データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2014 G7ブリュッセル・サミット 首脳宣言

[場所] ブリュッセル
[年月日] 2014年6月6日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1. 我々,カナダ,フランス,ドイツ,イタリア,日本,英国,米国の首脳,欧州理事会議長及び欧州委員会(EC)委員長は,2014年6月4日及び5日にブリュッセルで会合を行った。このグループが集まったのは,共通の信念と共通の責任を有する故である。我々は,自由及び民主主義の価値並びにその普遍性,そして平和と安全を促進することに深く関与している。我々は,永続的な成長及び安定の基礎として,人権と法の支配の尊重を含む,開かれた経済,開かれた社会及び開かれた政府を信じる。我々は,40年近くにわたり,我々の行動を通じ,集団的意思が進歩のための強力な触媒となり得ることを示してきた。主要な世界的課題に対処するための我々の取組は,透明性,説明責任及び国際社会の他の関係するメンバーとの連携に対する関与により導かれてきた。我々はこれらの価値とこのビジョンにより,グループとして結束し続ける。我々は,これらの共有された価値と理念に導かれ,現代の課題に対処するため,共に取り組み続ける。我々は,このサミットを開催した欧州連合(EU)に感謝するとともに,これからドイツが議長を務めることを歓迎する。

世界経済

2. 成長と雇用の下支えは,引き続き我々の最優先事項である。我々がロック・アーンで会合して以降,世界経済は強化されているが,注意深く管理する必要のある下方リスクは残っている。先進国経済は回復しつつあるが,継続的かつ持続的な成長は,失業率,特に若年層及び長期失業者の失業率を引き下げるために必要である。

3. 我々は,我々の経済のレジリエンスを高めることを共通の目標として,強固で,持続可能かつ均衡ある成長を支えるために更なる取組を行う。我々は,マクロ経済政策に加え,投資,中小企業,雇用と女性の参画,及び貿易とイノベーションを含む,幅広い分野にわたる行動を含め,G20ブリスベン・サミットにおいて,野心的で包括的な成長戦略を提示する。我々は,引き続き,債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せつつ,経済成長と雇用創出を支えるため,短期的な経済状況を勘案し,機動的に財政戦略を実施する。

4. 我々は,2014年は,強じんな金融機関の構築,大きすぎて潰せない問題の終結,シャドーバンキングによるリスクへの対処,デリバティブ市場の安全性の確保といった,世界的金融危機への対応として我々が着手した中核的金融改革の重要な面を概ね完了させることに集中する年であることに合意した。我々は,関係するシャドーバンキング活動について,そのもたらすシステミック・リスクにふさわしい,強化され,包括的な監視・規制に向けた早急な進捗のための明確な期限や行動に係る作業を記載した,合意されたG20ロードマップに,引き続き責務を有する。我々は,世界的なリスクや脆弱性に対し,警戒を続ける。そして我々は,合意されたタイムテーブルに示されたG20/経済協力開発機構(OECD)の税源浸食・利益移転(BEPS)行動計画を通じた取組を含む,租税回避に対する取組や,脱税に対する取組,そこでは我々は税情報に関する自動的交換のための新しい単一の国際基準の迅速な実施を期待しているが,これらの取組に関与を続ける。我々は,全ての国と地域に対し,同様の行動をとるよう求める。

