データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 持続可能な未来に向けた責任あるリーダーシップ(第35回ラクイラ主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] ラクイラ
[年月日] 2009年7月8日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.我々G8の首脳はラクイラで会合を行い、2009年4月6日にこの地域を襲った悲劇的な地震によって被災したアブルッツォの人々、並びに世界中で自然災害の被害を受けた人々に対して、心からの連帯の意を表明する。

2.我々は持続可能な発展を追求し、経済危機、貧困及び気候変動の密接に結びついた課題に取り組んでいく決意である。これらの課題には、迅速な行動と長期的なビジョンが必要である。

3.共通の価値に導かれ、我々はグローバルな問題に取り組み、開放的で、革新的で、持続可能で、かつ公正な世界経済を促進していく。このためには、効果的で責任のあるリーダーシップが必要である。我々は責任を全面的に追う決意であり、我々の決定を実行し、また我々の行動の進展を監視し効果を高めていくために、2010年までに全面的で包括的な説明責任のメカニズムを採択することにコミットしている。

4.我々は引き続き、経済及び金融危機と、その人的及び社会的結果に焦点を当てていく。我々は、信認を回復し、成長をより堅固で、グリーンで、包括的で、持続可能な軌道に乗せるため、共同して取り組み続ける。このことは、経済活動にとっての健全性、適切性及び透明性の基準を強化することを含んでいる。

5.我々は、気候変動との闘いを主導することにより、現在及び将来の繁栄を確保していく考えである。我々は、コペンハーゲンで世界的、野心的、包括的な合意に達することにコミットしている。この関連で、我々は、他の先進工業国及び新興経済国に対して、共通であるが差異のある責任及び各国の能力の原則と整合的に、他の産業国及び新興経済国に対して、積極的に関与することを求める。

6.我々は、特にアフリカにおける貧困対する我々のコミットメントを新たにしている。我々は、開発途上国に対する危機の影響を緩和する措置を講じ、ミレニアム開発目標達成に向けた努力への支援を継続していく決意である。

世界経済

経済・金融危機:回復への道

7.世界経済は過去数十年間でもっとも厳しい経済及び金融の混乱を経験している。数年間の非常に高い世界的成長の後、我々は、金融の混乱、広範な不況、集中的なレバレッジ解消、急激な国際貿易の減少及び失業と社会的苦痛の増大を特徴とする、非常に困難な経済状況に直面してきている。株式市場の回復、金利スプレッドの縮小、企業・消費者の信認の改善など安定化を示す兆候があるが、状況は依然として不確実であり、経済・金融の安定に対する大きなリスクが引き続き存在する。

8.我々は、金融規制及び国際金融機関(IFIs)の強化、並びに開かれた市場の世界的維持を含む、需要を支え、成長を回復し、金融の安定を維持するための必要なすべての措置を講じるとのロンドン・サミットでなされたコミットメントを強く再確認する。我々は、引き続きこれらの決定を迅速に実施し、すべての国に対して、国際経済・金融システムの強化に向けて断固たる行動をとり、他国への影響に関して協力し責任をもって作業するよう求める。

9.我々は、信認を回復し、金融セクターを安定化させ、成長促進と雇用創出のための刺激を与えるための、これまでの進展を精査した。我々は、現在の困難な状況にもかかわらず、健全なファンダメンタルズ及び社会的参加により支えられた、より均衡がとれ持続可能な成長軌道を確立することを目指して、貧困との闘い及び気候変動を含む世界的な課題に引き続き対処していく。

10.現在の金融及び経済危機は、主要な経済国間の協力の必要性を全般的に高めた。2007年に設立されたG8と主要な新興市場国、すなわち、中国、インド、ブラジル、メキシコ及び南アフリカとの論点主導型の対話である、ハイリゲンダム対話プロセス(HDP)は、世界経済の更なる成長にとって重要な、投資、イノベーション、開発及びエネルギー効率に関する世界経済課題への対応における共通の理解及び共有された責任を形成する土台として働くことにより、この役割を果たす手助けをしてきた。本対話は、適切な対応を見出すために、これらの世界的な課題の理解を共有する手助けをしてきた。我々は、今日までに達成された成果を確認し、この対等なメンバー間の対話の延長を求める。

経済刺激及び金融の安定化

11.我々は、危機の当初より、回復を確保し我々の金融システムを修復するために、先例のない協調行動をとってきた。我々は、世界のあらゆる場所に影響を与えてきた危機に対応して、様々なレベルでのパートナーと協調した取組みを行ってきた。我々は、経済成長のための刺激を与えるため、力強い協調行動をとってきている。我々はまた、我々の金融システムへの包括的支援を与えることにより、信認を回復するための行動をとってきた。これらの必要な措置が我々の財政に短期的な影響を与える一方で、我々は、中期的な財政の持続可能性を確保することにコミットする。

12.我々は、我々の経済におけるいくつかの安定化の兆候に留意し、我々の措置が、経済活動に対し完全な効果を及ぼし、信認と期待の改善に貢献するにしたがい、回復が強化されていくと確信する。しかしながら、経済状況は依然として不確実であり、経済・金融の安定に対する大きなリスクが引き続き存在する。我々は、個別にまた集団で、物価の安定と財政の中期的な持続可能性と整合的なマクロ経済上の刺激を引き続き与えること、銀行の流動性・資本ニーズに対処すること、及びシステム上重要な金融機関の健全性を確保するために必要なあらゆる行動をとることなどを含む、世界経済を強固で安定した持続可能な成長軌道に復帰するために必要な方策を講じる。

13.我々は、危機に対応するためにとられた例外的な政策を、景気回復が確実となった際には元に戻すための適切な戦略を用意する必要について合意した。これらの「出口戦略」は、国内の経済状況や財政状況によって国により異なるだろうが、長期的に持続可能な回復を確保するものでなければならない。我々は、このプロセスに関し我々を支援するIMFの分析的作業を歓迎する。

金融システムの修復

14.金融市場の安定化及び銀行の活動の正常化を含む、金融セクターの修復は、持続的な経済回復を確保するための緊急の優先事項である。我々は、ロンドン・サミットにおいてなされたコミットメントを速やかに実施しており、世界的な金融安定や国際的な競争条件の公平を確保するための我々の努力に加わるよう、他の国々に求める。

15.流動性へのアクセス確保に加えて、不良資産への断固とした対処及び存続可能な金融機関の資本増強が極めて重要である。我々は、共通の原則及び資産の客観的かつ透明な評価に基づき不良資産に対処すること、並びに、必要に応じ、銀行の自己資本及び準備金の十分性を評価することにおける更なる国際的な協力の重要性を認識する。公的資金注入、その条件、民間参加に対するインセンティブに関する原則における強力な協調も重要である。我々は、金融安定理事会(FSB)に対し、金融システムにおける動向の監視を継続し、競争の歪み及び規制の潜脱の回避と整合的な、協調したアプローチの促進を支援することを要請する。

国際租税及び金融健全性に関する協力並びに違法な資金調達への闘いにおける更なる取組み

16.この困難な時期において、特に、世界経済を安定化させるためにとられた例外的な財政措置、及び経済活動が公平かつ透明な方法で行われることを確保する必要性に鑑み、我々の課税ベースの保護並びに租税詐欺及び租税回避との闘いに向けた取り組みは一層重要である。我々は、世界中での租税情報の交換と透明性の促進が進展を続けており、租税情報の交換に関する国際的に合意された基準の受入れの拡大、及び、いくつかの国・地域により署名された二国間協定の数の増加を支援している。しかし、自己満足に陥る余裕はない:すべての国・地域は、自らのコミットメントを直ちに実施しなくてはならない。我々は、課税を回避するために隠された多額の資金を今後も容認することはできない。

17.G20の求めに呼応し、租税情報の交換及び透明性に関するこの再確認された重要性から十分に恩恵を得るため、適切なフォローアップの枠組みが必要である:

a.OECDの透明性及び情報交換に関するグローバル・フォーラムは、すべての国・地域による国際基準の実施を評価し更なる行動のための客観的で信頼に足る基礎を提供するピア・レビュー・プロセスを実施しなければならない。

b.グローバル・フォーラムによりこれまで監視されてきたすべての国は、租税情報の交換に関する国際基準の実施にコミットしていることから、今後は、情報交換の実際の実施と、これらの基準に合致する協定の数、質及び関連性の増加に努力を集中すべきである。

c.グローバル・フォーラムへの参加は拡大されるべきである。

d.租税回避が開発途上国に特に大きな損失を与えることを認識し、グローバル・フォーラムへの参加拡大及び情報交換に関する多国間アプローチの検討などにより、開発途上国が新たな協力的な租税環境から恩恵を得ることを可能とするために、具体的な進展が得られる必要がある。

e.租税情報の交換と透明性に関する国際的に合意された基準をまだ実質的に実施していない国・地域を定義するために用いられる基準は、国際基準の効果的な実施を確保するピア・レビュー・評価プロセスの一環として、改訂されるべきである。また、

f.各国が、税の透明性に関する国際基準を満たさない国に対する使用を検討すべき効果的な対抗措置の項目表が、議論され合意されるべきである。我々は、OECDに対して、これらの課題に速やかに対応し、今後の方策を提案し、次回G20財務大臣会合の時までに報告することを要請する。

18.我々は、すべての国・地域に対し、金融健全性、租税及び、資金洗浄・テロ資金供与対策(AML‐CFT)における国際基準を遵守することを求める。このために、我々は、適切な機関に対し、FSAPプロセスによるものを含む既存プロセスに基づき、客観的なピア・レビューを実施・強化することを求める。

19.我々は、資金洗浄及びテロ資金供与に対する闘いに関する基準の改善における金融活動作業部会(FATF)による進展、並びに、透明性の国際基準に関するOECDによる進展を歓迎する。

20.非協力的な国・地域に対する闘いはまた、金融健全性規制の分野に加えて、資金洗浄及びテロ資金供与対策を含むべきである。我々は、FSBに対し、国際的な監督・金融健全性基準について、各国・地域を評価することを求める。FATF及びFSBは、9月までに、非協力的な国・地域の特定における進展に関し報告を行うべきである。

21.我々は、いくつかの国が、非協力的な国・地域において保有される資産の返還のための自発的遵守戦略を実施していること、及び、関心を有する国のための協議枠組みを明確にする必要性が感じられていることに留意する。

均衡のとれた持続可能な成長のための共通枠組み

22.さらに進んで、我々には、長期的課題に包括的に対処し、世界経済を安定した均衡ある持続可能な成長に導くための戦略が必要である。世界的公共財としての経済的・社会的安定を達成するためには、よりよいガバナンスが必要である。規制改革は過大なレバレッジ及びリスクテイクの余地を減じ、金融機関の資本の健全性を促進する。国際的な企業や金融機関の行動の適切性、健全性及び透明性に関する共通の原則・基準は、健全かつ持続可能な経済システムの促進に役立つ。この取組みにおいては、雇用機会の促進、技能の習得と更新、及び、適切な社会的セーフティー・ネットと所得支援を通じた最も弱い人々の保護による、成長の社会的側面もまた非常に重要である。

23.長期間の安定的で持続的な成長のためには、経常収支における現在の不均衡の円滑な解消が必要である。我々は、適切なマクロ経済政策及び構造政策を通じ、黒字国における力強い国内需要の支援及び赤字国における貯蓄率の上昇を含む、多国間で合意された戦略に沿った必要な調整を確保するために協働する重要性を認識する。新たな成長の源は、開かれた市場の文脈の中で、よりグリーンな経済における資源の持続可能な利用を確保しつつ、生産性の向上を促進するインフラ、技術革新及び教育への投資によって支えられなければならない。調整の負担が公平に担われるよう確保するのに役立つため、より大規模なマクロ経済政策の協調も必要となるだろう。

金融及び規制改革

24.我々は、金融規制、IFIs及びFSBの改革のために、ワシントン・サミット及びロンドン・サミットで行われた作業を強く支持する。我々は、これらの決定を適時に実施することに全面的にコミットしているとともに、他のパートナーに対し我々の取組みに加わることを強く要請する。

25.我々は、金融規制及び監督に関する強化された世界的な枠組み、会計と金融健全性基準との整合性の促進、景気循環増幅性に対処するための適切な手段の整備、及びシステム上重要な全ての機関及び活動に対する包括的な監督の確保の必要性を強調する。我々は、報酬構造、資本の定義及び証券化のリスク管理のための適切なインセンティブ、会計及び金融健全性基準、システム上重要なヘッジ・ファンドの規制及び監督、店頭取引(OTC)デリバティブ市場の標準化及び強化、これら商品のための中央清算機関の設立、並びに、格付会社の規制及び透明性を含む、世界的な金融の安定性、国際的な競争条件の公平を確保するのに必要な作業を精力的に追及することにコミットする。

