データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2014年不拡散及び軍縮に関するG7宣言

[場所] 
[年月日] 2014年6月4日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1.我々は,すべての人にとってより安全な世界を追求することにコミットしている。大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散防止は,最優先課題である。国連安保理決議第1540号,第1673号,第1810号,第1887号及び第1977号において認識されているとおり,これらの拡散は,国際の平和と安全に対する主要な脅威である。国連安保理決議第1540号の採択から10周年を迎える本年,G7は,2021年までの本決議の完全な実施に向けて協働し,並びに核兵器,化学兵器及び生物兵器並びにそれらの運搬手段の拡散と闘う上での努力を強化するとのコミットメントを再確認する。

2.より安全な世界を求めるにあたり,我々は,核兵器不拡散条約(NPT)の目標に従い,すべての国にとって平等かつ減損しない安全保障の原則に基づき国際的な安定を促進する方法で,またこの目標を達成するための不拡散の不可欠な重要性を強調しつつ,核兵器のない世界に向けた状況を作ることへのコミットメントを再確認する。

3.我々は,核不拡散体制の礎石であり,軍縮の追求と原子力の平和的利用の不可欠な基盤であるNPTの三本柱すべてに対する無条件の支持を再確認する。

4.我々は,すべてのNPT締約国に対し,同条約における義務を履行すること,国際的な核不拡散体制を維持し,強化することを求める。2015年NPT運用検討会議は,全NPT締約国に対し,すべての側面において同条約をさらに強化する不可欠な機会を提供する。我々は,行動計画を含む2010年NPT運用検討会議の成功したコンセンサスに基づく成果を想起する。我々は,同行動計画の実施に引き続き完全にコミットしており,すべての締約国にそのアクションを実施することを呼びかける。この観点から,我々は,NPTの三本柱すべての実施の強化を目的として,NPT上の検証,透明性及び信頼醸成措置に関する各核兵器国及び核兵器国間の継続的な関与を歓迎し,促す。我々は,この継続している最新の対話である2014年4月に北京で開かれた中国,フランス,ロシア連邦,英国及び米国(5核兵器国)による会議を歓迎するとともに,2014年4月にニューヨークで開かれたNPT運用検討会議第3回準備委員会に行動計画アクション5,20及び21に基づき,個別の報告書が時宜を得て提出されたことを歓迎する。我々は,すべての締約国に対して,行動計画のアクション20に従い,同様の報告を行うことを促す。

5.G7パートナーは,1999年国連軍縮委員会によって提示された原則に沿って,地域の関係国の間で自由な意思により妥結した合意に基づいて設置される国際的に認められた非核兵器地帯の発展を引き続き重視し,非核兵器地帯条約の関連する法的拘束力のある議定書の枠組みにおいて核兵器国から安全の保証を供与されることへの非核兵器国の正当な利益を認識する。これらの議定書は,核兵器国と非核兵器国との間の信頼醸成に資することにより,地域及び国際の安全保障を強化する。我々は中央アジア非核地帯条約の議定書への署名を歓迎する。また,我々は,東南アジア非核兵器地帯条約締約国との協議を継続するとの5核兵器国のコミットメントを歓迎する。

6.我々は,NPT上の核兵器国によるNPT上の非核兵器国に対するコミットメント及び安全の保証の重要性を再確認する。我々は,ブダペスト覚書において,ロシア連邦がウクライナに対して与えたコミットメントに,最近継続して違反していることを遺憾に思う。同覚書において,ロシア連邦,英国及び米国は,ウクライナの独立,主権及び既存の国境を尊重するコミットメントを再確認し,ウクライナの領土保全及び政治的独立に対する武力による威嚇又は武力の行使を慎む義務,及び,自衛の場合又は国連憲章に従う場合を除き,ウクライナに対して武器が使用されない義務を再確認し,さらに,ウクライナに対する経済的な強制力を与えることを慎むことを再確認した。我々は,1994年のウクライナによる歴史的な決断は,ウクライナ自身及びより広範な地域・国際の安全保障の推進にとって重要な措置であったと考える。また,2014年のNPT運用検討会議準備委員会における,ウクライナはNPTの規定を遵守し続けるとの同国のステートメントを歓迎する。

