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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 不拡散に関するハイリゲンダム声明(第33回ハイリゲンダム主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] ハイリゲンダム
[年月日] 2007年6月8日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散防止、及び国際的なテロリズムとの効果的な闘いは、国際の平和と安全にとって極めて重要である。世界的な拡散上の挑戦に対抗するという我々G8首脳の共通のコミットメントは引き続き決然たるものであり、これまでのG8サミットの際に発出された不拡散に関するすべての声明を引き続き支持、実施する。

2.世界的な拡散上の挑戦は、幅広く多面的なアプローチに基づく断固たる行動と国際的な協力を必要とする。成功するためには、我々は、大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散との闘いに利用可能なあらゆる手段を強化すべく、他のパートナーと共に、あるいは関係国際機関、特に国連システムの関係国際機関を通じて、共同して取り組む必要がある。

3.我々はまた、拡散活動の根底にある要素に対処するため、安定的な国際及び地域環境を引き続き促進する。

4.我々は、あらゆる不拡散努力に対して規範的基盤を提供する多国間条約体制へのコミットメントを再確認する。したがって、核兵器不拡散条約(NPT)、化学兵器禁止条約(CWC)、生物・毒素兵器禁止条約(BTWC)といった大量破壊兵器関連条約を強化し、普遍化することは、重要な優先事項である。これら3条約は、国際の平和と安全を維持する極めて重要な手段であり続け、また、国際的な不拡散・軍縮体制の礎石である。

5.我々は、引き続き、各国に対し、多国間条約体制の下の義務を履行するよう奨励し、また、各国が、特に機微な物質について使途を明らかにし、セキュリティを確保し、物理的に防護することによって国家レベルでそれぞれの義務を効果的に実施することを支援する。我々は、特に法執行に関する能力構築及び効果的な輸出管理の確立・執行を通じて、また拡散に対する安全保障構想(PSI)を通じて、大量破壊兵器関連物質及びその運搬手段の不法取引と闘うための効果的な措置の採用を特に強く求める。

6.我々は、大量破壊兵器拡散ネットワークに関連する金融取引・資産を特定・追跡・凍結するための協調的な手続を発展させるとのグレンイーグルスにおける我々のコミットメントを再確認する。我々は、国連安全保障理事会決議1540、1695、1718、1737及び1747を含む決議が、すべての国に対して大量破壊兵器拡散に対抗する行動を取るよう要求していることに賛同し、また、各国に対し、大量破壊兵器拡散に関する資金調達に対抗する義務及び責任を果たすよう要請する。

7.我々は、拡散上の挑戦に対処する上での国連安保理の重要な役割について繰り返し述べる。この点に関連し、我々は、すべての国々による国連安保理決議1540の完全な履行の重要性を強調し、また、我々は、ベスト・プラクティスの共有を含め、1540委員会の努力に対する我々の支援を繰り返し述べる。

8.5年前にカナナスキスで開始された大量破壊兵器及び関連物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップは、類のないかつ成功した共同の努力である。その活動期間の中間地点で、我々は、これまでの進展を検討し、実行された協力事業の状況を評価した。我々は、2002年のパートナーシップ開始以来成し遂げられた進展を認識するが、我々の協力の効率を高めるためには、さらに多くのことがなされなければならない。我々は、カナナスキスの目標を達成することに固くコミットし続ける。我々は、パートナーシップを2012年を越えて延長すべきかにつき然るべき時期に議論し、仮に延長すべき場合、国連安保理決議1540により権限を与えられているものを含めた世界的な脅威削減及び不拡散の要請に対処するためにその対象を拡大するための手段をどのように配分するかにつき、然るべき時期に議論を行う。我々は、他の国々、即ち援助国及び受益国の双方がいかに拡大されたグローバル・パートナーシップに含められ得るかにつき、議論する。

9.我々は、軍縮会議の停滞を打破するために取られている努力を強く支持する。我々は、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の早期交渉開始に対する我々の支持を再確認する。

