データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8外相会合 議長声明

[場所] キャンプデイビッド
[年月日] 2012年4月12日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 G8外相は,4月11日及び12日にワシントンDCで会合を開催し,世界の平和・安全に影響を与える各国,地域,国境を越える課題等の幅広い問題につき意見交換し,行動を協調させた。彼らは,経済力が,昨年の諸国における移行の鍵となり,外交政策の決定に直接影響するという認識の下,これらの問題につき議論した。G8は,伝統的な二国間及び多国間での外交努力及び平和と安全における女性の重要な役割とともに,開発政策を含む経済面での国家政策が,変革の時期において,民主主義を支え,経済的繁栄を促進し,国際的な平和・安全保障・安定を維持する上で,極めて重要になると認識する。この点を念頭に,外相は中東・北アフリカ地域で進行中の政治的移行,中東和平,イラン,北朝鮮,アフガニスタン,アフリカ,テロリズム,海上安全保障,国際組織犯罪,その他の問題の影響につき議論した。

中東・北アフリカ地域における政治的移行{前19文字太字}

 世界は中東・北アフリカ地域にわたる民衆抗議と社会的移行のかつてないほどの継続的な波を目撃している。公共の広場であれソーシャル・ネットワークであれ,抗議する人々は,権利と尊厳,経済的機会及び民主改革といった共通の要求によって結束した。このボトムアップの動きは今日まで続いている。G8外相は,これらの動きから生じた新たな民主主義及び政治・経済改革に従事する他の国々に対する彼らのコミットメント及び支持を再確認した。経済分野を含め,克服する必要のある未解決の問題が依然存在する一方で,これらの進展は,より開かれ,安定し,繁栄し,民主的な地域の出現への展望を高める。地域における各国政府は,人権,基本的自由,法の支配の尊重と遵守によって評価される。外相は,ドーヴィル・パートナーシップ及び拡大中東・北アフリカ構想(BMENA)を通じての取組みを含め,民主主義の獲得を確固たるものとし,政治的改革を強化し,開かれた経済成長を支援するために,G8が果たしうる役割に留意する。これらの取組みは個人の宗教又は信仰の実践の権利を含めた普遍的な人権,民主主義の原則及び制度,法の支配,宗教的多元性,若者の参画,及び女性を含めたすべての市民の政治参加の尊重を促進することを含むべきである。この関連で,G8は独立したシビル・ソサエティ組織の極めて重要な役割を強調する。G8は,経済安定化の促進,政府への国民参加,貿易統合によって民主化と経済成長を支援するために,ドーヴィル・パートナーシップを通じて取組みを続ける。外相は,この地域の国々に対し,意義ある改革を実施し,地域協力と対話の分野を探求するよう奨励した。

国際の平和と安全における女性の役割{前17文字太字}

 女性は平和・安全・繁栄のための強力な主体でありうる。女性が和平プロセスやその他の公的な意思決定プロセスに参画すれば,人権,正義,国民和解,経済復興により前進を引き起こすことができる。女性は民族・宗派間の壁を越えた連合を形成し,周縁化されたグループや少数グループのために発言することができる。しかし女性は,和平交渉においても政治的移行においても通常除外されている。中東・北アフリカ地域における政治的移行が,この地域における政治参加と正当性を拡大するかつてないほどの機会であることを認識し,外相は,この機会を利用するためにより多くがなされるべきであると留意した。外相は,国によっては女性の政治参加が減少しており,女性の人権と基本的自由がさらに後退する危険にさらされていることに強い懸念を抱く。彼らは,世界中の女性及び女児に対する継続的な暴力,特に紛争時及び紛争後における性的及びジェンダーに基づく暴力や,多くの国の法制度上ジェンダー差別が依然存在していることに強い懸念を表明した。これらの懸念に対し,外相は,「女性・平和・安全」に関連する国連安全保障理事会決議の履行を進展させる上でG8が果たしうる重要な役割に留意し,G8の専門家に対し,国際の平和と安全における女性の役割を向上させるために,G8が,G8の間で及びそれ以外の主体とともにいかに取り組むかについての選択肢を策定するよう求めた。