7.G7は,中東における非大量破壊兵器地帯の目標を強く支持する。2010年NPT運用検討会議においてそのような地帯の設置に関する会議を開催するとの決定を想起しつつ,我々は,同会議のファシリテーターとしてのラーヤヴァ・フィンランド大使の作業を強く支持するとともに,我々は,1995年決議の共同提案国(ロシア連邦,米国及び英国)の継続的なコミットメントを歓迎する。我々は,最も近い将来において同会議を開催できるための準備を完了するために,域内諸国に対して,相互の直接関与を呼びかける。

8.我々は,NPT第10条1項にあるNPTからの脱退の権利を認めつつ,北朝鮮の脱退宣言によって示されたとおり,NPTからの脱退について対処する方法及び措置が必要と考える。我々は,脱退宣言に迅速かつ遅滞なく対処し,この関連で対処措置の採択の可能性を含め,そのような脱退の影響を評価する上で国連安保理の役割を強調する。また,我々は,締約国が脱退前に犯したNPTの違反について国際法上責任を有し続けることを強調する。我々は,また,脱退前に受領した原子力移転は平和的利用に留まり,国際原子力機関(IAEA)の保障措置の下にあり続けるべきことを強調する。我々は,この問題が2015年運用検討会議において緊急に対処される必要があるとの認識が高まっていることを歓迎するとともに,最終文書において脱退に対処する措置に関する適切な勧告の採択を支持する。

9.我々は,アシュトンEU上級代表によって導かれたEU3+3によるイランの核問題の長期的で包括的な解決,すなわちイランの核計画が専ら平和的性質であることについての国際社会の懸念を完全に払拭し,イランが核兵器を取得しないことを確保することに達するための努力に対する支持を強調する。我々は,EU3+3とイランとの間の共同作業計画の実施及び核関連措置の検証に当たってIAEAが果たした不可欠な役割を歓迎する。我々は,これに関連し,IAEAによる監視のために財政的貢献を行った国々を賞賛する。我々は,イランの核計画が専ら平和的性質であることを検証するためにIAEAにより行われている現在進行中の取組を強く支持することを再確認し,イランに対し,すべての未解決の問題,特に,イランの核活動の軍事的側面の可能性に関する懸念を生じさせる問題を解決し,イランの核問題の長期的で包括的な解決にとって重要となる満足のいく解決が図られるよう,IAEAと完全に協力することを要請する。

10.我々は,シリアが,その保障措置義務の不遵守を是正し,その核活動の性質に関する未解決の問題を解決する上でIAEAと完全に協力することを要請する。

11.我々は,北朝鮮を核武装国として認めず,北朝鮮に対し,すべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること並びにNPT及びIAEA保障措置に早期に復帰して不拡散の義務を完全に遵守することを求める。我々は,北朝鮮が,国連安保理決議第1718号,第1874号,第2087号及び第2094号に直接的に違反して引き続き核及び弾道ミサイル計画を継続していることを最も強い調子で非難する。これに関連して,我々は,北朝鮮が本年2月及び3月に安保理決議上の義務に明白に違反して弾道ミサイルを発射したことを非難し,北朝鮮に対して更なる挑発を差し控えることを要請する。我々は,北朝鮮に対し,寧辺の核施設を再開し,再調整し,及び拡大するようないかなる取組も停止すること並びにウラン濃縮及びプルトニウムに関連するすべての核活動を直ちに停止することを強く要請する。我々は,朝鮮半島の恒久的な平和と安定に対する共通の期待を再確認し,北朝鮮に対し地域の緊張を高めるいかなる行動も差し控えることを要請する。我々は,2005年の六者会合の共同声明を実施し,北朝鮮に国連安保理決議を完全に実施させるための外交努力を強く支持し,北朝鮮に対し,完全で検証可能かつ不可逆的な非核化に向けた具体的な措置をとることを要請する。我々は,北朝鮮が国際社会の声に耳を傾けないことに対して国際社会が一丸となって対応していることを賞賛し,北朝鮮による拡散活動を縮減するために引き続きすべての国による監視を続け,北朝鮮が禁止されている核及び弾道ミサイル計画を引き続き追求することを妨げることを要請する。

