[文書名] 原子力安全セキュリティ・グループ報告書(第34回北海道洞爺湖主要国首脳会議‐G8サミット)
原子力安全セキュリティ・グループ(NSSG)は、カナナスキス・サミットで設立され、G8首脳に対して責任を負うグループであり、原子力エネルギーの平和的利用における安全及びセキュリティに影響を与え得る事項に関し、技術的な情報に基づく戦略的な政策に関する助言を与える。我々は、原子力安全及びセキュリティに関する事項を引き続き検討することにコミットしている。
我々は、この分野における関係国際機関との継続的な協力を歓迎し、また、既存の及び新たに生じつつある挑戦に対処すること及びこれらの事項に関するパートナーシップを確立することにより、国の原子力安全及びセキュリティに関する強力で権限のある基盤を促進する。
国際的な原子力安全及びセキュリティに関する文書の重要性
我々は、引き続き、「原子力の安全に関する条約」及び「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約」を含む、原子力安全及びセキュリティに関する国際的な文書を促進する。この関係で、我々は、「核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約」が昨年効力を生じたことを歓迎する。我々は、国際原子力機関(IAEA)の「放射性源の安全とセキュリティに関する行動規範」及び「放射線源の輸出入に関するガイダンス」への広範なコミットメント及びこれらの実施を奨励する。更に、我々は、引き続き、IAEAの原子力安全基準及びセキュリティ・ガイドラインを促進する。我々は、すべての国に対し、それぞれの国際的な文書及び指針に適切に参加し及び実施するよう呼びかける。
チェルノブイリに関するコミットメント
我々は、チェルノブイリ原子力発電所の現場で実施中のプロジェクトにおける昨年のサミット以降の進展を歓迎する。我々は、また、これまでのG7/G8サミットの宣言及び覚書の下で、及び原子力安全基金(NSA)及びチェルノブイリ石棺基金(CSF)を通じ、破損した原子炉の現場を安全な状態に転換し及び稼働を停止した原子炉を安全に廃炉するために必要な安全かつ信頼性を有する施設をチェルノブイリ原子力発電所の現場に提供するというウクライナとの共同の努力を行うことに対するコミットメントを再確認する。この関係で、我々は、CSFが資金を提供する新たな石棺施設及びNSAが資金を提供する新たな使用済燃料中間貯蔵施設に対して1億3千500万ユーロを贈与するという欧州復興開発銀行(EBRD)の出資者の決定を歓迎する。我々は、NSAへの追加的な財政的貢献に対する緊急の必要性を認識し、かつ、G8の連帯を再確認して、NSAの資金不足を満たすためのプレッジング会合を2008年中に共同で開催することを決定し、他の拠出国に参加を招請する。我々は、ウクライナ政府に対し、財政的貢献を行い、EBRDと協力し、並びに関係するプログラム及びプロジェクトが合意された枠組みの下で適時にかつ効率的に実施されることを支援するために必要なあらゆる措置を取るよう呼びかける。入手可能な情報によれば、CSFに対する追加的な財政的貢献が2009年中に必要となるものと見られる。
アルメニアの原子力発電所の安全性
我々は、アルメニアの原子力発電所のために実施された国際協力、最近得られた進展及び残された安全上の問題に留意して、アルメニアに対し、アルメニアの原子力発電所が稼働を停止して廃炉されるまでの間安全に運転されることを確保するために必要な安全向上のための一層の措置を引き続き取るよう奨励する。
「核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ」
我々は、「核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ」を引き続き支持する。我々は、現在まで70を超える国が同イニシアティブの原則にコミットし並びに欧州連合(EU)及びIAEAがオブザーバーとして参加したという事実を歓迎し、他のあらゆる国に対し、この努力に参加するよう奨励する。
「原子力安全に関するグローバル・ネットワーク」
我々は、原子力安全に係る事項に関する情報交換及び協力を目的としたネットワークを改善するための努力を引き続き支持する。我々は、国際機関が実施した相当の業務(特に、IAEAが経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)と協力して行ったもの)によって「原子力安全に関するグローバル・ネットワーク(GNSN)」の向上において進展が得られたことを歓迎する。GNSNを向上させるための継続的な努力は、権限の維持、運転上の経験のフィードバック及び良き慣行の共有に実質的な寄与を行うことが期待される。我々は、関係する国際機関及び国家に対し、これらの努力を継続するよう奨励する。
原子力エネルギー基盤整備に関するG8イニシアティブ
我々は、原子力発電に関心を示し及び原子力発電の導入を検討している国が世界中で増大していることに留意して、核不拡散/保障措置(non-proliferation/safeguards){最初のsの下に二重線あり}、原子力安全(safety){sの下に二重線あり}及び核セキュリティ(security){sの下に二重線あり}(以下「3S」という。)の実施が原子力エネルギーの利用にとって不可欠であるとの共通の理解を確立する必要性を認識する。このような背景の下、NSSGにおいて、3Sの重要性に関する意識を国際的に高めること及び関係国による3S基盤の整備を支援することを目的とした原子力エネルギー基盤整備に関する新たなG8イニシアティブについて議論が行われ、広範な支持が得られた。
地震及び原子力安全
日本の柏崎刈羽原子力発電所に影響を与えた2007年7月の地震は、世界中の他の原子力発電所に地震が与えるリスクに応じて国際的な対応を行う重要性を再確認させた。我々は、耐震基準の作成等、この分野におけるIAEAの努力を奨励する。我々は、原子力発電所に対する地震の問題に如何に対処すべきかについての見解及び専門知識を交換し、これにより、原子力安全における耐震措置の重要性を再確認することを決定する。
原子力安全及びセキュリティに関する人的資源の開発
我々は、原子力安全及びセキュリティの分野において適格な人的資源を確保する上での政府の役割の重要性を再確認する。我々は、この懸念を明らかにしたOECD/NEAの作業を歓迎し、この問題に対して引き続き緊密な注意を払う。