シリア{前3文字太字}

 G8外相は,前回の会合以降における,シリアにおける甚だしい人命の喪失及び人道的危機を,引き続き深刻に懸念する。その背景について,外相は,脆弱ではあるがの暴力停止が発効しているとのコフィ・アナン合同特使の報告を歓迎する。外相は,アナン特使により示された措置を支持し,先遣監視団の即時の受入れを含め,それらの措置を実施するための国連安全保障理事会による緊急の行動を求める。外相は,シリア政府とすべての当事者に対し,6項目の提案のすべての要素を完全に遵守するよう求める。

中東和平{前4文字太字}

 外相は,4月11日にワシントンで開催されたカルテット閣僚級会合に留意した。彼らは,彼らはカルテットによる取組みへの支持を表明し,ヨルダン政府の,両当事者間の対話を発展させるためのリーダーシップを歓迎した。外相は,2011年9月23日のカルテット声明におけるすべての要素への支持を改めて表明し,中東地域における,公正,永続的かつ包括的な中東和平へのコミットメントを確認した。外相は,紛争の長期的解決は,9月23日のカルテット声明を基礎とした直接対話を通じてのみ達成できることを強調した。外相は,両当事者に対し,一方的な行動を自制し,和平を導く環境を作ることを求めた。彼らは,どちらか一方による一方的な行動が交渉の結果の予断につながってはならないことを強く再確認した。外相は,当事者に対し,対話を継続し,信頼構築措置を履行し,交渉環境を改善するよう求める。アラブ世界における根本的な変革を考慮し,外相は,パレスチナ人のためになり,イスラエルの安全を保障する,政治的解決の重要性につき留意した。外相は,パレスチナ当局がその国家機構を準備するため,この一年行ってきた前向きな措置を認識した。3月21日のブリュッセルにおけるアドホック・リエゾン委員会(AHLC)に留意し,彼らは,国際社会に対し,パレスチナ当局が2012年の財政的要求を満たすために,11億ドルの貢献を確保するよう求めた。また彼らは,イスラエル政府に対し,西岸及びガザ地区でのヒト,モノの移動,開発,貿易輸出を発展させるための更なる意味のある措置をとることで,パレスチナ当局の財政的安定性を支援し,パレスチナ経済の持続可能な成長を助けるよう求めた。

イラク{前3文字太字}

 外相は,民主主義プロセスを強化し,経済を発展させ,地域における外交,経済,安全保障の互恵関係を構築する上で,イラクを支持するとのコミットメントを確認する。彼らは,イラクにおける政治的プロセスが,憲法の枠内で政治対話と実質的な権力の共有を通じて前進すべきであると合意した。G8は外交,安全保障,貿易,教育,文化,法執行,環境,エネルギー協力といった,すべての分野においてイラクへの関与の範囲を拡大する機会を模索し,特にイラクを地域・国際社会に復帰させるため,他国や国際機関からの相互関与を奨励する。この関連で,外相は,イラクが3月末にアラブ連盟サミットを成功裏に開催したことを祝福する。

イラン{前3文字太字}

 イランが頑として国連安全保障理事会決議の下での義務を遵守せず,IAEA理事会決議の要求を履行しないことは,喫緊の懸念の原因である。しかし,イランとEU3+3の間の対話のありうべき再開に留意し,外相は,核問題の平和的な交渉による解決への願望を強調した。彼らは,イランに対し,国連安全保障理事会決議及びIAEA理事会決議の完全な履行の下で,NPTに沿ったイランの核計画が専ら平和的性質であるという国際社会の信頼を取り戻すために,相互主義及びステップ・バイ・ステップ・アプローチに基づいて,建設的かつ真摯な対話に継続的に入ることを要請した。これに関連して,外相は,国際原子力機関(IAEA)の2011年11月並びに2012年2月の報告書に書かれたようなイランの核計画の軍事的側面の可能性に対する国際社会の深刻な懸念を表明した。