12.我々は5核兵器国に対し,核戦力の削減を含む重要な対話並びにNPT第6条及び2010年

5月のNPT運用検討会議で採択された行動計画に沿った主要な措置である信頼醸成及び透明性に関する取組を継続するよう,促す。我々は米国及びロシアによる新START条約の継続的な履行並びにフランス及び英国が既に実施している軍縮関連の行動を歓迎するとともに,核兵器を保有しているが核軍縮努力をいまだに実施していない他の国に対し,核兵器を削減するよう求める。

13.包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効及び普遍化は,すべての国の安全保障上の利益である。CTBTの未署名国,未批准国は,他国の行動を待つことなく署名,批准すべきである。同条約が核軍縮及び不拡散において効果的なメカニズムとなるためには,我々は,すべての国が政治的意思を維持するとともに,同条約の検証体制の完成と暫定技術事務局の能力の最大化のために,十分な資源を提供しなければならないと信じる。我々は,各国が自主的に,核爆発実験に対する一方的なモラトリアムを遵守することを歓迎するとともに,あらゆる国が同条約の目的及び目標を無効とするような行為を慎むことを呼びかける。また,我々は,賢人グループの設立を歓迎し,条約の発効に新たな活力と原動力をもたらすであろうその活動を支持する。

14.ジュネーブ軍縮会議(CD)及びその前身たる機関は,重要な合意を達成した長い歴史を有するが,我々は,CDの停滞に対する増大する国際社会の焦燥感を共有する。我々は,核不拡散及び核軍縮の両方の目標を前進させるための多国間交渉における次なる論理的な措置は,CD/1299(CD/文書)及び同文書に盛り込まれているマンデートを基礎として,核兵器又はその他の核爆発装置に使用するための核分裂性物質の生産を禁止する条約(FMCT)を交渉することと信じる。我々は核兵器又はその他の核爆発装置に使用するための核分裂性物質の生産に関する幾つかの国によるモラトリアム宣言を歓迎する一方で,そのような生産に関する拘束力があり検証可能な禁止が核兵器のない世界に向けた必要なステップである。我々は,国連の政府専門家会合(GGE)の作業を歓迎する。同GGEは,将来の条約に貢献し得るあり得べき側面に関する勧告を作り,いずれなされるCDでの交渉に向けた機運を醸成できる。

15.NPTの全締約国は,国際的な義務に従いつつ,原子力を平和的に利用する奪い得ない権利を有する。我々は,核不拡散の義務を遵守する国々と協力する意思を再確認し,原子力安全,核セキュリティ,核不拡散及び環境の尊重について最高の水準を満たす形で民生用原子力計画を進展させることを望む。

16.我々は,原子力損害賠償責任に関する国際的な制度の構築に向けた作業を含む原子力安全に関するIAEA行動計画の実施に対する強力な支持を強く求め,原子力の安全に関する条約の実効性強化に係る進展を歓迎する。我々は,国家の緊急事態の準備及び対応に係る措置の策定,実施及び継続的な改善の重要性を強調する。

17.核燃料サイクルに対する多数国間のアプローチは,原子力エネルギー活動に資する。我々は,カザフスタンにおける低濃縮ウランバンクの設立に向けたIAEAの活動を支援し,バンクの運用開始を可能とするためのホスト国協定の早期締結を強く要請する。

18.我々は,IAEAの中心的な役割,特に,核不拡散体制の効果的な実施において不可欠である保障措置制度を支持する。IAEAは,憲章上の権限に従ってその任務を完全に遂行する上で不可欠な資源及び法的権限を引き続き有しなければならない。我々は,IAEAの包括的保障措置協定及び追加議定書が,核燃料,設備及び技術の供給決定に当たり検討すべき普遍的に受け入れられた国際的な検認基準として促進されることを引き続き支援する。我々は,追加議定書への署名及びその締結を行っていない国に対し,できる限り速やかにこれを行い,その規定を適用することを要請する。

