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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 核不拡散・軍縮及び原子力の平和的利用に関するG8外相声明 2010年NPT運用検討会議に向けた貢献(第36回主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] カナダ・ガティノー
[年月日] 2010年3月30日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 我々G8外相は、核不拡散体制の基礎であり、核軍縮の追求及び原子力の平和的利用の促進のための重要な基盤である核兵器の不拡散に関する条約(NPT)に対する明確な支持を確認する。来る5月のNPT運用検討会議は、世界の安全及びその強化のためのこの重要な集団安全保障枠組の権威を再確認するために共に取り組む機会となるものである。

 我々は共通の立場を見つけるため、NPT運用検討会議の前及びその期間中、NPT締約国と協議を継続する。この関連で、NPT運用検討会議議長に選ばれたリブラン・カバクテュラン大使との本日の議論は生産的なものであり、また、条約のすべての柱について権利、責任及び行動のバランスをとることを目的とした、フォローアップ行動計画を含む、バランスのとれかつ具体的な成果文書のNPT運用検討会議における採択という、我々の共通の目標を補強するものであった。

 我々は、NPTの目標に基づき、すべての者にとってより安全な世界を追求し、核兵器のない世界のための状況をつくることにコミットする。我々は、核兵器削減及び核軍縮にかかる効果的な措置及び厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うとの我々の義務を果たすという恒久的なコミットメントを改めて表明する。我々は、相互に補強し合う3本すべての柱、すなわち、核軍縮を含む軍縮、平和的利用、及び核不拡散における明白かつ具体的な更なる進展が、国際的不拡散体制を支持し、強化するために重要であることを認識する。我々は、核兵器の包括的削減の追求を含め、かかる目的を達成するための実践的措置に向けた努力を倍加する。我々は、核兵器の廃絶に向けた取組の過程において、国際の安定及びすべてにとって損なわれない安全保障を促進する方法で、更なる透明性とともに、不可逆性の原則を適用することの重要性を強調する。我々は、すべての国がこの努力に加わるよう求める。我々は、予見可能性及び安定性を強化し、ひいては世界の安全を強化する、検証可能な米露START後継条約交渉の完結を歓迎する。我々はまた、フランス及び英国により実施された具体的な軍縮措置を歓迎する。

 我々は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を通じ、核兵器実験のためのいかなる爆発又はその他のいかなる核爆発も永久かつ法的に停止するための我々の努力を継続することを誓い、また、すべての国に対し、我々の努力に加わり、核実験モラトリアムを維持するよう求める。我々はまた、2009年に採択された軍縮会議作業計画を基礎とし、検証条項を含む兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の軍縮会議における即時交渉開始を通じ、核兵器用核分裂性物質生産の禁止を求めるとともに、すべての関係国に対し、かかる物質の生産モラトリアムを直ちに宣言し、維持することを求める。

 我々は、すべての者に恩恵をもたらす原子力、科学及び技術の平和的応用への支持を拡大する。我々は、特に発電、保健及び食料安全保障の分野におけるプログラムを発展させようとする国々と協力し、これらの国々が、将来の世代のために、安全、セキュリティ、不拡散及び環境保護に関する重要な条件を満たすことができるよう、支援する。この点、我々は、今月初旬にパリにおいて開催された民生原子力利用に関する国際会議による具体的な貢献を歓迎する。

 我々は、核燃料供給保証といった核燃料サイクルに関する多国間の取組の推進を含め、原子力の平和的利用へのアクセスを広げる国際原子力機関(IAEA)の努力を強く支持する。この観点から、IAEA加盟国のためにロシア国内に低濃縮ウランの備蓄を構築することを決めた2009年11月のIAEA理事会決定を核燃料供給保証に関するその他の提案と共に歓迎する。

 我々は、核セキュリティが、責任ある持続可能な原子力の平和的利用の発展のためだけでなく、今日の国際の平和と安全に対する最も深刻な脅威の一つである核テロリズムの防止のためにも不可欠であると信じる。この目的のため、我々は来る核セキュリティ・サミットを歓迎し、その目的を支持する。

 核拡散は、国際の平和と安全及び不拡散体制の根本目標に対する脅威である。我々は、イランの原子力計画がもたらしている拡散のリスクに対し、深刻な懸念を改めて表明し、イランが完全かつただちに国際的な義務に従うことの重要性を強調する。我々はまた、北朝鮮に対し無条件で六者会合に復帰するとともに、2005年9月の共同声明に従い朝鮮半島の完全かつ検証可能な非核化を含むコミットメントを果たすよう強く要請する。NPT締約国にとって、来るNPT運用検討会議は、締約国に対し、核拡散の脅威への対処及び検証と遵守に関する措置の強化並びにNPT脱退条項の濫用への対応の方法についての国際社会の決意を再確認する時宜を得た機会を提供する。NPTは、すべての締約国の資産であり、すべての締約国が完全に義務を遵守し、目的達成への完全なコミットメントを示した場合にはじめてその福利を完全に実現できる。

 平和的な原子力活動に対する信頼を醸成するためには、追加議定書を伴ったIAEAとの包括的保障措置協定が、国際的に受け入れられた新たな標準となるべきことは経験上明らかである。更に、IAEAはその権限を行使し、保障措置義務違反の兆候を調査し、そのような違反をIAEA憲章に従って国連安保理に報告出来なければならない。この点に関し、我々は、IAEAがこのような活動を実施し、効果的な保障措置を適用するための資源を持たねばならないと信じる。G8は、保障措置、安全及びセキュリティに関する諸要件を満たす意思がある国については、そのための能力向上に必要な技術支援についての要請を検討する用意がある。

 我々は、中東決議は1995年NPT運用検討・延長会議の成果の不可欠な要素であったことを再確認する。したがって、我々は、決議の完全な実施に向けて実践的措置をとるために、すべての関心国と共に取り組む。特に我々は、中東における核及びその他の大量破壊兵器並びにそれらの運搬手段のない地帯の創設に対する支持を再確認し、ロシア及びその他の、この目的に沿った具体的な提案を歓迎する。我々はまた、1995年同会議において採択された関連の決定及び2000年NPT運用検討会議最終文書に対する我々のコミットメントを再確認する。

 我々は、その効果的かつ効率的な実施に貢献するような、条約の制度的枠組の強化のために共同で取り組む。我々は、条約の普遍化を達成するため、NPT非締約国に対し、非核兵器国として条約に加入すること、並びに、加入までの間、その規定を遵守することを改めて求める。運用検討会議における更なる信頼醸成を可能にするため、我々は、引き続き条約の下での進展について定期的に報告するとともに、すべてのNPT締約国に対し、同様の行動をとるよう奨励する。

 我々は、NPTの目標を達成するという我々の共通の決意を共同で再確認するためには、NPT運用検討会議での政治的リーダーシップが、決定的な重要性を持つと信じる。我々は、それぞれの代表団がハイレベルによって率いられることにコミットするとともに、他の締約国にも同様のことを要請する。

 我々の目標は、すべての者にとってより安全かつ安心な世界の実現である。我々は、この声明で掲げられた目的が、5月のNPT運用検討会議の成功に貢献するものであり、また、すべての締約国が検討し、支持するに値するものであることを強く確信する。そうすることは、我々の集団安全保障を強化するとともに、条約の完全かつ普遍的な実施に貢献する。