データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 議長総括(第33回ハイリゲンダム主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] ハイリゲンダム
[年月日] 2007年6月8日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

I.世界経済における成長と責任

 我々は、ハイリゲンダムにおいて、世界経済、気候変動及びアフリカの主要な挑戦に取り組むため一堂に会した。「成長と責任」という議長国ドイツの中核的なテーマの下で、我々は、グローバル化が政治的に進展する際の経済的、社会的及び環境的側面について、焦点をあてた。特に、我々は、今日の世界における主要新興経済国の役割について取り組んだ。我々は、一層緊密な協力の恩恵につき合意した。

ハイリゲンダム・プロセス:我々は、ブラジル、中国、インド、メキシコ及び南アフリカの首脳とともに、地球規模の挑戦について議論した。我々は、それぞれの責任と、共通の解決策を作り上げる必要性について認識した。従って我々は、2009年のイタリアでのサミットまで、具体的な成果に到達することを目的として、主要な世界経済の課題についての論点主導の新たな対話を立ち上げることに合意した。この対話の論点は、企業の社会的責任を含む投資の自由と投資環境、イノベーションの促進と保護、エネルギー効率と技術協力、及び開発政策を含む。このプロセスの行程表は、G8議長国とブラジル、中国、インド、メキシコ、及び南アフリカとの共同宣言に記述されている。

世界経済の成長と安定のためのG8アジェンダ:我々は、世界経済は順調であり、成長は地域間でより均等に分配されていることに留意した。これに関連して、我々は、持続可能で堅調な世界経済成長の文脈において起きている、世界的不均衡の円滑な調整を促進する我々の戦略を追求する目的をもって、世界経済の成長と安定のためのG8アジェンダに自らコミットした。これらの戦略は、G8各国における健全なマクロ経済政策と構造改革を含む。また、同戦略は、新興経済国の必要な貢献に関して、同諸国に対する明確なシグナルを含む。

金融市場のシステミックな安定性と透明性/ヘッジ・ファンド:我々はまた、金融市場の状況、特にヘッジ・ファンドに関する問題について議論した。ヘッジ・ファンドの金融市場の安定性への積極的な貢献に留意する一方で、我々は、すべての利害関係者により、透明性と市場規律を向上することにより、システミック・リスクを最小化することも望む。我々は、金融安定化フォーラム(FSF)の作業を歓迎し、その提言を歓迎し、今年10月以降、財務大臣へ報告することを期待する。

投資の自由、投資環境及び社会的責任:我々は、開放的で透明性の高い投資の自由への強いコミットメントをもって、投資に関する議論を終了した。G8は、新興経済国と同様に、国境を越える投資から相当な利益を享受する。我々は、ハイリゲンダム・プロセスにおいて、我々のそれぞれの国での、開放的でより好ましい投資条件を促進するために共に作業することに合意した。我々は投資がより有益で持続可能なものになるよう促進するため、一層の努力を行う。投資の関連で、我々は社会的責任に関する問題についても議論した。開放的な市場は、社会的な参加を必要とする。従って我々は、社会的基準、企業の社会的責任の積極的な促進、及び新興経済国と開発途上国における社会保障制度を強化する必要性に合意した。

イノベーションの促進‐イノベーションの保護:イノベーションは、我々諸国において、経済成長の重要な原動力の1つである。従って我々は、イノベーション及び研究開発を促進するため行動をとることに合意した。同時に、イノベーションは、世界的に保護される必要がある。知的財産権は、イノベーションの決定的な前提条件である。知的財産権の保護は、すべての国、特に開発途上国の消費者の中核的な関心事項である。従って我々は、新興経済国の首脳とともに、ハイリゲンダム・プロセスの一環として、これらの問題に取り組むことに合意した。G8として我々は、知的財産権保護の分野、特に税関及び法執行に関して、協力を強化することを決定した。我々はさらに、それぞれの民間部門を、海賊版や模倣品の需要と供給の両面に関する効果的な解決に関与させる。

