データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 5カ国エネルギー大臣会合共同声明(G8エネルギー大臣会合)

[場所] 青森県
[年月日] 2008年6月7日
[出典] 経済産業相(資源エネルギー庁)
[備考] 仮訳
[全文]

1.中国、インド、日本、韓国、米国のエネルギー大臣は、2008年6月7日に会合を行い、国際石油市場の安定確保及びグローバルなエネルギー安全保障の強化に向けた方策を議論し、以下の声明を発表した。

2.我々は、一致して、エネルギー安全保障に関する以下の原則を受け入れ、全ての主要経済国に対してもそうすることを慫慂する:(1)グローバルなエネルギー市場の透明性、予見可能性及び安定性、(2)エネルギーセクターにおける投資環境の整備、(3)エネルギー効率の向上、(4)エネルギーミックスの多様化、(5)重要なエネルギーインフラの整備、(6)エネルギー貧困の削減、(7)気候変動と持続可能な発展への対応。

石油市場概要{前6文字囲み線あり}

3.我々は、最近の原油価格高騰に対する深刻な懸念を共有する。2006年12月の第1回5カ国エネルギー大臣会合において原油価格は60ドル/バレルとすでに高水準にあったが、最近の138ドルを超える石油価格の上昇は、石油市場の歴史上、最も急速かつ大幅なものである。現在の原油価格水準は、異常であり、消費国・産油国双方の利益に反する。原油価格の高騰は、とりわけ資源の乏しい発展途上国に対して、大きな負担をもたらす。産油国・消費国双方は、グローバルなエネルギー市場の安全性と持続可能性の更なる向上を図ることに共通の利益を有している。現在の経済問題を解決する上での金融政策及びマクロ経済政策の重要な役割を強調すると同時に、エネルギー政策に責任を持つ全ての関係者は、一致した行動をとるべきである。

4.石油価格形成の要因は複雑であり、生産国・生産圏の供給政策、在庫水準、地政学的緊張などの短期的要因を含む。我々は、本年6月13‐14日のG8財務大臣会合において石油市場について議論されることを歓迎する。

5.石油市場に寄与する要因には、より構造的かつ長期的なものもあり、特に運輸部門における世界的な原油需要の増大や、エネルギー分野における時宜を得た十分な投資、世界中で原油・ガス資源へのアクセス増大の差し迫った必要性などが含まれる。開かれた透明な市場や公正で効果的かつ効率的な規制は不確実性を減じ、必要な投資を促進するのに重要である。我々は、自国の生産投資を極大化することの必要性を宣言するとともに、他の産油国に対し、世界需要の増大にあわせ、市場に十分な供給が行き渡るよう、投資を増大することを要請する。

6.我々は、供給中断リスクに対処するための緊急時の備えを強化し、省エネルギーの大幅な向上、非在来型石油・代替エネルギーの促進、供給ルートの多様化のための国内政策を、各国の状況を勘案しつつ、抜本的に強化する。代替輸送及び代替燃料に係る技術の開発は、運輸部門の石油依存低下にとって不可欠である。同様に、市場原理に則った石油製品取引の増大は石油市場の安定に貢献する。

7.我々は、2008年4月にローマで開催された国際エネルギーフォーラム(IEF)の建設的な成果を歓迎し、IEFに対して、早急にこのような成果を足場として、産油国・消費国双方が分析を進め、以下のような問題に対応するための行動計画を策定する。これらの問題とは、すなわち、エネルギー投資障壁、技術革新、市場の透明性、オイルメジャーと国営石油会社との協力、エネルギーセクター技術イニシアティブを通じた人材育成、エネルギー貧困などである。我々は、共同石油データ・イニシアティブ(JODI)に完全に参加し、迅速かつ信頼に足る完全なデータを提供する。我々は、このような協働により、産油国・消費国双方は石油供給の安定性に対する将来の不確実性を排除するよう努力することが必要である。

