データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G7外相会合コミュニケ

[場所] 
[年月日] 2015年4月15日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 我々、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の外務大臣及びEU上級代表は、国際の平和と安全に影響を与える数々の主要な国際的課題について議論するために、4月14日から15日、リューベックに集まった。複雑な国際的課題がある中、我々は、G7諸国として、世界における複数の最も喫緊の課題に対応する点において連帯している。民主主義、法の支配、人権の尊重を含む我々にとって共通の価値観や原則に即して、自由、平和及び領土の一体性を守り、テロ、社会不安及びエボラ出血熱の流行といった新たな安全保障上の脅威を含む課題に対処するため、我々は連携した努力と行動を発揮する決意である。

 以下に列挙した意見交換及び行動の連携に加えて、我々は、「アフリカにおける将来の危機の予防と安全増進を支援するためのアジェンダ」及び「海上安全保障に関する声明」を承認した。

ウクライナ

 我々は、ノルマンディー・フォーマット及び三者コンタクト・グループの外交努力への完全なる支持を改めて表明し、三者コンタクト・グループにより合意され、国連安保理決議第2202号によって支持された2015年2月12日のミンスク合意履行のための措置パッケージを歓迎する。我々は、このパッケージを実施するためにとられた初動的な措置を歓迎するが、主要な要素に関する実質的かつ早期の進展の必要性に留意する。我々は、ウクライナにおける紛争は、外交手段によって、また国際法、特にウクライナの主権、領土の一体性及び独立を尊重する法的義務の完全なる尊重によってのみ解決され得るとの確信において連帯している。

 我々は、全ての当事者に対し、責任を完全に負い、ミンスク合意の下でのコミットメントを履行することを求める。特に停戦及び重火器の撤収に関しては、更なる検証可能な進展が求められている。我々は、特にロシアが、ミンスク合意を完全に履行させるよう分離勢力に対し大きな影響力を行使することを期待する。この関係で、G7は、ミンスク合意の完全な履行と国際的な制裁とが密接に連関していることを強調する。制裁はそれ自体が目的ではなく、その継続は、ロシアのミンスク合意の完全な履行及びウクライナの主権の尊重に明確に関連されるべきである。我々はまた、ロシアに対し、分離派の戦闘員に対抗する国境を越えた支援に対処するための効果的な措置をとることを期待する。我々は引き続き情勢を注視する。

 我々は、OSCEが、特別監視団(SMM)及び国境監視団(OM)を通じ、さらに三者コンタクト・グループの中で、危機の緩和に資する形で、主要な役割を果たしていることを強調し、OSCEが、ミンスク・パッケージに建設的に対応していることを称賛する。我々は、全てのOSCE参加国に対し、このような責任を全うするために必要なあらゆる支援をOSCEに提供するよう求める。

 我々は4月13日にベルリンにおいて開催されたノルマンディー外相会合においてOSCEの特別監視団及びOSCE議長国の代表に対する、この紛争を克服するために必要な政治的進展を開始するための、三者コンタクト・グループの作業部会の早期立ち上げへの支援を歓迎する。

 我々は、国際法の違反である、1年以上前のロシアによる違法なクリミア併合に対する非難を改めて表明し、同「併合」の不承認政策及び関係者に対する制裁を再確認する。さらに、我々はロシア政府がとる方向性に同意しないとの声を上げる政治家や市民社会の代表に対する圧力が強められているのみならず、ロシアの国家統制下にあるメディアが虚偽情報キャンペーンを継続していることを懸念する。

 我々は、2014年3月24日のG7ハーグ宣言を想起し、特にウクライナ東部の危機に対する、包括的、持続可能かつ平和的な解決を目指し取り組むべくロシアとの対話を維持する重要性を認識する。

 我々は、ウクライナ政府の大規模で持続可能な改革へのコミットメントを称賛し、経済危機を乗り越え、経済を再建することに関し、同国を支援する。IMFとウクライナ政府との間で合意された拡大信用供与措置(EFF)の下での広範な取極は、ウクライナにおける改革努力のための重要な基盤であり、国家の安定化を支援するための国際社会の努力の礎を提供する。我々は、特に昨年採用された反汚職法のパッケージの積極的な実施及び新たな国家汚職対策局の設立を通し、非中央集権化/地方政府改革を特に強調した憲法改革を含め、ウクライナにおける有意義かつ効果的な構造改革の重要性及び同国政府による腐敗と闘うための努力を継続することの重要性を強調する。我々は、ウクライナに対し、IMFのコンディショナリティ、ウクライナ世銀プログラム(WBP)及びEU-ウクライナ連合協定に沿った野心的な改革アジェンダを、引き続き成功裡に実施するよう求める。改革プログラム及びその迅速な実施は、ウクライナ経済と、更なる改革の達成に向けた政治的決意への信頼を向上させる。我々は、来たるEU-ウクライナ首脳会談(4月27日、キエフ)及びウクライナのための国際支援会議(4月28日、キエフ)において、ウクライナの改革努力についてより多くを知ることができることを期待する。

 エネルギー安全保障は、ウクライナにとって引き続き重要な課題である。我々は、EU、ウクライナ及びロシアの三者によるガス供給のための持続可能な合意を得るための努力を歓迎する。同時に、我々は、ウクライナによるエネルギー部門の改革、エネルギー供給源の多様化とエネルギー効率の向上への努力を称賛する。我々は、より多様で強靱な国際エネルギー・システムを構築するとの、ローマG7エネルギー・イニシアティブに対し引き続きコミットしている。

 我々は、チェルノブイリ原発事故のサイトが、環境上安全な状態に戻り、かつそのような安全を確保するための多国間の努力に対する支援を改めて表明する。我々は、4月29日にロンドンにおいて開催される拠出国会合を成功させること、及びこのプロジェクトを成功裡に完了させる責任を負うことにコミットしている。

 我々は、化学、生物、核及び放射線セキュリティという分野のプログラムへの資金調達に関してウクライナと緊密に協力できるよう、大量破壊兵器の拡散に対するG7グローバル・パートナーシップによる新たな努力を歓迎する。