気候変動とエネルギー効率及びエネルギー安全保障:気候変動との闘いは人類の主要な挑戦の1つであり、我々の自然環境と世界経済に深刻な悪影響を与える潜在性がある。我々は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最近の報告と研究結果に懸念をもって留意した。我々は、緊急に協調的な行動が必要であると確信し、気候変動の取組において、指導的役割を示すべき我々の責任を受け入れる。ハイリゲンダムにおいて我々が合意したすべての主要排出国を巻き込むプロセスにおいて、排出削減の地球規模の目標を定めるにあたり、2050年までに地球規模での排出を少なくとも半減させることを含む、EU、カナダ、及び日本による決定を真剣に検討する。

 我々は、国連の気候プロセスが、気候変動に関する将来の地球規模での行動を交渉するための適切なフォーラムであると合意した。我々は、このフォーラムで前進することにコミットし、すべての主要排出国を含むべき包括的な2012年以降(ポスト京都議定書)の合意に達するため、すべての締約国に対し、2007年12月にインドネシアで開催される国連気候変動会議に積極的かつ建設的に参加するよう呼びかける。気候変動の緊急な挑戦に取り組むためには、主要排出国が2008年末までに、新しい地球規模の枠組みに対する詳細な貢献について合意し、それが、2009年までに気候変動枠組条約の下における地球規模の合意に資することが必須である。我々は、気候変動の挑戦に対する最良の取組のあり方について、主要排出国を関与させる必要性を繰り返し述べる。我々は、更なる行動が、共通に有しているが差異のある責任、能力という国連気候変動枠組条約上の原則に基づくべきと強調する。

 技術、エネルギー効率、及び排出量取引制度または税制上のインセンティブを含む市場メカニズムは、エネルギー安全保障を強化するとともに、気候変動を抑える鍵である。我々は、サンクトペテルブルクで合意したエネルギーの安全保障原則を再確認した。我々は、新興経済国との議論において、エネルギー効率と技術協力が、フォローアップ対話の重要な要素になろうと合意した。

天然資源に対する責任:透明性及び持続可能な成長:我々は世界の商品市況と最近の価格上昇について議論し、自由で、透明性の高い、開放的な市場へのコミットメントを再確認した。我々は、一層の透明性を支援し、開発途上国における社会的、環境的基準に沿った良い統治を構築する。従って我々は、「採取産業透明性イニシアティブ」(EITI)への継続的な支援を表明し、認証制度の試験的研究を立ち上げる。我々は、開発途上国における国際的な鉱業分野に適用される統合された原則及びガイドラインの促進が、この分野が開発に資することを確保することに役立つと認識する。

腐敗との戦い:我々は、腐敗と戦うために創設された、特に国連や経済協力開発機構(OECD)の既存の国際協定の下における自らの義務を完全に履行することにコミットし、効果的に世界の腐敗と戦うための共通の努力を強化する。

貿易:我々は、ドーハ開発アジェンダ(DDA)について、野心的でバランスのとれた包括的な合意を達成する必要性を強調した。これは、先進国間、開発途上国及び先進国と開発途上国との間の世界貿易を促進し、多国間貿易ルールを強化するものである。我々は、取組の強化により立場の収斂が達成可能であり、これによって2007年末までのラウンド妥結に貢献するとの信念を強調した2007年4月12日のG6貿易大臣コミュニケに留意した。このような考えの下、我々は、DDAのすべての分野において高い水準の野心をもって取り組むことを誓うとともに、すべてのWTO加盟国に対して、交渉が迅速に成功裡の妥結に至るよう、建設的な柔軟性を示すよう呼びかける。政治レベルでの継続したコミットメントを具体的な成果に移す時が到来している。従って我々は、貿易を担当する閣僚、特に主導的な先進国及び主要な新興経済国の閣僚に対して、多国間での交渉がモダリティ合意に至るための堅固な土台を今後数週間の内に提供するよう強く求める。