26.我々は、国際通貨基金(IMF)への資金及び貿易金融のための資金を提供するというコミットメントを履行している。我々は、IMFに対しその貸出能力拡大に必要な資金を与えるための努力を主導してきており、他国の参加を要請する。我々はまた、IMFの譲許的貸付能力を大幅に増加させる方策を探求するとともに、IMFが低所得国に対する譲許性を増加させる余地を探ることを促す。我々は、IMFが現代の世界経済において決定的に重要な役割を果たせるよう、IMFを改革することに引き続きコミットしている。我々は、IMFの出資比率見直しを2011年1月までに完了すること、及び、2010年春の会合までに世界銀行における発言権・代表権に関する改革の第二段階の合意がなされることを支持する。我々は、世界銀行や他の国際開発金融機関(MDBs)がとっている、世界的な危機への対応におけるこれら機関の重要な景気循環緩和の役割を強調する行動を歓迎する。合意された中長期的な戦略に基づく徹底的な資本需要分析を含め、これらの機関の資本状況の包括的な見直しを行った上で、我々は、追加的な資本の必要性につき検討する用意がある。追加的に検討すべき要素には、各機関間の明確な役割分担と協働、バランス・シートの柔軟性の拡大、良きガバナンス、より良好なリスク管理、援助の効果的な活用、技術革新の促進の進展、世界の最貧層に十分な焦点を当てることが含まれる。

共通の原則及び基準

27.市場経済が持続的な繁栄を生むためには、経済活動における適切性、健全性及び透明性に関する基本的な規範が尊重されなければならない。今回の危機の規模と広がりは、この観点から緊急に行動する必要があることを示した。改革努力は、国際的な経済・金融システムが抱えるこうした欠点への決意をもった取組みでなければならない。このためには、適切な水準の透明性を促進し、規制・監督システムを強化し、投資家をより良く保護し、企業倫理を強化することが必要とされる。我々は、これら課題に対処するために、既存のイニシアティブに立脚しつつ、規制上の隙間を検証・補充し、迅速な実施に必要とされる広範な国際的合意を促進するための、包括的な枠組みである「レッチェ・フレームワーク」を策定するとの戦略の目的について合意した。この枠組みは、コーポレート・ガバナンス、市場の健全性、金融規制・監督、税に関する協力、及びマクロ政策・データの透明性等の分野を含む。我々は、レッチェ・フレームワークの実効性を確保するため、あらゆる努力を傾注して最大限の参加国と迅速で決然とした実施を追求する。我々は、G20及びそれ以上のより広範な場に拡大していくことを視野に入れて、国際的なパートナーと協働して進展させることにコミットしている。

28.我々は、国際機関、特に世界銀行、IMF、世界貿易機関(WTO)、国際労働機関(ILO)及び経済協力開発機構(OECD)が協力を強化し、一貫性を向上させることを呼びかける。

腐敗

29.この関連で、我々は、社会の安定と安全に対して重大な問題をもたらし、民主主義の制度と価値を損ない、持続可能な開発と経済的繁栄を阻害する腐敗に対する行動を強化する決意である。これまでの我々のコミットメントを再確認し、我々は、すべての国における腐敗と効果的に闘う我々の取組みを強化する。

30.この分野における国際協定の批准及び実施は、この方向に向けた重要なシグナルである。我々は、国連腐敗防止条約(UNCAC)のすべての国による批准、及び効果的、透明かつ包括的な検討メカニズムの設立を含む、UNCACの効果的な実施を確保することによるバリ会合の強固かつ一貫したフォローアップを呼びかける。我々は、OECD外国公務員贈賄防止条約の遵守と執行、及びその常設監視メカニズムへの支援を促進する。我々は、外国公務員への贈賄に対する法令を十分に執行し、国内の法原則と整合的に、外国贈賄罪について精力的に捜査し、訴追する。我々は、他の主要経済国による可及的速やかなOECD条約への加入を奨励する。

31.効果的な成果を達成するために、腐敗に対する国際協力が強化されるべきである。このため、我々は、G8腐敗防止イニシアティブの更新にコミットしており、他国への働きかけ活動及び技術支援をさらに支持する。

32.我々は、腐敗した個人及びそれらの不法に取得された資産に対する安全な避難場所を否定し、腐敗した公職在任者が我々の金融システムにおいて自らの不法行為の成果に対するアクセスを得ることを防止するとの我々のこれまでのコミットメントを再認識する。我々は、非公式な協力を促進する方法を求めること及び良い慣行の特定と普及を支援することなどによって、UNCACの枠組み内での資産回復捜査に係る国際司法協力の改善に向けて努力する。我々は、盗難資産回復イニシアティブ(StAR)を通じた協力を含む、資産回復における協力を強化する。

33.我々は、国際金融機関(IFIs)に対して、強化された内部セーフガード、及び汚職事件に係る各国当局との協力を促進する措置の強化などを通じて、より透明な事業慣行を採用することを奨励する。

34.我々はまた、北海道洞爺湖サミットで初めて提出された、「腐敗対策コミットメントに関するG8実施レビュー:アカウンタビリティ報告書」の更新を歓迎する。我々は、本報告書を、腐敗との闘いの実例を示し、G8諸国を透明性と説明責任の最高水準に維持させる恒久的な手段とすることを想定している。このため、我々は、腐敗防止へのコミットメントに関する我々の定期的な報告の準備へのOECDからの支援を評価する。さらに進んで、我々は、主要なパートナーに対して、自らの腐敗防止コミットメントに関する同様の報告を準備するよう要請する。

35.我々は、採取部門において統治を改善し腐敗を削減するための採取産業透明性イニシアティブ(EITI)を引き続き支持する。我々は、すべての実施国及び当該国において操業するすべての企業による検証を促進する取組みを強化する。我々は、さらに、EITI候補国が、それぞれの合意された期間内に実施を完了させるよう強く奨励し、他の開発途上国及び新興市場国並びに右諸国の企業に対し、このイニシアティブを遵守することを求める。

雇用及び社会的側面

36.我々は、人々の懸念を優先し、危機の社会的な側面に取り組むことにコミットしている。経済危機の労働市場への影響は、社会的な安定を損なう可能性がある。したがって、良いマクロ経済政策は、失業を削減し、労働市場への迅速な復帰を可能にし、また社会的疎外を防止する雇用・社会政策と結びつけられなければならない。我々は、以下の原則に従い、危機の雇用への影響を削減し、雇用における成長の潜在力を最大化するため更に一貫した行動をとることとした、ローマでのG8労働大臣会合及びロンドン雇用会議の結論を支持する:

a.失業を削減し、能力開発を強化し、職を労働市場要求と適合させる積極的な労働市場政策の促進;失業者のための所得支援の維持;レイオフを避けるため、訓練の提供と一体となった部分的な失業制度、一時的な柔軟な労働及び雇用補助金などのその他の形態、を通じたものを含めて、既存の雇用を維持。

b.信認及びその結果として経済及び雇用回復の原動力として社会保護制度の持続可能性及び有効性を確保すること;

c.我々は、国際機関、特にIMF、OECD及びILOに対し、それぞれの助言及び各国政府との協力の労働及び社会的影響を考慮に入れることを要請する。

37.社会及び雇用政策は、新しい世界的な枠組みの文脈において、極めて重要な柱である。措置は、特に最も脆弱なグループに関して、性差の問題を考慮に入れつつ、人々や家庭に所得救済を提供し、長期的失業を防ぐべきである。先進国、新興市場国及び開発途上国そして国際機関は、雇用重視の成長の確保と社会の一体性促進のために、共同して取り組むべきである。「危機からの回復:世界労働協定」に関するILO決議に基づき、ILOのディーセント・ワーク・アジェンダを前進させることは、全世界レベルでの危機への対応及びグローバル化の社会的側面を進める上で適切である。政府及び企業は、危機を口実として、労働者の権利の履行や労働者保護を縮小させるべきではない。我々は、世界的レベルでの雇用と社会保護の促進、及び労働における基本原則及び権利に関するILO宣言とそのフォローアップに反映され国際的に認識された労働権の遵守にコミットする。我々はまた、危機の人間的な側面に対処し成長をより強い基調に戻すことにコミットする。

38.我々は、世界銀行の脆弱性枠組みを含む、任意の二国間拠出を通じた最貧国の社会的保護のための資源の増強に関するロンドンでの決定を支持する。

グリーン回復

39.経済危機への緊急対応において、我々の経済をより持続可能で強靱な成長への道に導く、世界的なグリーン回復を促進する機会を見過ごすべきではない。我々の財政上の景気刺激策は、グリーン・ジョブの創出、及び低炭素でエネルギー効率的かつ持続可能な成長を奨励する措置に対し益々資金投下している。これらは、エネルギー効率に関する措置、公共輸送インフラへの投資、低燃費車のためのインセンティブ、代替エネルギー資源の研究、再生可能エネルギー技術の支援及び炭素回収・貯留などの強化された二酸化炭素の削減、リサイクル及び処分を含む。我々は、引き続き財政措置の環境的側面を強化し、クリーン・エネルギーとエネルギー効率の促進のための取組みを強化することにコミットしている。環境物品及びサービスの自由化に関する進行中のWTO交渉とともに、我々は、北海道洞爺湖サミットで合意されたように、気候変動への対応に直接関連する物品及びサービスに対する貿易障壁の自発的な削減又は撤廃の進展のための努力を強化する。同時に、我々は、低炭素及び資源効率的な成長への転換を促進する適正な規制及びその他の枠組みを確保する。この見地から、我々は、炭素集約的なエネルギー消費を人為的に奨励する補助金の削減を求める。

エネルギー安全保障、世界的エネルギー市場及びエネルギー分野における投資環境

40.雇用を創出し、エネルギー安全保障を強化し、短期及び中期的に温室効果ガス排出の制限に資する費用対効果の高い投資又は計画されたエネルギー事業を現下の金融及び経済危機により、遅延させるべきではない。我々は、すべての国及び民間部門に対して、それぞれの投資を計画する際に長期的な視点をとることを強く求める。我々は、低炭素・エネルギー効率的な成長モデルへの転換を加速させる投資パターンにおける著しい変化を伴う経済回復の促進にコミットしている。我々は、発電施設、建物、産業及び輸送のエネルギー効率を改善する多くの費用対効果の高い既存の技術のより迅速な適用を特に奨励する。低炭素技術への加速された投資は、建物、工場、自動車及び発電施設における資本ストックに代表される既存及び潜在的な炭素ロックインの最小化のために必要である。

41.この文脈において、我々は、グローバルエネルギー安全保障に関するサンクトペテルブルク原則の実施への我々の強いコミットメントを再確認し、他国に対して、この取組みに参加するよう呼びかける。我々は、主要国際エネルギー機関に対し、それらのプログラムをレビューし、更新し、変化するエネルギー課題に照らしてそれらを促進するよう要請する。

42.予測不可能なエネルギー市場及び高度に変動的な価格は、長期的な需要変動に沿って、産業が新たなインフラ投資を計画し実施する能力を危険に晒す。透明性を向上させ、市場における過剰変動性を減少させることに向けた対話を強化することは、生産者と消費者の両方の利益となる。化石燃料の生産、輸送及び消費国は、更に予測可能な法的、規制上の枠組みを支援し発展させることなどにより、供給及び需要パターンの安定性及び予測可能性を向上させ、エネルギー部門への投資を促進させることに共同して取り組まなければならない。我々は、効率的なエネルギー市場への障害の特定において、ジェッダ及びロンドン・エネルギー会合でみられた進展及びそれらのフォローアップ・イニシアティブを歓迎する。我々は、国際機関間でのより良い協調、並びにロンドン・エネルギー会合の成果に基づき、投資環境の改善、価格の過剰変動性を削減する方策についての議論及びエネルギー安全保障の促進に焦点をあてた、生産、輸送及び消費国の間のより構造化された対話に向けた既存のイニシアティブの加速と強化を呼びかける。この趣旨で、我々は、国際エネルギーフォーラム(IEF)の上級運営グループの活動を含む、国際エネルギー機関(IEA)及びIEFによる重要な作業を支持する。我々は、IEFにおける専門家に対し、原油市場の過剰変動性を削減する様々な選択肢を評価することを要請する。

