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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8+アフガニスタン・パキスタン外相共同声明(G8外務大臣会合)

[場所] トリエステ
[年月日] 2009年6月26日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1. アフガニスタン、パキスタン及びG8の外相は、アフガニスタン及びこの地域に影響を与える課題に対処するため、共に働くとのコミットを確認する。武装勢力及びテロ活動、麻薬、不法取引、汚職、人権侵害ならびに限られた経済機会については、それらが見られるすべての場所において決意をもって取り組む必要がある。

2. 外相は、アフガニスタン、パキスタン及びこの地域の平和、安定及び開発の追求は連関していることを認識する。アフガニスタン、パキスタン両政府及び国際社会は、テロや過激主義を克服し、地域全体の安定と繁栄を促進するために協力する必要性を認識する。G8は、努力が行われていることを認識しつつ、引き続き法の支配を尊重し、女性の権利及び表現の自由の尊重を含む各々の国内のすべての人の人権を擁護し促進するとの両国の約束を歓迎する。

3. 外相は、麻薬取引が依然として過激主義者の重要な資金源となっていることを認識する。また、違法な麻薬生産及び取引対策に向けたアフガニスタン、全ての近隣諸国及び他の国際的関係者の努力を歓迎しつつ、利害関係者の間でのより協調的かつ包括的な取組を要請する。

4. 外相は、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)に対する、また、UNAMAがアフガニスタンにおいて果たすことができ、また果たすべき不可欠な役割に対する全面的な支持を改めて表明し、パキスタン及び地域全域において国連が実施している重要な活動を想起する。

5. アフガニスタン及びパキスタンの外相は、アフガニスタン・パキスタン国境の効果的な管理と治安に対する責任を共有していることを認識するとともに、協力の強化が急務であることに同意する。G8各国は、G8・アフガニスタン・パキスタン・イニシアティブについて行われている「調整の仕組み」会合を通じて、ドバイ・プロセス等の協力イニシアティブの作業を基に、アフガニスタン及びパキスタンが主導するアフガニスタン・パキスタン国境にまたがる開発プロジェクトを引き続き支援する。G8は、「調整の仕組み」が国境管理の必要性に合致したものであり続けること確認するため、2010年に実施状況を確認する予定である。

6. G8、アフガニスタン及びパキスタンの外相は、昨年12月にラ・セル・サン=クルーで行われた閣僚級会合に始まり、モスクワで開催された上海協力機構によるアフガニスタンに関する会議、ハーグでの2009年3月の会議、アンカラ、ワシントン、テヘラン及びエカテリンブルグにおける3カ国協議及びイスラマバードにおけるアフガニスタン地域経済協力会議を含む最近のすべての地域的イニシアティブを歓迎した。また、地域の安定のための包括的アプローチの重要性に留意した。G8外相は、イスラマバードでの会合の成果を歓迎し、その際に行われたすべての具体的約束を迅速に実施することの重要性を確認した。我々は、今回のトリエステにおける地域的な閣僚会合及び同会合への幅広く質の高い参加が、より安全で、民主的かつ繁栄した地域の構築に向けた新たな前向きな一歩であると考える。我々はまた、平和と安定という目標を強化し、この地域の進歩と繁栄を導くうえでの、民間部門と市民社会の参加を含む地域にまたがる開発協力が極めて重要であることを強調する。

7. G8、パキスタン及びアフガニスタン外相は、特に麻薬取引及び過激主義が蔓延する地域のコミュニティに対して代替的経済機会を提供することの緊要性を認識する。G8は、社会経済開発の促進及び人的・機構的能力強化へ支援を集中させることにより、アフガニスタン及びパキスタン両政府の努力への支援を継続する。同様に、G8は、RECCA(アフガニスタン地域経済協力会議)最終宣言、特に、地域協力に示された高い優先順、並びに二国間貿易の改善及び参入円滑化を支持する。

8. アフガニスタンにおいて、G8は、信頼性のある包括的で安全なアフガニスタンの選挙を確保することを支援するため独立選挙委員会(IEC)と協働し、国連及び国際治安支援部隊(ISAF)がIECに対して必要な技術、調達、資金及び治安面での支援を提供することを支援することに引き続きコミットする。民主主義及び民主的機構は、アフガニスタンの中央及び地方の双方において、我々の支援に値する。