5. 貿易と投資は,雇用と成長にとって主要な原動力である。我々は,市場を開放し続け,スタンドスティルやロールバックによることを含め,あらゆる形態の保護主義と闘うとの我々の責務を再確認する。我々は,ルールに基づく多角的貿易体制を強化することに責任を有している。我々は,投資を保護・促進し,全ての投資家にとって公平な競争条件を維持する。公的輸出金融に係る国際基準は,世界貿易における歪みを回避,もしくは縮小するために極めて重要である。我々がロック・アーンで会合して以降,我々は,カナダ-EU,日本-EU,カナダ-日本,EU-米国,環太平洋パートナーシップ(TPP)及び新サービス貿易協定(TiSA)といった主要な貿易交渉において,実質的な進展をみた。我々は,これらの交渉を可能な限り速やかに妥結させることを目指している。我々は,環境物品に関する合意を通じることを含め,環境物品及びサービスの貿易を自由化することに責任を有している。我々は,可能な限り早期にWTO情報技術協定(ITA)拡大交渉が妥結するよう作業を行う。これらの協定とイニシアティブは,多角的貿易体制を支えることに寄与するとともに,それらと整合的であり,将来の多国間協定の土台としての役割を果たす。我々は,第9回世界貿易機関(WTO)閣僚会議の成功裏の成果を歓迎する。我々は,「バリ合意」,とりわけ貿易円滑化協定の完全かつ早期の実施を優先する。我々は,「貿易のための援助」の現行の約束の範囲内で,特に後発開発途上国の利益のために,この協定の実施を後押しするよう,十分な支援と能力構築を提供し続ける。我々は,ドーハ・ラウンド妥結に向けた,バランスのとれた作業計画の早期合意の確保に向けた,WTOにおける努力を完全に支持する。

エネルギー

6. エネルギー供給を,政治的な威圧の手段あるいは,安全保障上の脅威として用いることは容認できない。ウクライナにおける危機は,エネルギー安全保障が,我々の全体のアジェンダの中心に位置するべきであることを明らかにするとともに,エネルギー供給の多様化と,我々のエネルギー・インフラの近代化に向け,我々のアプローチの段階的な変更を要求している。ローマG7エネルギー・イニシアティブの下で,我々は,より競争的で多様化し,強じんで低炭素なエネルギーシステムを構築するため,我々の政府がそれぞれ,個別又は共同して,具体的な国内政策を特定し,実施する。この作業は,2014年5月5-6日に,ローマで我々のエネルギー大臣によって合意された中核的原則を基礎として進められる。

・ガス市場を含む,柔軟,透明かつ競争的なエネルギー市場の発展

・燃料,エネルギー源及び流通経路の多様化,並びに国産エネルギー源によるエネルギー供給の推奨

・持続可能なエネルギー安全保障への重要な貢献として,温室効果ガス排出の削減,及び低炭素経済への移行の加速化

・需要側及び供給側におけるエネルギー効率の向上,及び需要応答管理の強化

・クリーンで持続可能なエネルギー技術の導入促進及び研究・技術革新への継続的な投資

・インフラの近代化促進及び全体的(systemic)衝撃に耐えるための需要・供給政策によるエネルギーシステムの強じん性の改善

・大規模なエネルギーの途絶に備え,輸入国のための備蓄と代替燃料を含む緊急時対応システムの整備

7. これらの原則に基づいて,我々は直ちに以下の行動を取る。

・我々は, 2014-2015年冬に向けた地域レベルでの緊急エネルギー対策の策定に向けたECの取組を補完する。

・国際エネルギー機関(IEA),国際再生可能エネルギー機関(IRENA)及び国際金融機関といった国際機関と協働して,我々は,民間企業の活用を含む技術支援を実施するとともに,国産の炭化水素資源及び再生可能エネルギーの開発やエネルギー効率の向上を求めるウクライナや他の欧州諸国との交流を促進する。

・我々は,我々のエネルギー安全保障の強じん性の評価を行い,極めて重要なインフラ,輸送ルート,サプライ・チェーン及び輸送に係るものを含む,我々の共同の取組を強化する。

・我々は,IEAに対して,ECと密接に協力しつつ,2014年末までに,ガス安全保障の分野におけるG7の個別及び共同の行動のための選択肢を提示することを求める。

8. 我々は同様に,

・ベースロード電源として機能するものを含む,低炭素技術(再生可能エネルギー,原子力の利用を選択する国にあっては原子力,及び二酸化炭素回収・貯留(CCS))の利用を促進し,

・新たな供給源や,輸送インフラ,貯蔵能力及びLNGターミナルの開発を通じ,より統合された液化天然ガス(LNG)市場を促進し,仕向地条項の緩和や生産者と消費者との対話を含め,柔軟なガス市場の更なる促進を図る。

