[文書名] 世界の食料安全保障に関するG8首脳声明(第34回北海道洞爺湖主要国首脳会議‐G8サミット)
1.我々は、世界的な食料価格の急騰と、これに伴って多くの開発途上国で食料が入手困難となる問題によって、世界の食料安全保障が脅かされていることを深く懸念する。この最近の傾向による負の影響は、何百万人もの人々を貧困に押し戻し、ミレニアム開発目標の達成に向けた進捗を後退させかねない。我々は、食料不安又は飢餓に苦しむ人々を支援するために追加的な措置をとってきているが、本日、この多面的かつ構造的な危機に取り組むための我々のコミットメントを新たにする。
2.我々は、調整されたかたちであらゆる可能な対策をとることを決意し、2008年1月以降、影響を受けた国における食糧支援、栄養支援、社会保護事業及び農業生産の増加措置を支援するため、短期、中期及び長期の目的で、100億米ドル以上をコミットした。短期的には、最も脆弱な人々の緊急ニーズに取り組んでいる。この観点から、我々は、世界的な食料危機に取り組むために他から提供された貢献を歓迎する。我々は、残された緊急の人道的ニーズを満たし、次の作付け期に向けて種子及び肥料へのアクセスを提供するため、世界食糧計画(WFP)を通じたものを含め、我々と共にコミットメントを行うよう、他のドナーに呼びかける。我々はまた、支援食糧の現地購入を促進することにより、地元の農業の強化を助ける機会を探求する。我々は、効果的で、時宜を得た、ニーズに基づいた食糧支援の供与を強化すること及び農業生産性を高めることの重要性を強調する。
3.この危機に効果的に対応するには、指導力、野心及び適切な規模の資源が必要となる。国際社会は、この問題に、短期から中長期に至るまで、統合された形で取り組むため、完全に調整された対応と包括的戦略をとる必要がある。我々は、この観点から、ローマでの国連食糧農業機関(FAO)主催の世界食料安全保障に関するハイレベル会合及び横浜での第4回アフリカ開発会議(TICADIV)を含む、関連する国際的フォーラムの成果を歓迎する。我々は、「包括的行動枠組」を策定するために世界食料危機に関するハイレベル・タスク・フォースを招集した国連及びブレトン・ウッズ機関の指導力を賞賛し、関係者に対し、必要とする国に支援が迅速に届くよう、計画を速やかに実施するよう求める。
4.これらの取組を効果的に調整し、実施するため、我々は、開発途上国の政府、民間部門、市民社会、ドナー及び国際機関を含むすべての関係者が関与する、農業及び食料に関する世界的なパートナーシップの構築に向け、国際社会と協力する。このパートナーシップは、既存の国連及びその他の国際機関を強化し、また、それらを基礎としつつ、各国のプロセス及び制度、並びに現地における指導力に対し、効率的かつ効果的な支援を提供し得る。また、このパートナーシップは、既存の国際機関の知見を活用し得るとともに、特に、進捗状況のモニタリングと評価を確実にし得る。国連が調整を促進、提供すべきである。このパートナーシップの一環として、食料及び農業に関するハイレベル専門家の世界的なネットワークが、科学的見地からの分析を提供し、ニーズ及び将来のリスクを明確にすることとなろう。
5.我々は、FAOが全ての人々の食料安全保障の確保を支援する上でより効果的であるよう、その徹底した改革にコミットする。この関連で、我々は、次回のFAO特別総会において、ローマ食料サミットの効果的なフォローアップが行われ、FAOの効果を向上させるための具体的な方策が示されることを期待する。
