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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] テロ対策に関するG8首脳声明(第36回ムスコカ主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] ムスコカ、カナダ
[年月日] 2010年6月26日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.我々G8首脳は、いかなる形態であれ、テロ行為を断固として非難し、テロの脅威を根絶するため協働することへの決意を改めて表明する。2009年12月25日のデトロイト行き航空機に対する爆破未遂事件や、2010年3月29日のモスクワ地下鉄に対する複数の残酷な攻撃を始めとする最近の事件は、テロの脅威を我々に再び想起させた。我々は、これら無分別な行為によって失われた命に最大限の哀悼の意を表明し、平穏な生活を妨げられた方々にお見舞い申し上げる。

2.テロリズムはあらゆる場所で人々を脅かし、平和、安定、及び安全を脅かす。すべてのテロ行為は、その動機にかかわらず犯罪であり、非人道的で正当化され得ない。我々は自爆テロを非難するとともに、取り分け若者や弱者をこうした行為を実行させるための要員とすることは忌むべき行為と考える。また、我々は、テロリストによる人質をとる行為の増加を遺憾に思う。こうした誘拐行為は、我々の自由に対する根本的な考えと相入れないものであり、我々はかかる行為の横行を阻止し、責任ある者を法の裁きにかけるよう協働することにコミットする。我々は、テロリストと薬物不正取引及び組織犯罪の結び付きに対する懸念を表明するとともに、このような政略的連携を断ち切ることを決意する。ワシントン核セキュリティ・サミットで強調されたように、核テロリズムは国際安全保障に対する最も挑戦的な脅威の一つである。

3.テロリズムに対しては強制力のみによって打ち勝つことはできない。テロリズムの広まりを助長する要因に取り組むことが極めて重要である。取り分け、政府が法の支配、人権及び基本的自由の保障、民主主義的価値、良き統治、寛容性及び非排他性を促進し、テロリストへの勧誘及び暴力につながる過激化の影響を受けやすい者に有効な代替案を提供することが重要である。我々は、自国の基礎的開発ニーズや国民の正当な望みにこたえられるよう諸国を支援することにコミットしている。あらゆる場所のすべての人々は、コミュニティにおける安全、子供への教育、雇用の機会を保障され、尊厳と自尊心を持つに値する。

4.我々は、効果的な対テロ戦略にあたり、人権、基本的自由及び法の支配の尊重が不可欠であることを再確認するとともに、安全か民主的価値かといった誤った二者択一を拒絶する。我々のテロリズムに対するあらゆる行動は、国連憲章や適用可能な国際法に一致するものでなければならない。我々は、テロとの闘いにおける国連の中心的な役割を改めて表明するとともに、国連グローバル・テロ対策戦略及び関連する国連安保理決議の重要性を強調する。我々は、テロ防止関連条約及び議定書の締結及びその実施をすべての国に強く要請する。我々は、国連のアル・カーイダ・タリバン制裁制度の改善、及び最近では国連安保理決議1904の採択を歓迎するとともに、その実施についての更なる進展、及び公正かつ明確な手続を支持する取組を継続することの重要性を強調する。

5.テロリズムは世界的な対応を必要とする世界的な脅威である。テロリズムを一箇国あるいは特定の数箇国のみによって撲滅することは望めない。2001年9月11日の攻撃以降の広範な国際協力により、テロリストの勧誘、訓練、資金確保及び攻撃能力は弱まっている。我々は、これまでのパートナーシップを強化するとともに、新たなパートナーシップを各国政府、多国間機関、及び民間部門との間で構築することにより、国際協力を更に推進することにコミットしている。我々はまた、効果的なテロ対策のための市民社会の重要な役割を認識する。我々は、国連の関係機関とG8諸国の間の協力を強化するとともに、コミットしている国々と共にグローバルかつ多角的なテロ対策の傘を拡大、深化させ、一層強固なものとすることを誓約する。

6.我々は、(テロ対策及び国際組織犯罪対策の専門家によって構成される)G8ローマ・リヨン・グループの世界的なテロとの闘いにおける役割、並びにテロの脅威に対処するため、テロ対処能力向上及び政治的意思の形成に向けて支援を行うことを目的とするテロ対策行動グループ(CTAG)の活動を認識する。我々は、テロ対策及び組織犯罪対策において、堅固な行動計画の準備を通じて、両グループの活動の戦略的な焦点を明確にしたカナダのリーダーシップを称賛し、この計画を承認する。我々は、交通保安、国境保安及びID確認、化学、生物、核及び放射性物質テロの防止、テロ資金対策、暴力的過激主義や暴力に結び付く過激化及び勧誘への対策を含めた主要課題に協力して取り組む決意を強調する。テロの脅威の複雑な性質を考慮すれば、G8による統合的かつ協調的な対応が、この挑戦に立ち向かう上で不可欠である。

7.我々は、政府が安全保障上の脆弱性に対する対処能力及び適応能力を欠如している場所において、テロリスト・グループや他の犯罪組織の活動が活発化し、時として国家の安定を脅かすことを認識する。我々は、国際的なテロ対策のコミットメントを履行するため支援を必要とする国々に対する能力向上支援が果たす重要な役割を強調する。テロリストの自由な活動を許すことになる制度的な脆弱性に取り組むことは、我々の努力の重要な要素である。我々は、CTAGの取組を踏まえ、増加しつつある二国間及び多国間の能力向上支援イニシアティブの連携を強化していく必要性、並びに、これらの取組を一層創造的、広範囲かつ継続的なものにしていく必要性を強調する。我々は、テロが当該国や地域に与える多大な影響を認識しており、当該国や地域のニーズに留意する。我々G8諸国は、特にアフガニスタン、パキスタン、サヘル地域、ソマリア、イエメンを協力して支援する。我々は、テロ及びこれに関連する安全保障上の脅威への取組がより一貫性を持ち、効果的なものとなるよう、関連するG8パートナー・プログラムの協調体制の緊密化を目指す。

8.アル・カーイダや他のテロリスト・グループに対する作戦上の成功にもかかわらず、暴力につながる過激化は、依然深刻な懸念要因となっている。暴力的な過激派の影響力を抑制し、彼らの誤った世界観を否定し、彼らが奉仕していると装っている人々から孤立させ、インターネットの悪用を防ぐために、特別な注意が払われなければならない。我々は、暴力的過激主義を扇動する者を特定するとともに、勧誘及び過激化されるリスクを抱える者がテロリストとなることを防ぐことに焦点を当てる。

9.テロリストは無実で無防備な個人を犠牲にすることにより、社会構造に言葉に表せないほどの害を与える。彼らの行為は犠牲者のみならず、その家族、友人、及び他の市民に衝撃を与える。悲惨な攻撃の後で、テロの生存者やその家族はテロリズムに立ち向かっている。我々は、彼らを支援するイニシアティブを更に発展させることを改めて表明する。彼らは犠牲者の思いを訴え、暴力的で過激なイデオロギーに対し、敢然と反対の声を上げている。我々は、テロの生存者やその家族と共にあり、彼らの声に耳が傾けられ、犠牲者が決して忘れられることがないよう取り組むことにコミットする。