9. 我々は,我々のエネルギー大臣に対して,このローマG7エネルギー・イニシアティブを進め,2015年に我々に報告するよう求める。

気候変動

10. 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書において示されたように,気候変動に対処するために,緊急かつ具体的な行動が必要である。したがって,我々は,産業化以前の水準と比べて世界全体の気温の上昇を摂氏2度より下に効果的にとどめるために自らの役割を果たすとの観点から,低炭素経済に引き続き深く関与する。我々は,野心的で包摂的,かつ,変化する世界の状況を反映した,全ての締約国に適用される新たな議定書,他の法的文書又は憲章の下で法的効力を有する合意成果といった世界的な合意を2015年に採択するという,我々の強い決意を確認する。我々は,パリでの気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に十分先立ち(準備ができる国は2015年第1四半期までに),我々が自主的に決定する約束草案を示すとともに,他国に対し,我々に続くことを求める。我々は,9月の国連事務総長による気候サミット,及び全ての国に対して野心的な貢献のための準備や,排出量を削減し,強じん性を強化するための具体的な行動を起こすよう求める,国連事務総長の招請を歓迎する。我々は,同サミットの成功を期待する。

11. 我々は,有意義かつ透明性のある緩和行動の文脈で,途上国における気候変動の緩和と適応のニーズに対処するために,2020年までに,官民双方の幅広い資金源から年間1,000億米ドルを動員するとの,コペンハーゲン合意の責務に対する我々の支持を再確認する。我々は,緑の気候基金(GCF)の運用規定の採択,及び今後数ヶ月以内に,初期資金動員を開始することに係る決定を歓迎する。我々は,非効率な化石燃料補助金の撤廃,及び気候変動に取り組むという我々の共通の目的に輸出信用がどのように貢献し得るかについてOECDで継続されている議論に引き続き深く関与する。我々は,気候変動枠組条約(UNFCCC)において合意された決定に沿って,排出量の測定,報告,検証及び計算方法を改善し,国際的な気候資金の流れの報告を向上させるための取組を強化する。我々は,共同で,また我々以外の主体と共に,モントリオール議定書の下での,ハイドロフルオロカーボン(HFC)の生産と消費の段階的削減のために行動する。我々はまた,気候に配慮した,安全な,カーエアコンの代替品の迅速な展開の促進のために引き続き行動するとともに,気候に配慮したHFC代替品の政府調達を促進する。

開発

12. 全ての国における持続可能で包摂的な開発と,更なる繁栄の追求は,依然として,G7の国民と国々を結束させる根本的な責務である。我々は,これまでのサミットでの合意を引き続き実施していく。我々は,説明責任を果たすため,2015年に,それら合意の達成に向けた進捗状況に関する報告書を提供する。

13. 我々は,明快で測定可能な一連の目標に基づく,野心的で普遍的なポスト2015年開発アジェンダに合意するため,全てのパートナーと協力することに責任を有する。同アジェンダは,ミレニアム開発目標の残された課題を完了させるべきである。同アジェンダは人間を中心に据え,極度の貧困の撲滅や開発の促進と,気候変動を含めた持続可能な開発の環境上の,経済的及び社会的側面の均衡の双方に焦点を当てるべきである。同アジェンダは,平和と安全,民主的統治,法の支配,ジェンダー平等,全ての人々の人権も促進すべきである。我々は,同アジェンダの実施を確保するため,責任の共有と相互の説明責任を伴うグローバル・パートナーシップを築くことに責任を有する。我々は,2014年後半に発出される国連事務総長の統合報告書を待っている。我々は,アフリカ連合の共通ポジションを歓迎する。

14. 我々は,統治と透明性の向上,特にエネルギー分野におけるインフラの改善,貿易障壁の撤廃,貿易と投資の円滑化,天然資源とその収入の責任ある持続可能な管理の強化のため,アフリカの政府及び市民と協力し,アフリカにおける包摂的で強じんな成長を引き続き促進する。我々は,アフリカ・パートナーシップ・フォーラムの改革プロセスにおける,アフリカ連合とアフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)の積極的な役割を歓迎する。