19.我々は,58の世界の指導者が世界中の脆弱な核物質及びその他の放射性物質のセキュリティ確保を通じて核テロリズムの脅威の更なる削減に向けて協働した,本年3月24日及び25日のハーグ核セキュリティ・サミットの成果を歓迎する。ハーグ・サミットの参加者は,国家の根本的な責任,国際的な協力の更なる強化及び調整の必要性並びに強化された包括的な国際的核セキュリティ体系の必要性を再確認するコミュニケに合意した。多くの国が核セキュリティの目標を進めることを意図した多国間の合同コミットメントに合意した。我々は,高濃縮ウラン及びプルトニウムの全廃に向けた余剰供給の撤去の完了に取り組むベルギー及びイタリア並びに米国と協力して実験炉の一つから数百キログラムの核物質を撤廃することを表明した日本に焦点を当てる。我々は,他の国が透明性確保のための追加的措置をとることを要請する。我々はまた,核セキュリティ・サミットの目標を支持する関連の既存の国際的なイニシアティブに各国が参加することを引き続き奨励する。

20.我々は,核物質の防護に関する条約(核物質防護条約)のすべての締約国に対し,同条約の2005年改正をできる限り速やかに批准し,受諾し,又は承認することを強く要請する。我々は,核物質及び放射性物質をその起源においてセキュリティ確保することに加え,不法な市場において現在利用可能となっている物質の所在を特定し,及びセキュリティ確保,並びにこれらの物質の不法取引に関与した者を訴追する必要性を認識する。

21.我々は,核物質の密輸に対抗し,及び核テロリズムと闘うための,核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブによる取組及びその他の国際的な努力を賞賛する。核物質及び放射性物質の不法取引が20年以上の間継続的に発生していることにより,テロリスト及び他の悪意のある者によってこれらの危険な物質が取得されることの脅威に焦点が当たっている。国際社会は,世界で最も危険な物質が悪の手の中に陥ることを防ぐために監視しなければならない。

22.我々は,原子力供給国グループ(NSG)が,すべての国に対し,核関連の技術及び資機材の供給は平和的目的であることを確保するよう監視を実施すること並びにいかなる資機材及び技術の輸出も核兵器の拡散に寄与することのないよう確保するために最大限努力することを要請していることを歓迎する。この点に関し,我々は,NSGガイドラインは原子力専用品及び原子力関連汎用品の輸出のための基準として役立つことを認識する。我々は,NSG参加国政府に対し,同ガイドラインを厳格に遵守することを要請するとともに,NSGに参加していない原子力供給国政府に対し,任意に同ガイドラインに従って行動することを奨励する。我々は,また,核不拡散の努力を強化するために追加議定書を供給の条件とするとの議論を支持する。我々は,技術専門家グループによって行われている規制リストを最新のものにするための取組の進展を歓迎するとともに,同グループによる不拡散強化のためのアウトリーチの努力を歓迎する。我々は,メキシコが2012年に,セルビアが2013年に,それぞれNSG参加国となったことを歓迎する。

23.我々は,化学兵器禁止条約(CWC)及び化学兵器禁止機関(OPCW)の機能への無条件の支持を再確認する。我々は,条約の成功,及び,大量破壊兵器の一つの種類全体の廃棄と化学兵器の再出現防止に向けた現行の作業を称えるOPCWへのノーベル平和賞授与を賞賛する。我々は,2013年運用検討会議最終文書に打ち出された作業の継続を期待し,普遍化と条約の効果的な実施を確実にするための努力を支持するとともに,条約のすべての非締約国が今にも条約に従うように求める。化学兵器の廃棄は,化学兵器の開発,生産,取得,貯蔵,使用及び拡散の抑制とともに,引き続き条約の中核的な目的である。我々は,最近のOPCW執行理事会(EC)及び締約国会議に報告されているとおり,保有国によってもたらされた進捗を歓迎する。我々は,すべての保有国が,透明性のある形で,既存の検証制度の枠組の中で,化学兵器の廃棄プロセスをできる限り早期に完了するために必要なあらゆる措置を引き続き講じることを奨励する。我々は,効果的な産業検証体制の重要性を改めて表明する。