II.アフリカにおける成長と責任

 2007年6月8日、我々は、アルジェリア、ナイジェリア、セネガル及び南アフリカの首脳並びにアフリカ連合議長(ガーナ大統領)、アフリカ連合委員長、NEPAD事務局長、エチオピア首相、及び国連事務総長と会い、「アフリカにおける責任と成長」の主要な要素について話し合った。アフリカのパートナーと共に、我々は、アフリカの開発を促進するという我々の共通の目的を達成するための我々のパートナーシップの目的と主要原則について合意した。

 我々の議論は、G8がいかにしてアフリカにおけるミレニアム開発目標の達成に向けて効果的に貢献し得るかに焦点をあてた。アフリカとのG8のパートナーシップの文脈で、我々は、「平和と安全」、「持続可能な投資」、「良い統治」及び「保健制度の改善とHIV/エイズ、結核及びマラリアとの闘い」という問題を相当詳細に扱った。我々は、アフリカの首脳と共に、我々は、パートナーシップ、相互説明責任及び信頼の精神のもと、及び新興経済国と共に行うことを含む、強化された国際対話を通じてのみ、これらの挑戦に取り組むことができることを確認した。我々は、開発の主要原則について合意した。我々は、金融市場を深化し、統治を改善し、及び貿易を可能にすることを含む民間部門の成長の重要性を強調した。我々は、特に、開発金融に関し、共同で、グレンイーグルズでなされたコミットメントを確認した。債務救済、革新的金融イニシアティブ、並びに民間部門の参加はこれらのコミットメントの達成に貢献する。

平和と安全:我々は、アフリカのパートナーと共に、長期的平和構築、及び暴力的な紛争の予防に関連する問題について話し合った。我々は、これまでに達成された進展と、「アフリカ平和・安全保障アーキテクチャー」を発展させ、暴力的なアフリカ内闘争を解決し、安定を確保するためのアフリカ待機軍を設立するためのアフリカ連合及びアフリカの準地域機関の取組を賞賛した。我々は、警察能力を含むアフリカ待機軍の文民部門の強化は、これに関して重要となることに同意した。我々は、これらの取組へのG8の継続的な支援が必要とされることに合意した。我々は、軍事的解決のみでは長期的に平和を確保することはできないことを確認した。むしろ、人間の安全保障と安定を促進するために必要とされる政治的、経済的及び社会的条件が目的とされなくてはならない。また、我々は、認可されていない不拡散及び非合法小型武器と闘い、天然資源の違法搾取を停止するためのAU及び準地域機関を支援することに合意した。我々は、他の開発パートナーと共に、アフリカ連合との我々の進行中の対話を継続、強化し、我々の努力の調和と一貫性を助長する。

経済成長と投資:我々は、勇敢な改革と改善された統治の結果としての、多くのアフリカ諸国における過去数年の顕著で安定した経済成長率を歓迎した。G8は、国内及び国際的な起業及び投資を奨励し、動員することによってこれらの積極的な発展を促進し、持続可能な成長に貢献したい。ミレニアム開発目標(MDGs)に到達するために、我々は、MDGに到達するための重要な触媒としてのODA、さらにより多くの持続可能な民間投資を必要とする。アフリカのパートナーが投資を促進することを支援するために、G8は、アフリカの金融を機能させるパートナーシップの構築を含む様々な手段を歓迎した。また、我々は、市場統合、及び国境をまたがるインフラをさらに促進させることを決定した。これらは、特に、地域経済共同体の能力構築への一層一貫して調和のとれた支持を通じて、促進される。我々は、アフリカにおける持続可能な開発のための主要な手段としての普遍的な初等教育の普及を加速させるとの我々のコミットメントを繰り返し述べた。