10.我々は、多国間条約体制の遵守を確保することが極めて重要であることを強調する。そのため、我々は、検証及び執行を強化する必要がある。我々は、IAEA包括的保障措置協定及び追加議定書を、NPT上の平和的利用の保証のための普遍的に受け入れられた検証基準とするための努力を継続することにコミットしている。我々はまた、特にCWC及びBTWCの双方に関し、各締約国による完全かつ効果的な国内実施、及び義務の完全な遵守を促進することによって、両条約の実施をより効果的にすべく取り組む。我々は、拡散上の挑戦に対処し、また違反の結果に対する最終的な裁決者としての役割を効果的に果たす上での国連安保理の実効性を強化することにもコミットしている。

11.我々は、核不拡散体制が深刻な挑戦に直面していることを認識する。我々は、したがって、NPTの3本柱すべての目的及び義務に対する完全なコミットメントを再確認し、その普遍化に向けて引き続き取り組む。我々は、すべてのNPT締約国に対し、2010年NPT運用検討会議第一回準備委員会をもって成功裏に開始された、バランスの取れた、かつ組織だった条約運用検討プロセスに対し、建設的に貢献するよう求める。我々は、NPT体制の権威、信頼性、及び一体性を維持、強化するために、運用検討プロセスが前向きな成果を達成するべくあらゆる努力を行う。

12.我々は、すべての関係国に対し、核兵器の実験的爆発又は他の核爆発のモラトリアムを遵守するよう求める。

13.我々は、NPTのすべての義務に従って同条約第4条に規定された平和目的のための原子力の利用を行うというすべての締約国の奪い得ない権利を再確認する。濃縮及び再処理関連の資機材及び技術の普及に伴う拡散上の危険を減少させるため、我々は、濃縮及び再処理関連の機材、施設及び技術の移転管理を強化するためのメカニズムに関する原子力供給グループ(NSG)による継続した議論を歓迎する。我々は、彼らが、サンクトペテルブルクにおいて要請されたように、2007年までにこの問題についてコンセンサスに至らなかったことを残念に思う。我々は、NSGに対し、作業を加速化し、速やかにコンセンサスに達するよう求める。我々は、NSGが2008年までに適切な基準に関しコンセンサスに達しない場合には、濃縮及び再処理関連の資機材と技術の移転に伴う拡散上の危険を削減させるための別の戦略を真剣に検討するとの了解に立って、これまでに合意された行動を引き続き取ることに合意する。我々はまた、自国の濃縮・再処理活動を追求することのあり得べき代替として、核燃料サイクルに対する多国間アプローチのメカニズムを開発し、実施することの重要性を強調する。昨年9月のIAEA特別行事に続き、我々は現在、IAEA事務局長が今月後半、IAEA理事会に提出する予定の提言を期待している。その提言を考慮するにあたり、我々は、不拡散体制に対する付加価値、供給保証の確実性に対する信頼、NPT第4条との整合性、そして既存の商業市場の機能に対するあらゆる不必要な介入又は妨害の回避の必要性といった基準を踏まえることとなろう。この文脈で、我々は、原子力の平和的利用のため、不拡散、安全及びセキュリティの可能な限り最も高い基準が遵守されるよう確保することへの我々のコミットメントを再確認する。我々は、核燃料サイクル・サービス提供のための国際センターに関するロシアのイニシアティブ、国際原子力エネルギーパートナーシップに関する米国のイニシアティブ、核燃料供給保証に関する六カ国提案、IAEA核燃料供給登録システムに関する日本のイニシアティブ、取り消し不可能な事前輸出許可に関する英国の提案、及びIAEAの排他的管理の下、商業ベースで濃縮が行われる特別区域を設立することに関するドイツのイニシアティブを含む、核燃料サイクルに関する多国間アプローチの分野において提案された諸イニシアティブを評価する。我々は、多国間アプローチを扱ういかなるメカニズムへの参加も自発的に行われるべきであり、また、これらのメカニズムへの参加が、いかなる国も多国間メカニズム以外に既存の市場で核燃料サイクル・サービスを取得することを排除すべきではないことを繰り返し述べる。