シリア、イラク、ISIL/Da'esh

 我々は、シリア及びイラクのISIL/Da'eshによる攻撃、残虐行為、違法な殺害及び人権侵害とともに、そのイデオロギー上の暴力的過激主義と、文化的・宗教的遺産の破壊を強く非難する。ISIL/Da'eshの人権への無関心と文化的多様性の暴力的な否定は、この地域内外の平和的共存、政治的安定及び経済的発展を脅かす。我々は、シリアとイラクの社会の多民族、多宗教、多信仰という特徴を保全する重要性を強調する。我々は、シリア及びイラクの様々な人口集団に対しなされる、民族や宗教信仰に基づく多くの残虐行為及び女性と子供に対する性的暴力に対し、特に激しい憤りを覚える。

 我々は、このテロ組織に対しそれぞれの得意分野において力を合わせることにコミットする60か国以上が含まれる、ISIL/Da'eshに対抗するグローバル連合が創設されたことを歓迎する。G7諸国は、各地域のパートナーとの緊密な連携の下、引き続き積極的に安定化、戦略的対抗メッセージ、外国人テロ戦闘員、石油資源からの収入の阻止を含むテロの資金調達対策及び軍事行動に関する同連合の作業部会に積極的に貢献する。

 我々は、「欧州連合のシリア、イラク及びISIL/Da'eshの脅威に対する地域戦略」が採択されたことを歓迎し、その実施を求める。

シリア

 我々は、アサド政権に対する強い非難を改めて表明する。同政権の蛮行は、4年以上続き、22万人以上を殺害し、1,220万人を人道支援が必要な状態に追いやっているこの紛争を引き続き進めている。アサド政権は、自国民に対する戦争において、数えきれない国際人道法及び人権に対する数え切れない侵害の責任を有するとともに、シリア市民の人権尊重及び基本的自由、包括性及び政治改革の要求に対して耳を傾けていない。その行為は、シリアにおけるISIL/Da'esh及びヌスラ戦線を含む過激派集団の蔓延につながっている。アサドは、自身の行動により、テロとの闘いにおいてパートナーになり得ないことを示した。この紛争の全ての関係者は、国際人道法の下での義務に従わなければならず、人権を尊重しなければならない。

 我々は、デミストゥーラ国連シリア担当特使による平和への政治的移行をもたらすための努力を全面的に支持することを表明する。我々は、ジュネーブ・コミュニケに沿って、シリア社会の全ての構成要素が有する正当な不満に対処する、シリア人主導の包括的な政治プロセスに向けた新たな努力を呼びかけ、これを積極的に支援する。

 我々は、38億米ドルのプレッジを集めた「クウェート3」会合の成果を歓迎し、シリアにおける人道危機を緩和し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)により登録され、レバノン、ヨルダン、トルコ、イラク及びエジプトにより受け入れられている390万人のシリア難民を支援するための継続的な国際的取組を呼びかける。我々は、シリア難民状況に関するベルリン会議で合意したように、今次危機によって最も影響を受けている近隣諸国への支援を継続し拡大する決意であり、国際社会に対し、シリア及び近隣諸国に対する国連アピールの資金ニーズを満たすよう呼びかける。我々は、ますます多くの市民が援助や基礎的に供給されるべきものを得られぬまま、包囲された共同体に閉じ込められていることを深く懸念する。我々は特に、シリア政権の軍隊による2年間もの包囲に苦しめられた後に、ヤルムーク/ダマスカスでISIL/Da'esh及びヌスラ戦線により人質となり、そのまま取り残された約18,000人ものパレスチナ難民及びシリア人の絶望的な状況を特に懸念する。我々は、全ての関係者に対し、戦闘の停止、安全かつ制約のない人道的アクセス及び安全な通行と市民の避難を可能にするよう強く求める。我々は、この紛争の全ての関係者に対し、シリア全土において、支援を必要とする全ての人々に対し、安全かつ制限のない人道アクセスを認めることを求める。我々はまた、国連安保理決議第2165号に基づき、支援を必要としている人々への支援を増加させることをコミットする。

 我々は、多くの国々及び機関による並々ならぬ努力によって可能となった、シリアが申告した化学兵器備蓄の98%以上の除去及び廃棄を歓迎する。これらの兵器は廃棄されたものの、我々は、シリアが、その化学兵器プログラムを完全に申告及び廃棄していないことを引き続き深く懸念している。残された全ての課題は、シリアの関与を伴う誠実な方法により明らかにされ、目に見える結果を得なければならない。我々は、アサド政権が引き続き塩素ガスを化学兵器として使用していることを最も強い言葉で非難する。シリアにおいて化学兵器として有毒化学物質を使用することは、とりわけ化学兵器禁止条約及び国連安保理決議第2118号及び同第2209号の違反である。我々は、このような非人道的行為の責任者には、その責任を負わせるべきであるとの信念において引き続き団結している。

イラク

 我々は、政治・経済協力及びイラクがISIL/Da'eshを押し戻し打ち破ることができるような軍事的手段を通じて、イラクの統一、主権及び領土の一体性のための支援を継続する決意である。我々は、全てのイラク人に対し、国民和解に向けて積極的に取り組むよう奨励し、アバーディー首相に対し、効果的かつ包括的な一体性を迅速に達成するための改革の歩みを続けるよう奨励する。

 我々は、宗教的少数者に対する強姦及び性的暴力の行使を含め、イラクにおける人権侵害及び蹂躙と国際法違反の報告に愕然とし、全ての関係者に対し、国連人権高等弁務官事務所(UNHCHR)による2015年3月13日からの報告書にある勧告を実施するよう強く求める。我々は、引き続き人道支援を行う。イラク全土で250万人以上が国内避難民となり、そのうち100万人以上が、緊急の支援が必要であるとの国連難民高等弁務官の懸念を共有する。我々は、包括的で、政府に管理されたイラク治安部隊を再建する必要性を強調し、全ての武装集団は、イラク国家の命令と管理の下になければならないことを強調する。これに違反し侵害する犯罪者はその罪を償わなければならない。

 我々は、ISIL/Da'eshによるイラクの世界文化遺産の破壊を深く懸念し、全ての国連加盟国に対し、国連総会及び関連の国連機関内において、こうした蛮行に対して行動をとるためのイニシアティブを支持するよう呼びかける。