良い統治とアフリカとの改革パートナーシップ:我々は、特にアフリカ連合(AU)といった地域的、及び全アフリカ的機構に敬意を表し、全アフリカ及び地域レベルでのアフリカの機構をさらに支持するとの我々の強力な意思を明確にした。G8は、自発的にアフリカにおける統治改革を助長することを目的とするアフリカにおける相互審査メカニズム(APRM)の進捗を歓迎した。G8は、参加国の完全なるオーナーシップを認識かつ支持しつつ、NEPAD及びAPRMプロセスに対して、当初より支援を与えてきた。G8は、相互レビューを行う諸国及びAPRM勧告から生じる改革の実施に対し、追加的な支持を提供することに合意した。また、G8は、アフリカのパートナーと共に、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)を歓迎し、良好な財政統治のための行動計画を実施することに合意した。

保健システムの改善とHIV/エイズ、結核、マラリアとの闘い:我々は、質の良い保健サービスへのアクセスが、多くのアフリカ諸国において依然重要な課題であることを認識した。我々は、したがって、女性及び子供等の貧しく、脆弱なグループを含む全ての人のための適切な保健サービスの利用可能性に向けた作業することができるよう、保健システムを発展させ、強化することにおいてパートナー諸国を支援することに合意した。このプロセスを向上させつつ、G8は、国家財政戦略と調和のとれた国際的な支援を連携させることを通じて、保健システムの持続可能で公平な資金調達を具体化する。また、G8及びアフリカのパートナーは、保健分野における人的資源能力の欠如の異なる要因に取り組むことに合意した。

 G8は、普遍的なアクセスという目標、HIV/エイズ、マラリア、結核との闘いというミレニアム開発目標、並びに今後数年間で予想される少なくとも600億米ドルを提供することによって保健システムを強化することに向けた努力を拡大するとのコミットメントを再確認した。我々は、世界エイズ・結核・マラリア対策基金理事会によって見積もられた相当程度増加しつつある需要に注目し、世界基金が引き続き我々の完全な支持を享受することに合意した。我々は、進行中の増資ラウンドにおいて、予測可能で長期的な追加的資金を提供することについて合意した。G8は、HIV/エイズ感染の女性への影響拡大を認識し、女性と女子のニーズに特に活動の焦点をあてることに合意した。我々は、「普遍的アクセス」に向けた現実的なステップを提供するために、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、世界保健機構(WHO)、世界銀行、世界基金、アフリカ連合、アフリカ諸国、革新及びジェネリック製薬産業、民間ドナー及び市民社会を含む全ての関連する当事者と共に具体的に作業する。

 サンクトペテルブルクにおいて、我々は、HIV/エイズ、結核及びマラリアという3つの感染症に取り組む我々の作業を定期的にレビューすることに合意した。我々は、初めてこの監視行為に着手し、9月の世界基金増資会議において、我々の活動に関する情報を提供するための報告書を公表する。

 我々のアフリカ合同進捗報告書は、我々のアフリカとの関係の相互説明責任の印しであり、我々がすでに進展を遂げた分野を示したが、同時に、我々が迅速な進捗を遂げる必要がある分野を概説した。

III. 外交政策及び安全保障問題

テロ対策:我々は、テロ対策に関する声明を採択した。我々は、いかなる動機が申し立てられようと、すべてのテロ行為を断固として非難し、またそのような行為は正当化され得ないことを再確認した。我々は、テロリストの行為から生じている新しいまた継続中の脅威に対し効果的に対処するために、緊密に共同して取り組むことを約束した。我々は、テロリズムに対抗するために、更なる共同の取組に関する具体的な分野を明確にした。その取組には、例えば、近代的通信・情報技術のテロリストによる犯罪上の濫用への対処、重要なエネルギー・インフラの保護、交通保安の向上、テロリストの勧誘への対処、及び核テロリズムの防止が含まれる。我々は、テロリズムとの国際的な闘いにおける国連の中心的な役割に対する我々の支持を再確認した。この文脈で、我々は、国連のテロ対策の取組に対するG8の支援に関する報告を提出する。

