データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8外相議長声明 附属文書

[場所] http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/camp_david12/g8_gk_cs_4.html(2012年7月5日アクセス)
[年月日] 2012年4月12日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 G8は,世界的に重要な多くの議題について対処するために,G8作業部会を通したものを含め,その取組を続ける。2012年4月11-12日に行われたG8外相会合において議論された議題に加えて,G8各国政府によって交渉されたこの附属文書は,安全保障,安全,保健,福祉及び繁栄を促進させるためのG8による従来からの立場及び行動を簡潔に示す。

テロと国際組織犯罪対策{前11文字太字}

 G8は,特に国連や地域機関を含む幅広い国際的なステークホルダーと共有する実用的なツールの開発を通じて,横断的なテロの脅威と,麻薬の不正取引を含む国際組織犯罪対策のため,G8ローマ・リヨン・グループによる先進的取組みを想起する。我々は,ローマ・リヨン・グループが,国連アルカイダ制裁レジームの実施強化において引き続きその役割を果たし,国連安全保障理事会決議第1267号/第1989号に基づく委員会による更なるイニシアティブ促進を継続するよう促す。我々は,アフガニスタン産アヘンの違法取引対策に関するパリ合意フォーラム第3回閣僚級会合の成果を歓迎する。G8は,テロ対策における協力の強化,簡易爆発装置への対処,違法な薬物製造と不正取引,児童の性的搾取防止,サイバー犯罪を含む幅広く流動的な,新たな犯罪に対する協力の促進,国連による不正薬物統制と犯罪防止の法的枠組の保全と履行の継続のためのローマ・リヨン・グループの作業を承認する。我々は,国際組織犯罪とテロ対策におけるローマ・リヨン・グループの近年の取組みに焦点を当てた,ローマ・リヨン・グループの2012年内部ステータス・レポート及び同国際組織犯罪付属書に留意し,我々は今後更なるこの種のレポート(の可能性を)歓迎する。

平和維持・平和構築{前9文字太字}

 G8は,国連により権限を与えられた平和維持活動における,児童保護並びに戦争の武器としてのレイプ・女性への暴力を含む性的な及びジェンダーに基づく暴力の予防及び改善を含む,文民の保護の課題に関する平和維持・平和構築専門家会合の作業を歓迎する。G8の専門家は,国連及び平和維持ミッションの受入国がそれぞれの保護に係る責任を担うための能力の向上によるものを含め,権限を与えられた国連の活動における文民の保護を推進させるため,これらの事項について,議論した。G8は,紛争当事者が文民の保護の主要な責任を負うことを認識する。

 我々は,G8諸国又はG8が支援する国における関連の平和維持に係る訓練施設によって達成された前向きな成果を認める。我々は,平和維持・平和構築に係る能力及びニーズと訓練のより一層の一致の向上に関するG8首脳会合の決定の履行に向けて更なる進展が必要であることについても再確認する。

原子力安全及び核セキュリティ{前14文字太字}

 G8は,G8原子力安全セキュリティ・グループの作業を歓迎する。我々は,緊急時に係る対応及び準備の制度を含む国際的な原子力安全の枠組みを強化することを主張する。この文脈において,G8は,国際原子力機関(IAEA)の原子力安全に関する行動計画の効果的で,時宜を得た,かつ,透明性のある実施を支持する。我々は,この計画の成功裏の実施にはIAEAによる国際レベルでの,また,IAEA各加盟国による国内レベルでの強力なコミットメントが必要であると認識する。この計画は,全ての国家は原子力安全及び最高水準の原子力安全の促進を継続的に重視すべきという点をハイライトした,2011年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所事故による,教訓及び安全性への不安に短期,中期及び長期的に対処するための重要かつ包括的なロードマップを示すものである。我々は,国際的な原子力安全の更なる進展のため,2012年8月に開催される原子力安全条約締約国特別会合及び2012年12月に開催される原子力安全に関する福島閣僚会議の成功の重要性を認識する。G8は,原子力産業の全ての分野並びに包括的なリスク及び安全性評価における,強固な原子力安全文化及び核セキュリティ文化を支持する。我々は,国際的な原子力安全の体制に重要な条約(原子力安全に関する条約,使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約,原子力事故の早期通報に関する条約及び原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約)を未だ批准していない国々に対し,批准を行うよう強く求める。我々は,原子力安全に係る強固な実践を確保するため,東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓及びこの目的のための多岐にわたる国際的イニシアティブに照らし,これらの条約の実施をしっかりと見直し,また必要であればこれらの条約の強化を検討することを支持する。G8は,ウクライナのチェルノブイリ原子力安全プロジェクトが,時宜を得た,かつ,費用対効果が高い形で完了することへの支持を再確認する。