15. 安全と開発は,特にサヘル地域,ソマリア,ナイジェリア,南スーダン,中央アフリカ共和国等,戦争,テロ,組織犯罪,腐敗,不安定と貧困の惨禍の影響を受けた地域における恒久的な平和の前提条件である。我々は,危機に対応し安定化を支援するための能力構築を目的とし,国際社会により支えられた,アフリカのパートナーとアフリカ連合による努力を歓迎する。

16. 我々は,ドーヴィル・パートナーシップに対する我々の強い関与と,移行期にあるアラブ諸国によるガバナンスの改善,包摂的成長と,特に若者や女性を含む雇用創出の促進に向けた努力への支援を確認する。我々の外相及び財相は,同パートナーシップを前進させるため,国連総会及び国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会の際に会合を行う。

17. 我々は,引き続き,採取産業の透明性を向上させる世界共通の基準に向けて取り組むことに責任を有するが,それは,全ての政府に対する企業の支払に関する情報の公開を確保するものである。我々は,こうした基準の迅速な実施に向けたG7各国における進展を歓迎する。これらの世界基準は,引き続き案件レベルの報告に移行すべきである。採取産業透明性イニシアティブ(EITI)基準に参加している政府は,自発的に収入を報告する。我々は,2013年に立ち上げられた採取産業透明性パートナーシップを完全に実施するとの我々の責務を確認する。

18. 我々は,本日,当初採取部門に焦点を当て,重複を避けるため既存のフォーラムや機関と協力しつつ,複雑な商業契約交渉のための広範かつ具体的な専門性を開発途上国のパートナーに対して提供するための,複雑な契約交渉の支援強化(CONNEX)に係る新たなイニシアティブを発表する。同イニシアティブは,6月にニューヨークで立ち上げられ,第一歩として,情報と指針を集約する中心的リソース・ハブの設置を含め,次回の首脳会合までに改善をもたらす。

19. 我々は,課税ベースを強化し,安定した持続可能な国家を作る手助けをするための開発途上国への支援を含め,脱税及び不正な資金の流れの対処に引き続き取り組む。我々は,腐敗による収益に安全な逃避先を与えず,奪われた財産の回復及び返還に対する我々の関与を新たにする。我々は,ロック・アーン・サミットで合意した原則に沿って,金融活動作業部会(FATF)やその他関連する国際基準,及び我々の国別行動計画を実施することで模範を示し,例えば中央機関における登録制度又はその他の適切なメカニズムを通じて,実質的所有者に関する情報が資金情報機関(FIU),徴税機関及び法執行当局によって適時に入手可能となることを確保し,腐敗,脱税,資金洗浄,その他の犯罪から生じる資金の流れを隠蔽するための法人及び信託のようなその他の法的取極の悪用を防止することに引き続き責任を有する。この分野における透明性の向上は,開発途上国を手助けするものである。

20. 最近の事案は,腐敗が政府に対する信頼を損ない,経済成長を制限することを示している。我々は,G20を含め,これまでの取組を基礎として,これを防止するための追加的措置をとる。我々は,引き続き,国連薬物犯罪事務所(UNODC)と世界銀行の奪われた財産の回復(StAR)イニシアティブへの関与と支援を継続する。我々は,ウクライナ財産回復フォーラムの成果を歓迎し,第3回アラブ財産回復フォーラムに期待する。G7は,引き続き,財産回復の取組をフォローアップするため,各国政府及び世界金融センターと協力することに責任を有する。

21. 我々は,引き続き,妊産婦,新生児及び乳幼児の健康に関するムスコカ・イニシアティブに関与し,トロントで開催された「全ての女性・全ての子供を救う」サミットにおける,この世界的優先事項の進展を加速すべきとの呼びかけを歓迎する。さらに,我々は,性と生殖に関する健康と生殖の権利を確保し,児童婚,早婚及び強制婚,女性器切除やその他の有害な習慣を終結させることに深く関与する。女性と子供の健康及び幸福は,負担可能な価格の,質の高い基礎的保健サービスへのユニバーサル・アクセスを確保し,保健,教育,子供の保護システムを強化し,栄養と予防接種へのアクセスを向上させることを通じて改善される。我々は,ワクチンと予防接種のための世界同盟(GAVIアライアンス)の影響力を認識し,2016年から2020年の間に,新たに3億人の子供に対してワクチンへのアクセスを拡大するとのGAVIアライアンスの努力を歓迎する。我々は,ドイツが2015年初めに第二次増資会合を主催するとの提案を歓迎するとともに,我々の責務を再確認し,他の公的及び民間のドナーに,GAVIアライアンスの増資に貢献するよう求める。我々は,エイズのない世代に対する責務,及び三大感染症が受給適格国・地域にもたらしている負担を軽減するため,世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)に対する責務を再確認する。