6.食料安全保障には、食料及び農業のための堅固な世界市場及び貿易システムも必要である。上昇する食料価格は、特に、いくつかの低所得国において、インフレ圧力を増加させるとともに、マクロ経済の不均衡を生じさせている。この観点から、我々は、野心的で包括的でバランスのとれたドーハ・ラウンドの早急且つ成功裡の妥結に向けて取り組む。また、輸出規制を撤廃すること、及び、この状況を長引かせ、悪化させるとともに、人道目的での食品購入を妨げているこうした貿易行為に対するより厳しい規律の導入を目的とした世界貿易機関(WTO)における現在の交渉を加速化することが必須である。さらに、我々は、引き続き、食料価格の不安定性を最小にし、将来の危機を予防することを目指し、開放的で効率的な農産物及び食料市場の発展を促進するとともに、関連機関による、それら市場の機能の監視を支援する。我々はまた、十分な食料備蓄を有する国に対し、大幅な価格上昇に際しては、その余剰の一部を食料難の国々に貿易を歪曲しないかたちで提供するよう呼びかける。我々は、人道目的のための、国際的に調整された、「仮想」備蓄システムを構築することの是非を含め、備蓄管理に関する調整されたアプローチについての選択肢を検討する。
7.我々は、食料安全保障及び貧困の問題に取り組むため、幅広い中長期的な措置の必要性、特に、世界の食料生産を促進し、農業への投資を増加させることの重要性を完全に認識する。この目的のため、我々は、
(a)農業分野の援助及び投資の全体的な減少を反転させ、アフリカにおいては包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)の完全かつ効果的な実施を含む、開発途上国のイニシアティブに対する支援の大幅な増加を達成し、
(b)農業生産性の年6.2%成長というCAADPの目標を支持し、CAADPの基準に適うアフリカ諸国における主要食用作物の生産量を、特に小規模農家の育成及び農村を含めた成長に重点を置きつつ、持続可能なかたちで、5年から10年で倍増するとの目標に向けて取り組み、
(c)特に国際農業研究協議グループ(CGIAR)を通じ、また、アフリカ緑の革命同盟(AGRA)等とのパートナーシップを通じ、改良され、現地に適応し、持続可能な農業技術の普及に焦点を置きつつ、農業関連の研究開発と開発途上国の新世代の科学者及び専門家の訓練を促進し、
(d)灌漑、輸送、サプライ・チェーン、貯蔵・流通システム及び品質管理を含むインフラの改善を支援し、
(e)食料安全保障の早期警戒システムの開発を支援し、
(f)地域開発銀行及び国際農業開発基金(IFAD)を含む国際金融機関の取組を奨励し;この観点から、我々は、特に、緊急のニーズに取り組むための、新規の12億米ドルの早期対応ファシリティに関する最近の世界銀行の発表、並びに国際収支上の困難に直面する食料輸入国のニーズに取り組むための、貧困削減・成長ファシリティ及び外生ショック・ファシリティのレビューを含む国際通貨基金(IMF)の取組を歓迎し、
(g)農業生産を増大させるため、研究開発を加速し、新しい農業技術へのアクセスを向上させ;我々は、バイオテクノロジーにより開発された種子の品種による貢献に関するものを含め、科学的なリスク分析を促進し、
(h)気候変動への我々の取組努力を強化する一方で、気候変動の影響に適応し、砂漠化と闘い、生物多様性の保全及び持続可能な利用を促進するための各国の開発戦略を支援し、
(i)バイオ燃料の持続可能な生産及び使用のための政策が食料安全保障と両立するものであることを確保し、非食用植物や非可食バイオマスから生産される持続可能な第二世代バイオ燃料の開発及び商業化に向けた取組を加速し;この観点から、我々は、バイオ燃料の生産と使用について科学に基づく基準と指標を策定するために、他の関係者と共に取り組み、
(j)食料安全保障及び市場に関する政策に特に重点を置いた形で、開発途上国における良い統治を促進し、
(k)援助効果向上に関するパリ宣言の原則に対する我々の共通のコミットメントを再確認しつつ、食料安全保障の目標をドナー及び被援助国の開発政策において主流化する。
8.我々は、G8専門家グループに対し、我々のコミットメントの実施をモニターするとともに、G8が世界食料危機に関するハイレベル・タスク・フォースの取組を支援し、次回国連総会に向けて世界的パートナーシップを実現するために他の関係者と協力することができるその他の方法を特定する任務を与えた。
9.我々はまた、我々の農業大臣に、世界の食料安全保障に関する適切な提案の形成に寄与するための会合を開くことを求める。
10.我々は、次回サミットにおいて、本件に関する進捗につきレビューを行う。