データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 知的財産権の海賊行為及び模倣行為との闘い(第32回サンクトペテルブルク主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] サンクトペテルブルク
[年月日] 2006年7月16日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.我々は、海賊行為及び模倣行為、特に海賊版や模倣品の取引に対して個別的かつ集団的に対処する努力を強化することについてのコミットメントを再確認し、また、そのような努力が、技術革新等を通じて、世界経済の持続的な発展、さらには世界中の消費者の健康と安全に貢献することに留意する。

2.海賊版や模倣品の取引との闘いは、グローバル化という背景の中では国境を越える性質を有する複雑な問題であり、すべての国及び関係国際機関による個別及び共同の努力によってのみ解決が可能である。この点に関し、我々は、知的財産権の実効的な保護と執行を専門的に扱う国際的な会議やワークショップの有用性に留意する。

3.我々は、海賊行為や模倣行為を防止する活動を継続するためには、G8とその他の国々、さらには知見を有する国際機関、特に、世界知的所有権機関(WIPO)、世界貿易機関(WTO)、世界税関機構、インターポール、経済協力開発機構(OECD)及び欧州評議会との間で、この分野における協力を強化することが必要であると考える。

4.我々は、知的財産の執行を強化する法律、規則及び手続を整備し維持すること、知的財産権を保護し執行するための法的手段や海賊行為及び模倣行為の脅威に関する市民社会及び経済界の認識を高めること、また、この分野における技術的支援を開発途上国に対して供与することに、重点を置く必要があると考える。税関当局を含む法執行機関の間の緊密な協力もまた、非常に重要である。

5.我々は、海賊行為及び模倣行為に関するG8作業計画の基礎をなす次の具体的措置を今後短期間の内に講じることが必要であると考える。

○G8各国において、企業や個人に対して次の情報を提供するウェブサイトを開設すること‐‐企業や個人が自ら保有する知的財産権をその国において確保し、執行するために利用できる制度やそのために必要な手続に関する情報、海賊行為及び模倣行為が公衆衛生、安全、そして国家、消費者、産業界の利益に及ぼす脅威に関する情報、知的財産権の侵害と闘うために国内的及び国際的なレベルでとられている措置に関する情報、関連する法令と法令執行の実態に関する情報。

○海賊行為及び模倣行為が国家の経済、権利保持者、公衆衛生及び安全に及ぼす経済的影響の分析に重点を置いた報告を準備することをOECDに促すこと。

○WIPO、WTO、OECD、インターポール及び世界税関機構と協力して、関心を有する開発途上国において、模倣品や海賊版の取引と闘うために必要な能力を構築するための技術的支援に係る試験的計画をG8の間で作成し、実行に移すこと。

○税関間の協調や、国境において、模倣品の取引に更に的確に狙いを定め、知的財産犯罪と更に効果的に闘うために工夫された執行に関する情報及びベスト・プラクティスの交換を通じて、国境における執行を改善すること。このような国境における執行の改善のための手段には、G8の税関当局の間で既に実施されている効果的な戦略をより広範な協力の模範例として検討することを含む。

○知的財産権に係る深刻かつ組織的な犯罪と闘うためのG8各国による協力行動を改善することを目的とした勧告を準備すること。

○我々は、G8の専門家に対し、知的財産権の執行に関連する国際的な法的枠組を強化する可能性についての研究を行うよう指示する。

6.しばしば組織的犯罪と結びついた、著しい量の海賊版及び模倣品の世界中での取引、さらには知的財産権に係る侵害や犯罪により引き起こされる経済的、政治的、道徳的な被害を考慮して、我々は、海賊版及び模倣品の世界的な取引を大きく減少させることを目的として協力を強化すること、また、そのような取引を支える国際的ネットワークに対して効果的な措置をとることに、引き続き重点を置く。