22. 我々は,感染症による脅威に対処するため,世界健康安全保障アジェンダを支持するとともに,世界保健機関(WHO)の国際保健規制の遵守を強化し,世界的な健康安全保障を向上させるため,パートナー国と協働することを約束する。我々は,自然発生的,偶発的,国家又は非国家主体による故意の行為によるものであるかを問わず,感染症を予防し,発見し,対応するために,分野横断的に取り組んで行くことに責任を有する。これには,西アフリカにおける最近のエボラ出血熱の発生等の脅威に対する準備を改善できるよう,世界的な能力強化を行うこと,また,WHOとの緊密な協力の下,薬剤耐性に関する世界行動計画を策定することが含まれる。

23. 我々は,引き続き,世界的な食料安全保障と栄養の達成のための包括的なアプローチを強く支持する。我々は,持続可能性及び食料・栄養安全保障に関する世界的なポスト2015年に関する議論の場となる,2014年11月の第二回国際栄養会議及び2015年ミラノ国際博覧会に期待している。我々は,引き続き,力強いアフリカのリーダーシップの下,食料安全保障及び栄養のためのニュー・アライアンス,及び世界食料安全保障委員会(CFS)による「責任ある農業投資原則」の成功裏の策定を支援していく。これらにより,小規模農家,特に女性が,持続可能な農村開発から恩恵を享受することが可能となる。我々は,引き続き,2013年に立ち上げた土地のパートナーシップ及び国際農業・食料安全保障プログラムに立脚した取組を含む,土地,漁業,森林に関する責任あるガバナンスのための任意ガイドラインの着実な実施を支援していく。

ウクライナ

24. 我々は,5月25日にウクライナで行われた選挙が困難な状況の下で成功裏に実施されたことを歓迎する。高い投票率は自らの国の将来を決定しようとするウクライナ市民の決意を示した。我々は,ペトロ・ポロシェンコをウクライナの次期大統領として歓迎し,同氏がウクライナの全ての人々に手を差し伸べようとしていることを称賛する。

25. ロシア連邦によるウクライナの主権事項に対する許容できない干渉に対し,我々は,ウクライナ政府及び国民と共にある。我々は,不法な武装集団に武装解除を求める。我々は,ウクライナ当局に対し,法と秩序を回復するための措置を継続するに当たり,慎重な方法を維持することを奨励する。我々は, 欧州安全保障協力機構(OSCE)による,特別監視ミッション及び他の手段を通じた,危機の緩和に向けた実質的な貢献を完全に支持する。我々は,包括的な形で国民対話を継続するウクライナ当局の意思を称賛する。我々は,5月20日に最高会議によって採択された「平和と統一の覚書」を歓迎し,迅速に実施されることを願う。我々は,また,ウクライナ議会及びウクライナ政府に対し,民主主義を深化・強化するとともにウクライナ全地域の全ての人々の権利と願望に応じる枠組みを提供するための憲法改正を引き続き追求することを奨励する。

