓迎した。我々は、すべての国に対しこの条約を批准することを求め、同条約が早期に発効することを期待する。我々は、テロ関連の安保理決議、その他国際テロ防止関連条約に規定された広範な法的枠組を補完する「包括テロ防止条約」の起草を迅速に完了させるようにとの国連総会に対する我々の要請を再確認する。今こそ、この交渉を終結すべきときである。

11.我々は、テロ対策関連の作業に優先順位をつける国連総会の取組みを歓迎する。我々は、事務総長の戦略草案に関する審議を可能な限り早く完了すべく、すべての国連加盟国と建設的に取り組むことにコミットする。特に我々は、国際的なテロとの闘いにおいて国連システムがなし得る具体的かつ実効的な貢献、及びテロの更なる抑止をもたらすために最大の効果をあげるであろう分野に資源が効果的に投入されることを確保するための、ドナー活動と国連との調整に、重点をおくことを歓迎する。

12.我々は、テロとの闘いのための国際的協力が、国連憲章及び関連する国際協定及び議定書を含む国際法に適合した形で行われなければならないと認識している。各国は、テロとの闘いのためのいかなる措置も、特に人権法、難民法及び国際人道法といった国際法上の義務に従うことを、確保しなくてはならない。

13.我々はG8の首脳として、テロの脅威を特定し立ち向かうために、そして国連のテロ対策の取組みを強化すべく協働するために必要な持続的なコミットメントを誓う。我々は、テロの脅威の根絶という究極の目標のもと、国連が国際的なテロ対策の取組みに対して重要かつ長期に亘る貢献をすることが確保されるよう努める。我々は、全ての国に対し、この重要な取組みに我々と参加するよう求める。