不拡散:我々は、この問題に関する声明を採択した。大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散防止は、国際の平和と安全にとって極めて重要である。我々は、世界的な拡散上の挑戦に対抗するという我々の共通のコミットメントに引き続き決意を有する。これに関連し、我々は、すべての不拡散努力に対して規範的基盤を提供する多国間条約体制への我々のコミットメントを再確認する。成功するためには、我々は、他のパートナーと共に、あるいは関係国際機関、特に国連システムの国際機関を通じて、共同して取り組む必要があり、また、我々は、拡散上の挑戦に取り組む上での国連安保理の重要な役割について繰り返し述べる。我々はまた、核燃料サイクルに関する多国間アプローチのメカニズムを開発し、実施する重要性を強調する。これに関連し、我々は、声明の中で列挙されている提案されたイニシアティブを評価する。我々は、外交的な手段により、地域的な拡散上の挑戦を解決することに、引き続きコミットする。

グローバル・パートナーシップ:その活動期間の中間地点で、我々は、大量破壊兵器及び関連物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップにおいてこれまでにあった進展を検討し、これまで実施された協力事業の状況を評価した。我々は、5年前にカナナスキスで開始されたグローバル・パートナーシップを、現場における類のないかつ成功した共同の努力と考える。我々は、2002年のパートナーシップ開始以来進展があったことを認識した。我々は、我々の協力の有効性を高めるために、より多くのことを行う。中間的な検討に際し、我々は、カナナスキスでの我々のコミットメントを再確認し、また今後何年間かにわたり、グローバル・パートナーシップの地理的範囲、及びパートナーシップが2012年を越えて延長されるべきかにつき議論する。

核の安定と安全:原子力安全セキュリティ・グループ(NSSG)は、原子力安全及び放射線保護に係わる選択された事項に関し、技術的な裏づけのある戦略的政策助言を提供し、また、原子力発電所(例、アルメニア、ウクライナ)の運転に関する原子力安全上の改善プログラムにつき議論し、さらに、放射線源の安全及びセキュリティに関する国際的な活動を促進した。チェルノブイリに関するG8のコミットメントが再確認された。

コソボ:我々は、コソボの将来的地位に関する問題、及び2007年3月26日に国連事務総長により国連安保理に対して提出されたマルッティ・アハティサーリ国連特使による包括提案を扱った。内容及び今後の方向性については、引き続き異なる見解が存在する一方で、我々はこの問題に関与し続ける。

スーダン/ダルフール:我々は、スーダン/ダルフールにおける状況に関する声明を採択した。同声明は、スーダンにおける状況が引き続き紛争と闘争により特徴づけられていることに対する我々の深い懸念を反映している。我々は、特にダルフールにおける悲惨な治安と人道状況を懸念する。我々は、全ての当事者に対し、停戦合意及び国連安保理決議(UNSCR)1591のもとの義務、並びに国際人道法を遵守するよう強く促す。また、我々は、スーダン政府及び反政府勢力に対し、安全で妨げられない人道的なアクセスを確保するよう求める。我々は、ダルフールにおける紛争には軍事的な解決は存在しないことを強調し、政治的合意に達することを目的とする交渉を再開するための国連及びAUの両特使の取組を完全に支持する。我々は、スーダン政府及び反政府勢力に対し、このプロセスに完全に関与するよう要請する。交渉と人道的アクセスを可能にする環境を創出するために、治安状況は改善されなくてはならない。したがって、我々は、スーダン政府によるアフリカ連合スーダン・ミッション(AMIS)のための国連の重量支援パッケージの受け入れを歓迎する一方、我々は、ハルツームに対し、AUと国連のハイブリッド部隊の完全なる受け入れを表明するよう強く求める。最後に、我々は、仮にスーダン政府及び反政府勢力が義務の履行を怠り続けるようであれば、我々は国連安保理における適切な行動を支持することに合意した。

