[文書名] 不拡散に関する声明(第32回サンクトペテルブルク主要国首脳会議‐G8サミット)
大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散は、国際的なテロと並んで、引き続き、国際の平和と安全に対する顕著な脅威である。したがって、国際社会は、この挑戦に大胆に立ち向かい、この脅威に対処するために断固として行動しなければならない。我々は、大量破壊兵器がテロリストの手中に落ちることを防ぐことを含め、大量破壊兵器の拡散と闘う上で、他の国々や機関と共に協力する決意とコミットメントを再確認する。
拡散に立ち向かう我々の努力の不可欠な要素として、我々は、締約している又は参加している関連の国際条約、協定、多国間取決めの下、軍備管理、軍縮及び不拡散の義務とコミットメントを果たす決意である。我々は、他のすべての国々に対し、この点に関し、完全に義務とコミットメントを果たすことを求める。我々は、軍縮会議をはじめ、関連の多国間の場を再活性化することにあらためて全力を尽くす。これらの努力は、グローバルな不拡散体制の更なる強化に貢献するであろう。
我々は、核兵器不拡散条約、化学兵器禁止条約、生物・毒素兵器禁止条約、及び1925年ジュネーブ条約に未加入のすべての国に対し、遅滞なくそれらに加入することを求め、弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範に署名していない国々に対し署名を求める。我々は、すべての関係国に対し、核兵器実験爆発や他のあらゆる核爆発のモラトリアムを厳格に遵守するよう要求する。
核不拡散
核兵器不拡散条約(NPT)
我々は、NPTの3本柱すべてに対する我々の完全なコメットメントを再確認する。我々は、すべての国に対し、IAEA保障措置、そして核関連の機材、技術及び物質の不正取引防止を目的とした効果的な措置の策定を含め、NPT上の義務を遵守することを求める。
国際原子力機関(IAEA)保障措置
我々は、IAEAの保障措置制度の重要性を強調する。我々は、NPT第3条の効果的履行のために、IAEAの包括的保障措置協定の、また追加議定書の、普遍的な遵守を求めている。この文脈で、我々は、これらの文書に署名、批准及び履行していないすべての国に対し、迅速にそうすることを要求する。我々は、包括的保障措置協定及び追加議定書が普遍的に受け入れられる検証の基準となることを念頭に、積極的にこの目的に向け努力している。我々はまた、追加議定書を原子力供給取極の分野における不可欠の新たな基準として確立するため、共に熱心に作業を行っていく。
原子力エネルギーの平和的利用
我々は、NPT第4条が、この条約のいかなる規定も、無差別にかつ第1条及び第2条の規定に従って、平和目的のための原子力の研究、生産及び利用を発展させることについてのすべての締約国の奪い得ない権利に影響を及ぼすものと解してはならないと規定していることを想起する。我々は、原子力の平和的利用のための機材、物質及び情報の取引を促進することにコミットしている。保障措置協定を含め、NPTの不拡散上の義務の完全な遵守は、そのような取引の不可欠の条件である。
原子力の平和的利用の拡大は、核不拡散のコミットメント及び基準に合致した形で進められなければならない。この関連で、濃縮・再処理活動の追求に代わるものとして、各国に核燃料関連サービスへのアクセスを保証するようなメカニズムを開発し実施することが重要である。この点に関連して、我々は、最近の潜在的に補完性を有する核燃料サイクル・サービス提供のための国際センターに関するロシア連邦大統領によるイニシアティブ及び国際原子力パートナーシップに関する米国大統領のイニシアティブ、並びにIAEAの場で、フランス、ドイツ、オランダ、ロシア連邦、英国及び米国によって提示された核燃料のための濃縮サービスへの確実なアクセスのためのマルチラテラル・メカニズム構想に関する最近のイニシアティブを評価する。我々は、これらのイニシアティブの詳細について更なる検討を進める。この共通のアプローチをさらに強化するため、我々は:
●IAEAと共に、核燃料サイクルのサービスを提供する国際的なセンター、関連の実際的、法的及び組織的な問題の解決を含め、燃料サイクルへの多国間のアプローチを引き続き検討する。
●核燃料関連サービスへのアクセスの信頼できる国際的保証の整備を促進する。
●その一方で、我々のうち安全かつ確実な原子力の使用及び/または開発に関連する計画を有しているまたは検討している国は、核燃料サイクルの関連技術を含め、より安全で、より効率的で、より環境に配慮し、より拡散抵抗性のある原子力システムの研究・開発を推進する。そのような先進的なシステムが整うまでの間、国家の選択と不拡散の目的に沿って、核燃料サイクルのバック・エンドに関する事項に対処するための適切な暫定的解決が追求され得る。
兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)
我々は、軍縮会議における兵器用核分裂性物質生産禁止条約の早期交渉開始を支持する。
濃縮・再処理
シーアイランド及びグレンイーグルズにおけるG8サミットで合意されたアプローチに従い、我々は、機微な核関連機材、物質及び技術が、これらを兵器目的に使用するかもしれない国や、テロリストの手中に落ちることを許すかもしれない国への移転を防止するための措置の発展を支持する。
我々は、トリガー・リストや汎用リストに掲載されているか否かに係わらず、濃縮関連及び再処理活動に寄与する可能性があるかぎり、核関連技術、機材及び物質の移転に関し警戒を強め、またそのような技術、機材及び物質を秘密裡かつ不法な手段で入手する企てを特に警戒する。
我々は、シーアイランドにおいて、これら品目の輸出は、グローバルな不拡散の規範に従った基準に則ってのみ、かつ、これらの規範に厳格にコミットしている国に対してのみ行われるべきであることに合意した。この2年間、我々は、そのような基準の策定において非常に大きな進展を示してきた。我々は、原子力供給国グループ(NSG)が留意した進展、及びこの問題に関し2007年までに合意に達するために積極的に作業をするというNSGのコミットメントを歓迎する。
このプロセスを支援するため、我々は、シーアイランド及びグレンイーグルズで合意したように、今後の1年間、追加的な国への濃縮・再処理の技術移転を伴う新たなイニシアティブを開始しないことが思慮深いことであるという点に引き続き合意する。我々は、すべての他の国に対し、この思慮深い戦略を採用することを求める。
インド
我々はインドとのパートナーシップの強化を期待する。我々は、インドの行ったコミットメントに留意し、また、グローバルな不拡散体制を強化するような形で、インドのエネルギー需要に対処するための原子力協力に向けた更に前向きなアプローチを円滑にするためにも、インドが不拡散体制の強化の主流に加わる更なるステップをとることを慫慂する。
生物・毒素兵器禁止条約(BTWC)
我々は、条約の運用状況に関する効果的なレビューを目的とした第6回BTWC運用検討会議の成功に期待する。我々は、BTWC履行の強化・促進を目的とした決定が、運用検討会議により採択されることを促す。
我々は、すべての締約国に対し、生物・毒素兵器の拡散を禁止・予防し、病原性微生物や毒素への管理を確実なものとするために、BTWCの枠内で刑罰法を含む適当な国内法制の採択・履行を採択することを含め、必要な措置をとることを求める。我々は、同措置をとっていない締約国が出来る限り早期にそのような措置をとることを呼びかけ、また適当な支援を考慮する用意がある。この関連で、我々は、BTWCを支持する2006年EUジョイント・アクション等のイニシアティブを歓迎する。
化学兵器禁止条約(CWC)
我々は、引き続き、CWCの完全な履行を支持する。我々は、化学兵器が保有国により継続して廃棄されていることに留意し、この致死的兵器の保有が徐々に減少しているという事実を歓迎している。我々は、化学兵器を廃棄し、及びCWCにより定められた期間内に化学兵器生産施設を廃棄または転換するという義務を認識する。
我々は、条約の締約国が増加していることを歓迎する。我々は、国内実施措置に関するOPCW行動計画の価値、及びそのような措置の採用により状況が改善していることを認識する。我々は、締約国に対し、この方向で努力を継続かつ強化することを要求する。我々は、適切な支援を提供する用意がある。
国連安保理決議1540
我々は、拡散の挑戦に対処する上での国連安全保障理事会の主要な役割を再確認する。我々は、すべての国々に対し、決議の履行に関する報告を含め、国連安保理決議1540を完全に履行するよう要求する。
我々は、決議の完全な履行を推進するために1540委員会のマンデートを延長する国連安保理決議1673の決定を歓迎する。我々は、この重要な目的を達成するために、国内的及び国際的なレベルで引き続き積極的に作業を行うことを意図しており、これに関連する援助へのすべての要請を検討する用意がある。
弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC)
我々は、弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範の普遍化、及びその信頼醸成措置の完全な履行に向けた作業へのコミットメントを再確認する。
拡散に対する安全保障構想(PSI)
我々は、大量破壊兵器、その運搬手段及び関連物質の不法取引に対処する重要な手段の一つを成す拡散に対する安全保障構想への我々のコミットメントを再確認する。我々は、ワルシャワにおけるハイレベル政策会合において表されたように、このイニシアティブへの国際的な支持が増加していることを歓迎する。我々は、国連安保理決議1540の目的を推進し、拡散に関する資金調達を予防し阻止するために、PSI参加国が如何に協力的に作業を進めることが可能かとの議論がなされたことに留意する。