イラン/核問題

 我々は、4月2日にEU3+3とイランとの間で、「包括的共同作業計画の主要な要素」に関する政治的了解に至ったことを歓迎する。この了解は、フォルドにおけるウラン濃縮の廃絶によるものを含め、イランの濃縮及び研究開発計画を制限し、アラク重水炉における兵器級のプルトニウムの製造を不可能とし、これまでにない監視及び透明性を求める包括的な取極を予期するものである。我々は、イランの今後の核計画が専ら平和的性質なものであることを確認し、また、イランが核兵器を保有しないことを確認する、6月30日までの包括的な解決を達成するとの観点から、EU3+3とイランによる努力の継続を支持する。我々は、EU3+3とイランとの「共同作業計画」の継続的かつ効果的な実施の重要性を強調する。我々は、イランに対し、同国の核活動の検証に当たり、また、軍事的側面の可能性に関連するものを含めた全ての未解決の問題に対処するために国際原子力機関(IAEA)と全面的に協力することを求める。

イラン

 我々は、イランに対し、地域情勢において責任ある建設的な役割を果たすことを求める。特に、我々は、イラン当局に対し、シリアにおける政治的解決の達成、イラクにおける和解プロセスの支援及びあらゆるテロ行為及びテロ集団を拒絶するための国際社会の努力に対し、積極的に貢献することを強く求める。我々はまた、イランに対し、危機の緩和を可能とするために、イエメンにおける正統性のある当局とホーシー派との間の対話を促す上での支援を行うことを求める。

 我々は、イランに対し、国際的な人権上の義務を遵守し、恣意的な死刑執行、拷問、宗教的差別及び自由な表現に対する妨害を停止することを求める。我々はさらに、イランに対し、全ての国連人権メカニズムと協力することを強く求める。

リビア

 リビア危機は、我々が全面的に注意を向ける必要のある国際の平和と安全に対する深刻な課題である。我々は、即時かつ無条件での停戦と、リビア関係者が挙国一致政府に関し迅速に合意することを求める。

 我々は、この紛争において、軍事的解決はないと確信している。包摂的なプロセスを通じた政治的解決のみが、平和及び安定への持続可能な道筋を提供できる。テロの脅威という喫緊性は、国連対話がISIL/Da'esh及びその他の国連により指定されているテロ組織に対する真の国家的なリビアの対テロキャンペーンを可能とし、解決につながることを求めている。

 この観点から、我々は、国連対話に参加する関係者が、リビアにおいて増大するテロの脅威に対処するためには、統一したリビア・フロント及び強化されたリビア国家が必要であることを認識していることに留意する。

 我々は、レオン国連事務総長特別代表が、リビアにおいて、挙国一致政府を目指し、交渉による紛争の解決を促進し、移行プロセスに貢献し続ける決意を有していることに全面的な支持を表明する。したがって、我々は、リビアにおける3月24日の国連支援ミッションの声明及び対話を促進する提案を歓迎する。我々は、これらの提案が、全てのリビア関係者との議論の後に対話へとつながったことに留意する。

 我々は、全ての地域関係者及びリビアの近隣諸国に対し、交渉が成功を収める成果を確実にするようにすること及び現在の分断を悪化させる可能性のある行動を慎むよう国内のリビア関係者に対し影響力を行使することを求める。国連主導のプロセスの結果としての挙国一致政府は、リビアの現在の課題に対処する際に、国際社会が全面的に支援するパートナーになるであろう。

 我々は、政治対話プロセスの成功裡の完了を妨げ損なわせる者に制裁を科すとの国連安保理決議第2213号(2015年)を活用する用意があることを強調する。

 我々は、深刻な人権侵害の報告及び戦争犯罪の申し立ても含めた市民を標的にする行為に関する報告を懸念する。我々は、関係者に対し、戦闘行為を終わらせ、人権、特に女性、子供、弱者集団の権利を保護するよう求める。我々は、人権侵害に責任を有する者が裁きを受ける決意を強調する。リビアにおける管理されていない兵器及び銃弾の拡散は、国内及び地域の平和と安定に対する脅威を表している。我々は、武器禁輸を含め、リビアに関する国連安保理決議を履行する決意を再確認する。

イエメン

 我々は、イエメンにおける最近の状況と、政治、安全保障及び人権状況の悪化を深く懸念する。我々は、正統なイエメンの大統領であるハーディ大統領を支持するという点において、安保理理事国と考えを共有する。あらゆる行動が、国際法に従ってなされるべきである。

 我々は、国連主導の交渉の再開の喫緊の必要性を認識し、イエメンの全ての勢力に対し、対話と協議を通して相違を解決することをコミットするよう求める。ハーディ大統領の下での挙国一致内閣の形成を通してのみ、移行プロセスを完了させ、経済的、財政的崩壊と人権危機の深刻化を回避することが可能である。GCCのイニシアティブ、国民対話会議の成果及び平和と国民パートナーシップ合意は、完全に履行されなければならない。我々はさらに、全ての関係者に対し、個別の国連安保理決議、特に第2201号及び第2216号を完全に履行することを強く求める。

 国際社会は、イエメンにおける長期の安定を達成し、これ以上の流血を回避するために、外交的支援及び援助を引き続き実施する。我々は、国際人道法の遵守、市民の保護、イエメンにおける人道支援の無制限のアクセスを呼びかける。

チュニジア

 我々G7は、3月18日にチュニジアのバルドー博物館における死者を出したテロ攻撃を強く非難する。チュニジア市民は、3月29日の連帯の行進を通して、暴力的過激主義への断固たる拒否と、テロに対抗し立ち上がるとの決意を行動で示した。チュニジアが、治安を強化し、苦労して成し遂げた民主主義への移行を中断することなく前進させるために、我々は引き続きチュニジア政府とともに取り組む。我々は、構造経済改革に関するものも含め、潜在的協力分野に関するチュニジア政府とのより緊密な対話を待ち望んでいる。我々は、民主主義への移行を支援する上で、チュニジアの政府当局及び社会全体に対する支援を強化する。

中東和平

 中東和平の達成は、引き続き主要な優先課題であり、地域の安定と安全のための不可欠な要素である。パレスチナへの税還付を含め、構築された緊張緩和と情勢の安定化のための努力に直ちに焦点が当てられるべきである。両者はまた、ガザ地区の再建及び人道状況の迅速な改善に対し改めてコミットすべきである。

