[文書名] G‐8財務大臣会合声明のポイント(G8財務大臣会合)
1.我々G8の財務大臣は、北海道洞爺湖でのG8首脳会合の準備のため本日大阪で会合。世界経済は長期にわたり力強い成長と低インフレの組み合わせを享受してきたが、現在は逆風に直面している。我々は、世界経済が力強い成長を続けるための条件の整備に取り組む。
世界経済{前4文字下線あり}
2.我々は、我々の経済が長期的に強固であることを確信しており、新興市場国は力強く成長している。しかしながら、世界経済は引き続き不確実性に直面しており、下方リスクが依然存在。米国住宅価格が更に下落したり、金融市場の緊張が高まる場合には、経済見通しに悪影響を与えるおそれ。一次産品、とりわけ原油及び食料の価格上昇は、世界の安定成長に重大な試練を提起し、最も脆弱な人々に深刻な影響を与え、また、世界的にインフレ圧力を高めるおそれがある。こうした状況は、我々の政策選択をより複雑にする。我々は今後とも警戒を怠らず、我々の経済及び世界経済の安定と成長を確保するため、個別にあるいは共同して、適切な行動をとっていく。
3.過去数ヶ月、金融市場の状況はいくぶん改善した。主要中央銀行による思い切った措置が、市場の機能改善を支えた。多くの金融機関による損失開示や資本増強も、市場のセンチメント改善に寄与した。しかしながら、特に短期金融市場及び信用市場において、緊張が続いている。最近の金融混乱は、過度のリスクテイクやレバレッジが金融システムにもたらすリスクを浮き彫りにした。金融イノベーションは世界の成長と発展に大きく貢献してきたが、金融の安定に対するリスクにかんがみ、金融市場の透明性とリスク感応度を高めることが不可欠。
4.金融安定化フォーラム(FSF)の勧告の実施を含め、昨年10月に打ち出した金融システムの頑健性を強化するための戦略の遂行に全面的にコミット。我々は、(4月のG7から)100日以内に実施すべき優先課題に関するものを含め、ドラギ議長からなされたアップデートを歓迎。金融機関が情報開示及びリスク管理慣行の改善、必要に応じた資本増強に向け努力を続けるよう求める。国際会計基準審議会(IASB)が、オフバランス関連会社及び非流動的市場における金融商品の価格評価に関する会計上の問題の見直し作業を加速するよう求める。証券監督者国際機構(IOSCO)による格付会社のための行動規範の改訂、金融機関が中間決算期の情報開示を改善するよう慫慂するため各国監督当局が講じてきた措置、及びバーゼル委員会によりまもなく発表される流動性リスク管理に関するガイダンスを歓迎。金融システムの景気変動との連関を軽減するための取組に期待。金融サービス業界が、最近の出来事から学ぶべき教訓を踏まえて行動することを慫慂。早期警告の能力の強化に関する、IMFとFSFのより緊密な協力について具体的な進展を期待。
5.我々は開放的な投資政策へのコミットを確認し、国際的な投資が世界の繁栄の基盤であることを認識。我々は、国内外における保護主義的な流れに対抗。我々は、開放的な投資体制のための最良慣行を策定するOECDの作業を歓迎。ソブリン・ウェルス・ファンドのような政府にコントロールされた投資家が行う経済的動機に基づく投資によりもたらされる利益を認識し、こうした投資家が、ガバナンス、リスク管理及び透明性といった領域で高い基準を採用するためにIMFと協働することを慫慂。同等な証券規制枠組みの相互承認に関する議論が進行中であることを歓迎し、国際的な金融サービスの促進に関する更なる進展を期待。我々はまた、ドーハ開発ラウンドの成功裡の妥結が喫緊に必要であることを強調。
一次産品価格{前6文字下線あり}