 加えて,2011年11月18日に採択されたIAEA理事会決議(GOV2011/69)に留意し,外相は,特に軍事的側面の可能性に関わる全ての主要な問題の緊急の解決を目指し,イランとIAEAが対話を深めていくことが必要不可欠であることを強調した。彼らは,IAEA事務局長が,IAEAに要求されたイランの関連施設へのアクセスを含め,イランとIAEAが何ら合意にいたっていないと2月に報告したことに留意した。その文脈で,我々は,イランに対し,パルチンへのアクセスを認めるとの約束を満たすよう要請する。外相は,イランに対し,すべての関連する国連安全保障理事会決議及びIAEA理事会決議を含む国際社会の義務を完全に遵守し,IAEAから要請された情報,書類,サイト,原料及び職員への無制限なアクセスを提供することを含め,IAEAと実質的に協力すること,その軍事的側面の可能性も含めたイランの核計画に関わるIAEAの疑問及び懸念に応えること,追加議定書と補助取決めコード3.1を直ちに履行することを求めた。外相は,EU3+3による,イランのNPTに整合した核エネルギーの平和利用の権利を尊重しながら,イランの核計画の専ら平和的な性質に関する国際的信頼を回復するような,包括的で交渉を通じた長期的な解決に向けた取組みへの支持を表明した。

 イランにおける人権を考慮し,外相は,イラン政府に対し,普遍的に認められる人権及び基本的自由を完全に守り,人権に関する国際的な義務を遵守することを求めた。彼らは,メディアへの干渉,恣意的な拘留・逮捕を非難し,イラン当局に対し,イランの反体制派指導者の移動及び通信の自由に課された,国際的な人権義務に反する制限を解除するよう求めた。彼らは,イランに対して,国連の特別手続に前向きに協力し,イラン人権状況特別報告者の訪問を受け入れることを要請した。さらに,イランに対して,国連人権理事会の普遍的・定期的レビューにおける勧告を進展させることを要求した。外相は,全てのテロ活動及び国際法によって守られる外交使節,領事機関並びに代表を標的にすることを非難した。

北朝鮮{前3文字太字}

 外相は,幅広い問題に関する北朝鮮の態度に対する懸念を改めて表明し,北朝鮮が最近表明した4月にミサイルを発射するという計画について遺憾の意を表明した。外相は,そのような発射は国連安全保障理事会決議第1718号及び同第1874号の重大な違反に当たるとの強い見解を共有する。外相は,北朝鮮に対して発射を行わないよう要求する。外相は,国連安全保障理事会決議違反に当たる,北朝鮮のウラン濃縮計画,弾道ミサイル計画及び継続的な武器の拡散行為に対する非難を改めて表明した。彼らは,北朝鮮に対し,すべての核兵器及び既存の核・弾道ミサイル計画を完全な,検証可能な,かつ不可逆的な方法で放棄するよう要請した。また彼らは,北朝鮮に対し,NPTとIAEAの保障措置上の義務の完全な遵守に戻ること,2005年の六者会合共同声明及び関連する国連安全保障理事会決議の下のコミットメントを履行するため,IAEAにより要求され必要とみなされる個人,文書/機材,施設へのアクセスをIAEAに提供すること,非核化に向けた具体的かつ不可逆的な措置をとることを要請した。外相は,北朝鮮における人権侵害に対する懸念を表明し,南北関係の改善の重要性を強調し,拉致問題や離散家族の再会を含む人道問題に対処する必要性を強調した。

ビルマ/ミャンマー{前9文字太字}

 外相は,4月1日の議会補欠選挙を含め,ビルマ/ミャンマーにおける最近の前向きな進展及びビルマ/ミャンマー政府による民主改革と国民和解に向けたその他の重要な措置を歓迎した。外相は,改革を進展させるためにビルマ/ミャンマーを支援する用意があることを強調し,国際社会がこれらの努力を支援する必要性を強調した。また,外相は,アウン・サン・スー・チー女史率いる国民民主連盟(NLD)を含む,すべての民主化勢力の選挙プロセスへの参加機会,少数民族武装勢力との仮の停戦合意に向けた進展,多数の政治犯の釈放及び強制労働を廃止するための取組を賞賛した。外相は,この国が改革を根付かせ,国際社会及び地域の政治経済プロセスに完全に統合されることを助けるため,制裁を緩和することを検討する。同時に,外相は,ビルマ/ミャンマー政府が,改革と国民和解に係る取組を継続し,残されたすべての政治犯の無条件の釈放,既に釈放された政治犯に課された法的条件の廃止,少数民族地域におけるすべての暴力停止のための更なる措置,紛争地帯や国内避難民への国際人道団体による自由なアクセス,ビルマの不拡散に関する国際義務に合致する形での北朝鮮との軍事的関係の断絶に取組むよう求めた。

