データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 新・ゴミゼロ国際化行動計画‐3Rを通じた循環型社会の構築を国際的に推進するための日本の行動計画‐(G8環境大臣会合)

[場所] 神戸
[年月日] 2008年5月25日
[出典] 環境省
[備考] 
[全文]

1.はじめに

 現在、世界は、経済社会活動の拡大とグローバル化に伴って、開発途上国を含めて廃棄物問題の深刻化と資源の需要拡大による価格高騰・供給の不安定化という課題に同時に直面している。また、こうした状況は、温室効果ガスの排出による地球温暖化問題等、環境負荷の増大にも密接に関係している。

 このため、先進国はもとより開発途上国においても、廃棄物の適正処理と3Rを推進することにより、各国内及び国際間での健全な資源循環を通じて、限りある資源を効率的に利用し、環境への負荷を低減させていくことが期待されている。また、そうした循環型社会の構築に当たっては、常に持続可能な社会の構築に向けた視点を持ち、低炭素社会及び自然共生社会に向けた取組と統合した取組を国際社会が連携・協力して進めていくことが求められている。

 2004年の米国でのシーアイランド・サミットにおいて、日本が提案し合意された「3Rイニシアティブ」のもとで、3R推進の重要性に関する世界各国の認識が深まり、G8各国はもとより、アジア地域の諸国においても、我が国や国際機関による連携・協力が進められていることなどにより、3Rの具体的な取組が進展してきている。2008年5月に神戸で開催されたG8環境大臣会合において、G8各国による3R推進のための更なる行動が議論された機会に、循環型社会の構築を国際的に推進するために日本が今後実施する取組を「新・ゴミゼロ国際化行動計画」としてとりまとめ、ここに公表する。

2.循環型社会の構築の国際的な推進に関する我が国の基本的考え方

 我が国は、第2次循環型社会形成推進基本計画(2008年3月閣議決定)に基づき、国内における循環型社会の構築のための取組を一層充実することとしている。そうした3R・廃棄物管理の先進的な制度、優れた技術・システム、各主体の取組と連携の経験を、知的所有権の確保にも留意しつつ、各国に適した形で総合的に展開することにより、循環型社会の構築の国際的な推進に主導的役割を果たしていくこととしている。

 3Rを通じて循環型社会の構築を国際的に推進するに当たっては、まず、各国内で廃棄物の適正処理及び3Rの推進によって循環型社会を構築し、同時に、廃棄物等の不法輸出入防止に取り組む。その上で、それらの措置の実施を前提に、国内循環の補完として、循環資源の輸出入の円滑化を図ることが我が国の基本的考え方である。以下、この基本的な考え方に沿って、我が国の具体的取組を示す。

3.具体的取組

(1)各国のニーズに応じた廃棄物の適正処理と3Rの統合的推進の支援{(1)より以下ここまで囲み線あり}

(a)各国のニーズを踏まえた戦略づくり支援及び政策対話

●3R国家戦略策定支援を通じて各国のニーズを把握し、開発援助機関、国際金融機関に対して3R国家戦略を踏まえた取組の促進を奨励。 

●3R国家戦略策定の経験をメコン流域諸国、南アジア諸国等に普及させ、これらの国における戦略策定を促進。

●中国、韓国、シンガポール等の廃棄物・リサイクル担当部局との間の政策対話を進め、各国の政策立案や実行能力の強化のために相互に協力。

●中国及び韓国と連携し、G8、アジア諸国、さらに世界各国に対して、それぞれ自国に適切な方法で廃棄物の発生抑制に優先的に取り組み、例えばレジ袋削減といった具体的取組を実践するよう呼びかけ。

●海洋ゴミを抑制するため、北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)の下での政策対話等を進め、近隣諸国と連携し、各国の海洋ゴミ削減のための普及啓発キャンペーンや海洋ゴミの実態把握等の取組を推進。

(b)人材育成

●国際協力機構(JICA)による開発途上国の中央・地方政府、事業者等に対する研修や専門家派遣、グリーン・エイド・プラン(GAP)を通じた専門家派遣、研修事業の実施を通じて、廃棄物管理や3Rを推進する中核的人材を育成。

(c)政策立案、制度整備、インフラ整備等の総合的取組

●JICAを通じた技術協力プロジェクト、国際協力銀行(JBIC)を通じた円借款事業等において、例えば都市廃棄物の分別収集、リサイクル活動の適正化及び関連設備・施設の整備などの3Rの推進に貢献する要素を組み入れ、また、3Rに関する環境教育や普及啓発等を実施。

●草の根・人間の安全保障無償資金協力及び日本NGO連携無償資金協力によるリサイクル物資の開発途上国への輸送支援を推進。

●国内外の民間団体が行う3Rを含む環境保全活動に対し、地球環境基金等による支援を実施。

●地域各国や地域レベルの3Rの取組を促進するため、アジア開発銀行(ADB)等の援助機関とも連携して国際協力を展開。

●循環資源の品質に係る基準・規格のアジア域内での普及とともに、環境管理会計(マテリアルフローコスト会計)の国際標準化を推進する。

(d)地方公共団体、民間事業者等の知見・経験の活用

●アジアの都市における廃棄物問題の深刻化を踏まえ、アジアの自治体間のネットワークを活用して、日本の地方公共団体の経験・ノウハウをはじめとする優良事例の普及・移転を行う都市間協力を支援。