43.安定的かつ予測可能な規制枠組みのほか、透明で良好に機能するエネルギー市場は、生産国及び消費国の双方において、投資リスクと不確実性を低減するための不可欠な前提条件である。我々は、このため、需要、供給、貯蔵、余剰能力及び投資計画に関する時宜を得た信頼できるデータの必要性を強調する。この目的のために、我々は、引き続き、IEFにより管理された石油データ共同イニシアティブ(JODI)を強く支持し、すべての国に対して、データの質、完全性及び適時性の改善に向けて協力するよう呼びかける。我々は、さらに、投資計画に関する年次データの収集開始におけるIEFの取組みを強く支持する。我々は、ガス市場において、更なる透明性が求められていると信じる。我々は、このため、IEFに対して、JODI型の活動を天然ガスに拡大することの可能性について検討するよう呼びかける。

44.我々は、市場の透明性及び機能を改善し、商品市場における過剰な価格変動に対処する国際的なイニシアティブを奨励する。特に、我々は、金融デリバティブ市場の規制及び監督に関する証券監督者国際機構(IOSCO)の勧告を歓迎し、各国政府によるそれらの実施及び政府間での更なる協力を加速させることの重要性を強調し、すべての国に対し、IOSCO勧告の実施を要請する。我々は、IOSCOの商品市場タスクフォースに対して、石油先物市場の透明性及び市場監督における特定の改善の更なる可能性について検討し、特定の勧告を行うよう要請する。

貿易

45.我々は、市場の開放と自由を維持し、いかなる種類の保護主義も拒否する我々のコミットメントを再確認する。困難な時期において、特に経済危機後の世界貿易の大きな減少に鑑み、我々は、過去の保護主義的政策の過ちを避けなければならない。回復には、実行可能な強い国際貿易要素が必要であり、関連するプログラムはWTO及びその他の国際約束の下での無差別待遇への我々の義務及びコミットメントを十分に尊重しなければならない。我々は、貿易及び投資を促進し円滑化するための取組み及び手段を最大化する。

46.我々は、関税を現在の水準より引き上げる決定をとらないことを含む、国際貿易の更なる悪化を避けるためにロンドンで採択された、現状維持のコミットメント及び保護主義的措置の是正に関するコミットメントを完全に遵守することの重要性を強調する。我々は、投資あるいは物品及びサービスの貿易に対する新たな障壁を設けず、新たな輸出制限を課さず、世界貿易機関(WTO)と整合的でない輸出刺激策をとらない。我々は、WTOに対し他の国際機関とともにそれぞれの権限の範囲内で、引き続き状況を監視し四半期毎にこれらのコミットメントへの遵守について公表することを要請する。

47.我々は、ロンドン・サミットで誓約された2500億ドルの貿易金融のための支援の我々の分担を、我々の輸出信用機関(ECAs)や投資機関及び国際開発金融機関により迅速に利用可能にするよう引き続き確保する。我々は、その実施における協調及び協力を支持し、この観点において実施された措置についての情報交換を歓迎する。再保険制度の強化などのECAs間の協力は、この目的のために重要な役割を果たすことが期待される。

48.我々は、モダリティに関するものを含むこれまでの進展に基づきドーハ開発アジェンダの迅速かつ野心的で均衡のとれた包括的な妥結に達することにコミットする。我々は、この目的のために、我々の主要パートナーとの強化された対話に取り組んでおり、明日、彼らと協議することを期待する。

投資

49.現在の危機は、重要な資金調達源及び経済成長と統合の原動力である外国直接投資(FDIs)を含む資本フローに影響を与えてきた。我々は、長期的な投資の積極的な役割を強調する。我々は、特に新興国及び開発途上国において、外国投資のための開放的かつ受容的な環境を促進することで、最近のFDIの減少を逆転させるよう作業する。

50.我々は、我々の市民と企業が活動する市場の世界的な性質、及び我々の行動の相互的な効果を認識し、保護主義的な措置に対抗する我々の取組みを十分に強調する。この観点から、我々は、投資に対する制限を監視するOECDの取組みを歓迎するとともに、この分野における、OECDとWTO、国連貿易開発会議(UNCTAD)及びIMFとの投資の自由ラウンドテーブル(FOI RT)で進行中の合同作業を奨励する。

51.我々が直面している危機の相互に連結した性質、及び、例えば、エネルギー安全保障、農業生産、技術移転及び開発の機会を改善することにより、危機への対処において投資が果たす貢献には改善された投資枠組みが必要である。北海道洞爺湖サミットでは、投資を呼び込む土台を作る二国間投資協定及び自由貿易協定に盛り込まれる基本原則に関して進展が得られた。我々は今後、投資枠組みの予見可能性及び安定性を促進するような世界的なシナリオに適した原則及び手段に向けて、より広範囲のグループの国々と作業する必要があり、我々は、この文脈で、開放的な投資環境の必要性に関する共通の立場を築くためにハイリゲンダム対話が果たした重要な貢献を強調する。

52.このために、我々は、予見可能な安定的投資環境を創造する、長期的な合意された共通の多国間の枠組みに向け、より形式の整った、より広範なプロセスのための基礎として役立つ、共有された原則に合意するために、我々の主要なパートナー国との協力を強化することにコミットする。このために、我々は、我々のHDP/HAPパートナー国と、広範な参加者及びOECD、UNCTAD、世界銀行などの関連国際機関や他の主要な利害関係者からの参加を伴ったプロセスを立ち上げることの実現可能性を含む、共通の対応の可能性を評価するために得られた進展に関する報告書を一年以内に作成するように協働することにコミットする。

53.我々は、維持可能な成長を達成する上での政府及び民間部門が果たす補完的な役割を意識し、金融危機のより広範囲な結果を回避し、責任ある企業慣行を促進するための強化された取組みを求める。このために、我々は、我々の政府、市民、企業及び他の利害関係者の意識を啓蒙するために、国際的に認識された任意の企業の社会的責任基準の普及を促進する。我々は、我々のハイリゲンダム・コミットメントに従い、既存の関連する国際的な措置の奨励を通じて、企業の社会的責任を更に促進し育成する。我々はまた、CSRを企業慣行に取り入れるための関連国際機関(ILO、OECD、国連グローバル・コンパクト)の作業を歓迎するとともに、右機関が、既存のCSRインストルメントとの相乗効果を達成するために一貫して協働することを奨励する。

イノベーション及び知的財産権

54.イノベーション及び知識は、回復への支援及び世界経済をより維持可能な成長軌道に乗せるための主要な鍵である。我々は、長期的な課題に関してイノベーションを加速化させること、及び、新たな成長源を創出するのに決定的となる、新たな産業、企業及びサービスの開発を奨励することを意図する。我々は、また景気刺激策を通じて、我々の国におけるイノベーション政策を実施することにコミットしている。我々は、研究、起業家精神、人的資源及び技能、環境技術、並びに情報通信技術(ICT)を含むインフラへの投資を促進することを目指している。

55.イノベーションはまた、環境保護、保健と貧困などの世界的な政策課題への対処において主要な役割を有している。公的行政機関の近代化をはじめとして、先進国と開発途上国の内部及び先進国と開発途上国の間において、イノベーションのあらゆる形態の普及のためのより強力な国際協力及びより効果的な仕組みが必要である。我々は、この枠組みにおいて、OECDイノベーション戦略が、イノベーションのプロセスでの変化、普及及び影響を観察するための、並びにイノベーション政策を評価するための仕組みの策定に対して果たした貢献を認識する。

56.我々はまた、パートナー国の優先事項、知的財産権の社会的・経済的側面、及びすべての国に裨益する国際システムの効率性を向上するための方策に関する共通理解を作り上げるためにハイリゲンダム対話が果たした重要な貢献を認識する。本対話は、知的財産権(IPR)が尊重される政策及びビジネス環境を可能にすることが、イノベーション、知識、起業家精神及び創造性を促進するために必要であるとのパートナー国との共通理解を強化した。

57.イノベーションは、効果的な知的財産権制度を通じて促進されることが可能性である。国際レベルでのIPRの利用増加により、知的財産は、貿易、産業政策、公衆衛生、消費者安全、環境保護及びインターネットなどの多様な部門における極めて重要な要素となってきた。我々は、国際的な知的財産制度の統合されたビジョン及び一貫した発展において、世界知的所有権機関(WIPO)が果たす中心的役割を認識する。我々はまた、特許協力条約、及び実体特許法条約(SPLT)などの世界的な特許調和の重要性を再確認するとともに、特許審査ハイウェイなどのワークシェアリングのイニシアティブを含む、国際的な特許の協調の拡大を認識する。

58.模倣品及び海賊版は、世界経済、公衆衛生及び福祉に対する脅威を与え続けている。このため、我々は、G8知的財産権専門家グループの協議報告書に反映されたとおり、我々の専門家により行われた作業の結果を歓迎する。我々は、模倣品及び海賊版と闘うための、強化され、包括的で、野心的な国際協力の重要性を強調する。参加国が可及的速やかに合意するよう努力すべきである、模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)は、IPR執行のための基準を強化する重要な機会を表している。同じ目的で、我々は、INFO IPR、モデル協定を考慮した情報共有及び世界税関機構(WCO)での能力構築を通じた税関当局間の二国間及び多国間の協力を引き続き強化していく。さらに、OECDが模倣品及び海賊版の経済的影響をその第三次研究において調査しているため、我々は、政府及び企業に対し、OECDの進行中の作業に参画するよう奨励する。

59.インターネット及び新たな技術は、増大する知識、科学、教育及び表現の自由を促進する、デジタルコンテンツの創造と広範な流通のための新たな機会とビジネス・モデルを創り出してきた。同時に、これら技術は、デジタル海賊版のための仕組みを提供する可能性がある。このため、我々は、ICTがイノベーションを促進し持続可能な経済成長と繁栄を生み出す目標に役立つのを確保することを目指す戦略の一部として、インターネット及び新たな技術が、デジタル海賊版及び模倣品の世界的な流布に与える影響に関して我々が理解を深めることが重要と考える。

持続可能な天然資源の利用:気候変動、クリーン・エネルギー、技術

60.気候変動、エネルギー安全保障、及び天然資源の持続可能で効率的な利用の相互に関連した課題は、世界的な持続可能性を確保するとの戦略的な視点から対処されるべき最も重要な問題の一つである。グリーン成長への移動は経済及び金融危機からの回復に対し重要な貢献を行う。我々は気候変動と闘う行動と経済回復に向けたイニシアティブの相乗効果を基礎とし、世界的な成長と持続可能な開発を促進する機会をつかまえなければならない。

61.人為的に排出される温室効果ガス‐主に化石燃料の使用によって生ずるもの‐が危険な気候変動を引き起こし、環境と生態系サービスのみならず、我々の現在及び将来の繁栄の基盤そのものを危険にさらしていることは、科学的にも明らかに示されている。行動を起こさないことのコストは、低炭素社会への移行にかかるコストをはるかに上回る。同時に、安定的で確実なエネルギーの入手可能性は社会及び経済の発展に不可欠である;国際的なエネルギー安全保障及び開発途上国、特に最も脆弱な開発途上国におけるエネルギーへのアクセスを確保することが不可欠である。既存及び新しい技術を基礎として、革新的な経済、環境、エネルギー政策を企画し、実現する、即時かつ断固たる行動がすべての国により必要とされている。

62.我々は、低炭素社会に移行しつつ、これらの課題に対応し経済の回復を加速する上で、世界的な規模での技術の開発と普及が最も重要であることを強調する。エネルギー効率、クリーン技術、再生可能エネルギーへの投資を強化するため、効率的な市場、競争的な枠組み及び整合性のある公共政策を促進することが不可欠であり、これは、同様に世界中でビジネス機会を創出する。我々は、伝統的なエネルギー源への依存を低下させる必要性を反映し、グリーンで持続可能な成長に基づく低炭素経済への移行を加速する上で先導する。我々は、シラクサでのG8環境大臣会合とローマでのG8エネルギー大臣会合での討議にも照らし、我々の財政刺激プログラムを最大限可能な形で活用するというロンドン・サミットでのコミットメントを再確認するとともに、それらのパッケージが、新規雇用を生みグリーンで持続可能な回復をもたらすような新しくよりクリーンな経済を築くことに実質的に貢献するよう確保する。我々は他の国々もこの努力に参加するよう呼びかける。

気候変動と環境

気候変動との闘い

63.本年は気候変動と闘うために世界全体で迅速で効果的な行動を取るために極めて重要な年である。我々は、2007年のバリ会合で委任されたとおり、2009年末のコペンハーゲン会合までに、世界全体で包括的な2013年以降の合意を形作るために完全な交渉モードに入るという国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下でのポズナンでの決定を歓迎する。我々は真に野心的な世界的なコンセンサスを達成するための、この決定的な機会をとらえなければならない。