14.我々は、外交的手段によって地域的な拡散上の挑戦を解決することにコミットしている。我々は、イランの核計画により引き起こされる拡散上の懸念を解決することへのコミットメントに関し結束し続ける。我々は、イランが現在に至るまで安保理決議1696、1737、及び1747の下での義務を遵守していないという事実を遺憾に思う。仮にイランがこれらの義務の遵守を拒む場合には更なる措置を取ることを支持する。我々は、イランに対し、国際社会によって要求され、これらの安保理決議により義務化されているところの、研究開発を含むすべての濃縮関連・再処理活動を停止するための措置を取り、交渉が開始されることを可能ならしめるよう、再度求める。イランの核計画が専ら平和目的であるという国際社会の信頼があれば、原子力分野のみならず、政治、経済、技術の一層幅広い分野において、対イラン関係の全く新しい一章が開かれることが可能となるだろう。この点に関連し、我々は、IAEAの活動を支持し、イランに対しIAEAに全面的に協力するよう要請する。

15.朝鮮半島に関しては、我々は、六者会合、及び未解決の懸案事項の解決を含む2005年9月19日の共同声明の完全な実施に向けた第一歩としての、2007年2月13日に合意された初期段階の措置の速やかな実施を、引き続き支持する。同時に、我々は、国際の平和と安全に対する明白な脅威である北朝鮮の核実験を非難する。我々は、北朝鮮に対し、国連安保理決議1695及び1718を遵守し、更なる核実験・ミサイル発射を厳格に差し控え、すべての核兵器及び既存の核計画並びにその他すべての既存の大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画を完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で放棄するよう求める。我々は、北朝鮮に対し、NPT及びIAEA保障措置の完全な遵守に復帰するよう求める。同時に、我々は、すべての国が国連安保理の諸決議を完全に履行することを期待する。

16.我々は、我々のインドとのパートナーシップ強化を期待する。我々は、インドの行ったコミットメントに留意し、また、インドに対し、グローバルな不拡散体制を向上、強化するような形で、インドのエネルギー需要に対処するための原子力協力に向けた更に前向きなアプローチを円滑にするためにも、不拡散体制の強化の主流に加わる更なる措置を取ることを慫慂する。

17.核テロリズムの脅威は、引き続き我々にとって深刻な懸念事項である。したがって、我々は、昨年サンクトペテルブルクで立ち上げられた核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブへの参加を拡大し、さらに発展させることにコミットしている。我々は、すべてのEU加盟国に対しイニシアティブに参加するように、EUに対し我々の努力を支援するように、また、EU機関に対しオブザーバーとしてイニシアティブに参加するように要請する。我々は、すべての国々に対し、2006年10月30日、31日のラバトにおける同イニシアティブの会合において採択された「原則に関する声明」を支持し、また、国内の司法当局や関連の国際的な法的枠組の下の義務に従って、この脅威に対する我々の準備と防御を強化することに参加するよう求める。我々は、核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約及び18.改正された核物質の防護に関する条約の未署名・未批准国に対し署名・批准を行うよう要請する。

今年は、国際的な検証の下、また特定の期限内に、世界を一つの範疇の大量破壊兵器から完全に解放する初めての軍縮条約であるCWCが発効して10周年に当たる。この記念の年は、これまでの同条約の実施を評価し、2008年4月に開催が予定されている第二回運用検討会議の準備をする機会となる。我々は、同会議において、締約国が条約の義務の完全な遵守及び条約により確立された制度の更なる強化へのコミットメントを再確認すべきであると信じる。

19.兵器としての生物剤及び毒素の使用の可能性を完全になくすことを決意して、我々は、BTWCの有効性を強化する上で多大な貢献をした2006年の第6回BTWC運用検討会議の成果を歓迎する。我々は、その会議によって取られた決定を完全に遵守し、2011年の次回の運用検討会議までの会期間に行われる会議の成功裏の成果に向けて作業することにコミットする。

20.我々は、引き続き、大量破壊兵器の運搬手段の拡散により引き起こされる脅威に対処するための努力を推進する。この点に関連し、我々は、弾道ミサイルの拡散に対するハーグ行動規範の実施に引き続きコミットし、他の参加国もこれにならうよう求める。我々はまた、同規範をより効果的にする意志を有し、また、同規範に未参加のすべての国々に対し、遅滞なく参加するよう求める。