●我が国がエコタウンの整備を通じて培った経験とノウハウの移転を通じ、開発途上国における適正なリサイクルに必要な設備・施設の整備や事業者間連携による資源の有効利用を促進。

●国際機関「アジア生産性機構」(APO)と連携し、アジア・太平洋地域における省資源型のものづくりやサプライ・チェーンのグリーン化等のグリーン・プロダクティビティー活動を推進(2009年3月にフィリピンで「第5回エコプロダクツ国際展」の開催を予定)。

●国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)、我が国外務省、環境省、北九州市などの関係機関の協力により推進している「クリーンな環境のための北九州イニシアティブ」により、事例収集やパイロット事業等を実施。

●日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)のもとで、「3R/循環経済セミナー」を開催し、中央政府、自治体、企業やNGO等の相互理解と行動を促進。

(e)知識基盤・情報基盤の強化

●「3Rナレッジ・ハブ」や「日中韓廃棄物データ共有システム(仮称)」などを通じ、3Rや廃棄物処理に関する知識基盤・情報発信を強化。「アジア太平洋廃棄物専門家会議」等の専門家・研究者のネットワークの活動支援を通じて、廃棄物発生量など基本的なデータの収集手法の開発などを促進。これらの取組を連携させた「アジア3R研究・情報ネットワーク」を構築し、政策・経験の共有を通じて各国の取組を支援。

●南東アジア・東アジア環境と保健に関する地域フォーラム廃棄物作業部会(TWGSHW)の活動を議長国として主導し、都市廃棄物や医療廃棄物管理に関する各国のニーズの把握・データ収集・分析を進める。また、TWGと3Rナレッジ・ハブの連携を通じて、我が国の取組・経験を発信し、各国における優良事例の創出に貢献。

(f)我が国における協力促進の仕組みづくり

●アジア等において3Rの推進に関連した国際的取組を行っている我が国の関係省庁、関係機関・団体、民間事業者、地方公共団体、研究機関、NGO等が一堂に会する場を設け、開発途上国のニーズに応じて効果的かつ総合的に取組を進めるための情報共有・相互連携を強化。

●我が国の廃棄物処理や3Rの専門家を活用し、開発途上国のニーズに即応して生ごみやし尿を含む廃棄物の不適正処理等による環境汚染の状況調査・環境改善策の提言を行う仕組みを検討。

(2)廃棄物の適正管理・3Rを通じた地球温暖化対策への貢献{(2)より以下ここまで囲み線あり}

●クールアース・パートナーシップ(2008年1月福田総理発表)を踏まえ、廃棄物処理・3R分野において、例えば以下の要素を含む事業によるコベネフィット型の協力を推進。

‐分別収集、それを通じたごみの減量化、コンポスト化等3Rの取組

‐埋立地ガスの排出抑制に資する最終処分場の整備

‐事業場が排出する有機性廃棄物の適正処理・エネルギー回収

(3)有害廃棄物の不法な越境移動の防止{(3)より以下ここまで囲み線あり}

●「有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワーク」等を通じ、有害廃棄物の適正な輸出入確保のための情報交換の推進や施行能力の向上支援。

●バーゼル条約の下で進められている「アジア太平洋地域における廃電気電子製品の環境上適正な管理プロジェクト」等の支援を通じた各国における輸出入管理・適正処理等の支援。

(4)アジア全体での循環型社会の構築に向けた取組{(4)より以下ここまで囲み線あり}

●2012年までに、東アジアでの循環型社会の構築に向けた基本的考え方や目標を定めた

「東アジア循環型社会ビジョン」を域内の各国と協力して策定する。このため:

‐東アジア首脳会議(EAS)環境大臣会合、日中韓三カ国環境大臣会合、アジア太平洋環境会議(エコアジア)などの閣僚会合において、地域レベルの循環型社会の構築に向けたハイレベル対話を実施。

‐域内各国が参加する対話プロセスを早急に開始することを提案。

‐アジアにおける資源循環の状況・データ把握のための調査・研究を実施。

●開発途上国では適正な処理が困難だが日本では処理が可能な廃棄物等を、日本がその対応能力の範囲内で受け入れるための取組の推進。

●アジア各国における資源生産性の向上及び資源利用に伴う環境影響の低減に向けて:

‐経済協力開発機構(OECD)における物質フロー分析や資源生産性向上の取組、国連環境計画(UNEP)持続可能な資源管理に関する国際パネルの活動の進捗と成果をアジアに普及。

‐中国、韓国等資源生産性向上に向けた取組を進める諸国と情報・経験の共有、専門家の交流等を推進。

(5)世界的な循環型社会の構築に向けたG8各国・国際機関・ネットワークとの連携{(5)より以下ここまで囲み線あり}

●2008年G8環境大臣会合で合意された「神戸3R行動計画」のフォローアップに、他のG8諸国、OECDと連携して取り組む。

●G8を中心とした関係諸国、UNEPやOECD等の国際機関と連携し、持続可能な資源管理、資源生産性の向上、3Rの取組をさらに促進。

●国際的な物質フロー会計(MFA)の普及及び研究の推進。

●「国際グリーン購入ネットワーク(IGPN)」と連携し、環境に配慮した商品やサービスの購入を世界的に推進。