24.我々は,アサド政権による自国民への化学兵器の使用に対する深い懸念を共有する。我々は,シリアにおける武器としての毒性化学物質の使用にかかるより最近の疑惑についてのさらなる懸念を共有し,OPCWの事実関係調査ミッションを支持する。我々は,政権に対して,そのような攻撃の責任者が説明責任を負うことを確実にするために,そのミッションに全面的に協力するよう求める。アサド政権による化学兵器物質の継続した保有は,シリア国民及びすべての近隣諸国民にとっての危険の継続を表している。我々は,シリア化学兵器プログラムの除去にかかる米露ジュネーブ枠組から生じた,2013年9月27日OPCW執行理事会決定及び国連安全保障理事会決議(第2118号)の完全履行を支持する。我々は,OPCW・国連共同ミッションの努力,また,シリア化学兵器プログラムの安全な除去を支えるために各国及び国際社会全体によって提供された支援を歓迎する。努力がなされる一方,搬出プロセスは遅延している。我々は,シリアに対して,CWC,OPCW執行理事会決定及び国連安保理決議第2118号の下の義務を果たすべく持続的な努力を行うことを求める。プログラムが完全に除去されたという国際的な確信は,シリア化学兵器プログラムの申告にかかるさらなる検討を必要とする。また,シリアは,CWCに従って,残る13の化学兵器生産施設を物理的に破壊するための措置を直ちに講じなければならない。

25.我々は,生物兵器禁止条約(BTWC)第7回運用検討会議の結果を実行すべくこれまでに行われている作業を歓迎する。我々は,国内実施,信頼醸成措置及び協力・支援の促進,科学技術の進展の検討,生物毒素兵器の使用に対応するための条約第7条の強化について,実際的な進展を遂げるために尽力している。我々は,ピア・レビュー,透明性のための任意の訪問と説明,懸念が生じた際にそれらを取り上げて扱うための建設的なアプローチといったような,ベストプラクティスの交換の促進,透明性の強化,締約国間の信頼醸成のための実際的な取組の更なる探求や検討を支持する。そのようなアプローチは,条約の義務の履行を強化し,遵守の確信を強化するための役割を果たす可能性がある。我々は,BTWCの普遍化を促進するコミットメントを再確認し,条約体制の強化のためにすべての締約国と連携することを決意する。

26.国際的な不拡散レジーム(オーストラリア・グループ,ミサイル技術管理グループ,原子力供給グループ)及びザンガー委員会の参加国による大量破壊兵器及びその運搬手段に関連する輸出管理は,拡散者が最も先進的な技術を有する国から支援を得る可能性を顕著に減少させた。こうした輸出管理並びにこれらのレジームにより培われた情報の共有,ベスト・プラクティス及び協力の形態により,拡散者が大量破壊兵器及びその運搬手段を製造又は取得することは,より困難で,時間を要し,費用のかかるものとなった。我々は,これらのレジームを通じて世界的な拡散の脅威を減少させる取組を継続するとともに,すべての国に対し,これらのレジームのガイドライン

及び基準を国内において採用し,及び適用することを要請する。

27.我々は,拡散の問題に対処する上で鍵となる国連安保理の役割を完全に支持する。我々は,1540委員会のマンデートを10年間延長し,決議第1540号の義務を再確認した国連安保理決議第1977号の採択を歓迎する。我々は,すべての国が,コンタクト・ポイントを登録し,決議第1540号の完全な実施に向けて取り組むことを招請する。我々は,この点に関して関係国に支援を提供する用意がある。我々は,1540委員会による任務の遂行に対する支持を再確認する。

28.我々は,国連安保理決議第1540号,第1887号及び第1977号において認識されているとおり,ミサイル,とりわけ,大量破壊兵器の輸送を可能とするものの拡散が,引き続き我々すべての者に対する深刻な懸念であり,国際の平和と安全に対する脅威であると強く信じる。我々は,多数国間の対応及び国際的な規範が,この問題に対処するための最も適切かつ効果的な方法であると信じる。我々は,この点に関し,ミサイル技術管理グループ及びハーグ行動規範を強く承認する。