9. G8外相は、アフガニスタンが行っている主要省庁の改革等を通じた国、県及び郡レベルにおけるガバナンス強化のための努力を認識する。これら及び他の努力にもかかわらず、治安の不安定、汚職蔓延及び能力不足により、地方レベルでの保健、教育、水等の基礎的なサービス提供には、引き続き困難を来している。G8は、支援の実施における効率性と協調の必要性を再度確認し、アフガニスタン国家開発戦略への完全な支持を再度表明し、基礎サービスの確保に向けたアフガニスタン政府への支援にコミットするとともに、中央及び地方の双方での民主的機構の強化と国家としての主要な挑戦に取り組むアフガニスタン政府と協力することにコミットする。

10. G8は、過去1年にアフガニスタン国軍(ANA)及びアフガニスタン警察(ANP)の能力強化のためにとられた諸措置を歓迎し、一方で、ANA及びANPにおける教官及びメンターが依然不足していることを認識する。包括的戦略の文脈において、G8各国は、アフガニスタン治安部隊がアフガニスタン国民の安全により大きな責任を担い続ける能力を有することを確保するため、アフガニスタン政府と共に取り組む。

11. G8外相は、アフガン難民が直面している挑戦に焦点を当て、この観点から、安全、自発的、漸次的かつ尊厳のある帰還及び送還を確保するための国際的支援を継続していくことを強調した。

12. G8は、パキスタンとアフガニスタンの二国間関係の前向きな改善、及び両国指導者間の信頼の高まりを認識した。G8は、特にテロ対策に係る信頼と協力の強化のために、二国間及び多国間の既存の枠組を十分活用するよう両国に促すとともに、2009年1月に妥結されたアフガニスタン・パキスタン両国関係の方向性に関する共同宣言に留意した。両国の課題の持続可能な解決の達成は、それぞれの国が進めている努力のみならず、積極的な二国間協力によって到達しうる。G8外相は、この地域全体の平和と安定及び発展を促進するため、両国政府と協力する考えである。

13. G8外相は、テロ、過激主義、及び好戦主義に直面しながらも有効な民主的機構及び市民社会の強化に取り組んでいるパキスタン政府と協力することに引き続きコミットする。

14. G8は、暴力的な過激主義及び好戦主義に対するパキスタンの断固たる行動を支持し、パキスタンのテロ対策への継続的な取組を認識する。G8外相は、これらの問題に対峙しているパキスタンの人々や治安部隊の決意と彼らが払っている犠牲を認識した。G8外相は、テロリスト、武装勢力、麻薬取引者及びギャングへの武器及び資金の供給阻止等を通じ、パキスタンが進めているテロ対策への取組を支持することの重要性を強調した。

15. G8外相は、パキスタン西部辺境において、200万人以上の国内避難民が発生し、一般市民が苦しんでいることを認識する。G8は、影響を受けた人々に対する支援の配布を助けるため、国連及び人道諸機関と緊密に協働することにコミットする。G8はまた、この観点から、パキスタンによる救援、復旧、復興への取組を支援する。

16. G8及びパキスタンは、2009年4月に東京で開催された民主的パキスタン・フレンズ会合のような協力の場の重要性に留意する。G8はEU・パキスタン首脳会議を歓迎する。外相は、2009年4月に東京で開催されたパキスタン支援国会合において、参加国・機関がパキスタンにおける健全かつ透明性の高い財政運営を可能にする経済社会開発及び改革の実施を支援するために50億ドル以上の拠出を約束し、同会合が成功したことを歓迎した。

17. 我々は、アフガニスタン、パキスタン及びこの地域が直面している深刻な困難は、すべての関係者の持続的な関与を必要としていることを認識する。アフガニスタン・パキスタン相互の安全及び経済発展のために協力的且つ建設的な関係を構築するための両国の自発的な取組に対する支援は、アフガニスタン及びパキスタンのそれぞれの優先順位を反映したものである必要があり、同時に、すべての取組におけるアフガニスタン及びパキスタン両国のリーダーシップ及び行動の必要性を強調する。