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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 安定化と復興における協力と今後の行動に関するG8宣言(第32回サンクトペテルブルク主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] サンクトペテルブルク
[年月日] 2006年7月16日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.急速な変化を遂げる国際情勢及び新たな脅威と課題の進化は、国際社会からのより機敏かつ適応性に富んだ対応を求めている。国際社会は、紛争から持続可能な平和への移行期にある脆弱な国家と国民を、強固な安定化・復興援助をもって支援する用意をしておくべきである。国連は、国際的な平和維持及び安定化・復興活動において第一義的な活動主体である。国連は、紛争から抜け出しつつある国々に対し、より持続的で、調整され、焦点を絞った支援を提供する、新たな平和構築委員会を設立した。国連はまた、平和構築支援事務所及び常設の平和構築基金を設置中であり、またその組織機構をより効果的に活用するため、その統合ミッション計画プロセスを改訂中である。G8諸国及び他の地域機関等との適切なレベルのパートナーシップによって、同計画は文民に対するよりよい保護と安定化・復興に対する、はるかに調整されかつ戦略的な国際的取組みにつながるであろう。多国間・地域的機関及び各国は、多大なる資源を近年の安定化・復興のための新たな手段の開発に集中させてきた。各国は、防衛、開発及び外交能力の統合により、安定化・復興のための共同計画及び戦略を支援するため、各国の資源の更なる活用を図っている。

2.G8諸国はまた、安定化・復興分野において不十分な点につき、特にアフリカに重点を置いて取り組みに努めてきた。これらのイニシアティブはいずれも成果をあげてきているが、それが真に成功するため、G8首脳は、国連の能力を強化し、これを補完する国家及び地域の能力を提供するような、安定化・復興へ向けたより一貫したグローバルな取組みの構築の必要性を確認する。国家の能力は主導的な取組みであり、国際的な取組みは国連、地域的及び国家的イニシアティブを混合したものを含むと期待される。G8首脳は一体として、G8諸国間及び紛争予防、安定化及び復興における鍵となるG8以外のパートナーとの間で、G8内外の既存の取組みを結びつけ、それを発展させるより調整された取組みを、以下の方策にコミットすることを通じて構築することを約束する。

安定化・復興における協調強化のための方策

G8パートナー間での協力:我々は、議長国ロシアに対しこの問題に関する協議を開催し、主導するよう求めた。以下の方策の実施の実現可能性につき協議するために、G8諸国の専門家は、国連総会終了後、2006年中の可能な限り早い時期に、国連及び適当な地域機関から様々な分野(開発、安全保障、外交)の代表を招待し、会合を持つ。

●平和支援活動:イタリアのビチェンツァにある治安警察部隊中核研究センター(COESPU)への支援を通じ、また迅速な危機への対応における主要な能力格差に対処する輸送・ロジスティクス支援整備(TLSA)の2006年中の創設の可能性についての更なる検討を含め、各国に平和支援部隊展開のための輸送能力と現場における同部隊へのロジスティクス支援を提供することにより、平和支援活動、特にアフリカにおける活動のためのグローバルな能力を向上させるという既存のG8のコミットメントを支持する。右は平和維持能力、輸送・ロジスティクス能力の開発におけるアフリカ連合への継続的な支援を含む。G8諸国は、国連平和活動が開始される場合にはこれを支援するというコミットメントを再確認する。

●紛争予防:危機にある国家の評価方法に関する定期的な情報交換を行う。危機にある国家を特定し適切な注意を集中させることを助け、共同の対応における協調を強化するため、既存の構造とメカニズムを考慮することにより共通の紛争評価手段の開発に向けて取り組む。G8諸国は、手段と方法論の整合性を確保するために、国連と協議すべきである。この紛争評価手段は、後の段階で他の主要なパートナーたる国や地域的機関の関与を視野に入れつつ、まず国連との緊密な調整の下、G8諸国の専門家により作成されるべきである。

●調整:国際的な対応行動を調整するため、国家あるいは組織の窓口(個人又は部局)を指定する。国家の窓口は、危機から脱しつつある国における国家の及び多国間の取組みが、司法・治安分野改革、公的セクターのガバナンス、民主的な説明責任及び社会福祉の分野における改革やキャパシティ・ビルディングに関連する際に、それらの取組みをよりよく調整するために国連等の国際機関職員及びG8や他のパートナー、地域的機関と緊密に協働すべきである。

●能力又はその不足の認識:特定の政府又は機関に備わる能力及び活用にあたっての優先付けに関して、また、事前に特定し対処される必要のある不足を特定するために、各機関及び政府の能力に関して、定期的協議を行う。危機が進展するにつれて、全ての関係者がその危機に関する対話に関与し、不測事態への対処策につき効果的に協力することを確保するためのメカニズムを設置する。

●資源の事前配置:国連の迅速かつ効率的な危機への対応を円滑化すべく、G8諸国は、新たな平和維持及び平和支援活動の設立にあたって資源が事前に国連にとり利用可能であることを確保するための国連における改革を遂行することにコミットする。すなわち、ブリンディシにおける装備の事前配置、国連PKO局(DPKO)の計画を支援するための事前承認資金の増額、及び新たな平和維持活動の任務を規定する安保理決議に先立ち人員を特定する権限付与である。

●地域的機関の強化:アフリカ、アジア及びラテン・アメリカにおける地域的主体による紛争予防及び紛争対応能力の発展を支援することにコミットする。G8諸国は、この分野での地域的機関同士及び国連との協力の重要性を強調する。

●相互運用性:我々は、各活動を組織し実行することに責任を有する国際機関がいずれであるか(例えば、アフリカ連合または他の地域的機関か、国連か)を問わず、国際的な安定化・復興活動の質と効果が一貫したものとなるような実行を促進する所存である。