イラン:我々は、イランの核計画による拡散上の影響に関する我々の重大な懸念を改めて表明する。我々は、イランに対し、国際的な義務及び国連安保理決議1696、1737、及び1747、特にすべての濃縮関連活動を停止する義務を遵守するよう強く求める。我々は、安保理に対するIAEA事務局長の最新の報告に明示されたように、イランが濃縮計画を拡大したとの事実を深く憂慮する。我々は、イランに対し、中国、フランス、ドイツ、ロシア、英国及び米国を代表して2006年6月に提出された提案に取り組むよう強く求め、我々は、引き続き交渉による解決にコミットしていることを改めて表明する。我々は、イランに対し、交渉再開のための条件を満たすよう求める。仮にイランが引き続き安保理の求めに応じない場合には、我々は、安保理決議1747で合意された更なる適切な措置を支持する。我々はまた、イランに対し、中東においてより責任ある、建設的な役割を果たすよう求め、また、イラン政府によるイスラエルに対する脅迫及びイラン政府の代表によるホロコーストに関する度重なる否定を非難する。

中東和平プロセス:我々は、中東における包括的な公正かつ永続的な和平への我々の確固たるコミットメントを繰り返し述べる。この点で中心的な役割を果たす中東和平カルテットは、我々の完全な支持を享受する。我々は、ロードマップに従って、また国連安保理決議242、338、1397及び1515に基づいて、オルメルト首相とアッバース大統領との間の継続的な対話が、パレスチナ国家の建設に関する交渉の基礎を成すことを期待する。この文脈で、我々は、アラブ和平イニシアティブの再確認、及びこのイニシアティブに関しイスラエルと関与して行くとのアラブ連盟の意思を歓迎する。我々は、イスラエルに対する暴力、特にイスラエル南部に対する継続的なカッサム・ロケットの発射の即時停止、及び誘拐されたイスラエル兵士の即時解放を求め、また、すべてのパレスチナ諸派に対し、内部の暴力を停止し、停戦を尊重するよう強く求める。我々は、イスラエルに対し、これらの攻撃に対処する上で、自制し、また、国際法に反するあらゆる行動を控えるよう求める。我々は、パレスチナ自治区における深刻な経済、人道状況に関する我々の懸念を繰り返し述べ、また、イスラエルに対し、パレスチナの税還付を再開するよう求める。我々はまた、イスラエルにより拘束されたパレスチナ自治政府及び立法評議会の特定のメンバーの解放を求める。

レバノン:我々は、レバノン情勢を取り上げた。また、我々は、レバノンの主権、独立及び領土の一体性に継続してコミットする。我々は、合法かつ民主的なレバノン政府を完全に支持する。レバノン特別法廷の時宜を得た設立に関する国連安保理決議1757による決定に留意し、我々は、すべての国に対し、国連安保理決議1757(2007)に従ってレバノン特別法廷に完全に協力するよう求める。我々は、最近の暴力の発生につながったテロリストの攻撃を断固として非難する。我々は、すべての陣営に対し、レバノン政府及びレバノン国軍の権限を尊重し、またそれにより、ナフル・エル・バーリド情勢の悪化を防ぐことを緊急に要請する。我々は、その暴力により引き起こされた人道上の苦痛及び人命の損失を遺憾に思う。我々は、レバノンのすべての政治勢力に対し、対話を通じ、また同国の民主的制度を完全に尊重して、現在の政治的な危機の解決策を探ることを求める我々の要請を繰り返す。

イラク:我々は、イラク情勢につき意見を交換し、イラクの独立、主権及び領土の一体性に対する我々のコミットメントを改めて表明した。我々は、改めて、すべてのテロリズム行為、及び政治的動機に基づく暴力あるいは宗派間暴力を最も強い形で非難する。我々は、国民和解という目標及び長期的な地域の信頼醸成プロセスに向けた重要なステップとして、2007年5月3日及び4日のシャルム・エル・シェイクにおけるイラク・コンパクトの開始、及び近隣諸国との会合を歓迎する。