64.我々は、すべての国々が関与し、共通だが差異ある責任及び各国の能力の原則に沿った、条約の下での交渉及び世界的で広範囲に渉る野心的な2013年以降についての合意をコペンハーゲンで成功裏に妥結することへの、我々の力強いコミットメントを再確認する。この文脈において、我々は、コペンハーゲンでの成功裏の結果を支えるための、エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラムによる建設的な貢献も歓迎する。我々は条約及び京都議定書の全ての締約国に対し、条約及び議定書双方の下での交渉が、一貫性を持ち環境に効果的な世界的な合意という結果になることを確保するよう呼びかける。

65.我々は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の作業、特に、最も包括的な科学評価を構成するその第4次評価報告書の重要性を再確認する。我々は、産業化以前の水準からの世界全体の平均気温の上昇が摂氏2度を超えないようにすべきとの広範な科学的見解を認識する。この世界的な課題は世界全体の対応によってのみ対応可能であることから、我々は、2050年までに世界全体の排出量の少なくとも50%の削減を達成するとの目標を全ての国と共有することを改めて表明する。その際、我々は、このことが、世界全体の排出量を可能な限り早くピークアウトさせ、その後減少させる必要があることを含意していることを認識する。この一部として、我々は、先進国全体で温室効果ガスの排出を、1990年又はより最近の複数の年と比して2050年までに80%またはそれ以上削減するとの目標を支持する。この野心的な長期目標に沿って、我々は、基準年が異なり得ること、努力が比較可能である必要があることを考慮に入れ、先進国全体及び各国別の中期における力強い削減を行う。同様に、主要新興経済国は、特定の年までに、対策をとらないシナリオから全体として大幅に排出量を削減するため、数量化可能な行動をとる必要がある。

66.我々はモントリオール議定書によって委任されたHCFCの加速された段階的削減が、その多くが非常に強力な温室効果ガスであるHFCの使用の急激な増加を引き起こしていることを認識する。したがって我々はHFC排出量削減が適切な枠組みの下で達成されることが確保されるようパートナーと協働する。我々はさらに、ブラック・カーボンといった他の重大な環境強制要素に対処するために迅速な行動を取ることにもコミットしている。しかしながら、これらの努力は、引き続き優先されるべき他のより長期間残存する温室効果ガスからの排出量の野心的かつ緊急の削減から注意を逸らしてはならない。

排出量削減のための市場の役割の促進

67.我々は、安定的で予見可能な規制の枠組みに支えられた、炭素市場を含む効率的な市場がこれらを達成するための中心であると信じる。排出量取引制度やパフォーマンスに基づく規制といった幅広い競争的手段及びメカニズムは、エネルギー効率、再生可能エネルギー、クリーンで革新的な技術への、経済的に健全な投資を促進するための最も柔軟で費用対効果の高いいくつかの方法を構成する。我々の国際的な義務に整合的に設計され適用される、インセンティブ、料金、排出及び他の税、化石燃料への補助金の漸減、消費者ラベル、革新的な資金調達メカニズム、及び官民連携などを、適切な場合には含むその他の手段も、グリーンで持続可能な開発モデルを促進し低炭素社会への移行を加速する政策という文脈において有益となりうる。

68.環境物品・サービスの貿易の関税や非関税障壁の撤廃又は削減は、よりクリーンな低炭素エネルギー技術及び関連サービスの世界的な普及を促進するために不可欠である。環境物品・サービスの自由化に関する継続中のWTO交渉の成功裏の結果を確保するための努力は強化すべきである。カーボン・リーケージは取り組まれなければならない重要な課題である。それはWTOと矛盾しない方法で対処されなければならない。我々はコペンハーゲンにおける包括的な世界的合意の目的を支持し、我々は、それが今後生じうるカーボン・リーケージのいかなる課題を取り扱う上で最も適切な方法であると信じる。

69.我々は、柔軟で、経済的に健全な市場に基づく排出量削減アプローチを支持する。特に、キャップ・アンド・トレード方式は、実施されたところでは大部分が成功であることを証明し、潜在的な利点や重要な課題及び指標への理解を改善させた。市場メカニズムの活用は、京都議定書の下のものを含め、技術の普及や低炭素開発、及び新興国・開発途上国の関与を促進しながら、排出を費用対効果の高い形で削減する機会を提供する。これらの経験を基礎とし、世界的な2013年以降の合意の下での行動を容易にするために、我々は以下にコミットする:

a)各国の事情を考慮しつつ、炭素取引システムの潜在力及びその可能な連関について更に探査する。

b)セクター別を含め、新興国と開発途上国を関与させるように拡大する透明性のある炭素市場を発展させるために、炭素市場を可能な限り拡大し、コストを引き下げ、排出枠取引スキームを調整するため、我々同士や他の国々と協力する;

c)利用を奨励し、その効果と環境十全性を強化し、2013年以降の世界的な合意の下での開発途上国の行動を促進するため、京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)を含め、プロジェクト、プログラム、政策に基づくオフセットメカニズムの策定、改革及び強化を支持する;

d)環境十全性を確保しつつ新興経済国と開発途上国の市場への参加を強化するため、可能であればセクター別の取引及びセクター別のクレジット・メカニズムが含まれる、コペンハーゲン合意の下の市場メカニズムを更に発展させるよう各国と協働する。

70.民間部門は気候変動に対処する努力の中で引き続き不可欠なプレーヤーであり続ける。方向転換のきっかけを作り、投資を動員するため、民間部門の専門的知見を国際的な枠組みに取り込み政府と企業との間の情報交換と連携を強化するため、我々は民間部門をより積極的に関与させる。

71.セクター別アプローチは、新興経済国の漸進的な関与を促進し、先進国の経済全般にわたる緩和政策を強化するための有用な手段となりうる。分析によって、特定のセクターに焦点を当てることで排出量を削減する可能性が明らかになり、我々はこの観点から国際エネルギー機関(IEA)等での継続中の作業を歓迎する。

72.国際的な航空や海運といった、重要で増大する排出源等、主として国際的側面で特徴づけられるセクターに対しても注意を払うべきである。我々は、国際的な航空及び海運セクターの加速された排出量削減へ向けて迅速に前進するため、2013年以降の期間について合意された結果に達するよう、ICAO、IMO及びUNFCCCのプロセスへの我々の参加を利用する。

技術開発と研究

73.技術の開発及び展開、及び先進国と開発途上国におけるノウハウは、気候変動に対する緩和及び適応と、低炭素成長モデルに向けた動きの双方にとって重要な役割を果たす。重要なセクターにおけるエネルギーと資源の効率を大幅に改善することと共に、低炭素技術、特に再生可能エネルギーを開発し普及させることが不可欠である。これに関連して、我々は、技術革新を促進するために知的財産権(IPR)の効率的な制度の非常に重要な役割を強調する。新しい技術を活用するためには主要な科学的努力と政策的イニシアティブが求められる。クリーン・エネルギー技術の開発と展開を迅速に進めるという既存のコミットメントを基礎にし、既存の国際的な義務と整合的に、我々は;

a)技術的な飛躍を可能にし、ロックイン効果を避ける先進的で適切な技術が、特に重要な民間部門の投資の関与と活用を通じて、新興経済国及び開発途上国で開発され、展開し、普及することを奨励し、促進する。

b)研究開発活動における国際的な参加と協力を更に促進する。この目的のため、我々は、IEAに対し、国際的な低炭素エネルギー技術プラットフォームに関する提案を更に明確にするよう要請する。

c)革新的な技術の開発と実証を進めるために、IEAによって準備されているもの等の技術ロードマップを促進する。

d)気候にやさしい技術の展開、普及、実証と移転を支援する能力を構築するため開発途上国と協働する。

74.研究開発の重要性を認識し、我々は洞爺湖で基礎的及び応用クリーン技術の研究開発に対する投資の増大をコミットした。我々はそのような努力を強化し、世界的な技術協力を強化するための選択肢を探究する。我々は、我々の専門家に対し、これらのコミットメントの達成の進捗を評価し、2010年のカナダでの我々の会合までに報告するよう要請する。我々は更なる地球環境に関する国家的及び国際的な基礎研究を促進する。我々は技術の研究、開発、展開及び普及のための資金調達に関する規定が、2013年以降の合意の不可欠な部分を形成すべきであると信じる。

資金調達

75.資金はコペンハーゲンで合意を達成するために枢要であり、官民双方の大きな資金源を動員することが求められる。民間部門は、技術革新を行う能力から、新しい技術への投資の資金調達を行う上で枢要な役割を果たすべきである。したがって公的資金は、初期段階にある技術の開発と展開を加速するために、低炭素技術の研究、開発及び実証を支援し、また開発途上国での適応と緩和の戦略の実施を支援するため、民間部門の資金調達を促進することを目指すべきである。技術と資金に関する協調的な努力を促進するため我々は、:

a)コペンハーゲンでの野心的な妥結に関連して、国際支援の更なる予見可能性のために努力し、応分の貢献を行うという我々の意図を確認する;

b)合意される基準に基づき、後発開発途上国(LDC)以外のすべての国々が気候変動に対処するための資金的な努力に参加するべきであることを確認し、我々は、メキシコによる提案の検討を歓迎する;

c)2013年以降の体制を支える効果的な資金の仕組みの策定及び実施を呼びかける。我々は、適応及び緩和、及び低炭素経済への移行を促進するために、資金援助を含めた幅広い資金源を通じた開発途上国のための資金の動員が求められていることを強調する。資金支援は効率的、効果的かつ衡平であり、したがって排出量削減と適応行動に関連した成果に関連づけられる必要がある;

d)資金の支出メカニズムのガバナンスが透明、公平、効果的、効率的、かつ先進国と開発途上国の間で代表性のバランスが取れていることを確保するよう作業する。我々は、地球環境ファシリティ(GEF)、国際開発金融機関、適応に関する基金及び二国間の援助機関及び気候投資基金(戦略気候基金及びクリーン・テクノロジー基金)といった既存の手段や組織を基礎とすることの重要性を強調する;

e)民間部門から追加的に資源を動員しつつ、クリーン技術の研究、開発、展開、及び普及に対する目標を絞った効率的な投資を容易にするために官民連携を促進する。

適応

76.野心的な緩和の措置を実施したとしても更なる環境への影響を避けられないことを認識し、我々は、効果的な適応及びキャパシティ・ビルディング政策を特定し実施する。我々は、特にLDC及びSIDS(小島嶼開発途上国)、またすべての国の中の貧しく最も脆弱な人々にとって、開発、生態系サービス、水及び食料安全保障、農業生産、森林、保健と衛生に対する気候変動の影響について、深刻な懸念を有している。我々は気候変動の悪影響によってもたらされ得る安全保障上の結果及び希少な資源をめぐる衝突が増大する潜在性を強調する。我々は、これらの課題に対して先進国と開発途上国の間のパートナーシップの精神で対処し、コペンハーゲン合意の中で適応に効果的に対処するというコミットメントを確認する。我々は、更に:

a)効果的な適応戦略及びリスク評価を国際的な協力プログラムの中で主流化させ、開発途上国が適応のための努力を国の開発計画及び政策に統合させることを支援する;

b)生態系の強靱性を改善し、脆弱性を削減し新しい持続可能な成長モデルを支えるために、適応措置における生態系の役割に対する配慮を大幅に増加させる;

c)適応の知識のネットワークを強化するとともに、脆弱性・影響評価及び適応案の立案・実施に関する研究及び能力向上に対する支援を強化する;

d)適切な二国間及び多国間のメカニズムを通じて、適応のための資金調達の必要性に対処する。

自然災害

77.洪水の増加、高潮、干ばつ及び森林火災といった、気候変動に起因する自然災害及び極端な気象現象の増大した脅威に対処するため、我々は、以下の取組により、リスクへの準備、予防、監視、反応時間を、特に開発途上国において改善するよう行動する。

a)国連国際防災戦略(UNISDR)及び世界気象機関(WMO)と協働し、兵庫行動枠組及び各国の経験を基礎とし、国の計画を策定する際に利用される災害予防及び管理の共通ガイドラインを規定すると共に、リスク管理、意識向上及び緊急状況への物流支援といった人々と市民保護への即時の対応の訓練を改善すること。

b)全球地球観測システム(GEOSS)の開発のための継続中の作業を支援すること。

森林及び土地劣化

78.森林減少が二酸化炭素の年間排出量の約20%を占めること、及び、森林が生物多様性にとって不可欠な宝庫であり、多くの人々の生活及び権利にとって鍵となることを認識し、我々は、森林減少及び森林劣化からの排出量の削減を目指すこと、及び、持続可能な森林経営を世界的に更に促進することに引き続き関与し続ける。我々は:

a)特に開発途上国による森林減少及び森林劣化を削減する行動を通じた排出量削減を促進するため、積極的なインセンティブの策定を支援する。これらの措置が目に見える成果を中期的にしかもたらさないことを考慮し、森林減少の原動力に対し迅速に対処する早期行動イニシアティブをとることも極めて重要であり、我々はこの観点から革新的な手段を特定するために、森林減少・劣化に由来する温室効果ガスの排出削減に関する国連プログラム、森林炭素パートナーシップ基金(FCPF)、及び、森林減少・劣化に由来する排出の削減のための暫定的な資金提供に関する非公式作業グループ(IWG-IFR)といったイニシアティブを通じたものも含め、協力する;

b)バリ行動計画に規定されたように、保全の役割、森林の持続可能な管理及び森林炭素貯留量の強化を含め、森林減少及び森林劣化による排出量を削減する努力を引き続き支持する。我々は引き続きREDDを支持し、気候変動に関する将来の世界的な合意の中に資金メカニズムを含めることを検討する;

c)UNFCCCと他の国際的な森林関連プロセスとの間の協力及び相乗効果の利用を奨励し、政府、先住民及び地域社会、市民社会グループ及び民間部門を含めた関連するプレーヤーと協働して策定された国家戦略を促進する;

d)違法伐採及び違法に伐採された木材の貿易と闘うために、国際的合意の下での義務に従い、森林法の執行とガバナンス(FLEG)プロセスの下のものを含め、我々の以前のコミットメント及び行動を基礎とし、パートナー国との協力を強化する。我々は、透明な木材市場及び合法かつ持続可能な形で生産された木材の貿易を促進する意図を再確認する。この点に関し、我々は、適切な場合には、2008年のG8森林専門家違法伐採報告書によって提示された予備的な選択肢のリストに掲げられた具体的な行動をもって、フォローアップを行う;

e)森林資源の利用、森林火災の予防と管理並びに害虫及び森林病の監視を含め、持続可能な森林経営のための国際的な協力及び情報交換を強化する。

79.我々は、気候変動の原因と結果の双方として乾燥地における砂漠化及び土地劣化に対し深い懸念を有する。これらの現象の、人間の福利、貧困、食糧安全保障及び環境への重大な影響を認め、我々は砂漠化対処条約(UNCCD)の努力を認識し、締約国及び既存の資金調達メカニズムに対し、選択されたプロジェクトの実施においてリオ宣言の間で相乗効果を強化することを求める。さらに我々は開発途上国のパートナーと、効果的な持続可能な土地管理(SLM)を、関連する協力プログラムに統合し、彼らがSLMを国の開発計画政策及び国の気候変動緩和及び適応戦略に統合することを支援するために協働する。

生物多様性

80.生物多様性の内在的な価値及びその経済的及び社会的福利への不可欠な貢献並びに貧困削減の中での生態系サービスの根本的な役割を認識し、ミレニアム開発目標(MDGs)を達成する中で、我々は:

a)現在の生物多様性損失速度を世界的、地域的、及び国家的なレベルで顕著に減少させるという生物多様性の2010年目標を達成するための我々の努力を強化する;

b)気候変動と生物多様性の政策の間の相乗効果を活用し、2010年以降の生物多様性のためのビジョン及び野心的で達成可能な共通枠組みを確立する必要性を強調する。この目的のため、我々は、生物多様性に関する「シラクサ宣言」を、生物多様性の保全を強化する長期的戦略を促進する効果的な手段として支持する。

81.我々はさらに、生物多様性条約(CBD)の枠組みの中も含めた今日までの国際的な努力にもかかわらず、気候変動と人間の活動の影響により悪化させられて、生物多様性損失速度が増大していることを認識する。水及び食料の枯渇を含む生態系劣化に関連する悪影響及び炭素吸収源への悪影響を減少させ、生物多様性の保全と持続可能な利用を強化するため、我々は:

a)持続可能な開発政策が生態系物品及びサービスの便益を考慮し、生物多様性の保全及び持続可能な利用がすべての関連するセクターに統合されることを確保するよう努力する;

b)遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する国際的枠組みに関する交渉の2010年までの完了に向け作業する;

c)生物多様性を保全するための国際的、地域的、国家的及び地方の活動を強化し拡大する;

d)2007年に打ち出されたポツダム・イニシアティブ、特に継続中の世界的なイニシアティブである「生態系と生物多様性の経済学」を引き続き支持する;

e)生物多様性保全活動への市民社会、ビジネス界及び他の関連する利害関係者の関与を更に奨励する。

82.強固な科学的な評価の必要性を認識し、生物多様性及び生態系サービスのための科学と政策の接点を改善するために、我々は、国連環境計画(UNEP)の下で可能な限り最も早い時期にプロセスを完了しようと努力している生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム(IPBES)に関する継続中の政府間プロセスを奨励する。

持続可能な開発のための教育

83.我々は、今生じつつある社会、経済及び環境の課題に対する新しい解決策をコミュニティが見つけることを可能にする生涯教育プロセスとして持続可能な開発のための教育を促進するために、特にUNESCO及び他の組織による継続中の国際的な努力を評価し、その加速を奨励する。

クリーンかつアクセス可能なエネルギー

84.気候変動と共に、すべての国々の長期的な持続可能開発モデルはエネルギーの利用可能性‐特にクリーン・エネルギーを通じ‐及びエネルギー貧困の根本的な課題に対しても対処しなければならない。エネルギー・インフラ、エネルギー効率、エネルギー構成の多様化及び技術革新への投資を促進することは、炭素の排出量を大幅に削減しつつ、長期的な世界需要に対して確実、クリーンかつ入手可能なエネルギーを確保するために鍵となる。

85.我々は、良く機能するエネルギー市場、及び生産国、中継国、消費国での投資のリスク及び不確実性を減少させるための不可欠な前提条件として、予見可能な法律及び規制の国際的枠組みを支持し、改善する。

エネルギー効率、エネルギー構成の多様化及び技術

86.我々は、エネルギー・インフラ及び技術革新への投資を拡大すること及びエネルギー安全保障を大幅に改善しつつ排出量を削減しグリーンな回復を推進する最も費用対効果の高い手段として、エネルギーの多様化を増大させエネルギー効率を改善するために、必要な場合には、規制及び制度的な枠組みを適応させることの必要性を認識する。我々は省エネルギー及びエネルギー効率プログラムの重要性を再確認する。この目的のため我々は:

a)我々の経済のすべての主要なセクターでエネルギー効率を改善するための効果的な政策を企画、実施し、消費者の間での節約とエネルギー効率を積極的に促進することにコミットする;

b)エネルギー効率の向上のためのベスト・プラクティス、基準及び勧告の特定及び普及に関し、IEAで現在行われている作業を支持する;

87.我々は、エネルギー効率を促進する実質のあるアジェンダとともに、国際省エネルギー協力パートナーシップ(IPEEC)の運用の開始を歓迎し:

a)IEAの25の勧告を考慮しつつ、各国がエネルギー効率政策を実施することを支援するIPEECの作業計画によって想定されている活動、及び国際エネルギー効率性行動イニシアティブ(GEEAI)に関する更なる情報を期待し、2011年のフランスでのG8サミットへ報告を返す。

b)IPEECに対し、その結果を2011年のフランスでのG8サミットで提示するため、居住用、商用、及び工業用の建物のエネルギー効率の潜在力を活用するために、ハイリゲンダム対話プロセスのエネルギーの柱の下の重要な成果として成功裏に策定された持続可能建築物ネットワークを組み入れるよう要請する。

88.持続可能な開発及び長期のエネルギー安全保障を確保する包括的な戦略は、異なるエネルギー源の組み合わせを視野に入れなければならない。エネルギー構成の多様化に関連して、再生可能エネルギーは重要な役割を果たす、なぜならこれらは排出量を削減し化石燃料の消費及び依存を低下させる二つの課題に対応するからである。我々は:

a)再生可能エネルギーに対する投資を増加させるために政策及び規制の枠組みを改善し、その展開及び普及を新興国及び開発途上国においても促進する;

b)再生可能エネルギーへの国際的な協力及びパートナーシップを引き続き支援する。我々は国際再生エネルギー機関(IRENA)の立ち上げを関心を持って留意し、我々は、再生可能エネルギーの展開を積極的に促進するために他の国際組織と協力することを要請する;

c)再生可能エネルギー源及び分散された発電の、電力システムへの効率的で確実な統合を加速し、エネルギー効率を強化するための手段として、スマート・グリッドの研究・開発、及びそれへの投資を促進する;

d)地中海ソーラー計画やクリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップといった、再生可能エネルギー及び低炭素技術の促進を目的とした地域的イニシアティブを支持する;

e)持続可能なバイオエネルギー及び代替燃料のさらなる開発の重要性を考慮し、我々は国際バイオエネルギー・パートナーシップ(GBEP)による、バイオ燃料からの温室効果ガス排出量を測定する共通の方法論的枠組みを策定するための作業を歓迎し、GBEPに対し持続可能なバイオ燃料生産のための科学に基づくベンチマーク及び指標を策定するための作業を加速すること、及びバイオエネルギーの技術協力及び革新を加速することを要請する。

89.我々は、気候変動及びエネルギー安全保障の懸念に対処する手段として原子力プログラムに関心を表明した国々が増加していることを認識している。これらの国々の意見では、原子力エネルギーは重要な役割を演じる、なぜならそれは排出量を削減し化石燃料の消費及び依存を低下させる二つの課題に対応するからである。我々は原子力エネルギーの平和的利用の根本的な前提条件がセーフガード/不拡散に対する国際的なコミットメント、安全性及び安全保障(3S)であることを再確認する。国際原子力機関(IAEA)との緊密な協働の下、我々は国際及び国双方のレベルでの強固な国際条約、基準、勧告、及び監視手続の策定及び実施を引き続き促進する。これに関連して、我々は、技術的に可能な最高の安全及び安全保障基準を確保し、革新的な技術の更なる開発及び展開を加速するために、費用効果分析、研究、インフラ及び人材開発、プラント建設、運用、廃炉及び廃棄物管理を含むあらゆるレベルでの国際的な協働を促進する。我々は、不拡散、安全性、及び安全保障に関する最も高い基準を促進する際にIAEAが果たす重要な役割を強調する。我々は原子力エネルギーの民生利用に関心を持つすべての国々に対し、建設的な国際協力に関与するよう呼びかける。

90.上述の課題を考慮し、G8原子力安全セキュリティ・グループ(NSSG)は原子力の安全性と安全保障の課題を検討する作業を続ける。我々は、原子力プログラムの検討または拡大を行っている国々でのキャパシティ・ビルディングを目的としてNSSGによって立ち上げられた、原子力の安全性及び安全保障に関する教育・訓練に関するイニシアティブを歓迎する。

91.我々は、効果的な多様化戦略にもかかわらず、多くの国々で少なくとも中期的には化石燃料が引き続きエネルギー構成の不可欠の要素であり続けることを認識している。したがって炭素回収・貯留(CCS)のような革新的な技術の開発及び展開が、排出量を削減することに大きく貢献することが期待されている。2010年までに世界的に20の大規模炭素回収・貯留実証プロジェクトを開始するという洞爺湖で行われたコミットメントを再確認しつつ、我々は、

a)CCS技術の開発及び展開に焦点を当てた政策、規制の枠組み及びインセンティブ制度の企画を加速する;

b)協働と知識の普及を促進し、またIEA地域ラウンドテーブルを通じ、開発途上国の更なる関与を奨励する;

c)CCS実証プロジェクトの資金源を特定する作業を行う;

d)IEAに対し、炭素隔離リーダーシップ・フォーラム(CSLF)と共に、技術ロードマップについて報告しさらに発展させ、実証プロジェクトの建設と運用を加速するため民間部門と協働することを要請する。この目的のため、我々は、2010年の我々のサミットで更新されたものが提示されることを視野に、これらのプロジェクトの国際的な進捗を追跡することを容易にするためにIEAが行った基準に関する作業を歓迎する;

e)グローバルCCS機関(GCCSI)の立ち上げに続き、我々はこれらの努力が相互に強化されることが確保されるようIEAとCSLFの現在行われている活動に積極的に協力することを要請する;

f)国際金融機関との革新的なパートナーシップの策定の可能性も含め、投資の必要性を特定し障害を乗り越える。

エネルギー貧困との闘い

92.現代のエネルギー・サービスへのアクセスは人的、社会的開発にとってまたMDGsの達成にとって不可欠である。エネルギーへのアクセス及び入手可能性は、農村部及び都市部双方において、よりきれいな水、より効率的な衛生及び保健サービス、よりよい教育システム、及びその他の不可欠なサービスを提供することで生活条件の改善に緊密に連関している。さらに、生産的な用途へのエネルギーの投入は雇用創出及び所得発生のために不可欠である。