26. G7は,ウクライナの経済発展,主権及び領土の一体性を支えるため,引き続きウクライナと協働する決意である。我々は,ウクライナによる困難な改革の約束が果たされることを奨励する。これらの改革は,経済の安定を支え,民間部門主導の成長を引き出すために極めて重要なものとなる。我々は,G7のパートナーからのこれまでに示された約180億ドルの支援を含め,他の二国間及び多国間支援や借款を支えるであろう,ウクライナに対する170億ドルのプログラムを承認したIMFの決定を歓迎する。我々は,ウクライナへのマクロ経済支援の迅速な支出を歓迎する。我々は,経済支援の効果的な実施を確保するための国際的なドナー調整メカニズムを支持し,ブリュッセルでハイレベルの調整会合を開催するとのEUの意図を歓迎する。我々は,ガスの逆送能力を可能とするためのEUにおける最近の動きを含め,ウクライナのガス供給源を多様化させるための現行の取組を歓迎し,また,ロシア連邦からウクライナへのガスの輸送と供給に関し,ECにより促進されている協議の成功裏の妥結に期待する。

27. 我々は,ロシア連邦によるウクライナの主権と領土の一体性の継続的な侵害を一致団結して非難する。ロシアによるクリミアの不法な併合やウクライナ東部を不安定化させる行動は,容認できず,停止されなければならない。これらの行為は,国際法の基本原則に違反するものであり,全ての国にとって懸念となるべきものである。我々は,ロシア連邦に対し,選挙の結果を認め,ウクライナ国境地帯の軍隊の撤退を完了させ,国境を越えた武器及び武装集団の流れを阻止するとともに,武装した分離主義者へ影響力を行使し,彼らに武装を解除させ,暴力を放棄させることを要請する。我々は,ロシア連邦に対し,ジュネーブ共同声明における約束を遵守し,ウクライナ政府が平和,統一,改革を推進する計画を実施するに当たり,同政府と協力することを求める。

28. 我々は,ウクライナの主権と領土の一体性の侵害を積極的に支持又は実施してきた個人と団体,また,ウクライナの平和,安全及び安定を脅かす個人と団体に対し,制裁を課すというG7諸国による決定を確認する。我々は,国連総会決議68/262に沿って,クリミアとセヴァストーポリに関する厳格な不承認政策を実施している。我々は,情勢が必要とすれば,ロシアに更なる負担を課すため,対象を特定した制裁を強化するとともに,重要な追加的制限措置を実施する用意がある。

29. チェルノブイリ原子力発電所の敷地を安定した状態で,かつ,環境面においても安全な状態にするために援助国が資金提供している事業は,より完了に近づいている。初めての試みであるこれらの事業の複雑さを認識する一方で,我々は,全ての関係者に対し,事業を満足のいく形で終結させるよう追加的な努力を求めるとともに,事業当事者に対し,経費の抑制を求める。本件は引き続き,我々にとって高い優先事項である。

シリア

30. 我々は,16万人以上を殺害し,930万人の人々を人道支援を必要とする状況に置いた紛争の要因となるアサド政権の残虐性を強く非難する。我々は,6月3日の偽りの大統領選挙を非難する。シリアにおいて,アサドに未来はない。我々は,統一された包摂的かつ民主的なシリアというビジョンに基づき,完全な行政権を執行し,相互の同意により合意される移行的な統治主体を求めるジュネーブ・コミュニケを改めて支持する。我々は,シリア政権による国際人道法及び人権の侵害並びに無差別な砲撃と空爆を強く非難する。過激派グループも,重大な人権侵害を犯している証拠がある。このような侵害に責任を有する人々は,責任を追及されなければならない。我々は,国際法を遵守するというシリア国民連合(SOC)及び自由シリア軍の約束を歓迎する。我々は,シリアで現在行われている深刻な犯罪行為に関し,国際刑事裁判所への付託を承認し,説明責任を求める国連安保理決議案に対するロシアと中国の拒否権行使の決定に遺憾の意を表明する。