 我々は、両者に対し、交渉の結果を予断し、二国家解決の実現を脅かし得る一方的な行為を含め、さらに状況を悪化させるような措置を避けるよう強く求める。我々は、両者に対し、相互の信頼醸成のため更なる努力を行うよう求める。我々は、紛争終結を支援する及び最終地位に関わる全ての論点の交渉による解決に積極的に貢献する用意があることを再確認する。我々は、2015年2月8日にミュンヘンにて開催されたカルテット代表会合に留意する。我々は、恒常的かつ直接的なアラブ諸国への関与も含め、カルテットによる努力を支持する。我々は、アラブ平和イニシアティブの重要性を再確認する。

 こうした背景及び同地域全体における状況を踏まえ、イスラエルとパレスチナという主権を持つ二つの民主国家が、安全かつ承認された国境の中で平和裡に共存する包括的な和平の達成に向けての具体的な行動の再開が、これ以上遅延してはならない。一つの国家という現実は、両者の国民的悲願とは相容れないものである。

アフガニスタン

 我々は、アフガニスタンとその広範な地域が安定し、繁栄しかつ民主的な未来を醸成するために、アフガニスタン政府との永続的なパートナーシップへの長期的決意を改めて表明する。我々は、アフガニスタン政府による鍵となる改革の実施、すなわち、ガバナンスと法の支配の更なる改善、女性の権利を含む人権尊重の促進、腐敗との闘い、麻薬対策、財政の持続可能性向上及び包括的経済成長の醸成に関する取組について、同政府を支えていく決意を継続する。我々は、アフガニスタン治安部隊(ANDSF)の訓練、助言及び支援を行うNATO主導の国際的関与の構築を歓迎する。我々は、ANDSFがその能力を引き続きさらに改善するため、ANDSFの強化と資金調達を引き続き積極的に奨励する。我々は、アフガニスタン主導かつアフガニスタン自身の手による包括的な和解プロセスを後押しすることにコミットしている。

 我々はまた、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)のマンデートが、国連安保理により更新されたことを歓迎する。

北朝鮮

 我々は、北朝鮮によるプルトニウム生産、ウラン濃縮及び弾道ミサイル発射を含む核・弾道ミサイル開発の継続を強く非難し、北朝鮮に対し、直ちに関連する全ての活動を停止することを求める。

 我々は、北朝鮮が非核化のコミットメント及び義務の遵守を拒否し続けていることは、地域の安定及び国際の平和と安全を損ない続けているとの認識を共有する。

 我々は、北朝鮮に対し、いかなる挑発的な行動も自制し、全ての核兵器及び既存の核・弾道ミサイル計画を完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で放棄するための具体的な措置をとることによって、六者会合の再開につながるような環境を作り出すことを強く求める。

 我々はまた、北朝鮮に対する関連する全ての国連安保理決議及び2005年六者会合共同声明の下でのコミットメントを遵守するよう、改めて強く要求する。

 我々は、国際社会に対し、関連する全ての国連安保理決議を完全に履行し、北朝鮮による世界的な拡散活動を警戒するよう求める。

 我々は、国連調査委員会(COI)の報告書において確認された、北朝鮮で現在行われている組織的で広範かつ深刻な人権侵害に関し、深刻な懸念を改めて表明する。我々は、北朝鮮に対し、拉致問題を含むこれらの人権侵害に対処するため直ちに措置をとるとともに、関連する全ての国連機関と全面的に協力することを強く求める。我々は、北朝鮮の状況を議題に追加するとの国連安保理の決定を歓迎するとともに、説明責任の確保に向けて引き続き取り組むことの重要性を強調する。

エボラ出血熱

 我々は、西アフリカにおける前例のないエボラ出血熱の流行による被害者の家族に対し、深い哀悼の意を表明する。この大流行によって、1万人以上の男性、女性、子供が亡くなり、それ以上の人々が健康、家族及び生活を失った。我々は、支援を必要としている人々を助けるために、確立した治療法がなく、命にかかわるウィルスに自らの身をさらしている全ての国内及び国際医療従事者の勇敢な行動に敬意を表する。我々は、継続した適切な緊急資金援助及び回復計画への支援を通じ、エボラ出血熱の大流行をゼロまで減らし、それを維持することによってこれを終息させるとの確固たる決意を改めて表明する。

 我々は、将来の病気の発生が大流行につながることを防ぐとの共通の目標を達成するため、西アフリカを含め世界中で集団的に支援する。我々は世界保健機関(WHO)の国際保健規則及び世界健康安全保障アジェンダにより設定された全ての共通目標を達成することを追求する。

 我々は、エボラ出血熱の流行の重要な帰結について多くの時間を割いて議論し、単独の宣言である「エボラを超えて:アフリカにおける将来の危機の予防と安全増進を支援するためのG7アジェンダ」に関し合意した。同宣言において、例えば、生物兵器禁止条約、大量破壊兵器の拡散に対応するためのグローバル・パートナーシップ及び世界健康安全保障アジェンダにより利用可能なメカニズムを通して、強靱性を高めるための連携した行動の重要性を指摘している。

 我々は引き続きこの問題に関与し、次回会合で進捗状況をレビューする。

アフリカ

 我々は、民主主義の制度が強化されていることの象徴となる、多くの国における最近の平和裡に行われた選挙を歓迎する。我々は、アフリカ全土において選挙が行われる重要な年に、こうした平和裡な選挙の実施が続くことを希望する。

 我々は、国家憲法を尊重すること、及び国民の意思を反映し、リーダーシップの交代を許す、平和的で、透明性があり、信頼のおける選挙の実施が、全体として重要であることを強調する。

アフリカ平和安全保障アーキテクチャー(APSA)

 我々は、アフリカ連合(AU)及び地域機関の、アフリカ大陸における危機の回避と管理のための能力強化において、これまでになされた進展を歓迎する。我々は、アフリカ平和安全保障枠組み(APSA)の枠組みにおいて、これら機関を支援するとの決意を再確認する。我々は、紛争を回避し、不安定、脆弱性及び対立の根本原因に対処する点において、より緊密に協力することで合意する。