アフリカ{前4文字太字}

 外相は,ここ数年アフリカ大陸で起こった経済発展,政治的安定,民主化における重要な進展を認識し,これらの分野での継続的な進展の重要な可能性につき留意した。多くのアフリカ諸国は貧困削減,持続可能な開発と長期成長の創出において大きく躍進した。政治的安定は発展途上経済にとって不可欠であり,外相は多くの国における民主主義的統治の高まりに勇気づけられている。しかし,経済,統治,人権,発展の課題は依然としてアフリカに存在し,外相は様々な国における情勢に引き続き懸念を有する。

 外相は,特にスーダンと南スーダンの国境地域における軍事的衝突に警報を鳴らされ,スーダン・南スーダン両政府に対し,領土主権,開かれた統治,内政不干渉の諸原則を遵守するよう要請しつつ,最大限の自制を行い,一般市民を保護するよう 求めた。外相は,一般市民エリアの爆撃の即時停止と武装した反体制派への支援を止めるよう求めた。外相は,両国政府に対し,領土主権,開かれた統治,内政不干渉の諸原則を遵守するよう強く要請した。彼らは,スーダン・南スーダン両政府が,AUハイレベル履行パネル(AUHIP)の支援の下で,石油,国籍/市民権,国境線,アビエ地域の最終帰属を含む,残された包括的和平協定後の諸問題を解決するための取組みを倍加する必要性を確認し,南コルドファン州・ブルーナイル州(2つのエリア)での暴力を解決することがこれらの問題解決に貢献することを強調した。彼らは,国際法と緊急人道援助の原則に沿った人道支援を行う深刻な緊急性につき改めて述べつつ,2つのエリアのスーダン国境での高まる人道状況への懸念を表明した。また彼らは,著しい苦痛と死をもたらしている南スーダンでの繰り返される部族間紛争に対する懸念を表明した。この関連で,外相は,南スーダン政府に対し,更なる暴力を防ぐため,治安部門の能力を向上させ,部族間紛争に直面する地域への支援を強化し,若者や反乱軍を含む関係者間での調停・和解への取組みを支持するよう要請した。紛争解決,紛争の根源に対処し更なる暴力を予防するための開発プログラムを向上するためにより多くのことをするよう要請した。また彼らは,ダルフール和平のためのドーハ文書の履行を発展させるためにスーダンにおける当事者を招待し,スーダン政府とすべての非署名者との間での和平交渉を要請した。

 外相は,ガローウェ・プロセスにおけるロードマップにおいて合意された2012年8月までの移行を完了するソマリア暫定連邦「政府」の主要責任を強調した。彼らは,すべてのロードマップ署名者が,国連ソマリア政治事務所と国際社会の支援の下で,政治プロセスが開かれかつ国民を代表するものであることを確保するために,2011年12月と2012年2月の2回のガローウェ会議において合意されたカギとなる基準を履行するために,彼らの取組みを倍加させるよう奨励した。彼らは,ソマリア暫定連邦「政府」とソマリアの地域主体に対し,移行の完了を要請する,2月23日のソマリアに関するロンドン国際会議で合意されたコミュニケを歓迎した。次の国際会議,その中でもイスタンブール会議とローマ国際コンタクト・グループは,移行を完了させるモメンタムを維持し,ソマリアのガバナンスの新たな段階へと進む重要な機会である。外相は,国際社会に対し,和平プロセスを阻むものに対し,必要に応じて行動するよう求めた。外相は,アフリカ連合(AU)ソマリアミッション(AMISOM)の取組みを賞賛し,平和なソマリアのために亡くなった兵士の犠牲を認識し,ANISOM部隊の上限を増やし,AMISOMがモガディシュまで作戦を拡大できるようにし,各国にソマリア木炭輸出入の禁止令を制定するよう要求する,国連安全保障理事会第2036号を歓迎した。いくつかの国によって既になされてきた貢献を認識しつつ,外相は,新たなドナーを含む諸国に対し,AMISOMとソマリアの国家治安部隊への支援を増加させるよう求める。外相は,加盟国にソマリア産木炭の輸出入を禁止することを要求する国連安全保障理事会決議第2036号を歓迎した。外相は,ソマリア沖の海賊及び武装強盗への強い非難を改めて表明し,ソマリア暫定移行「政府」に対し,ロードマップにおいて合意されたように,海賊対策の立法制定を求めた。また外相は,テロリスト組織アル・シャハーブによる,ソマリア内での人道的活動の阻害に対する懸念を表明した。