29.我々は大量破壊兵器及び物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップへの揺るぎないコミットメントを確認する。したがって,我々は核・放射線源セキュリティ,バイオセキュリティ,化学セキュリティ,科学者の雇用と知識流出防止及び国連安保理決議第1540号の履行に係わるプログラム及び活動における調整や連携の努力を行っているグローバル・パートナーシップを賞賛する。グローバル・パートナーシップは中核拠点との連携とメンバーシップの拡大という価値ある作業を継続して行っている。2013年以降,グローバル・パートナーシップはフィリピン,ハンガリー及びスペインを新たなメンバーとして迎えた。また,グローバル・パートナーシップのメンバーは,大量破壊兵器不拡散プロジェクトの情報共有や連携の向上のための地球規模の取組に,関連の国際組織及び機関が継続して参加し,より緊密に協力していることを歓迎する。化学セキュリティ,バイオセキュリティ,核・放射線源セキュリティといった個々の重要な分野に特化したサブワーキンググループは,グローバル・パートナーシップが行っている情報共有,資金供与,プロジェクト調整を改良させることに寄与した。グローバル・パートナーシップはシリアにおける化学兵器廃棄のために重要な資金供与を行った。加えて,マッチメイキングの強化によって,グローバル・パートナーシップはプロジェクト調整を地球規模で行うことができるようになっている。

30.我々は,拡散対抗の強固な手段を引き続き推進する。我々は,拡散に対する安全保障構想(PSI)を支持する。先般ベトナムが104番目の参加国になるなど,参加国は引き続き増加している。我々は,拡散に関係する国家及び非国家主体への並びに当該国家及び非国家主体からの大量破壊兵器及びその運搬手段の輸送の阻止に必要な能力と権限を強化するための更なる措置をとることをコミットする。我々は,PSIへの参加を促進するためのアウトリーチを推進するとともに,引き続き法的及び運用上の問題に焦点を当てる。

31.通常兵器は,国連憲章の規定にしたがって,政府が自国民を防衛することを可能とする正統な役割を担っている。しかし,通常兵器が誤った人間の手に渡れば,世界・地域・国家の安全保障に対する脅威となる。不適切に管理されれば,テロを助長し,平和と安定を脅かす。この理由から,国連安保理決議第2117号の採択を歓迎し,各国が国内,地域及び国際的なレベルにおいて国連小型武器行動計画を完全かつ効果的に履行することの必要性を強調する。この文脈において,リビアからの武器の拡散を阻止するための国連安保理決議第2017号の完全な履行への支持をあらためて表明する。これに加えて,通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理に関するワッセナー・アレンジメントは,これらの兵器,汎用品及び技術の不安定化をもたらす蓄積を防止することに寄与する。我々は,現在このレジームに参加していない国がワッセナー・アレンジメントの基準及び規制リストを適用するためにあらゆる努力を払うことを要請する。また,通常兵器についての合意やコミットメントは,特定の地域の安全保障上の懸念に対処することができる。ウィーン文書やオープン・スカイズ条約は,ここ数ヶ月間,ウクライナ及びロシア西部における軍事活動についての有益な透明性を提供してきており,こうした状況はこれらの合意及びコミットメントの継続的な実施と近代化の重要性を表すものである。

32.我々は,2013年6月3日に武器貿易条約が署名のために開放されてから,その発効に向けて急速な進展があったことを歓迎する。我々は,まだ条約に参加していない国に対して,できるだけ早く参加することを要請する。条約の義務を効果的に履行することは,国家の防衛及び安全保障に必要不可欠な武器の合法な取引を維持する一方,生命を救い,人類の苦しみを軽減し,人権を保護し,通常兵器の非合法の市場への流出を防止し,テロとの戦いに貢献することとなる。我々は,能力構築支援を必要としている締約国が,条約上の義務を満たし,履行できるよう,そのようなことのできる立場にある国が,そのような支援を提供することを求める。

33.宇宙活動は,国家の社会,経済,科学,技術的な発展に,国際的な平和と安全の維持と同様,重要な役割を果たし続ける。我々は,宇宙環境の長期的な安全,セキュリティ,持続可能性及び安定性を強化するために,協調し,時宜にかなった,実際的な措置をとる必要を認識する。この文脈において,G7は,宇宙活動の透明性・信頼醸成措置に関する国連政府専門家会合の勧告を考慮して,宇宙における安定性を強化する透明性・信頼醸成措置の発展と実施に関する建設的な議論を支持し,促進する。G7は,法的拘束力のない宇宙活動に関する国際行動規範を発展させる現在行われている努力を支持し続け,近い将来又は遅くとも2015年前半に,本規範が策定されることを強く促す。我々は,2015年に国連宇宙空間平和利用委員会における宇宙活動の長期的持続可能性に関するガイドライン策定への努力もまた支持する。