ナイジェリア/ボコハラム

 我々は、ナイジェリアとその市民が、3月28日のナイジェリアにおける大統領選挙、議会選挙及び4月11日の29の州政府の知事選挙を成功裡に実施したことを称賛する。我々はまた、グッドラック・ジョナサン大統領及び、ムハンマド・ブハリ次期大統領が、自ら公の場で、選挙運動期間中を通じた非暴力をコミットしたことについて称賛する。我々は、地位を退くグッドラック・ジョナサン大統領に対し、ナイジェリアのために尽力したことに祝意を表する。我々は、ジョナサン大統領及びブハリ次期大統領候補が新政権への円滑な移行を確保するために緊密に協働するとの決意を歓迎する。ナイジェリアの独立選挙委員会(INEC)及びアタヒル・ジェガ委員長もまた、独立した国際オブザーバーによって概ね平和的かつ秩序立って行われたと評価された投票を準備できたことにより、特別に認知されるに相応しい。INECは、選挙プロセスの信頼性と透明性を向上させる全体に及ぶ努力により、今後も奨励されるであろう。我々は、次期政権とともに、経済的な課題や安定の確保のための対応を含め、多くの共通する利益に関して協力することを期待している。

 我々は、ボコハラムによって行われている残虐行為、特に昨年5,000人以上殺害したことに対し、最も強い表現で非難する。昨日、我々は、いまだその多くが行方不明である、200人以上の少女がチボクの学校から誘拐されてから1年を記録した。ボコハラムは、ナイジェリアのみならず、地域一帯にとり脅威である。したがって、G7は、アフリカ連合(AU)及びチャド湖流域委員会を通じたものを含め、地域的アプローチに向けた努力を歓迎する。我々は、ボコハラムとの闘いにおけるナイジェリア、ニジェール、チャド及びカメルーンによる最近の軍事的成功を称賛する。我々は、多国間合同タスクフォース(MNJTF)の創設を歓迎し、必要に応じMNJTFを支援することで一致し、地域パートナーに対し、こうした取組に参画するよう奨励した。MNJTFは、ボコハラムの影響が及んでいる地域を復興し、治安を維持する上でナイジェリア及びその他の地域国を支援する際に、重要な役割を担うことができる。我々は、ボコハラムとの闘いにおいて、人権の尊重の重要性を強調する。

 ボコハラムとの闘いは、ナイジェリア北東部の軍事、経済発展及び人道的戦略を統合することによる、ナイジェリアの中央及び州政府の包括的アプローチが必要である。我々は、安定及び法の支配を回復するための警察及び市民行政の関与による軍事的成功の構築、及びそれによる開発と雇用創出という暴力のサイクルを断ち切る前提条件を可能にすることの重要性を強調した。

 ナイジェリア及び近隣諸国は、難民及び国内避難民への支援を含め、この努力に対する我々の全面的なサポートを引き続き有している。我々は、アフリカにおけるパートナーと共に、アフリカの地域機関及びより広範な国際社会に対し、ボコハラムを非難し、ボコハラムと闘うための努力に参加することを依頼する。

マリ

 我々は、マリが持続可能で包括的な平和を追い求めるに当たって、引き続き同国を支援し、紛争の全ての当事者に対し、できる限り速やかに和平合意に署名することを強く求める。我々は、アルジェリアの政府が、国際社会の広範な支持を得たマリ国民の間の対話プロセスを開始し促進したことを評価する。我々は、マリの和平プロセス達成を支援する国連マリ多元統合安定化ミッション(MINUSMA)の取組を支援する。我々は、こうした努力にもかかわらず、持続可能な和平合意の署名及び実施に向けた強力な政治的意思がない限り、この努力は失敗に終わることを懸念している。国際社会の一員として、我々はこのプロセスを支援できるが、主要な責任はマリの紛争当事者自らにある。不処罰との闘いは、継続する安定化と和解を保証する鍵となる。

中央アフリカ共和国

 我々は、国の全域において平和と和解を促進するために重要な役割を担う、バンギ国民フォーラムの準備を通じていくことも含め、移行プロセスを完了しようとする中央アフリカの暫定当局の決意を歓迎する。我々は、全ての機関に対し、暫定国家憲章に従って、可能であれば2015年8月までに、緊急案件として、自由、公平かつ信頼のおける選挙を実施するとの観点から、選挙プロセスの準備を加速化するために必要な措置を速やかにとるよう求める。

 我々は、国際社会の関与、特に移行政権がこの移行プロセスを成功裡に達成できるよう、それを支援する国連中央アフリカ多角的統合安定化ミッション(MINUSCA)の活動及び世界的なアプローチ枠組みにおけるEUの存在の意義を含め、その他の地域と国際的なパートナーの努力を支持する。

 我々は、中央アフリカを支援するために資金源を動員する喫緊の必要性を強調し、全ての国際的パートナーに対し、選挙プロセス、中央アフリカ国家の予算状況、軍縮・動員解除及び再統合の努力、人道状況及び不処罰に対する闘いに関する格差を是正するために、追加的な資金を供給することを強く奨励する。

 我々は、平和、正義及び和解を求める中央アフリカの国民に対する力強い支援を改めて表明し、武装集団に対し、武器を捨て、積極的に国の未来に貢献することを求める。

ソマリア

 我々は、国づくり、制度構築への支援も含め、ビジョン2016に基づき、ソマリア連邦政府、ソマリア国民及び国際的パートナーによって合意されたソマリアのニューディール・コンパクトを引き続き支援する。我々は、政府に対し、2016年選挙を念頭に進展を得ることを強く求める。

 我々は、政治アジェンダを前進させ、治安分野において進展させるためには、連邦政府と地域当局との間の関係を改善することが鍵であると考えている。

 我々は、アフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)、その軍隊派遣国及びソマリア政府によるアル・シャバーブとの闘い及びソマリアと周辺地域の治安強化を引き続き支援する。我々は、機能的かつ能力のあるソマリア国家治安維持部隊を創設するモメンタムを維持していく必要性を強調する。

 我々は、ソマリア政府に対し、継続する武力紛争の文脈におけるものも含め、人権、特に女性と子供の人権を守るようさらに強く求める。

ケニア

 我々は、4月2日のガリッサ大学での無実の学生に対するテロ攻撃を非難する。我々は、アフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)を通じて、アル・シャバーブとの闘うという重要な努力を支持し、我々は、この卑劣な攻撃に直面したケニア国民とともに立ち上がる。