31. 我々は,シリアからの難民流入という負担に耐えている周辺諸国を支援することを決意し,人道支援に関する国連安保理決議第2139号を履行できていないことを遺憾に思う。我々は,全ての紛争当事者に対し,国境及び紛争ラインの横断を含め,最も直接的な経路により,必要な全ての人々に対する支援へのアクセスを認めるよう要請し,このため,国連安保理による更なる緊急の行動を支持する。我々は,我々の資金援助において,国境を横断する支援を含め,最も必要としている人々に支援を届けることができる人道支援主体に対し,特に支援を行うことを決定する。我々は,国際社会に対し,シリア及び周辺国向けの国連アピールの巨額の資金ニーズを満たすことを求める。我々は,シリアに流入している外国人戦闘員による脅威に対処するための努力を強化することを決意する。我々は,化学剤の度重なる使用疑惑を深く懸念し,シリアにおける全ての当事者に対し,化学兵器禁止機関(OPCW)の事実調査団に全面的に協力するよう求める。我々は,シリアに対し,廃棄に向けた残りの化学兵器の速やかな搬出を確保するため,国連安保理決議第2118号及びOPCW執行理事会の決定並びに化学兵器禁止条約における義務を遵守するとともに,直ちに製造施設を破壊し,自らのOPCWへの申告に関する全ての質問に回答するよう求める。

リビア

32. 我々は,地域の安定を促進する役割を果たすであろう,自由で繁栄し,かつ民主的なリビアを支持することを再確認する。我々は,最近の暴力に対し深刻な懸念を表明し,全てのリビアの人々に対し,法の支配の尊重に支えられ,平和的で包括的な方法を通じた政治プロセスに関与することを要請する。我々は,この点で,国連及びマンデートを履行する国連リビア支援団(UNSMIL)と協調しつつ,リビアの移行と政治的対話の促進のための努力を支援するための,国際社会による継続的かつ協調された関与を要請する。我々は,全国際社会に対し,リビアの主権と国内問題への不干渉の原則を完全に尊重することを求める。この枠組みの下,我々は,国民議会によって承認された,6月25日の選挙実施という,最高選挙委員会(HNEC)の提案を歓迎する。我々は,政治プロセスを再開するに当たって,これらの選挙の重要性を強調するとともに,制憲議会の極めて重要な活動を評価する。

マリ及び中央アフリカ

33. 我々は,アフリカ連合(AU)の議長国及び国連の取組により,5月23日にマリ政府とマリ北部の武装勢力との間で署名された停戦合意を歓迎する。我々は,ワガドゥグ合意や国連安保理の決定で規定されているとおり,政治的解決及び遅延なく開始されなければならない包摂的な対話プロセスに対する強い決意を再確認する。我々は,マリの安定化並びにアルジェリア,モーリタニア及び西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)を含む周辺諸国の関与の下,マリの統一性,領土の一体性及び国家主権を尊重した,永続的な解決のために取り組む国連マリ多元統合安定化ミッション(MINUSMA)の努力を完全に支持する。

34. 我々は,中央アフリカにおいて,フランス及びEUから派遣された部隊と共に,移行を支援し,また,自由で,公正で,透明かつ包摂的な選挙の実施に向け,暫定当局に対し緊急かつ具体的な措置をとることを奨励するAU主導の中央アフリカ国際支援ミッション(MISCA)の役割を称賛する。我々は,安全保障,和解,選挙の準備及び人道支援の分野における国連の取組を完全に支持する。

イラン

35. 我々は,イランの核問題の外交的な解決への我々の強い決意を再確認し,また,アシュトン上級代表によって導かれたEU3+3とイランによる包括的な解決策を交渉する努力を歓迎する。この解決策は,イランの核計画が専ら平和的性質であることに信頼を与えるものである。我々は,EU3+3とイランによる,共同作業計画の継続的かつ効果的な実施の重要性を強調する。我々は,イランに対し,イランの核活動の検証に当たり,また,特に軍事的側面の可能性に関連する問題を含む全ての未解決の問題を解決するために,国際原子力機関(IAEA)と完全に協力することを求める。我々は,イランに対し,人権上の義務を完全に尊重することを強く要請する。我々は,イランに対し,地域の安全,特にシリアにおける安全を支援するために一層建設的な役割を果たすこと,また,全てのテロ行為及びテロ組織を拒否することを求める。