 外相は,エチオピア・エリトリア間の緊張の高まりに対する深い懸念を表明した。彼らは両当事者に対し,緊張を高めうるいかなる行動をも避け,国際法の一般原則を遵守し,アルジェ協定におけるコミットメントを尊重し,国境問題の行き詰まり及び関係正常化を妨げ地域の不安定性を悪化させるその他の問題に直接従事するよう求めた。

 外相は,過激派組織ボゴ・ハラムと進行中の部族間紛争による,ナイジェリアにおける継続的な暴力行為を強く非難した。彼らはナイジェリア当局に対し,無辜の市民を保護し,これらの攻撃に関与した者に責任を課すよう要請した。彼らはナイジェリア北部における緊急的な社会経済ニーズに対処するため,同地域が国の急速な経済成長を享受するよう確保するための包括的な開発計画の必要性を強調する。彼らは,ムスリム・キリスト教徒間の緊張を刺激しようとする者による企てを非難する。

 外相は,ディオンクンダ・トラオレ国民議会議長に率いられる暫定政府の下で,マリに文民統治と憲法秩序を回復させる4月6日の枠組み合意を歓迎した。外相は,マリにおける政治危機解決への仲裁で,西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が果たしているリーダーシップを評価し,ECOWASによる,マリに平和と安全を回復するための方法を探求する取組みに感謝した。外相は,マリの領土の一体性への支持を強化し,マリ北部における武装集団による独立宣言を拒否し,すべての当事者に対し,停戦と政治対話への参加を要請した。彼らは,マリ北部における状況の悪化,及び現在の危機がより広いサヘル地域へもたらす,切迫した人道危機を含む暗示への深い懸念を表明した。外相は,この地域における諸国に対し,共通の人道上,安全保障上及び開発に関する課題に取組むため,協力を一層強化するよう求めた。また外相は,地域機関及び国際社会に対し,人道危機に対応するためのこの地域における諸国による取組みを,支援するよう要請した。

 外相は,コンゴ民主共和国における2011年11月の大統領・議会選挙プロセスにおいて報告された不正行為に懸念を表明した。外相は,独立選挙委員会を含むコンゴ(民)当局に対し,次の地方選挙から選挙プロセスを劇的に改善させるように,また,将来の選挙への政治的コンセンサスを強化するためにすべての政治関係者と市民社会との対話に関与するように求めた。G8は,幅広い選挙改革への提案準備のため選挙委員会とともに取組むための国際社会による取組みを賞賛する。

 外相は,マダガスカルにおける昨年9月以来のロードマップの履行において達成された進展に留意し,暫定当局とすべてのマダガスカルの署名者がその履行を引き続きコミットするよう奨励する。彼らは,国際社会が,特に来たるべき選挙の実施を支援するとの観点からなされてきた取組みを支援する点で前進することの重要性を強調することを願う。

 外相は,コートジボワールにおける選挙危機後の危機の終了及び議会選挙の実施を歓迎し,コートジボワールが直前している諸問題,特に国民和解,刑事免責との戦い,治安部門改革,国全体における法と秩序の回復に取組むことに関するワタラ大統領のコミットメントを支持した。

 外相は,セネガルの3月25日の選挙において,サル大統領が勝利したことを祝福し,地域における継続的な進展と永続的和平を確保するために,彼の政府及びセネガル国民と緊密に協力することを約束した。また彼らは,セネガル国民の関与を賞賛した。

食料安全保障{前6文字太字}

 外相は,持続可能な食料安全保障と栄養改善を保証する国家主導の取組みを支援する,歴史的なラクイラ食料安全保障イニシアティブの下での,アフリカ及びその他の世界各国政府との生産的なパートナーシップを歓迎した。農業開発におけるドナーとパートナー国による投資は,特にそれが栄養指向であり,小規模農家や女性を対象にしている場合,幅広い経済成長を促進するための最も効果的な方法の一つであると証明されている。外相は世界の食料安全保障の永続的な進展には,農業及び関連セクターにおける公的支援と共に,責任ある形で動員する民間投資が必要であることを認識した。