スーダン

 我々は、真の国民対話がスーダンにおいて開始されていないこと及び国民が広く参加する信頼のおける選挙に見合った環境が存在していないことへの失望を表明する。我々が以前述べた通り、スーダンにとって、包括的な国民対話は、真に代表性のある政治システムを構築するために必要なプロセスであると信じる。対話を通してのみ、スーダンの国民は、ガバナンス、政治的包括性、資源の共有、国家のアイデンティティ及び社会の平等性という根本的な課題と向き合い、全てのスーダン人にとって利益となる形でこれを解決することができる。

 意味のある対話の欠如、ダルフール、南コルドファン及び青ナイルにおける紛争の継続、反対派の拘束並びに政治的空間及び報道の自由の制限によっては、4月13日から15日に予定されている選挙は、スーダン人の政治意思を信頼がおける形で表わさないであろうことが明らかになっている。

 我々は、紛争を終結させ、意味あるガバナンス改革を開始し、包摂的で国民が広く参加する政治を構築し、さらにスーダンにおける長期的な安定を確保するために国民対話のプロセスを引き続き支援するとともに、スーダン政府、反政府勢力及び反対派勢力に対し、そのような対話に誠実に参加するよう強く求める。

 我々は、ナイル川の水源の課題に関する協力を推進するスーダンの建設的な立場に留意する。

 スーダン国民は、ダルフール、南コルドファン及び青ナイルにおける、現在起きている暴力のために大きな犠牲を払っている。我々は、380万人ものスーダン人が暴力から逃れたこれらの地域への人道的アクセスの重要性を認識し、全てのパートナーに対し、これに関与することを強く求める。

 我々は、スーダン政府(GOS)とスーダン革命戦線(SRF)との間の停戦合意を達成するためのアフリカ連合高等実施パネル(AU-HIP)主導のプロセスを支援する。

 我々は、スーダン政府に対し、ダルフール国連・アフリカ連合(AU)合同ミッション(UNAMID)及び人道支援機関に対し、完全な協力及び自由なアクセスを与えること、また、人権団体に対し、人権侵害の申し立てを調査するためのあらゆる行動の余地を与えるよう求める。我々はスーダン政府に対し、スーダンの人権状況に関する国連の独立専門家に全面的に協力することを強く求める。

南スーダン

 我々は、南スーダンで現在進行している暴力を非難し、一般市民及び近隣諸国への影響を深く懸念する。我々は、南スーダンの指導者が、南スーダン国民のための平和を確保していないことに関する深い失望を表明する。我々は、全関係者に対し、敵対行為の停止協定を完全に尊重し、全ての南スーダン国民の不満を取り込む包括的なプロセスを通じて、挙国一致の移行政権を立ち上げることを求める。

 我々は、早急に和平交渉を元の軌道に戻すよう、政府間開発機構(IGAD)、アフリカ連合(AU)及びその他の重要な当事者の決定的な役割を再確認し、和平交渉のための強化された枠組みの構築を支持する。

 我々は、これ以上遅れることなく、両者が全ての未解決の課題を解決するよう、国連安保理決議第2206号に従って、圧力を強めるために、多国間、二国間及び地域のあらゆる手段を活用することを支持する。

 我々は、AUに対し、AU委員会による人権侵害に関する調査団の最終報告及び説明責任、和解及び癒やしのための勧告を発表するよう奨励する。

 我々は、国連南スーダン派遣団(UNMISS)及び市民を保護し社会状況を安定化させるためのUNMISSによる行動への支援を改めて表明する。

サヘル

 我々は、テロの脅威による不安定、低レベルの人間開発、人口動態による圧力及び気候変動の影響を含め、この地域の様々な課題に対処するに当たり、影響を受けるサヘル諸国の間で更なる取組を行うようになったことを強く支持する。我々は、引き続き人材育成とこの地域の貧困及び不安定に対処するための支援を実施していく。この目的のため、我々は、グローバル・テロ対策フォーラム(GCTF)の取組を認識し、サヘル諸国が2015年3月の前回のサヘル作業グループ会合に参加したことに勇気づけられた。我々は、引き続き、小型武器と軽火器の違法取引に対する闘いを含め、この地域の治安及び開発課題に対処するための努力を支援する。我々は、個々の戦略を実施する上で、シナジー効果を確保するとの観点から、様々な国際主体、特に国連、アフリカ連合(AU)及び欧州連合の間で緊密に調整を続ける重要性を強調する。

テロ対策

 我々は、最近のガリッサ、パリ、コペンハーゲン及びチュニスで起きたテロ組織による極悪かつ卑劣な行為や罪のない人質の殺害を強く非難する。我々は連帯してテロ、暴力的過激主義、及び暴力につながる過激化と闘う。我々は、テロ行為を行う犯罪者に裁きを与えるとともに、表現の自由、宗教と信条の自由や、人間の尊厳、無差別、過激化の拒否、寛容及び多元的共存の原則といった、人権及び基本的自由を守り促進する必要性を強調する。

 シリア及びイラクから帰還する外国人テロ戦闘員は、我々の国家安全保障にとり重大な挑戦である。G7は、全ての国家に対し、人質行為及び身代金目的の誘拐を含め、外国人テロ戦闘員の現象に対処し、テロリストの資金調達に対応するための、関連する国連安保理決議を完全に履行することを求める。

 G7はまた、暴力につながる過激化、リクルート、資金調達もしくはテロ攻撃の計画といったテロを目的としたインターネットの使用に引き続き対応し、さらに、我々はこれらに対抗するための説明の取組を引き続き推進する。

 最近の展開を見ると、テロと暴力的過激主義が広まりやすい状況に対処するためには、経済、社会、教育、並びに雇用政策に取り組み、市民社会の代表者を含む全ての当事者を関与させる包括的、社会全体的なアプローチが必要とされている。G7諸国は、米国が主催した暴力的過激主義への対応に関するサミット及び9月にニューヨークで開催される関連の首脳級会合に触発されるフォローアップの活動に対し、適切な支援を提供することにコミットする。

 効果的にテロリズムと闘うためには、協力が鍵である。国際社会は、引き続き緊密に連携し、関連する情報を交換すべきである。成功を収めるためには、地域的、国際的パートナーとの協力が最重要である。したがって、G7諸国は、引き続き、地域機関、二国間もしくは多国間の枠組みを含む、関係するパートナーに働きかける決意である。各国が、人権及び法の支配を尊重し、促進しつつ、テロと暴力的過激主義に対抗する能力を強化できるよう、G7諸国は、必要に応じ、能力向上支援を行う用意がある。