 G8は,世界中の脆弱な核物質及び放射線源並びに悪意ある目的で核物質を取得又は使用するために必要な情報,技術及び技能等を管理するという2012年のソウル及び2010年のワシントンの核セキュリティ・サミットの目標を支持し,かつ,24カ国のG8GPメンバーを通じてその目標の実施を支援する。G8は,ソウル・コミュニケに明確に述べられたとおり,国際的な核セキュリティ体制にとって重要である改正された核物質の防護に関する条約及び核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約の普遍的な遵守を促進する。

軍縮・不拡散{前6文字太字}

 G8は,核兵器不拡散条約(NPT)及び同条約の普遍化への無条件の支持を再確認する。我々は,全てのNPT締約国がNPTの健全性及び活力に重要な利害を有することを強調するとともに,2010年のNPT運用検討会議で合意された,国際的な軍縮不拡散体制の保全及び強化のための行動計画の履行を支持する。次回の2012年のNPT準備委員会は,2015年のNPT運用検討会議の成功に向けた道を拓くために協働する機会である。G8は世界の深刻な拡散の課題に関する強い懸念及びそれらの外交手段を通じた解決へのコミットメントを改めて表明する。我々は,関係国に対し国際的義務を遵守するように要請する。G8は国連安保理決議第1540号の関係国による完全な履行及び国連安保理1540委員会の作業への支持を改めて表明する。我々は,全ての国に対し,国際的義務を遵守するように要請する。我々は,既存の非核兵器地帯条約の関連議定書の効力を発効させるための関係国による取組を歓迎し,中東において核兵器及びその他全ての大量破壊兵器及びその他運搬手段のない地帯を最終的には設置することを含む,国際的ガイドラインに則った非核兵器地帯のさらなる設置を支持する。G8は,兵器用核分裂性物質生産禁止条約に関する交渉を,バランスの取れた作業プログラムに基づき,遅滞なく開始することの重要性を強調し,ジュネーブ軍縮会議(CD)が同条約の交渉を開始することが再度阻止されたことを遺憾とする。G8は,包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を支持し,まだCTBTを未署名で,未批准の全ての国に対し,同条約を遅滞なく署名及び批准することを求める。G8は効果的なIAEAの保障措置体制の基本的な重要性を強調し,全ての国に対し,IAEA包括的保障措置協定(CSA)及びCSAに対する追加議定書をできる限り早く署名し,実施することを求める。G8は,現在継続している武器貿易条約の交渉におけるさらなる進展を促進する。

宇宙の安全及び持続可能性{前12文字太字}

 G8は,宇宙活動の長期的持続可能性の確保に向けた,国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)の作業を支持する。我々はまた,宇宙空間における責任ある行動のための透明性及び信頼醸成に関する措置の履行,及びこれに関連する宇宙活動の透明性・信頼醸成措置(TCBM)に関する国連政府専門家会合の活動を支持する。G8は,宇宙活動に関する国際行動規範の策定のための欧州連合によるイニシアティブを認識する。我々は,国連憲章を含む適用可能な国際法に従って宇宙空間の探査及び利用の活動を継続するとのコミットメントを改めて表明する。