 また外相は,妊娠から子どもが2歳になる誕生日までの1000日間の栄養を重点的に改善する戦略・政策がもたらす特別な効力も留意した。外相は,栄養スケールアップ(SUN)運動が,栄養不良に取り組み,実績のある多分野に渡る介入をスケールアップさせるために,ドナー・民間セクター・小規模農家を含む主要な利害関係者の協調・提携をもたらす,27カ国の参加を得た国家主導のネットワークとして,幅広い参加に値すると合意した。

アフガニスタン{前7文字太字}

 外相は,アフガニスタンの主権,独立,領土の一体性及び国家統一性に関する,彼らの強いコミットメントを強調した。外相は,その持続可能性を保証するための重要な取組みが残されていることを認めつつも,アフガニスタン政府・国民が,国際社会の支援とともに達成した進展を認識した。これは,アフガニスタン国内において,治安,法,秩序を維持することができるような,十分かつ持続可能なアフガニスタン治安部隊の発展を支援することを含む。

 外相は,国民和解へのプロセスが,開かれ,アフガニスタンのすべての人々の利益を代表するものであるとともに,真にアフガニスタン自身によるものでなければならないことを確認した。国民和解は,独立し,安定し,統一されたアフガニスタンの再確認,暴力の放棄,国際テロとの断絶,人権規定特に女性の権利を含むアフガニスタン憲法の尊重を含まなければならない。

 外相は,宗教の自由を含む人権と基本的自由,特に女性やマイノリティーの人権と基本的自由を保護すること,及び彼らがアフガニスタンの将来に貢献するための機会を拡大することの重要性を認識した。外相はアフガニスタンの人々の伝統と宗教的信仰を完全に尊重し,国際的な人権に関する義務及び一般市民の保護との関係を含む国際人道法上の義務の遵守することの重要性を強調した。

 外相は,2014年まで及び「変革の10年」(2015年-2024年)への揺るぎない関与の一環として,アフガニスタンの経済成長及び治安関連費用に向け,カブールプロセスに沿った形で,持続可能な水準での財政的支援を行うとの,ボンにおいて達した合意を再確認した。彼らは,アフガン政府に対し,アフガニスタンの経済の持続可能性にとって決定的なガバナンス及び公的財政管理の改革の履行を前進させることを要請する。外相は,国際社会とアフガニスタンにとって,アフガニスタンの持続可能な経済成長とガバナンスにおける実質的な改善への相互の長期のコミットメントを明示するための重要な機会となる,2012年7月に東京で開催されるアフガニスタン閣僚級会合(東京会合)に期待している。

 外相は,2011年11月の「安全で安定したアフガニスタンに向けた地域の安全と協力に関するイスタンブール・プロセス」及び2011年12月のアフガニスタンに関するボン国際会議及びその会議の結果を歓迎した。外相は,地域の経済協力を支援し促進するためにG8が果たしてきた前向きな役割に留意した。外相は,アフガニスタン経済の可能性を地域レベルで活用する歴史的貿易ルートの貿易連結性の強化を支援した。地域全体が,アフガニスタンの政治的解決と叛乱の停止による利益を享受する。外相は,2012年6月にアフガニスタンにより主催される地域閣僚会合に期待し,地域の安定・平和・繁栄,及びテロや不正な薬物製造・取引へのより効果的な対応に資する信頼醸成措置の実施に前進があることを希望する。この文脈で,外相は,アフガニスタンにおける麻薬原材製造と戦うパリ合意フォーラム第3回閣僚級会合の成果を歓迎し,ウィーン宣言の完全な履行の必要性を強調する。