93.エネルギー貧困が、特にアフリカ及びアジアで最も顕著であるが、引き続き多くの地域で蔓延していることに留意し、我々は、ローマでのG8エネルギー大臣会合で行われた提案に従ってエネルギー貧困に関する専門家レベルのワーキンググループを関心を持つ国々と共に立ち上げたことを支持し、2010年のムスコカ・サミットの前に報告書を提出することを奨励する。我々は開発途上国政府、国際金融機関、地方社会及び民間部門と共に、迅速で断固とした行動を取ることにコミットしている。これまでのコミットメントを基礎とし、我々は:

a)公共資源を効率的に利用し、地方の電化に対する民間部門の投資を呼び込み刺激することを可能にする、透明性のある国家政策の策定及び再生可能エネルギーシステム及び代替調理技術・燃料の展開を促進し;

b)適切な技術の展開及び民間部門と協力したスキルと能力の開発を通じて、地域共同体による地方の電化プログラムへの積極的な関与を奨励する;

c)高炭素のロックイン効果を削減すると共に、新しい技術、改善されたエネルギー安全保障、及び僻地におけるオフ・グリッド・アクセスの活用を支援することにより、エネルギー・アクセスを改善するための作業が開発途上国を低炭素開発への道筋に乗せることに貢献するよう確保する;

d)エネルギー効率の増大、再生可能エネルギーの普及及び天然資源の効率的な利用を目的としたキャパシティ・ビルディング・イニシアティブを強化する;

e)石油、天然ガス及び電力の地域エネルギー・ネットワークの持続可能な開発及び展開のためのキャパシティ・ビルディング・イニシアティブを強化する;

f)投資条件の改善を通じたものを含め、エネルギー・アクセスのための増大した資金調達の動員を刺激する。

開発とアフリカ:持続可能で包括的なグローバリゼーションの促進

持続可能な開発への責任あるリーダーシップ

94.ますます相互依存が進む世界において、すべての国は、成長と持続可能な開発の課題に対処する共通の関心及び責任を共有する。近年、我々は、これらの課題をG8サミットの前面に出し、国際的に合意された目標を中心とした野心的なイニシアティブを打ち出し、ミレニアム開発目標(MDGs)に焦点を当て、重要な成果を達成している。

95.世界的な経済危機の時に当たって、我々は、すべての人々に対して経済的及び社会的機会へのアクセスを促進し、人間の安全保障を改善するため、最貧国の脆弱層に過度の影響を与えている危機の影響への対処について開発途上国を支援すること並びに持続可能な開発、食料安全保障、良い統治、平和及び安全を達成するためにこれらの国々と協力することを決意する。

96.経済発展及び環境保護は相互に補強し合う。貧困撲滅の永続的な進展は、コペンハーゲンにおける野心的な合意を通じた、経済成長及び気候変動への対処が共に実施されて初めて達成できる。我々は、低炭素成長戦略と効果的な適応策を国家開発計画に組み込むことについて、パートナー国との協働を強化することにコミットする。

97.我々は、グローバル化に対する包括的なアプローチを通じて開発を促進するため、リーダーシップを発揮し共有することを決意する。我々は、主要経済国、開発途上国、国際機関及びその他のグローバルな主体に対し、貧困との闘いにおいて、我々と協力して集団及び個別の対応を特定及び実施し、具体的な結果を生み出すことを求める。

98.透明性及び効率性を向上させるため、我々は、開発及び開発に関連するG8の個別及び集団の異なるコミットメントに関する我々の説明責任を強化することを決定する。我々は、現在までの進捗をレビューするために、附属書に添付された予備報告を提供するよう専門家に要請した。さらに、我々は、関連する国際組織と協調し、開発及び開発関連分野における我々の活動及びその成果に焦点を当てた報告のための、より幅広く、包括的、かつ一貫した方策について、シニア・レベルの作業部会に課した。報告は2010年のカナダ・ムスコカサミットにおいて提出される。また、MDGsの達成のために何が必要であるかにつき、2010年に国際的な評価を求める。

開発に対する新たなコミットメント:危機に対処する開発途上国への支援

99.開発途上国における成長と雇用は、重大な脅威に晒されており、MDGsを含む国際的に合意された開発目標に向けて達成した進展を危機に陥れている。世界的な景気後退により、開発途上国の輸出収入、民間資金の流れ及び送金は、大きく減少した。また、政府歳入の減少と入手可能な対外資金の減少により、開発途上国の多くは、死活的に重要な投資と社会的セーフティーネットへの支出を削減すること検討している。この外部圧力及び財政的圧力の組み合わせにより、現在及び将来の世代に対して長く続く影響を与えるマクロ経済的及び社会的不安定が生じ得る。我々は、経済危機が更に深い社会的危機に転換することを防ぐために、今行動しなければならない。我々は、効果的な国連グローバル・インパクト及び脆弱性に関する警戒システム(GIVAS)の可能性に留意する。そのため、我々は、主要新興経済国、開発途上国及び他のプレイヤーとともに、世界貿易と投資を促進し、世界の経済成長をより確かな軌道に乗せ、脆弱な人々に対する危機の影響を最小化するために行動することを決意した。

100.我々は、モントレー合意及び開発資金に関するドーハ宣言を実行する決意を再確認する。特に、我々の経済に対する危機の重大な影響にもかかわらず、我々はグレンイーグルズにおいて打ち出し、ハイリゲンダムと洞爺湖において再確認した支援増加へのコミットメントを果たすことの重要性を改めて表明する。これは、アフリカに対し、2010年までに我々のODA(政府開発援助)を他のドナーと併せて2004年比で年間250億ドル増加することを含む。OECD‐DAC(経済協力開発機構開発委員会)は、G8と他のドナーとのコミットメントを合算すると、2010年までに、ODA全体では2004年比で年間約500億ドル増加すると推定した。我々は、拡大された重債務貧困国(HIPC)イニシアティブ、多国間債務軽減イニシアティブ及びパリ・クラブのエビアン・アプローチに従い、債務救済を継続する。

101.ロンドン・サミットにおいて、我々は、危機の支援及び持続した成長のため、国際金融機関(IFIs)を通じて利用可能な資源を大きく増加させることに合意した。G8として、我々は、ロンドンでの決定及びその完全かつ時宜を得た実施に引き続き固くコミットする。さらに、我々は、開発途上国の政府及び民間の信用に対するアクセスの改善の方途を検討し、既存の枠組み及び原則を基にした政府債務再建のアプローチの拡大を模索し、債権者と債務者に持続可能な貸与慣行を追求することを奨励する。我々は、高額の外貨準備高を有する非DAC諸国に対し、開発に配慮した投資を強化することを奨励する。我々は、IFIsに対し、パートナー国と協力して債務管理能力を強化し、長期的な債務の持続可能性を促すための監視手段を改善することを要請する。

102.金融危機により、我々の援助効果改善の重要性は倍増する。我々は、開発の効果を確保するため、パリ宣言及びアクラ行動計画(AAA)を実行することに強くコミットしている。2008年のOECD調査の結果に基づき、我々は、国内での実行に強く焦点を当てて、援助効果へのコミットメントの実行を加速する。これは、2011年の援助効果に関するハイレベルフォーラムにおいて見直しが行われる。我々は、開発の結果を改善するため、パートナー国、非DAC諸国及び南南協力の提供者と協力する用意がある。

103.我々は、開発途上国が、包括的で公平な成長を支える戦略を引き続き実施すること並びに健全で包括的な金融市場、民間セクターの投資及び雇用の進展にとって望ましい規制枠組みを提供する努力を更に進めることを促す。我々は、危機により最も大きな影響を受けた人々の脆弱性に対処するための社会的保護メカニズム及びセーフティーネットを奨励し、支持する。必要に応じ、我々は、最も脆弱な人々に対する短期的支援の提供を可能とする反循環的アプローチを用いる。我々はまた、現在の危機の観点から、国の支援プログラムの優先事項を見直す必要性につき検討する。

104.我々は、IFIsによる危機に対する迅速な対応を称賛し、これらの機関が引き続き行動を調整すること、及び既に承認された資金のより迅速な支払いと既存の方法の見直しも検討しつつ、開発途上国に対する資金的支援を拡大することを強く促す。そのため、我々は、世界銀行の脆弱層支援枠組みの設立を歓迎する。

105.我々は、G8・アフリカ・パートナーシップの強化のための方策に関するアフリカ問題首脳個人代表による報告を歓迎し、アフリカ・パートナーシップ・フォーラムの改革プロセスを支持する。

106.我々は、開発とアフリカに関するハイリンゲンダム・プロセス作業部会の創造的な作業を歓迎する。これは、開発原則に対する共通理解の構築に寄与しており、我々は、開発途上国のニーズに最も資する共通の効果的なアプローチの更なる調査及び実施を期待する。

モントレー及びドーハを基に:開発に対する「国全体」アプローチ

107.各国政府は、適切な政策の形成において、議会、地方当局、市民社会組織及び市民と連動し、国内資源を動員し、その効率的かつ持続可能な利用を促進することにより、開発を確保する一義的責任を負う。しかし、貧困と闘う新たなコミットメントには、先進国、新興経済国及び開発途上国の官民関係者の努力を拡大することが必要である。我々は、近代化された税及び関税の規制、改善された税徴収能力並びに脱税、非合法資金の流通及び腐敗に効果的に立ち向かうことを通じ、パートナー国が国内歳入を増加する努力を行うことを引き続き支持する。我々は、財政の透明性及び税に関する情報交換についての協力を強化する。

108.開発資金に関するドーハ会議において再確認されたモントレー合意に基づき、我々は、開発に対する包括的な、「国全体」アプローチを促進する。我々は、すべての関連する政策を通じてより強い相乗効果を確保し、各国の制度において全ての関係者-中央政府、地方政府、民間セクター、慈善活動団体及び市民社会-が、パートナー国の開発に効果的に貢献する条件を整える。我々は、パートナー国と共に、利用可能な資金源の組み合わせを多様化し、徐々に援助への依存の減少に向けて、投資、貿易、債務救済及び債務持続的貸付、マイクロファイナンス、送金、パートナー国の国内資源及び開発援助の効果を最大化するために取り組む。我々は、国際社会に対し、必要に応じ、自発的な革新的資金調達イニシアティブ拡大の検討を呼びかけ、開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループの作業に留意する。我々はまた、市民及び企業による自発的な寄付の新たな形を含む、新しい革新的資金調達メカニズムの可能性を追求する。

109.この「国全体」アプローチに基づき、我々は、パートナー国による持続可能な発展に対する様々な貢献を十分に内包するために計画される新たな分析手段の実現可能性及び関連性を調査する。そのような手段はまた、政府の援助及び非援助政策、民間セクター及び市民社会の努力といった幅広い要素を考慮に入れ、我々の国の制度の開発に対する貢献をいかに強化し、その効果を最大化するかについての運用上の指針を提供し得る。この点において、各政策をいかに改善するかに関するG8とパートナー国との間の対話強化の基礎を構成するものともなり得る。我々は、OECDに対し、この問題を更に調査し、2010年の次回サミットに報告するよう要請する。

MDGs達成のためのG8とグローバルなイニシアティブの強化

110.我々は、特にアフリカにおいて、MDGsの達成に向けて前進する責任を認識する。これらの目標は、性質上、互いに関連しているため、包括的で、調整され、かつ補完的な開発政策が必要である。これらの政策は、持続可能性、包括性及びジェンダー平等、また、パリ宣言の五つの柱であるオーナーシップ、協調、調和、成果主義による管理及び説明責任の原則により引き起こされるであろう。我々は、ジェンダー平等を援助効果及び貧困削減のための鍵となる課題として促進する。我々は、世界、地域及び国レベルですべての利害関係者が関与するパートナーシップの範囲内でイニシアティブの枠組みを作る。AAAに従い、可能な場合には、我々は、脆弱で紛争後の環境に対する特別な目的及び方策に関心を払いつつ、既存のパートナーシップを基礎として、これらが効果的かつ包括的であり、より良い調整及び分業を促進し、援助の細分化を減らし、パートナー国の優先事項と調整し、これらの国の制度を強化することを確保する。

食料安全保障の促進

111.農業及び食料安全保障は、国際的課題の中核として位置づけられるべきである。我々は、最近トレビスにて開催されたG8農業大臣会合における宣言を歓迎し、すべての人々が十分で、購入可能かつ安全な食料への持続可能なアクセスを確保するための条件を整えるために、パートナー国、国際及び地域機関とともに引き続き取り組むことにコミットする。経済危機は、前回の洞爺湖での会合時に直面していたシナリオを劇的に変化させた。世界の製品及び食料価格は、多くの地域において大きく下落しているが、歴史的なレベルと比べて高額なままである。食料価格の高騰の結果、飢餓に苦しむ人の数は、1億人増加して10億人に達し、世界経済危機の進展につれて更に悪化している。収入の減少及び高い失業率は、貧困層の購買力を低下させ、食料へのアクセスを悪化させている。農業に対する気候変動の影響及び入手可能な水の減少により、既に危機的状況にある食料安全保障は更に悪化し、幅広い適応及び緩和のための努力が求められている。

