[文書名] 3Sに立脚した原子エネルギー基盤に関する国際イニシアティブ(第34回北海道洞爺湖主要国首脳会議‐G8サミット)
【背景】
1.G8首脳は、ハイリゲンダムにおいて、原子力エネルギーの平和的利用に関するこれまでのサミットにおける公約を再確認した。G8首脳は、また、「安全でセキュリティの確保された原子力エネルギーの利用及び/又は開発に関する計画を検討している国又はそのような計画を有している国は、原子力エネルギーの開発は、有害な大気汚染を削減し、気候変動の挑戦に取り組むのと同時に、世界のエネルギー安全保障に資すると信じる」ことを認識した。
2.我々G8メンバーは、核不拡散/保障措置(non-proliferation/safeguards){最初のsの下に二重線あり}、原子力安全(safety){sの下に二重線あり}及び核セキュリティ(security){sの下に二重線あり}(以下「3S」という。これらの要素は、国際原子力機関(IAEA)の「原子力発電の国家的な基盤整備におけるマイルストーン」文書において特定されている。)が原子力エネルギーの平和的利用において最も重要であることを強調してきた。我々は、3Sの確保が原子力エネルギーの持続的な利用における国際的な透明性及び信頼性を獲得するための健全な基盤であることを認識し、3Sを不断に改善することの共通の利益を繰り返し述べてきた。
3.我々は、ここ数年、気候変動及びエネルギー安全保障上の懸念に対処するための手段として原子力エネルギーに関心を示す国が世界中で増大していることを目の当たりにしてきた。適切なエネルギー構成は各国の状況及び政策に依存する一方で、原子力エネルギーに対する関心が明らかに増加していることが認識されている。
4.我々は、核不拡散条約(NPT)のすべての締約国が原子力エネルギーをNPT上のすべての義務に従って平和的目的のために使用する奪い得ない権利を有していることを再確認しつつ、3Sの重要性に関する共通の理解を確立する必要性が増大していることを認識する。この点に関し、原子力エネルギーに関心を有している国は3Sを確保する責任を有している一方でこの分野における国際協力は有益たり得るものであること、G8メンバーはこのような国際協力の促進に積極的な役割を果たすべきことが認識されている。
5.このような背景の下、日本の提案により、以下の共通の原則及び取るべき措置を有する「3Sに立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアティブ」を開始する。このイニシアティブは、3Sの重要性に関する意識を国際的に高めること並びに原子力エネルギーの導入に必要な3S及び関連する基盤の関係国による整備を国際協力によって支援することを目的としている。
【共通の原則】
6.この国際イニシアティブの共通の原則として、以下が設定された。
‐原子力エネルギーの発電への応用は、明らかに、NPT第4条に規定する平和的利用の一部であること。
‐各国は、自国のエネルギー政策を決定する権利を有すること。
‐3S実施の約束を伴った原子力エネルギーの平和的利用は、原子力エネルギーの持続的な発展における国際的な透明性及び信頼性を獲得するための健全な基盤であること。3Sの実施は、原子力発電の導入に必要な基盤を整備する上で不可欠の目的を構成するものであること。
‐3Sを確保し並びに必要な規制上、法律上及び行政上の基盤を整備する責任は関係する国が有する一方で、国際協力は、そのような基盤の整備に大きく貢献し得るものであること。
‐我々は、原子力エネルギーの基盤整備に関するIAEAの中心的な役割及び機能を然るべく認識すること。
‐国際原子力エネルギー・パートナーシップ(GNEP)、革新的原子炉及び燃料サイクルに関する国際プロジェクト(INPRO)、核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ等の現在実施中の関係する国家的及び国際的な活動は、然るべく認識されること。
【取るべき措置】
7.このイニシアティブの下では、IAEAの活動と協力して又はIAEAの活動の補完として、以下の措置をとる。
‐上述の基盤整備支援のための3S関連活動を実施する過程において得られた良き慣行及び教訓を共有すること。
‐基盤整備支援のために現在実施中の二国間及び多数国間の活動に関する情報を交換すること。
‐基盤整備が直面している挑戦を特定すること。
‐二国間及び多数国間の国際協力を通じて改善され得る基盤整備の分野を特定すること。
‐必要に応じ、自発的に、我々の共通の原則に従って基盤整備支援を行うための二国間及び多数国間のプロジェクトを実施すること。