 G7はまた、国際社会に対し、国連安保理決議第1267号(1999年)及び第1989号(2001年)に従い設立された委員会により指定された個人の動きを突き止めるために、特に、自国領域で運行している航空会社により、乗客情報を事前に提供されることに関連する、国連安保理決議第2178号の下での情報に関して、緊密に協力し、関連の情報を交換することを求める。我々は、2月の金融活動作業部会(FATF)全体会合の成果を歓迎し、全ての国家に対し、FATFにより定められた基準を満たすよう求める。各国は、テロ資金調達活動を、効果的に突き止め、訴追するため、さらにテロ資金を凍結し、もってテロリストの資金調達を途絶するために必要な措置を履行すべきである。我々は、G20財務大臣によって、2015年10月までにまとめることが求められている、これまで達成された進展と全てのテロ対策資金調達方法を強化するための提案に関する報告を期待する。

 G7は、国連、グローバル・テロ対策フォーラム(GCTF)及びISIL/Da'esh対策連合を始めとしたその他の多国間枠組みにおいて行われている取組に、引き続き積極的に関与する決意である。

 我々は、これらの課題に引き続き取り組むようG7ローマ・リヨン・グループに依頼する。

気候変動と安全保障

 気候変動は、我々の世界が直面する最も深刻な課題の一つである。それは、環境、地球規模の安全保障及び経済の繁栄に対し脅威をもたらす。それは、地球規模の貧困に取り組む上で過去数十年間に成し遂げられた進歩を逆行させる潜在的可能性をはらんでいる。適切な適応及び緩和措置がとられなければ、気温の上昇及び降水パターンの変化が、不安定と紛争の危険性を高める。我々は、この課題に効果的に対処しなければならない。

 温室効果ガスの世界的な排出を減少させることは、気候変動のリスクを成功裡に緩和するために重要である。したがって、我々は、2015年12月にパリにおいて、野心を促進し、全ての締約国に適用され、変化する国内の状況を反映した、議定書、法的文書、もしくは法的効力のある合意された結果を採択するための努力を全面的に支持するとのG7の決意を再確認する。我々は、各国が約束草案を可能な限り早期に提出することを期待する。これにより、世界平均の気温が産業化以前のレベルと比較して、摂氏2度以下の上昇に抑えられるとの目標に照らして、全ての国が、低炭素かつ強靱な、持続可能な開発の道筋をたどることができるようにすべきである。したがって、我々は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書で述べられたとおり、世界の温室効果ガスの排出量を大幅に削減することが、科学的に求められていること、及び、全ての国が摂氏2度という目標を達成するために緊急に行動するべきであるということを再確認する。

 我々は、開発のための資金調達会議、ポスト2015年開発アジェンダ、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下での締約国会議の取組、仙台行動枠組及び世界人権サミットを含む関連する国際プロセス及び本年予定されているその他の取組が、気候変動によりもたらされるリスクを低減させるための国際的な取組を強化し、より一貫し相互補完的なものにし、災害に対する準備及び強靱性をするため、そして、持続可能な成長を促進するための貴重な機会を提供すると認識する。

 したがって、我々は、2014年にG7の外務省によって委託され、我々に対し、「平和のための新たな気候:気候と脆弱性リスクに関する行動」との題名の下で、シンクタンクの国際コンソーシアムによって提出された第三者報告書を歓迎する。同報告書は、脆弱な国家及び地域に対する気候変動の複合的なリスクを分析し、気候変動が、国家及び社会の安定と脆弱性との重要な相互作用を持ち得る決定的な道程を特定し、そして、G7各国政府が、世界的な気候変動に直面する中で、強靱性を高め、脆弱性を低減させるという共通の目標に向けた努力を統合すべきであることを勧告している。

 我々は、気候変動及び脆弱性に関係する複合的なリスクをより良く理解し、特定し、観察し、対処することの必要性について一致している。外交政策のポートフォリオを通じて気候に対する脆弱性への考慮を統合することによって、G7諸国は、気候に関連する安全保障上の課題についてよりよく分析することができ、また、これらのリスクに備え対応する際に、他国を支援することもできる。

 我々は、2016年の会合までにあり得べき実施について報告を受けられるよう、2015年末までには、作業グループを設置し、同研究の勧告を評価させることを決定した。この目的のために、同作業グループは、特に脆弱性に影響を受ける関心の高いパートナーとの情報及び意見交換を含む情報と意見の交換を促進する必要性、脆弱性に影響を受ける関心の高いパートナーと協力し、より良く取り組む必要性、気候と脆弱性のリスクをより良く理解し対応する必要性、気候と脆弱性のリスク分析をより良く利用し、統合的に実施するために、既存の機関とともに取り組む必要性、及び、ガイダンス資料の策定の必要性について検討する。

ドーヴィル・パートナーシップ及び移行期にあるアラブ諸国

 アラブ地域全体における、より広い政治参加、経済発展、社会正義に対する人々の希望は現在も最も重要であり続けている。

 我々は、法の支配と人権の尊重を支える、開かれた包括的な社会と経済こそが、安定と繁栄への道筋における継続的進展を達成できるという我々の強い信念を強調する。

 ドーヴィル・パートナーシップが存在してきたこの4年間において、同パートナーシップは、改革の課題や中東・北アフリカ(MENA)地域の諸国への多国間支援の動員及び連携等を改善することに関する対話のための貴重なプラットフォームであることが示された。我々は、ガバナンス及び経済改革の両分野において、移行期にあるアラブ諸国が対処しなければならない課題を念頭に、同アラブ諸国に対し調整し適合した協力を提供できるよう、ドーヴィル・パートナーシップに引き続き全面的に関与する。

 我々は、移行期にあるアラブ諸国により表明された優先事項に対応する上で、経済ガバナンスの改善と、金融包摂の強化、特に女性及び若者の雇用創出の促進、より緊密な地域的統合、そして、市民社会の関与に、ドーヴィル・パートナーシップが焦点を当てることを歓迎する。そしてこれは、2015年のドイツ議長国の期間中に開催されるハイレベル会合及び会議のテーマと一致している。我々は、また、多くのこうした会合において、この地域における女性の経済的役割の改善について議論されることも歓迎する。