112.洞爺湖において、我々は、短期、中期及び長期的目的から、2008年1月以降食料支援、栄養支援、社会保護活動及び農業製品の増加を支持するために100億米ドルをコミットすることを強調した、世界食料安全保障を確保するためのあらゆる措置を講じることに合意した。専門家によるモニター報告は、2008年1月から2009年7月の間に、130億米ドルが支出され、洞爺湖サミット以降、実質的な追加的コミットメントが実施されていることを確認した。

113.さらに、食料が確保される世界を確実にするため、我々は以下をコミットする。

a)‐開発支援を通じることを含み、また、小規模農業従事者に特に注意を払いつつ、農業に対する投資の増加を促進することにより、世界の食料生産の持続可能な成長を刺激する。

‐価格不安定を緩和し、国家の農業研究システムを強化するために政府及び地域機関と共に予測作業に取り組む手段として、十分機能し、透明性のある国際、国、地方の市場の発展を促進する。

‐科学的知見及び技術への投資及びアクセスを拡大し、国際農業研究協議グループ(CGIAR)の役割を強化する。

‐適切な土地及び天然資源の管理、生物多様性の保護及び気候変動への対応を奨励する。

b)開発途上国における土地の借用及び購入を含む国際農業投資の増加傾向に留意し、我々は、国際農業投資の原則及びベスト・プラクティスに関する共同提案を策定するために、パートナー国及び国際機関と取り組む。

c)より効率的で一貫した国際農業及び食料安全保障の構造を以下の手段によって支援する。

‐FAO(国際農業食糧機関)、世界食糧安全保障委員会及び他の専門機関の改革並びに世界、地域及び国レベルでの協力を加速する。

‐食料援助の効率性を向上する。

‐在庫管理のために調整されたアプローチに関する様々なオプションの調査を継続する。

‐ドーハラウンドのバランスのとれた、包括的かつ野心的妥結を達成するために貿易交渉を加速させる。

d)持続可能な農業、地元市場及び農村における非農業経済の発展を促進し、最も脆弱な人々に対する早期警告システム、社会保護メカニズム及びセーフティーネットを強化するために、包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)等の国主導及び地域のプロセスを支持する。

114.我々は、国連の包括的行動枠組(CFA)を基に、世界食料安全保障を達成するために統合されたアプローチへの支持を継続し、緊急事態に対応し、将来の危機を防止する。洞爺湖におけるコミットメントに従い、我々は、農業及び食料安全保障に関するグローバル・パートナーシップ(GPAFS)の設立に向けた世界食料安全保障の危機に関する国連ハイレベル・タクス・フォース(HLTF)との密接な協力によるこれまでに達成した進展を歓迎する。我々はまた、このプロセスに関する農業大臣会合及び開発大臣会合の成果を歓迎する。我々は、すべての利害関係者に対し、このパートナーシップに参加するよう呼びかけるとともに、2009年末までに、農業と食料安全保障に関するグローバル・パートナーシップの実施を加速することを約束する。

115.開発に対する我々の包括的アプローチに従い、また、既存の国連及び他の国際・地域機関を基に、GPAFSは、持続可能な農業の発展の促進、気候変動の影響の考慮及び回復の早い社会の構築により、食料安全保障に対処すべきである。GPAFSは、国、地域及び世界レベルにおける食料不安に対し、包括的、内包的、行動志向的及び効果的に対応するための政治的機運を生み出すべきである。これにより、すべての利害関係者(例:消費者、生産者、小規模及び女性農業従事者、市民社会、民間部門及び学者)がベスト・プラクティスを共有し、行動を調整し、資源管理を改善することが可能となる。

水と衛生への持続可能なアクセスの促進

116.多くの開発途上国、特にアフリカ及びアジア太平洋地域の国々は、持続可能な開発に不可欠な水と衛生への継続的なアクセスや総合水資源管理の達成からは引き続き程遠い状況にある。我々は、MDGs及び安全な水と基礎的衛生に関するMDGsの目標を含む国際的に合意された目標に向けて、国際、地域及び国レベルにおいて政治的機運を生み出す決意である。気候変動は、水資源管理及びサービス提供において重大な影響を与える。したがって、我々は、回復力を構築し、適応を促進するために水管理改善に寄与する取組を強化し、砂漠化に対しては、災害リスク削減を支援し、科学的根拠に基づいた情報提供、情報収集及び分析を強化する。

117.我々は、エビアン水行動計画の進捗状況に関するG8水専門家による報告を歓迎する。明確な前進があったものの、更なる取組が必要である。水と衛生に関する課題は、リーダーシップ、投資並びに開発途上国における政府、市民社会及び民間セクターによる行動が必要であることを認識する一方、我々は、パートナーによるコミットメントに基づき、資源管理、ガバナンス及び持続可能な資金調達を改善するために我々のパートナーへの支援を強化する。

118.水と衛生に関する個々のコミットメントを実施し、2008年G8サミット及びAU(アフリカ連合)サミットにおける共同作業を強化するための双方向からの呼びかけに応えるため、我々は、アフリカのパートナーと共に、相互の説明責任及び責任の共有に基づく強化された水と衛生に関するアフリカ・G8のパートナーシップを開始する。成功したイニシアティブを基に、このパートナーシップの範囲内において、我々は、アフリカのパートナーが実施する以下の取組を支持する。

‐国家開発計画において水と衛生を優先する。‐国家予算配分及び持続可能な費用回収政策を含む資金動員戦略を策定する。

‐すべての利害関係者の関与並びに現地関係者の能力や進捗状況の監視強化に関連する事業を促進する。

G8の取組には、援助効果のための開発途上国政府による国レベルの調整プロセスの支援、現地関係者及びAUやAMCOW(アフリカ水閣僚評議会)といった地域組織を含む現地機関の能力強化、既存の多国間及び地域のイニシアティブとの補完性及び相乗効果の強化が含まれる。我々は、2009年末までにパートナーシップの確実な前進を達成するため、あらゆるレベルにおいてアフリカのパートナーとの取組を継続する。

119.アジア太平洋地域に関し、我々は、総合水資源管理に焦点を当て、エビアン行動計画の実施を継続し、気候変動への適応や越境河川流域管理等の主要地域課題に取り組む。

国際保健の促進

120.沖縄サミット及びジェノバサミット以降、世界エイズ・結核・マラリア対策基金の立ち上げに伴い、我々は、保健関連のMDGsの進捗を支援するにあたり重要な役割を果たしてきた。我々は、HIV/AIDSの予防、治療、ケア・サポートに関するユニバーサル・アクセス、ポリオと乳幼児死亡率に関し前進した。このような努力にも拘わらず、保健関連MDGsの進展、特に乳幼児死亡と妊産婦の健康については、特にサブサハラ・アフリカにおいて未だ軌道に乗っていない。これに加えて、保健の状況は、非感染疾病に関する負担によって更に悪化している。

121.現在の世界金融危機において、我々は、最も脆弱な人々、特に女性と子供の健康に関するニーズに対応するとの我々のコミットメントを再確認する。このため、我々は、WHO(世界保健機関)、世界銀行及び他のパートナーが金融危機の保健に対する影響をモニターし、国レベル、世界レベルで取られるべき行動について助言することを促す。保健サービス、特にプライマリー・ヘルス・ケアへのユニバーサル・アクセスの目標に向けて前進するため、最も脆弱な人々へ特別の注意を払いながら、医療従事者とコミュニティ・ヘルス・ワーカーを含む保健従事者の改善、情報、社会保険保護を含む保健財政システムを通じた保健システムの強化が不可欠である。我々は、特にアフリカにおいて、開発途上国における保健従事者の不足に対応するとのコミットメントを再確認し、グローバル・ヘルス・ワークフォース・アライアンスによって立ち上げられた2008年のカンパラ宣言とグローバル・アクションの課題に留意する。我々は、WHOに対し、2010年までに、保健人材の国際雇用に関する行動規範を策定することを促す。我々はまた、研究者のネットワーク構築及び保健改革に関する学術センターの共同体の設置のためのアフリカのパートナーとの協働を含む様々な戦略を通じて、サブサハラ・アフリカにおける保健ケアの管理、組織及び配分に関する知識面での大きなギャップへの対処を開始する。施設を計画するための最初の段階として、我々は、工程表を作成するために、アフリカのパートナーと2009年末に計画会議を開催する。我々は、適切に機能する情報システムの促進のためパートナー国及び国際機関と共に取り組む。我々は、WHO、世界銀行、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)、世界ワクチン予防接種同盟(GAVI)、UNITAID及び国連機関を含む多国間機関に対し、保健システム強化への支援を継続することを促す。我々は、これらの機関に対して、パートナー国及び国際保健パートナーシップにおける計画及びプロセスとの調整を更に向上することを促す。

122.我々は、保健関連MDGsの達成に向けた包括的及び統合されたアプローチと、国際的保健イニシアティブと保健システムとの間の相乗作用の最大化を促進する。我々は、予防接種及び微量栄養素補給のための支援の増強を含む乳幼児死亡との闘い、そして、性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)ケアとサービス及び自発的な家族計画を含む妊産婦の健康に関する進展を加速化させる。我々は、妊産婦と乳幼児の健康のためのMDGsについての進展を加速化させるため、以下の諸点を通じて、妊産婦と新生児と子供の健康に関する世界的コンセンサスの構築を熱心に支援する。(i)政治及びコミュニティの指導力並びに関与、(ii)効果的保健システムを通じたエビデンス・ベースの支援に関する良質のパッケージ、(iii)無料診療を選択した国においては、全ての女性と子供のためのアクセスのための障害の除去、(iv)熟練の保健医療従事者、(v)結果への説明責任。我々は、WHO、世界銀行、ユニセフ、UNFPA(国連人口基金)が妊産婦と子供の保健に関する国際的努力を再認識するための取組を奨励する。我々は、HIVと結核の予防及びサービスの統合に特に焦点を当てつつ、2010年までに、HIV/エイズの予防、治療、ケアとサポートに関するユニバーサル・アクセスに向け、更なる努力を行う。我々は、この取組を、結核とマラリアとの闘い、顧みられない熱帯病の拡大への対処、ポリオ撲滅の任務の完了に向けた取組、新興感染症のモニタリングの改善といった取組と併せて行う。この点に関し、我々は、ジェンダーの不平等に対処する重要性につき強調する。我々は、保健に関する課題への対応における力強いアフリカのリーダーシップを賞賛するとともに、2009年9月の第64回国連総会の機会に立ち上げられるアフリカ首脳マラリア連合を歓迎する。

123.我々はまた、「すべての政策の成果としての保健」の戦略的アプローチの促進によって、保健セクターと他の政策との相互関連の強化の必要性について認識する。我々は、例えば貧困削減、食料と栄養、水供給と衛生、教育、ジェンダー平等、雇用、住宅、司法、環境、及び科学技術のようなセクターを横断する政策を相互に強化することを通じて、保健の主要な決定要因に対処することを目指す。我々は、いかなる形態の偏見、差別、人権侵害に対しても立ち向かい、また、障害者の権利やHIV/エイズ感染者の旅行制限の撤廃を促進することをコミットする。

124.我々は、ローマ、パリ及びアクラ宣言の原則に沿った形で、保健のための国内資金を増加し、効果的に使用することをパートナー国に呼びかける。我々は、世界基金、WHO、世界銀行の重要な役割と貢献を認識する。我々は、これらの機関に対し、インターナショナル・ヘルス・パートナーシップ(IHP+)やプロバイディング・フォー・ヘルスを含む他のイニシアティブ等の経験に基づき、包括的で、強固かつ十分な費用のある当該国主導の戦略と計画の策定において、関連するアクターと共に支援することを促す。我々は、開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループの作業と、保健システム強化のための資金動員にあたって、各国及び利害関係者が自発的に選択できる選択肢を提示した保健システムのための革新的国際資金調達ハイレベル・タスクフォースの報告書を認識する。G8の多くの国は、リーディング・グループとタスクフォースの特定の提言について検討し、前進させている。

125.我々は、2012年までの感染症対策と保健システム強化のための600億米ドルの投資を含む既存の合意を再確認する。サンクトペテルブルク、ハイリゲンダム及び洞爺湖での決定を踏まえて、我々は、保健のコミットメントに関する進展をモニターするためのフォローアップ・メカニズムを設置した。我々は、進展を強調し、更なる取組を提案する我々の専門家によって提出された報告書を歓迎するとともに、更なる改善を行うことにコミットする。