北朝鮮

36. 我々は,北朝鮮の核及び弾道ミサイル開発の継続を強く非難する。我々は,北朝鮮に対し,全ての核兵器並びに既存の核及び弾道ミサイル計画を放棄し,また,関連する国連安保理決議の下での義務及び2005年9月の六者会合共同声明の下での約束を完全に遵守するよう要請する。我々は,国際社会に対し,国連制裁の完全な履行を求める。我々は,国連調査委員会の報告書に記載された北朝鮮における現在進行中の組織的,広範かつ深刻な人権侵害について重ねて深刻な懸念を表明し,北朝鮮に対し,拉致問題を含め,これらの侵害に対処するため速やかな措置をとるとともに,関連する全ての国連機関に完全に協力することを要請する。我々は,北朝鮮の深刻な人権侵害に対する説明責任の確保を促進するため引き続き協働する。

中東和平

37. 我々は,交渉による二国家解決を確保するための米国の努力を全面的に支持する。我々は,当事者間で目覚ましい進展が得られていないことを遺憾に思い,プロセスを再開するために必要な共通の立場と,政治的な強じんさを見い出すことを当事者に要請する。交渉による二国家解決は,引き続き,紛争を解決する唯一の方法である。我々は,双方に対し,最大限の自制と共に,平和に向けた努力を更に損ない,二国家解決の実行可能性に影響を与え得る,いかなる一方的措置も避けることを求める。

アフガニスタン

38. 我々は,民主的で主権を有し,かつ統一されたアフガニスタンに対する長期的な関与及び相互の尊重と相互の説明責任の原則に基づくアフガニスタン政府との揺るぎないパートナーシップを新たにする。大統領選挙の第一回投票及び県議会選挙は,特に,投票した250万人以上の女性にとって,歴史的な成果であり,我々は,選挙プロセスの完了を期待している。我々は,統治機構を強化し,汚職を減らし,テロと闘い,経済成長を支え,麻薬問題に対処するため,アフガニスタン政府を引き続き支援する。我々は,引き続き,アフガニスタン主導のアフガニスタン自身による包摂的な和解プロセスを積極的に支持する。

海洋航行及び飛行

39. 我々は,普遍的に認められた国際法の原則に基づく海洋秩序を維持することの重要性を再確認する。我々は,国際法及び国際水域における管轄権に関して国際的に認められた原則と整合する形で,海賊,その他の海上犯罪に立ち向かうための国際的な協力に引き続き関与する。我々は,東シナ海及び南シナ海での緊張を深く懸念している。我々は,威嚇,強制又は力により領土又は海洋に関する権利を主張するためのいかなる者によるいかなる一方的な試みにも反対する。我々は,全ての当事者に対し,領土又は海洋に関する権利を国際法に従って明確にし,また主張することを求める。我々は,法的な紛争解決メカニズムを通じたものを含め,国際法に従って,紛争の平和的解決を追求する紛争当事者の権利を支持する。我々はまた,信頼醸成措置を支持する。我々は,国際法並びに国際民間航空機関(ICAO)の基準及び慣行に基づく,航行及び上空飛行の自由と併せ民間航空交通の効果的な管理の重要性についても強調する。

その他の問題

40. 我々は,全ての人々のため,宗教の自由を含むあらゆる人権と基本的自由の保護及び促進への決意を再確認する。我々は,ジェンダー平等の促進,女性と女児に対するあらゆる形態の差別と暴力の終結,児童婚,早期婚及び強制婚の終焉,全ての女性と女児の完全な参加と能力強化の促進に,かつてないほどの決意を示す必要性を認識する。我々は,今月ロンドンで行われる「紛争下における性的暴力の終焉に向けたグローバル・サミット」に期待する。

41. 我々は,テロ行為への我々の非難を再確認するとともに,人権と法の支配を尊重しつつ,効果的かつ包括的な方法でテロを抑止し対処するため,全ての関連する枠組みにおいて協力するとの我々の決意を再確認する。我々は,ボコ・ハラムによる何百人もの女子生徒の誘拐を非道な犯罪として非難するとともに,これらの若い女性たちを家に返し,犯罪者を訴追するために,ナイジェリア政府に対し可能な全ての支援を行う考えである。

42. 我々は,軍縮・不拡散問題が引き続き最優先事項の1つであることを確認し,本日発表されたG7不拡散局長級会合の声明を歓迎する。

結び

43. 我々は,ドイツ議長の下,2015年に会合することを楽しみにしている。