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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8外相+アフガニスタン・パキスタン+アウトリーチ国・機関(計28カ国)会合における中曽根弘文外務大臣スピーチ(G8外務大臣会合)

[場所] トリエステ
[年月日] 2009年6月26日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

ご列席の皆様、

 アフガニスタン及びパキスタンの外相とともに、近隣周辺国の閣僚の皆様と議論できることはきわめて有意義と考えています。アフガニスタンとパキスタン両国が安定的に発展できる基盤を作ることが、きわめて重要です。それは、ここに集っている近隣周辺国の協力なしにはなしえないものであり、またそうした基盤を作ることが、アフガニスタンとパキスタンにおけるテロを封じ込め、国際社会の安定と繁栄に寄与するものと考えます。

 これまで我が国は、2002年1月のアフガニスタン復興支援国際会議や本年4月のパキスタン支援国会合の開催をはじめ、国際努力の結集のためのイニシアティブを発揮するとともに、両国の安定のためにできる限りの貢献を行ってきました。

 アフガニスタンとパキスタンのみならず、インド、イラン、中央アジアを含む地域は、相互の経済関係を深めることにより、いっそうの利益を享受できる関係にあります。同時に、この地域は武器・麻薬の流通をはじめとする共通の負の課題も抱えており、国境管理を中心に、域内各国の積極的協力が重要です。

 我が国は、この地域の潜在的可能性に着目し、中長期的に持続可能な地域の経済発展のためには、交通ネットワークを整備することが重要と考え、アフガニスタン国土を環状に巡る「リング・ロード」の復興や、パキスタンの南部の港から国境地域を結ぶインダス・ハイウェイの建設に協力してきました。また、周辺国との関係も重視し、各国の安定と発展のための支援を行ってきています。ウズベキスタンでの鉄道新線建設や、タジキスタンでの道路整備はその一例です。将来こうしたインフラが互いに連携して、東西・南北を結ぶ物流ネットワークとなり、地域の経済活動を促進し、地域の繁栄に資することを願っています。

 この観点から、現在、アフガニスタン・パキスタンをはじめ地域諸国自らのイニシアティブにより、国境管理やインフラ整備などの分野で、具体的な協力が進展していることを高く評価しています。

 我が国をはじめとするG8は、地域の潜在的可能性実現に向けて、地域諸国と一緒に知恵を絞り、各国の努力を支援していくことが必要と考えています。この観点から、昨年のG8外相会合でも議論しましたが、アフガニスタン・パキスタンの国境地域の経済社会開発も引き続き重要であり、さらに効果的な形で具体的支援を進めていくことが必要です。

 また、アフガニスタン・パキスタンの連携強化に向けた、通過貿易協定や政府間協議の促進等にかかる米国のイニシアティブを高く評価します。我が国としても、私が本年5月にイランを訪問した際に、アフガニスタンの安定と発展のために麻薬対策や難民支援の分野で具体的なプロジェクトを共同で実施していくことに合意し、協力を開始したところです。また、4月の東京におけるパキスタン支援国会合では伝統的ドナー国に加え周辺国からも積極的な支援表明がなされましたが、今後は、パキスタン支援国会合やこれまでのアフガニスタンに関する国際会議で示された支援が、着実に実施に移されることが重要です。

 日本としても、両国に対するこれまでの支援を基礎として、インフラ、農業、教育、職業訓練等、様々な分野で最大限の支援を実施していく考えです。

 ご静聴ありがとうございました。