アフガニスタン:我々は、過去何年間にわたり、国際社会の支援を得つつ、アフガニスタン国民により成し遂げられた進展を歓迎した。我々は、自爆攻撃の増加を深く懸念し、アフガニスタン国家治安部隊及び国際治安支援部隊(ISAF)のメンバーの死を深く悼み、また、市民とアフガニスタンの治安部隊及び国際的な治安部隊に対する攻撃を強く非難する。我々は、アフガニスタンにおける国連の中心的な役割に対する我々の支持を表明し、国連のリーダーシップと関与の継続を奨励する。我々は、特に裁判所、警察、刑務所制度といった強力かつ信頼できるアフガニスタンの制度は、同国の将来にとり極めて重要であることに合意し、これらの分野における継続した支援にコミットした。我々は、欧州連合警察ミッション(EUPOLアフガニスタン)の立ち上げを、アフガニスタン国家警察の強化への重要な貢献として歓迎し、このイニシアティブに対し大きな資金を提供するというカナダの決定を歓迎する。我々は、依然として目の前に存在する諸課題に対する包括的なアプローチを支持し、また、我々は、アフガニスタンに関与し続けるとの我々のコミットメントを改めて表明し、アフガニスタン・コンパクトに基づき、麻薬やテロリズムの存在しない、安全で繁栄した国家を建設することに貢献する。この文脈で、我々は、法の支配の重要性、及び7月3日にローマにおいて、イタリア政府により主催され、国連及びアフガニスタンが共同議長を務める会議の重要性を強調する。我々は、地域の国々に対し、この努力に対し建設的に貢献するよう求める。この文脈で、我々は、5月30日のポツダムにおける、G8外相とアフガニスタン外相及びパキスタン外相との間の会合を歓迎し、彼らの「G8アフガニスタン‐パキスタン・イニシアティブに関する共同声明」を支持した。

ナゴルノ・カラバフ:我々は、ナゴルノ・カラバフを巡るアルメニアとアゼルバイジャンとの間の紛争の解決は、地域の平和と安定にとり極めて重要であるということに合意した。G8は、欧州安全保障協力機構(OSCE)ミンスク・グループ共同議長の努力を支持すると共に、アルメニア大統領及びアゼルバイジャン大統領に対し、OSCEミンスク・グループ共同議長により提案された基本原則について合意に達するための努力を増大するよう求める。この関連で、我々は、2007年6月9日のサンクトペテルブルクにおけるCIS会合の際に会談を行う両大統領の意思を歓迎すると共に、両大統領に対し、紛争の平和的解決への道を開くために、基本原則について早期に合意に達するよう求める。

北朝鮮:我々は、北朝鮮に対し、核兵器不拡散条約(NPT)上の義務を完全に遵守するとともに、2005年9月19日の共同声明及並びに安保理決議1695及び1718に従って、すべての核兵器及び既存の核計画並びに弾道ミサイル計画を放棄するよう求める。我々は、六者会合及び2005年9月19日の共同声明の誠実かつ完全な実施に向けた第一歩としての2007年2月13日に合意された初期段階の措置の速やかな実施を完全に支持する。我々は、北朝鮮に対し、拉致問題の早急な解決を含め、国際社会の他の安全保障及び人道上の懸念に対応するよう求める。

コロンビア:我々は、ここ数日にコロンビアで起きた最近の進展につき議論した。我々は、ロドリゴ・グランダ氏を含め、相当多数の囚人を解放するとのウリベ・コロンビア大統領の大胆で勇気ある決定を、前向きな人道的な措置として、認識し、歓迎した。

 これを背景として、我々は、コロンビア革命軍(FARC)に対し、FARCにより拘留されている人質、及びまだ解放されていないゲリラ戦闘員の解放につながる人道的解決に寄与する緊急の措置を検討するよう求める。我々は、すべての関係者に対し、これに関連するフランス、スペイン及びスイスの支援を引き続き最大限活用するよう求める。我々は、そのような人道的な解決が、すべてのコロンビア人へ恩恵をもたらす和平プロセスの再開への道を開くことへの期待を表明した。

G11:我々は、2007年後半に、G8議長国のドイツがG11の議長国であるヨルダンと会合を持つことを歓迎する。

IV.

2008年G8サミット:我々はまた、2008年7月に日本の北海道洞爺湖において次回サミットを主催するとの、日本国総理の申し出を歓迎する。