リビア
リビアの大量破壊兵器の放棄に対する国際社会の前向きな対応は、国際社会と協力し、グローバルな不拡散の主流の一部になるとの戦略的決定がもたらす利益を示している。
イラン
我々は、イランの核計画が進展したことによる拡散上の影響を引き続き深刻に懸念し、我々はこれらの影響が解消されることへの我々のコミットメントにおいて引き続き団結している。
我々は、協力及び相互尊重に基づいたイランとの長期的かつ包括的な合意のために、2006年6月6日に、欧州連合上級代表の支持を得て、中国、フランス、ドイツ、ロシア、英国及びアメリカ合衆国を代表してイランに提示された広範にわたる提案を完全に支持する。
我々は、中国、フランス、ドイツ、ロシア、英国及びアメリカ合衆国の外務大臣及び欧州連合上級代表が、イラン側から上述の提案の内容に真剣に関与する用意があるとの意思表示が全くなかったことに深い失望を表明した7月12日のパリでの6カ国{前3文字ママ}の外務大臣の声明を完全に支持する。イランは、IAEAから要求され、国際連合安全保障理事会議長声明でも支持された、交渉を開始させるために必要なステップ、特にすべての濃縮関連及び再処理活動の停止をとってこなかった。そこで、6か国{前3文字ママ}の外務大臣は本件を国際連合安全保障理事会に戻すことを決定した。我々G8首脳は、この決定及びそれがイランが行うべき選択について送っている明確なメッセージを完全に支持する。我々は、2006年6月6日に示された実質的な提案に前向きに対応するようイランに求めるパリにおける声明を支持する。
北朝鮮(DPRK)
我々は、国際社会の明確かつ力強い意思を表す、全会一致で採択された国連安保理決議1695を歓迎する。
我々は、現地時間7月5日の北朝鮮による複数の弾道ミサイル発射を非難し、ミサイル発射が地域内外の平和、安定及び安全を危うくすることに深刻な懸念を表明する。この行為は、ミサイル発射のモラトリアムを維持するとの北朝鮮の誓約に違反し、北朝鮮を含む全ての当事者が北東アジアの永続的な平和と安定への共同の努力にコミットした2005年9月19日の六者会合共同声明の目的と相容れないものである。我々はまた、北朝鮮のあり得べき追加的な発射の兆候に重大な懸念を表明する。我々は、北朝鮮に対し、ミサイル発射モラトリアムの既存のコミットメントを再確認し、ミサイル拡散に寄与することを控えるよう求める。国連安保理決議1695に従って、我々は、北朝鮮のミサイル及び大量破壊兵器計画へのあらゆる対外協力を防ぐよう監視する。
これらのミサイル発射は、北朝鮮の核兵器計画に対する我々の深い懸念を強める。我々は、北朝鮮がNPTの完全な遵守に迅速に復帰することの必要性を繰り返し述べる。我々は、北朝鮮に対し、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄することを強く要求する。我々は、2005年9月19日の共同声明及び六者会合に対する我々の完全な支持を再確認する。我々は、北朝鮮に対し、これらの交渉に早期かつ無条件に復帰し、六者の共通の目的を再確認するこの共同声明に基づき、懸案事項を解決するために協力することを要求する。すべての当事者は、平和的な方法での朝鮮半島の検証可能な非核化を達成すべく、そして朝鮮半島及び北東アジアの平和と安定を維持するために、努力を強化するべきである。
G8グローバル・パートナーシップ
大量破壊兵器及び物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップは、過去1年間、カナナスキスで定められた目標の達成に向け進展してきた。それは、国際的な安全保障及び安全を向上させる重要な力となった。すべての分野で多くが達成されたが、我々の協力の効率性を向上させるためには更に多くのことがなされなければならない。
我々は、すべてのG8グローバル・パートナーシップの目標を完全に履行するという我々のコミットメントを再確認する。我々はまた、カナナスキス文書を支持する他の受益国やドナー国に対しパートナーシップを拡大することを検討することにつき、またすべてのパートナーシップのメンバーの目標及び優先事項を受け入れることにつき、開かれた立場をとっていることを再確認する。我々は、グローバル・パートナーシップのメンバーがウクライナと協力して成し遂げた進展を歓迎する。
我々は、グローバル・パートナーシップに参加したG8以外の13か国の貢献を評価する。
我々は、まずロシアにおいて、カナナスキスで特定された優先分野に取り組むための事業を支援するために、2012年までにグローバル・パートナーシップのために最大で200億ドルを調達し、またこれらの誓約を引き続き具体的な行動に移すというカナナスキスにおける我々の誓約にコミットし続ける。