グローバル・パートナーシップ{前14文字太字}

 G8は,大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ(GP)を賞賛する。GPは,ロシアにおける優先事業の完了に引き続きコミットし,核と放射性源のセキュリティ,バイオ・セキュリティ,科学者の雇用及び国連安保理決議第1540号の実施を含む,ドーヴィル・サミットで合意されたマンデートを前に進めている。生物兵器の潜在的使用の可能性,または感染症の故意の拡散から生じる重要な国際的脅威を認識し,GPは,安全で安心でき,安定した国家の建設に欠かせない要素としてグローバルなバイオ・セキュリティを推進するための総合的なアプローチを構築するための取組を支持する。2010年及び2012年の核セキュリティ・サミットでの約束を踏まえ,GPは,核セキュリティの研究拠点,国際協力の促進,しっかりした核セキュリティ文化,情報と輸送のセキュリティの進展を通じ,各国の核と放射性源のセキュリティを支援し続けている。GPはまた,2011年に首脳で合意されたように,大量破壊兵器及びテロ問題に対処するための世界的な共同の取組を強化するよう,GPの参加国を(重要な地域的及び世界的主導国を含むように)拡大することを引き続き追求し,大量破壊兵器の拡散防止への様々なイニシアティブの調整を改善するための(グローバルな)イニシアティブに対する現在実施中の関係国際機関の参加を歓迎する。

国際保健に関する継続的支持{前13文字太字}

 G8は,エイズ・フリーの世代に向けた動き,及びHIV・エイズに関する予防,治療,ケア及び支援への普遍的アクセスを確保するための取組を支持する。G8は,世界エイズ・結核・マラリア対策基金の設立10周年の機に,そして同基金が包括的な改革アジェンダを採用する機に,同基金への支持を更新し,改めて約束する。G8は,これらの重要な保健課題に対処するために,全てのドナーが表明した資金拠出を実行することを奨励し,新たなドナーに対し,基金を支える共同の取組に参画することを求め,事業実施国に対し,リーダーシップ及び資金の増加を通じて共有された責任のための支援を倍増させるよう求める。

 G8は,ムスコカ・イニシアティブの実行,及びコミュニティ・レベルを含め,継続的なケアのあらゆる局面において包括的な介入を行うことによって,途上国における妊産婦,新生児及び乳幼児の健康を改善するための世界的な取組へのコミットメントを再確認する。また,我々は幼児の死亡を減らすための,また女性が出産するか否か,いつ何人の子供を出産するかを選択することを可能とする家族計画へのアクセスを増加させるために必要とされるリーダーシップ及び資源を創出するための,主要な国際的取組を支持する。我々は,主要なニーズに対処するための説明責任及び行動を要求する。

 同様に,G8は世界ポリオ根絶イニシアティブへの支持を再確認し,2012年-2013年のポリオ緊急行動計画の実施に対する政治的及び財政的支援を求める。G8は,顧みられない熱帯病の抑制と撲滅に向けた進展を加速するための継続的な協力を要請する。また,G8はGAVIアライアンスを通じて,定期予防接種及び生命を救うワクチンへの衡平なアクセスを増加させることによって,防ぐことが可能な幼児死亡の減少を加速させる決意を再確認する。

 包括的かつ持続可能な形で保健システムを強化することは,国際保健の改善において極めて重要である。我々は,我々のグローバルな援助が効果的であるためには,各国の保健システムに依存しなければならないことを十分に認識している。よって,共有されたかつ相互の責任を含む国際的に合意された援助効果の原則に則り,また各国による保健システム強化の取組に沿った形で援助を行う意図を改めてここに表明する。

 G8各国は,21世紀が国際保健の歴史における転換点であることを認識する。科学の進歩と国際的かつ多分野における協力の増加は,疾病のサーベイランスと対応における急速な改善,そして起源に関わらず疾病の発生のリスクを減らす結果をもたらしてきた。よって,我々は,全ての国々が世界保健機関(WHO)の国際保健規則(IHR 2005)の実施を優先することを要求する。これは,他の関係者と協力して,これらの国際的な懸念をもたらす公衆衛生上の緊急事態を予防し,検知し,報告し,対応する上で核となる公衆保健能力を構築し,強化することを含む。この優先事項に関する他の関係者による協力は,国家の持続可能な開発のために不可欠である。