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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国際省エネ協力パートナーシップ(IPEEC)(宣言文)(G8エネルギー大臣会合)

[場所] 青森
[年月日] 2008年6月8日
[出典] 経済産業省(資源エネルギー庁)
[備考] 仮訳
[全文]

省エネルギーに関するグローバルな協力の必要性を強調したグレンイーグルス、サンクトペテルブルク及びハイリンゲンダムサミットの声明を考慮し、

1.省エネルギーとエネルギー効率の向上は、エネルギー安全保障、気候変動及び経済成長に取り組む上で、最も迅速かつクリーンで費用対効果の高い手法の一つであること

2.COP15において合意に達し、採択されることを目的として、現在、2012年まで及びそれ以降の長期的協力を通じたUNFCCCの完全な、効果的な、持続的な実施を可能とする包括的なプロセスが始まったこと

3.全ての国は先進国も発展途上国も、エネルギー効率の向上に向けた共通の利害を有していること、各国間の国際協力の余地が十分に存在すること、そして先進国は、途上国に対するベストプラクティスや省エネルギー技術の普及促進、技術移転、発展途上国におけるキャパビルの促進において重要な役割を果たす必要があり、これがグローバルなエネルギー効率改善に貢献すること

4.エネルギー効率を向上させる手法は、環境汚染の減少等、他の目的の達成に資すること。これらのコベネフィットは省エネルギー対策の魅力を著しく向上させる

5.多くの国が、技術や経済的発展を踏まえ、国毎の省エネ目標や行動計画を通じ省エネ推進を図っていること

6.エネルギー効率を向上させるためには、エネルギー市場を完全に理解し、主要エネルギー消費セクターを特定し、これらのセクターにおける省エネポテンシャルを分析し、そのポテンシャルを実現する上で必要な施策をとることが必要であること

7.利用可能な最適省エネルギー技術の市場導入の加速化は、インセンティブ、規制、市場、自主的手法を通じて支援されるべきであり、費用対効果的な省エネルギー技術の研究開発は官民パーナーシップや国際協力の拡大を通じて促進されるべきであること

8.グリーンでエネルギー効率的な公共調達は省エネルギー技術の採用に重要な便益をもたらし、それによって、とりわけ、全購入物に占める公共調達の比率が比較的高い分野においては、企業間の競争を刺激すること

9.国際的な諸機関や合意に沿って行われている活動を踏まえ、省エネを促進する上で最も効果的な方法で情報交換、経験及びベストプラクティスの交換を行うことは重要であること

10.全ての国において、省エネのノウハウと省エネルギー技術の普及支援に関する協力を行うことが、グローバルなエネルギー効率改善に大きく貢献すること

11.信頼性が高く質の高いエネルギー使用データ、統計及び情報システムは、果的な目標/目的の策定、各国の行動計画の実施及び政策・手法の評価のために欠くことのできないものであること

12.個人及び利害関係者に対し、省エネに関する情報提供、教育、普及の努力を強化すべきであること

13.主要なエネルギー消費セクターにおける官民パートナーシップはエネルギー効率向上のために有効であること

14.エネルギー効率の向上は、投資の流入、資本へのアクセス、エネルギーサービス市場の強化、市場に立脚したエネルギー価格といった条件を必要とすること、

を認識し、

カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、韓国、ロシア、英国、米国、と、欧州委員会によって代表される欧州共同体は、エネルギー効率と省エネルギーの向上を促進するという共通の関心の下に結束し、国際省エネ協力パートナーシップの設立を決定し、その目的達成に必要な以下の措置をとることとする。

目的

国際省エネ協力パートナーシップの目的は、高いエネルギー効率改善を生むために必要な行動を促進することである。このパートナーシップの参加国は関心を有する分野において、原則自主的に行動をとることを選択する。活動範囲国際省エネルギーパートナーシップは以下の分野の活動を含みうる。

a.各国毎のエネルギー効率指標の開発、ベストプラクティスの収集、データ収集に関する取り組み強化を含め、参加国が推進中の作業を支援すること

b.セクター別またはセクター横断的に、省エネルギーを著しく改善しうる手法について情報交換を行うこと。以下に限定されるものではないが、例えば

‐個々の参加国の状況を考慮しつつ、ベストプラクティス水準の市場導入を加速することを目的とした建築物、エネルギー消費製品及びサービスのための標準/基準/規範及びラベル

‐建築物や工業プロセス、関連製品、機器及び設備の耐用年数における最適エネルギー効率を達成するためのエネルギー計測、監査、検証手順、認証プロトコル及びその他のツールに関する方法論

‐省エネルギー対策に関する資金調達を可能にするための環境やツールの整備、そして省エネルギー分野への投資を促進するための原則の策定

‐省エネルギー製品、サービス、技術の採用を促進するための公共調達政策

‐公共機関が、建築物や、車両、製品、サービスの購入、運用をより効率的に行えるよう支援するプログラム

‐十分な情報を得た状態での意志決定を可能とすべく、明確で信用でき、アクセス可能な省エネルギー情報の普及を通じて、消費者や利害関係者の認識を向上させるための活動

‐省エネルギー政策と手法の効果を評価するための、ベストプラクティスガイドライン

‐省エネルギー技術の普及や移転を加速させるための省エネルギー技術の研究、開発、商業化、普及に関する官民協力

‐発展途上国におけるベストプラクティスと省エネルギー技術の普及・移転及びキャパシティビルディングの促進に向けた行動

c.関連するイニシアティブを強化しつつ、主要エネルギー消費セクターにおける省エネルギーを向上させるための官民パートナーシップの展開

d.特に発展途上国を対象に、主要な省エネルギー技術に関する共同研究開発の実現

e.省エネルギーの向上に資するエネルギー関係製品とサービスの普及の促進

f.その他、参加国相互により決定される取組み

本パートナーシップは、議論、協議及び情報交換のためのフォーラムを提供する。参加国の省エネ基準、省エネ目標の策定や採択は行わない。

この声明文は参加国に対し、いかなる法的な責任も生じさせないし、国際的な条約も意味しない。参加国は各国の国内手続きに従い、パートナーシップに参加する。

パートナーシップの組織編成

パートナーシップは、原則公平及び自主的な参加によるものとし、今年末までには、最初の会合を開催しその組織に関する条件を決定する。

パートナーシップの重要性、最大限の国際支援及び協力を確保し、他の国際協力枠組みと補完的である必要性を考慮すると、パートナーシップに関する会合はハイレベルになるのが自然と考えられ、開催は参加国により決定されるが、原則少なくとも年1回開催されるものとする。パートナーシップは、IEA実施協定として設立されることを想定。

パートナーシップは少なくとも年に1回、その活動内容や計画の概要レポートを公表する。