 外相は,アフガニスタンにおける人的・金融的資本投資の支援を奨励するために,開発金融機関,公的輸出信用機関及びその他の公的及び民間手段を動員することで,民間投資の促進に向けた具体的な措置をとることを含め,アフガニスタンの持続可能かつ開かれた経済に向けた移行を支援することの重要性を強調した。同時に,外相は,アフガニスタンに対し,腐敗に対処し,法の支配を強化し,民間投資を導くような事業環境を育むために,改革政策を制定することを要請した。G8キャンプデービット・サミットは,2014年の権限移譲後のアフガニスタンに対する,非治安分野での支援の持続可能な水準に対するコミットメントをさらに結集させるための重要な機会となる。

テロ対策{前4文字太字}

 外相は,誘拐身代金を活動資金に充てているイスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ(AQIM)による人質事件の多発を含め,あらゆる形態・表現のテロに対する断固とした非難を改めて表明した。外相は,アフガニスタン,パキスタン,イエメン,ソマリア,イラク,レバノン,ガザ地区,並びにサヘル地域及びマグレブ地域にわたってテロリストが依然として存在していることや,最近ナイジェリアにおいて襲撃が行われたことついて,引き続き懸念を有する。彼らは,中東と北アフリカにおける政治的変革の複雑な性質が,変容するアル・カーイダ系テロリストの危険性への対処を困難にしていることを認識した。外相は,包括的なテロ対策戦略の重要性を強調し,世界中で暴力的過激主義を煽り続ける誤った主張に立ち向かうことを含め,アル・カーイダ並びにその関連組織及び支援者の力を削ぐための取組みを継続することを約束した。彼らは,テロに対する力強い声を発信できる,テロ行為の犠牲者を支援するための強いコミットメントを再確認した。外相は,テロ組織とその支援者の力をそぐために,グッド・ガバナンスを培い,貧困と腐敗を減らし,教育を向上させ,信仰の自由の尊重を促し,人間の基本的要求(BHN)に取り組むことの必要性を想起した。

 外相は,各国が,自国の領域・地域内のテロリストの脅威に対処するため,適用可能な国際人権・人道法に従いつつ,法の支配や刑事司法分野におけるものを含め,必要な能力を備える必要があることを強調した。外相は,世界的なテロ対策の取組みにおいて国連が引き続き担うべき中心的な役割を強調し,国連テロ対策調整官についての発表を歓迎し,国連グローバル・テロ対策戦略や関連する安保理決議の履行の重要性を強調した。

 外相は,先般発足したグローバル・テロ対策フォーラム(GCTF)とその早期における達成成果を歓迎した。GCTFとの関係で,外相は,暴力的過激主義に対処するため,訓練,対話,協力及び調査のための国際センターを開設するという,アラブ首長国連邦の提案を評価とともに留意した。

国際組織犯罪{前6文字太字}

 外相は,国際組織犯罪が世界経済を歪め,害をなし,世界の安定を蝕み,腐敗に油を注ぎ,良好なガバナンスを弱体化させるものであると断言した。国際組織犯罪は,規模,範囲,影響力を拡大し続け,安全保障と発展に重大な脅威となる。今日の犯罪ネットワークは,流動的でかつ洗練されており,世界中の他のネットワークとともに新たな同盟を打破し,多くの利益を得るために幅広い不法行為に従事している。いくつかの地域で,テロリスト・グループは,麻薬不正取引,人身取引,武器密輸,マネーロンダリング,海賊,身代金目的の誘拐とのありうべき関与の下で,組織犯罪ネットワークとの都合の良い協力関係を強める機会を増加させている。外相は,国際組織犯罪と,いくつかの場合において存在する犯罪ネットワークとテロ組織との間のつながり,不正な経路,関係を,特定し,防止し,阻止し,解体するために,国際的な資源を動員する一丸となった取組みへの支持を確認した。この目的のため,外相は,国際組織犯罪による犯罪収益を剥奪することの重要性を強調した。更に外相は,国際組織犯罪防止条約(UNTOC)が,各国の組織犯罪に対するまとまった行動と国際的協力を約束していることを想起し,各国がUNTOCを批准し履行することを支援する取組みを強化するとのコミットメントを改めて表明した。

