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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 安倍晋三内閣総理大臣の日・EU定期首脳協議及びG8ハイリゲンダム・サミット出席に関する内外記者会見(第33回ハイリゲンダム主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] ハイリゲンダム
[年月日] 2007年6月8日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

平成19年6月8日

【安倍総理冒頭発言】

 今回のハイリゲンダム・サミットは、私にとって初めてのサミットであったが、首脳間の率直な、そして熱心な議論に私も参加し、会議の成功に貢献できたのではないかと思う。

 特に、今回のサミットにおいては、気候変動への対処が大変大きな、そして重要なテーマであった。私は、このサミットに先立って、中国の温家宝首相やブッシュ大統領と気候変動対策の重要性の認識を共有し、また、先月24日に、「美しい星50」を私の温暖化対策のイニシアティブとして発表し、世界に呼びかけてきた。サミット直前の会談においては、ブッシュ大統領に、2050年における50%の排出量の削減の重要性につき話をし、また私の提案について改めて説明し、メルケル首相ともコンセンサスを得ることの重要性等について突っ込んだ話合いを行った。

 サミットの場においても、このイニシアティブの中核である2050年までに排出量を半減するという目標や、「主要排出国の参加」、「各国事情への配慮」、「環境と経済の両立」という三原則について、これを次期枠組みづくりにおける原則として説明した。その結果、サミットでの実際の議論自体が、私が提案した点を軸として行われ、日本の提案自体が首脳文書に盛り込まれた。サミットの議論や成果に大きな貢献を果たすことができたと充実感を感じている。

 また、本日お会いした新興国のリーダーから、私が提案した「資金メカニズム」について強い期待が表明されたことも申し上げておきたい。

 今後、日本としても気候変動問題に取り組む上で、責任を果たしていかなければならないと思う。今回、このサミットの文書の中にも日本の提案が書き込まれた以上、私たちには大きな責任があると思う。まずは京都議定書の目標達成のために全力を尽くしていきたい、そのための国民運動1人1日1KgのCO2削減を呼びかけていきたいと考えている。

 北朝鮮の問題については、私が議論をリードした。北朝鮮の核保有は断じて認められないということ、そして拉致問題は国際的な広がりのある問題であり、重大な人権侵害である、そしてまた国家的な犯罪であるということを申し上げ、そしてG8が連携して強い対応をとるべきであると主張したところである。その結果、参加国首脳の支持を得て、議長総括を発出することができたと思う。 

 今回の訪問中、日・EU定期首脳会議を始め、メルケル首相、ブッシュ大統領、サルコジ大統領、プーチン大統領、胡錦涛国家主席と各々有意義な会談を行うことができた。そしてこの後、潘基文国連事務総長とも会談を行う予定である。

 来年は、日本がサミットの議長国になるが、北海道洞爺湖から世界に日本の素晴らしい自然を発信していきたい。テーマについては、「環境立国・日本」として、環境、気候変動問題を主要な課題として取り上げていきたいと思う。そして、今回のハイリゲンダム・サミットの成果は、来年のサミットに向けて、大切な基礎になるであろうと思う。この基礎の上に大きな成果を得るべく努力を積み重ねて参る所存である。そしてまた、サミットの運営においては、徹底的に環境に優しいサミットにしたいと考えている。そしてまた、日本は世界で最先端の省エネ技術・環境技術を持っている。日本の技術とノウハウのショーケースにしたいと思っているし、世界各国のプレスの皆様にも、是非体験して頂きたいと考えているので、楽しみにしていただきたいと思う。

【質疑応答】

(質問)

 総理はたった今、胡錦涛中国国家主席と日中首脳会談に臨まれてきたが、その中で、例えば温暖化問題、それから東シナ海のガス田開発問題、あるいは台湾の李登輝前総統の訪日問題などについてどのようなやり取りが行われたか。そして特に温暖化問題につき、昨日、G8は一定の合意に達したが、今後は先進国と途上国との責任というのは別の責任があると主張する中国を如何に同じ土俵に引っ張り上げてくるかというのがひとつの大きな焦点になると思う。決して容易ではないとは思うが、今後中国に対し、総理はどのような手段をもって同じ枠組みへの参加を促していくのか。

(安倍総理)

 先ほど胡錦濤主席と首脳会談を行った。日中関係を戦略的互恵関係として発展させていくことで一致しているが、地域の課題、そして世界の課題に対してともに努力して取り組んでいく、そういう関係を作っていく、という考えの下会談を行った。そして、今質問のあった、李登輝氏の訪日については全く話題には上らなかった。気候変動の問題であるが、改めて私から胡錦濤主席に対して日本の提案について説明した。日本の提案である、「美しい星50」について話をし、説明した。その私の説明に対して、胡錦涛主席から日本のこの提案に対して、真剣に検討する、協力を強化していきたいとの話があった。この環境問題は、まさに日中が協力をしていくことによって両国の国民、地域の国民が利益を得る課題であり、戦略的互恵関係を作っていくにふさわしい分野であろう。私は、主要排出国が参加する枠組みを作っていくことを主張しており、大体G8においても理解を頂いている。まさに主要な排出国である米国、中国、インドといった国に対して更に協力を訴えていきたい。また、温家宝総理が来日された際、そうした枠組みを作っていく、枠組み作りに参加をしていく、ということを含む共同声明を発出することができた。胡錦濤主席も述べていたように、協力を強めていきたい。