6.我々は、名目・実質のいずれでも過去のピークを凌駕した原油価格の急激な上昇、及び、それが世界的なマクロ経済の安定性、人々の厚生、今後の開発に与える影響を強く懸念。高止まりする原油価格は、基本的には世界的な需要の高まりと供給制約を反映しているが、地政学上の懸念や金融的要因などその他の要素も作用している。この課題に対応するため、需要面では、全ての国のエネルギー効率をさらに改善するとともに、エネルギー源の多様化を追求すべき。このため我々は、(2006年の)サンクトペテルブルク・エネルギー安全保障行動計画を完全に実施することの重要性を認識。このことはまた、気候変動問題への対応にも資する。貧困層に対する的を絞った支援を行いつつ、例えば補助金の削減により、価格シグナルを消費者に伝達することも重要。いくつかの新興市場国における、この方向に向けた最近の動きを評価し、この分野における更なる進展を慫慂。供給面では、産油国が増産を行うこと、及び、国際的な石油会社の専門性を活かして、長期的な生産能力拡大のための投資を行うことを慫慂。我々はまた、すべての国が精製能力を高めることを促す。さらに、石油市場は、市場のデータの透明性・信頼性を高めることにより、より効率的になり得る。このようなデータには、石油データ共同イニシアティブへのより広範で時宜を得た参加が対応し得る石油備蓄データ、及び、石油市場に流入する資金フローの規模に関するデータ、が含まれる。我々は、各国の関係当局が、商品先物市場の機能を検証し、必要に応じ適切な措置を講じるよう求める。我々はまた、IMF及び国際エネルギー機関(IEA)が、適切な各国の当局と協力して、最近の原油・一次産品価格の高騰の背景にある実需・金融両面の要因、それらの価格の変動、及び世界経済への影響について更に分析し、次回の年次総会に報告するよう要請する。
7.最近の食料価格の急騰は、低所得の食料輸入国の多くに深刻な打撃を与えている。高騰は複合的要因によるものであるが、新興市場国や途上国の成長に伴い、需要は高水準にとどまると見込まれる。国際社会は、危機が直ちにもたらす影響と、食料供給不安の背景にある要因の双方に対応する、統合的アプローチにより事態に対処すべき。短期的には、ドナーは団結して緊急援助を供与すべき。我々は、この目的のための世界食糧計画(WFP)、世界銀行その他による努力を支持し、緊急のニーズに応えるための新たな12億ドルの緊急資金支援ファシリティーについての世界銀行の最近の発表を歓迎。我々は、貧困削減・成長ファシリティーを通じ、また外生ショックファシリティーの見直しを通じて、対外収支上の困難に直面する食料輸入国のニーズに対応するIMFの作業を歓迎。中期的には、国連の関連団体を含む国際機関及びドナ-が共同して、とりわけ生産性の向上を通じて生産の拡大を図るパートナー国の努力を支援することが重要。国際開発金融機関(MDBs)やローマに本拠を置く機関を含む様々な主体が、明確に役割を分担することが特に重要。科学技術が果たす重要な役割にかんがみ、我々は、国際農業研究協議グループ(CGIAR)のような国際研究機関その他のパートナーシップを支援する必要があることで合意。供給面の制約や輸出制限を取り除き、途上国の一般的な食料補助金を貧困層のための的を絞った支援に置き換えるとともに、ドーハ開発ラウンドの成功裡の妥結を含め国際的な農業市場の効率性を改善することが不可欠。バイオ燃料は、課題と同時に機会を提供するものであり、その生産と利用を持続可能なものとすることが重要。この観点から、非食料からの次世代燃料の生産法についての研究・開発を優先課題とすべき。
8.原油及び食料を含む一次産品価格の高騰は、グローバルな課題。生産国、消費国、関係国際機関の間で、食料安全保障について、更なるパートナーシップと対話を求める。我々は世銀に対し、一次産品価格の上昇が今後の開発に与える影響を検証するよう要請。我々はまた、化石燃料補助金の改革についてIMFの作業を要請。次回の年次総会において、これらの論点に関する報告を期待。
気候変動{前4文字下線あり}
9.我々は、緊急で協調した行動が必要であると確信し、気候変動の取組において指導的役割を示すべき我々の責任を受け入れる。我々は、気候変動の問題に取り組む途上国を支援するための我々の努力を強化しており、「民間・公的金融機関の関与を強化するための気候変動G8アクションプラン」に合意。我々は、MDBsとの協力の下、既存の二国間及び多国間の努力を補完する、新たな気候投資基金(CIFs)の立ち上げを歓迎し、支持。これらの基金は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)下での2013年以降の枠組みが実施されるまでの間のものである。これらの基金はクリーン・テクノロジー基金と戦略投資基金を含み、途上国が提案する緩和にかかる国家計画と整合的である必要がある。CIFsに関する我々の別の声明に記述されているように、これらの基金は、相俟って、途上国におけるクリーン・テクノロジーの普及、森林減少の防止、及び経済の気候変動に対する耐性力の向上のための、官民の資金をスケールアップする。