 奪われた財産の返還に関する同パートナーシップの決意は、消えずに残っている。したがって我々は、財産回復に関するアラブ財産回復フォーラム(AFAR)を通した連携をさらに発展させる。

 移行基金に関しても進展が達成された。我々は、同基金の資本金の目標である2億5000万米ドルを達成するために、移行基金に拠出し続けることを奨励する。すでに同基金に対しプレッジされた2億1350万米ドルがプロジェクトに充てられた、1億7000万の米ドルにより、この基金は、引き続きMENA地域における、質の高い、良く管理された開発協力の手段であり続けている。我々は、持続可能なプロジェクトの成果を提供するために、ドイツ議長国の下で、移行基金プロジェクトの効果的な実施とこの地域に最も関連のある分野に焦点が当てられていることを歓迎する。

サイバー

 サイバーの脅威が増加している状況において、我々は、単一で、相互に利用可能で、開かれた、自由かつ安全なインターネットの促進及び保護の重要性を強調する。我々は、国際法、特に国連憲章が適用可能であり、平和と安定を維持するため、また、開かれ安全かつ平和的、そしてアクセス可能なサイバー空間の促進のためには、これらが不可欠であることを強調する。この文脈で、我々は、とりわけ国際法がサイバー空間においてどのように適用されるかに関する国連の政府専門家グループの報告書に期待する。我々はまた、平時におけるその他のサイバー対策が国際的な安定の促進において担うべき重要な役割を確認し、また、現在行われているこの分野における国連の政府専門家グループの取組を支援する。

 我々は、インターネットが、教育、繁栄、自由、民主主義及び人権を促進する上で市民、企業及び政府にとって重要であるということを認識する。インターネットの開放性、透明性及び自由は、その発展と成功にとり鍵となってきた。人権は、オフラインと同じくオンラインでも同時に達成されなければならない。我々は、インターネット上での自由と安全性、透明性と個人情報と個人のプライバシーの効果的な保護を促進するとの観点から、国内外における政治的議論の必要性を強調する。

 我々は、インターネット・ガバナンスにおけるマルチステークホルダーアプローチに関与することを強調する。

 我々は、この分野での国際司法上の協力の改善を含め、サイバー犯罪との国際的な闘いを前進させる必要性を強調する。この文脈において、我々は、サイバー犯罪に関するブダペスト条約への多数の国による加盟を歓迎し、さらに多くの国に加盟を検討するよう奨励する。

 我々はまた、サイバー犯罪と闘う上での国際協力を強化し拡大するために、G7ローマ・リヨン・グループのハイテク犯罪サブグループによる取組及びそのコンタクト・ポイントの24/7ネットワークの重要性を確認する。

 我々は、サイバー対処能力向上のための国際的な取組を強化する重要性を再確認する。我々は、世界中で、より多くかつ効果的な能力向上支援を提供できるよう、産業界を含む広範囲のパートナーが参画するイニシアティブが増えることを求める。

不拡散・軍縮及び核セキュリティ

 大量破壊兵器とその運搬手段の拡散は、引き続き喫緊の懸念である。さらに、管理されない小型武器及びその他の通常兵器並びにそれらの弾薬の拡散は、世界中の多くの地域において脅威となる。こうした背景から、我々は不拡散及び軍縮に関するG7ステートメントを承認する。

 核兵器不拡散条約(NPT)は、引き続き、核不拡散体制の礎であるとともに、第6条に従った核軍縮、原子力の平和的利用の追求のための本質的な基盤である。来たる第9回NPT運用検討会議は、三本柱にわたって同条約を強化する機会を提供するものとなる。我々は、NPTの締約国に対し、2010年に達成された成功に基づく会議の成功裡の終結と実質的なコンセンサス合意に向けて取り組むよう求める。

 我々は、米国が2016年に核セキュリティ・サミットを主催することを支持し、世界的な核セキュリティ構造の強化という目標に向けて取り組む決意である。

人権

 我々は、全ての人権と基本的自由の保護と促進に対する決意を再確認する。我々はまた、あらゆる形での差別をなくす決意も確認する。我々は、ジェンダー平等を促進するため、及び紛争下の保護と児童、早期及び強制的な結婚をなくすことを含めたあらゆる形での女性や少女に対する暴力と闘うため、不断に努力する。さらに、我々は、市民の権利、政治的権利及び経済的、社会的及び文化的権利を含む全ての人権が普遍的で相互依存的な性質を有していることを強調する。全ての人権は、暴力や抑圧を恐れることなく、行使されるべきである。

 我々は、人権を促進し保護する上で、市民社会の重要な役割を認識する。我々は、人権擁護者の安全を確保しながら、市民社会のための自由な空間を守るために取り組んでいく。

紛争下の性的暴力の防止を含めた女性及び平和と安全保障

 我々は、安保理決議第1325号及び関連安保理決議による持続可能な平和と安全を達成するためのG7のグローバルな取組を通じ、女性の積極的かつ意味のある参画の促進することの重要性を強調する。我々は、ジェンダー平等及び女性のエンパワーメントが、社会の安定と繁栄に貢献することを認識し、全ての政治、ガバナンス、安全保障の構造及び意思決定プロセスにおける全てのレベルにおいて、女性の完全な参加が必要である点を強調する。

 我々は、女性の完全な参加を阻む障害を取り除く必要性を強調しつつ、紛争予防、解決及び平和構築における女性の役割の強化への継続的な決意を表明する。

 我々は、紛争下における性的暴力が、女性や少女だけでなく男性や少年に対しても広範囲にわたり、かつ、頻繁に組織的に発生することが深刻な懸念となっており、これを防止し対処するための行動を奨励するため、G7によって支持された英国の「紛争下の性的暴力予防イニシアティブ(PSVI)」を含む最近の国内的及び国際的な取組を歓迎する。この点に関し、我々は、紛争下の性的暴力防止に関する2013年のG8宣言の実施に関するこれまでの進展を歓迎し、これらの犯罪を防止し対処するために取り組む人々への支援を通すものを含め、この点に関する更なる努力へのコミットメントを強調する。

 我々は、国連安保理決議第1325号の国家レベル及び国際レベルでの実施のための活動に対する政治的な決意及び財政的支援を改めて表明する。

 我々は、全ての国家に対し、本年の国連安保理ハイレベル・レビュー会合の機会を活用し、この重要なアジェンダの履行を加速することを求める。