万人のための教育に向けた前進

126.教育及び技能開発への投資は、現在の経済危機からの持続可能な回復及び長期的な開発に極めて重要である。我々は、すべての人々の教育への権利を再確認する。我々は、質の高い初等教育へのアクセス及び修了を優先しつつ、パートナー国の個別のニーズに応じてポスト初等教育、職業訓練・技能開発及び成人識字に取り組む教育システムへの統合的なアプローチを支持する。我々は、援助効果向上と分業の原則を強調し、オスロ宣言の「Acting together(共に行動しよう)」の理念の下、教育戦略をより幅広い開発政策に含めるための努力を支援する。

127.我々は、万人のための教育(EFA)の目標に引き続きコミットしており、これまでの進展を歓迎するが、確固たる行動が依然必要であることを認識する。我々は、EFAに真摯に取り組むいかなる国も、資源不足によってその達成が妨げられないことを再確認する。我々は、紛争や危機の影響を受けた国々、女子、農村地域の子供、障害を持った子供、働く子供、HIV/エイズに感染している又は影響を受けている子供に対する、特別な配慮を継続する。このような視点から、各国政府は能力のある教員の採用、養成、維持、管理向上を通して、教育の質を向上させなければならない。我々は、2010年FIFAワールドカップのような国際的イベントを通じた、教育に対する支援を促進するための主要なグローバル・キャンペーンを歓迎する。我々は、「教員のギャップ」に対処することを目的とする「EFAのための教員」に関する国際タスクフォースの設立を歓迎する。

128.我々は、援助効果向上の良い慣行である万人のための教育-ファスト・トラック・イニシアティブ(EFA-FTI)への支援を改めて表明する。我々は、最も効果的なガバナンス構造及び資金メカニズムについて格別の注意を払いながら、2009年内にEFA-FTIの改革プロセスの実行の促進を継続する。このプロセスは、現在実施中のFTIに関する評価の予備調査の結果を基に進められる予定である。我々は、他のドナーとともに、FTIによれば、今後18ヶ月の間で12億ドルと試算されているFTIの資金不足を満たすために、予測性の高い二国間及び多国間の資源を動員し、統一アプローチをとること及びEFAへの取組を促進するための教育データ・政策・能力のギャップを埋めることにコミットしている。我々は、いかに教育がMDGのアジェンダ全体に貢献し、貧困削減の鍵となる要因であるかということを示した、EFA-FTIに対する我々の支援の進展に関する専門家報告書を歓迎する。我々は、増資プロセスの第一段階として、2009年秋にイタリアで開催される次回のFTI会合を歓迎する。

アフリカにおける平和及び安全保障に向けた能力及び調整の強化

129.平和及び安全保障は、持続可能な開発の必須条件である。紛争後の開発途上国は、MDGsの達成について特有の課題に直面しており、特別な支援を必要としている。我々は、アフリカにおける平和維持及び平和構築能力の強化に関する我々の既存のコミットメントの実施に関する進展を分析している。我々は、以下の行動に関するG8のプログラムを強化する。

a)国連の、特に国連安全保障理事会の主導的な役割を認識しつつ、平和支援活動の調整を強化する。我々は、以下に関する努力を強化する。

‐物資・兵站支援、訓練及び計画活動に関する調整を行う。

‐平和活動に関する明確で実現可能なマンデートを作成し、平和構築への努力を強化するために紛争の原因をパートナー国と分析する。

‐民間、警察及び軍組織を統合する。我々は、継続した情報交換を提供し、我々のイニシアティブの中でより良い調整、一貫性及び相乗効果を確保するために、いかにして平和及び安全保障活動に関する専用のウッブサイト及びデータベースをG8の支援で構築するかという点をAUとともに検証することにより、アフリカ・クリアリング・ハウスの役割を強化する。

我々は、専門家に対し、次回のサミットまでに特定の提案につき更に検証することを課す。

b)アフリカ主導の平和支援活動のために、財政支援を含めた支援を提供し、柔軟性のある予測可能な拠出に向けて取り組む。我々は、アフリカ待機軍(ASF)を含むアフリカ平和安全保障アーキテクチャー(APSA)の完全な実施に対する支援を含む、AU及び地域経済共同体の平和維持活動の能力向上を支援することにコミットしている。

c)司法による仲裁及び和解を含む民間及び警察の専門家、人道支援並びに回復及び復興に焦点を当てながら、キャパシティ・ビルディングへの努力及び迅速な能力配備を強化する。我々は、アフリカにおける、訓練者に対する訓練及び中核拠点を支持し、共通の質的基準を達成するための訓練センターの国際ネットワークの構築を支援する。APSAの文脈において、我々は、ASFへの訓練を優先することを含む、アフリカのパートナーとともに立ち上げた異なるイニシアティブを分析した。我々は、継続するドナーのイニシアティブを補完する民間及び警察部門に関するものも含む、これらの優先事項に対処することにコミットしている。

d)アフリカにおける海上安全保障の能力向上を支持する。この観点において、我々は、海上安全保障に関するAU及びAUメンバー国の関心の高まりを歓迎し、支持する。海上安全保障は、発展の必須条件であり、アフリカの貿易及び投資環境を改善するために強化されなければならない。

e)紛争及び脆弱な環境における援助効率を向上する。我々は、不安的な状況における援助政策の提案に関するアクラ行動計画の規定の実施に強くコミットしている。OECD-DACの脆弱な国家に対する取り組み原則を再確認しつつ、我々は、2009年のジュネーブ会議で採択された「3Cロードマップ」に反映された、一貫性(coherence)、調整(coordination)及び補完性(complementarity)の原則を基にした支援の必要性を強調する。我々は、システム全体及び不安定な紛争状況に対する政府のアプローチ全体を通じて、これらの原則を実施するためのジュネーブ会議による実践的な勧告を歓迎する。

f)平和及び安全保障に関するパートナーシップを構築するために、国連システム、国際金融機関及び他のドナーとの取組を強化する。我々は、AU主導の平和支援活動に対する資金調達に関する報告書の作成に関する国連・AUハイレベルパネルの努力を歓迎し、アフリカの平和及び安全保障に関する地域的特質、オーナーシップ及び制度の重要性を協調しつつ、提起された問題に対し、国連及びAUと取り組むことにコミットする。我々は、主要な新興経済国及び国連平和構築委員会のような他のアクターに対し、紛争及び紛争後の状況をともに対処するための建設的な対話の発展を促す。

g)我々は、法の支配、良い統治及び人権の原則を基にした安全保障システムの発展及び安全、安全保障、正義に関する規定を改善する政府の能力の強化に関する統合したアプローチをパートナー国に奨励する。

経済成長のためのガバナンス及び民間部門の強化

効果的なガバナンスの促進

130.民主的、効果的、かつ参加型のガバナンスは、経済成長及び貧困の撲滅に不可欠である。透明で信用できる政策枠組み、政治力及び法の支配の責任ある利用は、持続可能な発展に不可欠な要因となる。我々は、NEPAD(アフリカ開発のための新パートナーシップ)アフリカ相互審査メカニズムを通じることを含めたガバナンス向上のためのAUの強いコミットメントを歓迎し、支持する。我々は、各国の行動計画の時宜を得た実施を奨励する。

131.我々は、開発課題に関する民主的オーナーシップを支援するための良い統治、説明責任及び透明性に関する方策に関する能力向上プログラムを支持することに引き続きコミットする。特に、

a)グローバル・インフォメーション・セキュリティに関する沖縄憲章及びデジタル・デバイドに関するジェノバG8行動計画を想起し、我々は、組織構築、公共サービスの近代化、立法及び民主プロセスの強化を支えるデジタル格差を減少するための更なるイニシアティブを支持する。

b)アフリカにおける健全な財政ガバナンスに関する行動計画を想起し、我々は、能力を向上し、国内資源の動員及び効率的な利用のための重要なイニシアティブとして、2009年のアフリカ税管理フォーラム(ATAF)の立ち上げを歓迎する。我々は、アフリカ開発銀行に対し、OECDと協力し、アフリカにおける援助の流れの間の相互作用、成長及び国内の担税能力の発展を体系的にモニターし、次回のサミットに報告するよう要請した。我々はまた、必要な税制改革及び脱税との闘いにおけるより良い国際協力のために提供する財政及び法システム改善のためのキャパシティ・ビルディングを支持する。この点において、我々は、OECD及び他の関連組織に対し、開発途上国に関連する課題であるタックスヘイブンに関する取組を拡大することを奨励する。

c)多くのパートナー国の発展及び安定のための採取産業の鍵となる役割を認識しつつ、我々は、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)並びに木材に関する森林法の執行とガバナンス(FLEG)及びダイヤモンドの原石に関するキンバリー証明プロセス等の他のイニシアティブによる進展を賞賛する。我々は、公共歳入の増加、腐敗の減少並びに天然資源の利益を発端とする紛争及び暴力行為において鍵となる役割を果たし得るこれらのイニシアティブの完全な実施に対する我々のコミットメント及び支持を再確認する。我々は、これらのイニシアティブに更に多くの国及び企業が参加することを提案する。我々は、EITI候補国に対し、合意された時間内で証明プロセスを完了するよう強く促す。さらに、我々は、採取部門及びガバナンスが脆弱な地区で展開しているすべての企業に対し、多国籍企業に関するOECDの指針等の国際企業の社会的責任に関する指針を採用することを奨励する。この点において、また、大湖地域に関連し、我々は、天然資源の不法搾取に取り組むための大湖地域に関する国際会議の努力を歓迎し、OECD、国連及びグローバル・コンパクトに対し、当該会議と取り組むとともに、ガバナンスが脆弱な地域でのビジネス活動への実用的な指針を作成するために鍵となる利害関係者と連携することを促す。

d)AAAにおける市民社会組織(CSOs)の重要な役割に関する我々の認識を想起し、我々は、各国政府に対し、メディアを含む市民社会組織が自由かつ効果的に存在し活動できるような国際法及び条約に従った法律を採用することを奨励する。

e)良い統治に対する賄賂及び腐敗に対する闘いの重要性を踏まえ、我々は、すべての国に対し、国連腐敗防止条約への加入を促す。

民間部門の強化

132.健全で活発で競合する民間部門は、成長及び貧困削減の促進に重要である。健全なマクロ経済及び規制枠組みは、地域統合を支持する適切なインフラネットワークとともに追求されるべきである。このことはまた、投資を引きつけ、貿易を活発化する最も良いインセンティブとなる。我々は、アフリカ主導の改革のモデルとして、アフリカの投資環境ファシリティ(ICF)の取組を賞賛する。我々は、二国間の財政に関するイニシアティブと同様に、アフリカ・インフラコンソーシアム(ICA)及びEU・アフリカ・インフラストラクチャー・トラストファンドによる進展を歓迎する。機能する金融市場は、経済成長を促す鍵となる。我々は、開発途上国における信用へのアクセス向上に向けた資源を活用する官民パートナーシップ及びリスク軽減手段の幅広い利用を強く促す。

133.開発に対する「国全体」アプローチに沿い、国連のMDGビジネス・コール・トゥー・アクションを想起し、我々は、発展途上国における生産性及び貿易能力を強化するための資源及び専門家を利用することを目的とした民間部門及び市民社会とのパートナーシップに包括的に関与することを望む。ドーハラウンドの迅速で、野心的でバランスのとれた妥結及び意義のある市場アクセスの促進の重要性に対する我々のコミットメントを再確認し、我々は、2010年までの年間40億ドルの貿易関連支援に関する共同の努力の達成に向けての進展に留意する。この点に関し、我々は、特に後発開発途上国の供給面での障害に対処し、地域統合を強化する貿易イニシアティブに対する支援の成果及び効果に焦点を当てることを歓迎し、貿易を国家開発戦略に統合することを我々の開発途上国のパートナーに対し奨励する。

134.送金の流れの発展的影響を踏まえ、我々は、2007年ベルリンG8会合及び2009年に設立され、世界銀行により調整されているグローバルな送金に関する作業部会の提言を実施するために、より効率的な送金及び送金の改善された利用を容易にし、国家及び国際組織間での協調を強化する。我々は、開発世界において送金を受領する移民及び人々が金融サービスによりアクセス可能となることを目的とする。我々は、情報、透明性、パートナーとの競争及び協力の強化を通じ、特に海外送金にかかる平均費用を5年の間で、現在の10%から5%に減少する目的を達成するために取組み、開発途上国における移民及び家族の総収入の実質的な増加を生み出す。