海上安全保障{前6文字太字}

 外相は,海上安全保障が経済発展,貿易,地域の安定を可能にする重要な要素であることを強調した。外相は,航行の自由,円滑かつ適法な商業活動,国際法に基づいた紛争の平和的解決につき引き続き関与していく。外相は,海における海賊や武装強盗に対する強い非難を改めて表明した。外相は,脅威と闘うため,国際法と国際水域における管轄権に関する国際的に認識された原則に整合した,適切かつ国際的に共有された行動規範を策定することを目指すため,国際協力を追及するとのコミットメントを表明した。彼らは海洋の不安定性は国際社会全体に影響しており,沿岸国または地域機関の能力強化とともに,幅広く協調された包括的な,国家によるまたは国際的な取組みを通じてのみ効果的に対処できると認識した。海上犯罪を防止し抑圧するための責務が沿岸国にもあることに留意しつつ,外相は,沿岸国の能力強化(例えば,海上能力や訴追・拘留能力)の重要性を強調した。外相は,ソマリア及び地域の他の国に,海賊の犯罪処罰のための国際的な参加と協力の下で,海賊特別法廷を設立することを含む,海賊を処罰するためのメカニズムを作ることに関する,ソマリア沖海賊に関するコンタクト・グループでの取組みを継続する重要性に留意する。G8は,ギニア湾の海賊及び武装強盗に対処するための能力向上において,地域の国家及び機関に対し,適切な支援を提供する取組みを継続する。

気候安全保障{前6文字太字}

 G8諸国は,世界の成長,繁栄,平和と安定の促進における。彼らの利益を強調し,気候変動が世界的に安全保障上のリスクの高まりをもたらす要素であると認識し,国内及び多国間において気候変動に対処すべく取組みを続ける。国連安全保障理事会議長声明2011/15において,国連安全保障理事会議長は,「国連安全保障理事会は,ありうべき気候変動の悪影響が,長い目で見れば,国際的な平和と安全保障に対する特定の既存の脅威をより深刻化させる可能性があることに対し,懸念を表明する」と述べている。G8は,すべての当事者に適用できる新たな気候変動に関する合意を形成するためのプロセスを立ち上げるとのUNFCCCの決定を完全に支持する。G8は,気候変動の安全保障上のマイナス要素を制限するため,新しい国際的な気候政策と持続可能な経済成長が相互補完的であるべきであることに留意する。

人権{前2文字太字}

 外相は,平和と安全,開発,及び信教の自由を含む人権は国連システムの連結し互いに強化しあう柱であることを再確認した。人種主義,宗教的な不寛容や過激主義に関連する暴力は,人権と基本的自由の享受を弱体化させ,世界各地の安全保障と安定を脅かす。外相は,思想・良心・信教の自由や表現・結社の自由を含む,国際人権法に規定される人権及び基本的自由を尊重することの重要性を強調した。外相は,誰もが思想・良心・信教の自由への権利を持ち,この権利には宗教・信条の選択の自由を含むことを再確認した。外相は,諸国に対し,国際的義務に従って,すべての人々の人権及び基本的自由を保護・促進するための取組を効果的に向上させることを求める。外相は,人種,肌の色,性別,言語,宗教,政治上またはその他の意見,国籍または社会的起源,財産,出生その他のステータスを含む,いかなる原因による差別をも禁止することが,国際人権法に規定されていることを再確認した。外相は,人権と基本的自由が,すべての個人,レズビアン,ゲイ,バイセクシャル,トランスジェンダーの人々を含む男性または女性の,生まれながらの権利であることを再確認した。これらの個人は,世界の多くの国において,その性的志向のために,死や暴力,ハラスメント,差別に直面している(注)。外相は,たとえどこで起きようとも,誰が行おうとも,暴力,ハラスメント,差別を非難し,すべての国に対し,すべての個人の人権及び基本的自由を保護・促進するという義務につき再認識させる。外相は,世界には,女子性器切除や低年齢でのまたは強制された結婚が未だ行われている地域があることに深刻な懸念を表明した。外相は,低年齢でのまたは強制された結婚は, 若くして結婚した女児が,教育を修了し,包括的な知識を獲得し,地域社会に参画したり雇用可能な技術を向上させる機会を減らしうること,女児を暴力に対しより脆弱にさせうること,女性・女児の人権の完全な享受を侵害し,または弱体化させうることに留意した。

(注)ロシアは,国際人権法において,そのようなグループまたはそのような個人に関する,分類された権利者としての明確な定義や規定が存在しないとの理由により,この文言から離脱する。