10.我々は、低炭素活動への大規模な投資を供給する上で、民間セクターが不可欠の役割を果たすことを議論。特に、革新的な金融商品の開発、及び融資するプロジェクトにおける環境ガイドラインの採用という、民間金融機関の最近の活動を歓迎。我々は、他のマルチ及びバイの関係者との協調の下、必要な投資を増加させたり、途上国が開発戦略全般に気候変動を組み込むことを支援する上で、MDBsが主要な役割を果たすことを要請。グレンイーグルズ・サミットからの依頼に応えた、気候変動に関するMDBs共同報告を歓迎。我々は、排出量取引や税制上のインセンティブを含む市場メカニズムは、各国の個別事情に対応して設計されるべきものであるが、民間セクターに、環境コストを内生化した投資判断をさせることで、経済的なインセンティブを与える可能性を有することに留意。
開発{前2文字下線あり}
11.アフリカの成長は引き続き堅調であるが、依然として食料やエネルギー価格の高騰を含むショックの影響を受けやすい。これらの価格の高騰は、最も脆弱な人々にとって大きな問題。高く安定した成長が、広範な基礎を有する開発及びミレニアム開発目標を達成するために不可欠であり、アフリカへの援助を倍増する公約を踏まえつつ、我々は、アフリカ諸国と協働し、持続可能な民間セクター主導の成長を促進していくことにコミット。我々は、各国の成長戦略を支援する際、「アフリカにおける民間セクター主導の成長のためのG8アクションプラン」における二つの柱、すなわち、(1)投資環境の改善、(2)金融セクターの強化、に支援の焦点を当てることを提唱。この点に関し、我々は、国境を横断する運輸回廊等、信頼性のあるインフラ整備のための支援を拡大しつつある。中小企業の能力向上、及び貿易のための援助等を通じてアフリカ諸国の貿易促進のための努力、を支援。資源国における長期の財政規律等の良き財政ガバナンスや、採掘産業透明性イニシアティブ(EITI)をより多くの国が実施することの重要性を確認。さらに、公式経済へのアクセス向上の必要性を強調。我々は、地場金融機関の能力強化、アフリカの借り手に対する現地通貨建て資金供給の促進、アフリカ諸国における現地債券市場の育成、及び外国からの送金の円滑化を助けていく。
12.我々は、成長の持続可能性を引き続き強調。民間セクターのプロジェクト金融に当たり、環境社会配慮のためのガイドラインの自発的な適用が慫慂されるべき。低所得国の対外債務の持続可能性確保に関して、様々な場における新興債権国との議論を支持。重債務貧困国に対する攻撃的な訴訟への取り組みについての昨年の我々の会合以降の進捗を歓迎。特に、パリクラブによる対策や、世界銀行による債務削減ファシリティーの改善、アフリカ開発銀行による法的支援ファシリティーの設立に留意。
金融システムの濫用{前9文字下線あり}
13.我々は、資金洗浄、テロ資金供与、その他の不法資金供与に対する闘いにコミット。我々は、国連決議、特に、金融機関によるイランに住所を有するすべての銀行との活動、特に、バンク・メッリ及びバンク・サデラート並びにそれらの支店及び海外の子会社との活動の監視を呼びかける国連決議1803、の実効的かつタイムリーな履行にコミット。我々は、金融活動作業部会(FATF)に対し、これらの脅威の見直しを続けるとともに、国際金融システムの健全性を守るための適切な措置を講じることを要請。
14.最近の動きにかんがみ、税に関する透明性及び効果的な情報交換にかかるOECDの基準を完全には実施していない国に対し、遅滞なくこれを実施するよう要請。これに関するOECDの作業を歓迎し、租税回避に関する取組を強化するようOECDに対して要請。
{(1)は原文ではマル1}