 東シナ海の資源開発問題について、本年秋に向けて協議を加速させていく、両国がお互いに受け入れ可能な案を検討していくよう両国の首脳がそれぞれ担当者に指示をしていこう、加速していこう、ということで一致をした。そしてまた、日本からの米の輸出の話について、私は、これはまさに日中の互恵関係が進んでいくという象徴になるだろうと話をしたところ、胡錦濤主席も、是非この日本の米の中国への輸出を両国関係の発展に生かしていきたいという話があった。

(質問)

 先程、安倍総理は北朝鮮問題につき述べた。核問題やミサイル発射問題という問題も世界にとって非常に危険な問題であるが、人権問題という意味で、拉致問題は一部解決されたものの、まだ解決されていない。総理は昔からずっとこの問題について色々と貢献されてきているが、北朝鮮問題に関しては、日本の場合は経済制裁、米国は金融制裁、今度、ロシアもプーチン大統領が制裁を行うと言っている。ところが、EUは人権問題に敏感な割に、この問題につき少し弱いような気がする。ドイツについては、メルケル首相は東独で人権問題に大変苦労されたし、またドイツ出身のローマ法王等もその点ではいろいろ貢献しているが、その辺が少し弱い感じがする。総理はどのようにその辺をTake careされたのか。

(安倍総理)

 拉致問題については、13歳の少女を含む多くの日本人が拉致された、許しがたい国家的犯罪である。この拉致問題の深刻さ、そして重大な人権侵害であるということをG8の会議においても私は申し上げた。この問題に対する各国の理解は大分進んできたと思う。この拉致問題は日本だけの問題ではなく、実は日本以外の国々からも拉致されている、国際的な広がりを持っているということについても説明をした。私の説明に対して各国から理解と支持を頂いた。そしてその結果として、議長総括において、拉致問題の早期解決を含む力強いメッセージとなって、これを発出することができたと思う。今後も、このG8の成果も踏まえ、人権を重視するEUとも協力をしながら、国際社会と連携して、この問題の解決に、私は鉄の意志を持って当たっていきたいと思っている。

(質問)

 引き続き北朝鮮の問題に関係するが、北朝鮮は、前回のサンクトペテルブルグのサミットの際もミサイルについて強い非難を受けたが、その後も同じようなことを繰り返している。北朝鮮に対してどのような対応を求めていくのかについて改めて伺いたい。加えて、今回のサミットでは、北朝鮮問題だけではなくコソボ問題、アフガン問題、中東問題など色々な問題が提起された。来年、日本はG8の議長国である。その中で、日本が指導力を発揮していくためにも、その他の諸問題について具体的に積極的に関与していくという考えはあるか。人的貢献の有無も含めて具体的に回答いただきたい。

(安倍総理)

 北朝鮮の核の問題については、六者会合の初期段階の措置を未だにとっていないということは極めて遺憾なことである。そして、まさに北朝鮮の非核化が最終的な目的であり、その目標を達成するために国際社会が連携して強いメッセージを発出していかなければいけないし、時には圧力をかけていく必要がある旨をG8の会議で申し上げた。各国のリーダーから、私の考えに対して、支持を得たところである。拉致問題と併せて、G8として、メッセージを発することができたのではないかと思う。

 そしてまた、私は「主張する外交」を展開している。志を同じくする国々と国際社会、国際的な課題について共に取り組んでいくということも申し上げている。アフガニスタン問題、復興についても、既に12億ドルの支援、そしてまたインド洋における海上自衛隊の活動を行っているが、さらにこれに加えて、PRTと連携して人道分野で協力をしていくという仕組みを構築した。これは、NATOの北大西洋理事会において私が演説をし、そういう仕組みを構築してきたということである。またイランの核問題の解決に向けた働きかけ、或いはスーダンにおける平和の定着支援等にも積極的に取り組んでいきたいと思う。こうした課題についても、G8の会議の場において、日本が考えていること、日本ができることについて主張又は話をしたところである。今後、資金の面、また、そうした復興支援について人的貢献は積極的に行っていかなければならないと考えている。

 次のサミットは日本で開催をされる。当然、サミットの議長国としては、こうした国際的な課題について日本としても責任を果たしていく必要があると考えている。

(質問)

 総理、先ほどご指摘の中で、李登輝氏の訪日に関しては、中国との話し合いでは出てこなかったということだが、これは日中関係が新しい段階に入り、そのような小さな問題はもはや両首脳に大きな影響を及ぼさないということか。

(安倍総理)

 日中関係を発展させていく、安定的に発展をさせていく、ということは両国の共通の認識になってきたと思う。両国がお互いに協力していくことは両国の利益だけではなく、地域社会にとっても極めて重要であり、両国はそれぞれ地域社会に責任を負う国としてその責任を果たしていかなければいけないとの認識が深まってきたと思う。私も昨年中国を訪問し、胡錦涛主席とお目にかかった。そしてその後、APECにおいて、ハノイで会談を行い、今度、このG8の場で会談を行うことができた。また、温家宝総理も本年4月に来日した。政治的な対話も大変安定的に進んでいる。もちろん、国民の間では毎日1万人以上が交流をしている。まさに国民の交流は相当程度進んでいるし、経済は切っても切れない関係にあると、そういう関係をしっかりと両国の国民、そして政治のレベルで認識ができている結果、両国の関係は大変安定していると思う。