緊急時への対応{前7文字囲み線あり}

8.現在のトレンドは、世界の石油供給の安全保障に対する脅威が今後さらに高まることを示唆している。主要な石油消費国・輸入国として、いかなる供給中断リスクにも十分な備えを有していることを決意した。2006年12月の会合において、我々は石油戦略備蓄に関する協力を強化することに合意した。我々は中国とインドの戦略石油備蓄の構築や米国の戦略備蓄の拡大に向けた進展を歓迎する。我々は緊急時対応能力を更に強化する。

9.我々は、IEAと5カ国の間で緊急時対応の分野での協力が可能であることを確信する。石油市場はグローバルであるため、IEA加盟国と非加盟国との協力・協調の強化は、緊急事態に対する集団的な対応能力を強化する。我々は、中国とインドがIEAとともに緊急時対応訓練に参加することを歓迎する。さらに中国、インドがあらかじめ合意されたチャネルに基づき、IEAと密接に連絡をとり、供給途絶時にIEA加盟国との協調行動への自主的な参加を前向きに考慮することを歓迎する。これらは全て我々が主要石油消費国として団結しているという、市場への強いシグナルである。

投資環境

10.石油・ガス市場の長期的安定性を確保するために、すべてのステークホルダーは、石油・ガスや新たなクリーンエネルギー技術に対する十分な投資を確保する責任を共有する。最近の産油国における追加的な投資発表を評価する一方で、特に石油・ガス供給における上流部門及び下流部門において持続的で適切なレベルでの投資を確保するためには、更なる努力が必要である。

11.我々は、特に石油・ガスの探鉱・生産を中心に、エネルギー供給チェーン全体に対する投資を活性化するための前提として、透明で、公平で、安定的で、かつ効果的な法的枠組みを含め、開かれた、透明で、効率的で、競争的な投資環境を確保する。石油・ガス上流分野における外国民間操業企業の契約条件の一方的かつ突然の変更は、投資を阻害し、コストを増加させるものであり、我々はそうしたリスクの低減に努める。

12.我々は、ガバナンスを強化し、採取産業における透明性と説明責任を向上させるために、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)を自主的に実施する石油や鉱物の輸出国の努力を歓迎する。

エネルギー効率とエネルギー源多様化{前17文字囲み線あり}

13.主要なエネルギー消費国・輸入国として、我々が直面している問題に対応するため強力な対応を取ることを決意する。エネルギー効率改善は利用可能で、短期的にも最も費用対効果の高い対応策の一つである。クリーンコール、原子力、再生可能エネルギーなどのクリーンな代替エネルギーの活用によるエネルギー源の多様化や、輸入化石燃料の供給ソース多角化及び輸送ルートの多角化は、エネルギー安全保障を強化する上で必要不可欠である。我々は再生可能エネルギーと安全で平和的な原子力エネルギーが、エネルギー供給源の多様化、経済成長の維持及び気候変動の緩和を通じ、エネルギーセキュリティを強化するに際して重要な役割を果たしていることを認識する。

14.我々は、従来型エネルギーに対する価格補助金については、段階的・漸進的な撤廃に向けて動くことが望ましく、かかる補助金は必要な受益者に焦点を絞った政策に代替されるべきであることを認識する。歪曲されていない、市場原理に立脚したエネルギー価格は、省エネルギーの強化や代替エネルギー投資の増大に対する適切なシグナルを送る。これは政府のコストを低減し、国内エネルギー市場のグローバル化をも可能にし得る。我々は、個別に自主的な目標や行動計画を策定すること通じて{前5文字ママ}、エネルギー効率改善やエネルギー源多様化のための政策や手段を強化し、ベストプラクティスを共有する。これは、最終的に、生産国における投資環境の改善につながり、かつ、供給中断リスクに対する我々の耐性を強化する。

結論

15.エネルギーの適切な供給は、先進国・発展途上国双方の経済的、社会的厚生にとって不可欠である。世界の原油消費量のほぼ半分を占める主要なエネルギー消費国として、我々は、共通の利害を有しており、我々が強い責任を有している市場の安定性強化とグローバルなエネルギー安全保障の確保のために、さらなる相互協力を行う。

16.我々は、第3回5カ国エネルギー大臣会合をホストするという韓国のオファーを高く評価する。

{(1)は原文ではマル1}