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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アフリカ進捗報告書(アフリカに関するG8首脳個人代表(APR)によるアフリカ共同進捗報告書)(第33回ハイリゲンダム主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] ハイリゲンダム
[年月日] 2007年6月8日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

平成19年6月8日

1.G8のコミットメント

 G8は、長きに亘ってアフリカ開発にコミットしており、アフリカはG8ハイリゲンダム・サミットの議題において再び優先課題となっている。アフリカの政府が必要な改革を継続する中、開発パートナーは、彼らのコミットメントの、時宜を得た、そして、調整された実施に取り組んでいる。しかしながら、我々がミレニアム開発目標(MDGs)達成の中間年を迎えるにあたり、全ての当事者による更なる努力が求められていることは明らかである。

2.G8・アフリカ・パートナーシップ‐開発と挑戦

 G8は、アフリカ連合(AU)、NEPADプログラム、地域経済共同体(RECs)、強化されたアフリカ開発銀行(AfDB)、並びに全アフリカ議会、人及び人民の権利に関するアフリカ裁判所、アフリカにおける相互審査システム(APRM)等のアフリカ全土の統治に関する新たな柱を中心とする、アフリカ大陸における新たな制度環境の出現を強く支持してきた。新たな当事者がますますアフリカに関与するようになったことに伴い、アフリカ・パートナーシップ・フォーラム(APF)及びOECD開発援助委員会(DAC)は、対話のための良好なプラットフォームを提供してきた。G8は、国家・地域の開発政策との全面的な協調及びパリ・アジェンダの実施において進展を遂げている。

3.責任ある統治の促進

 26のアフリカ諸国がAPRMプロセスに参加しており、これに対しいくつかのG8パートナーは財政的に貢献するとともに相互審査を行っている個別の国家を支援してきた。3カ国が審査プロセスを完了し、13の他の諸国において相互審査が開始されている。G8メンバーは、選挙監視団の派遣を通じたものを含む民主的プロセスを支援している。一部のG8パートナーは、より良い男女共同参画を促進する手段として女性の経済的地位向上に焦点を当てる世界銀行ジェンダー行動計画を支持してきた。G8メンバーは、40以上のアフリカ諸国により批准された国連腐敗防止条約(UNCAC)の履行にあたり、国家及び非国家の主体を支援してきた。G8諸国の中には、現在18のアフリカ諸国が参加し、750万米ドル相当の「採取産業透明性イニシアティブ」(EITI)を支援してきた国がある。また、G8諸国の中にはEITIドナー・グループに参加するつもりの国もいる。

4.平和と安全

 G8は、アフリカ待機軍(ASF)の創設を支持し、平和支援活動の後方支援、通信部門、文民部門等の分野におけるASFのための戦略やガイドライン策定に焦点を当ててきた。現在、AU主導の平和支援活動がダルフール/スーダン(AMIS)、そして最近ではソマリア(AMISOM)において展開中である。長期的な戦略と信頼性のある資金調達メカニズムの創設を支援することが、次の重要なステップである。賢人パネルが正式に創設され、AU大陸早期警戒システムの強化に向けた工程表における進展が見られている。G8メンバーは、2006年10月に発足した国連平和構築基金に対するプレッジを行った。また、G8は、小型武器の不法な蓄積と違法売買を取り締まる国内法を強化するいくつかのアフリカ諸国の取組を強く支持した。

5.アフリカ大陸のための経済成長促進

 G8は、マイクロファイナンス、民間部門の開発関連機関への支援、及びビジネス環境向上を目的とした構造改革への支持を含む、アフリカにおける経済成長と投資を促進するための様々な措置に焦点を当ててきた。G8は、アフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ(EPSA)、国際金融公社(IFC)の外国投資相談サービス、NEPAD‐OECDアフリカ投資イニシアティブ、及び投資環境ファシリティ(ICF)等の投資環境に取り組むイニシアティブを、個別及び集団的に、支持し続けることに合意した。G8は、改善されたドナー協調を通じて効率性を促進するアフリカ・インフラ・コンソーシアム(ICA)への資源及び財政的貢献を増加してきた。世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンド交渉を成功裏に妥結すること、また、後発開発途上国(LDCs)のための無税無枠のアクセスや、原産地規則の単純化、貿易のための援助(“aid for trade”)に関するコミットメントにおいて進展がみられることが、非常に重要である。G8は、包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)への支持を強化すべきである。

6.人々への投資

 国際社会は、2010年までにHIV/エイズ予防、治療、ケア、支援への普遍的なアクセスという目標に向け作業することを約束した。我々は、母子感染への取組を含む、感染症の女性への影響の拡大に取り組む努力を新たにしなければならない。これまで、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)は136カ国において76億米ドルをコミットメントしてきた。それは、効果的に作業を継続するため、他のドナーと協調した必要な複数年次拠出を必要とする。G8は、長期的計画への支持、関連機関間のより良い協調を通じたものを含み、保健システムを強化するアフリカの取組をより広く支援しなければならない。教育に関しては、19のアフリカ諸国の教育計画が「万人のための教育」のファースト・トラック・イニシアティブ(EFA‐FTI)の下で承認され、2007年5月の時点で、14カ国が各自の計画実施のための資金援助を受けている。G8は、FTIに承認された諸国が、持続可能な能力を開発し、持続可能な教育戦略を追求するための資源を特定するための取組を再確認すべきである。

7.天然資源管理

 G8は、気候変動問題及び適応戦略の実施において、途上国と協力することの重要性を強調した。G8は、水及び衛生、並びにエネルギーへのアクセスの促進を支持する。また、G8は、クリーン・エネルギー投資枠組のアフリカ関連部分への支援を通じ、クリーンなエネルギーへの移行を支援することを必要とし、クリーン・エネルギー投資の流れへのアフリカ諸国の参加拡大のための選択肢を追求する。G8は、持続可能で、購入可能で安全なエネルギー供給及び使用、並びに持続可能な管理及び生物多様性の保護の促進においてアフリカを支援する。

8.援助資源

 多くのアフリカ諸国は、重債務貧困国(HIPC)イニシアティブ及び多国間債務救済イニシアティブ(MDRI)の下で、既に100%の債務帳消しの恩恵を受けている。MDRIの下で、18のアフリカ諸国が既に100%の債務救済を受け、他の15のアフリカ諸国も必要な基準に到達した際には同様の債務帳消しを受ける。我々は、アフリカへの援助を倍増するというグレンイーグルズでのコミットメント、すなわち、OECDの予測る2010年までの全世界で年間500億米ドルの増額の一部としての250億米ドルの追加実現において、他のドナーと協力を続ける。

9.結論

 我々は、我々自身をアフリカの力強いパートナーであると見なし、アフリカに対する我々のコミットメントを実現すべく作業を続ける。アフリカの改革は、アフリカ全土、地域、及び国家レベルにおける強靱なアフリカのオーナーシップに支えられたときに限り、成功する。我々は、このパートナーシップをさらに発展させたい。我々は、アフリカのオーナーシップ及びパリ・アジェンダのアプローチに沿って、制度的に及び手段として、協力メカニズム整備を継続する必要がある。アフリカ・パートナーシップ・フォーラム(APF)は、共同して取り組む分野を特定するための包括的なハイレベルの政治対話フォーラムとして確立、さらに強化され、相互説明責任のためのプラットフォームとして機能するべきである。ベルリンでの第8回APFにおいて、我々は、アフリカのパートナーとともに、気候変動、投資、平和と安全、男女共同参画に関する重要な勧告について議論した。我々APRは、G8とアフリカの対話の潜在力を満たすための我々の共同の行動を強化する必要がある。