データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 不拡散及び軍縮に関するG7ステートメント

[場所] 
[年月日] 2014年4月15日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

冒頭

1. 我々は,国際社会の安定を推進する形で,すべての人にとってより安全な世界を追求し,核兵器のない世界に向けた環境を醸成することにコミットしており,この目的を達成するために,不拡散が極めて重要であることを強調する。大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散防止は,それが国際社会の平和と安全に対する主要な脅威を与えるものであることから,最優先課題であり続けている。制御されていない通常兵器の拡散が世界のいくつかの地域の安定を弱体化させている事実は,G7がこの分野においても行動を取るための強い理由である。

2. 我々は,拡散の防止・対抗に貢献するすべての関連条約・合意---特に,核兵器不拡散条約(NPT),化学兵器禁止条約(CWC)及び生物兵器禁止条約(BTWC)

---の普遍化へのコミットを継続する。我々は,これらの条約のすべての履行及びその中に含まれる義務の遵守にコミットし,期待する。

第9回NPT運用検討会議

3. NPT発効45年,及び,広島・長崎の被爆と第二次世界大戦終了後70年となる2

015年に開催される第9回NPT運用検討会議について,我々は,NPTの相互に補強し合う3本柱すべてに対する無条件の支持を再確認する。NPTは,核不拡散体制の礎石であり,第6条にしたがった核軍縮及び原子力の平和的利用の追求における不可欠な基礎である。NPTは,世界をより安全にするために重要かつ永続的な貢献をしている。それは,日々その締約国に対して利益を与える。我々は,すべての締約国に対して,同条約の下での義務を遵守するよう求める。国際安全保障に関する現在の多様な課題は,強固なNPTの必要性及びすべての締約国による条約の誠実な実施への完全なコミットメントを強調する。

4. 今次NPT運用検討会議は,本条約に関するすべての側面をさらに強化する機会を提供する。我々は,将来的な課題を盛り込んだ行動計画を含む2010年運用検討会議のコンセンサスによる成功裏の成果を想起する。同行動計画は,不拡散,軍縮及び原子力の平和的利用に向けた我々の取組を進めるための永続的な基礎を提供する。我々は,行動計画のすべての項目の実施に引き続き完全にコミットしており,すべての国に対し,行動計画のアクションを実施し,NPTコミュニティに対して関連する活動に関する報告を行うよう呼びかける。

5. G7パートナーは,非核兵器地帯条約の関連する法的拘束力のある議定書を発効させることを引き続き重視している。これら議定書は,核兵器国と非核兵器国との間の信頼を醸成することにより,地域及び国際的な安全保障を強化する。我々は,中央アジア非核兵器地帯条約の議定書への署名を想起し,仏と英による批准を歓迎する。また,我々は,5核兵器国による東南アジア非核兵器地帯条約締約国との協議を継続するとのコミットメントを歓迎する。

6. 我々は,NPT上の核兵器国によりNPT上の非核兵器国に与えられるコミットメント及び保証の重要性を再確認する。この文脈で,ブダペスト覚書においてロシア連邦がウクライナに対して与えたウクライナの主権,領土の一体性及び独立を尊重するとのコミットメントに継続して違反していることを遺憾に思う。我々はロシア連邦に対し,国連憲章及びヘルシンキ最終文書にも反する,これらの違反行為を停止することを要請する。

7. G7は,中東非大量破壊兵器・運搬手段地帯の目的に引き続きコミットする。よって,G7は,中東における核兵器及びその他の大量破壊兵器と運搬手段のない地帯という目標を強く支持する。G7は,ファシリテーター及び1995年決議の共同提案国(露,英,米)によって現在行われている努力,特に地域国の間での5回もの協議を賞賛する。我々は,これらの努力に関わらず,ヘルシンキ会議がこれまで開催されていない事を遺憾に思う。地域の関係国は,可及的速やかにヘルシンキ会議開催の日付及びアジェンダについてコンセンサスに至るよう相互に活発に取り組まなければならない。我々は,すべての参加国の利害が考慮された場合にのみ,本会議は意味あるプロセスに通ずることを強調する。

8. 我々は,NPTの第10条にある脱退の権利を認識する。それにも関わらず,今次運用検討会議は,脱退の乱用を防止する重要性についても明確化する必要がある。我々は,この重要な問題に対処すべくなされてきた建設的な提案を歓迎する。ある国のNPTからの脱退は,条約のほぼ完全な普遍性を損ない,それに伴い,他のすべてのNPT締約国の安全保障を損なう。特に,我々は,脱退の通知と結果を迅速に対処するにあたって国連安保理の役割を強調する。我々は,締約国による脱退前のNPT違反については,国際法の下で引き続き責任があることを強調する。脱退前に受領した原子力資機材の移転は,引き続き平和的利用の範疇にとどまり,保障措置又は代替的な保障措置の下に置かれるべきである。我々は,今次NPT運用検討会議において,脱退に対処する方策について適切な提言が採択されることを支持する。ある国の脱退が他の国の安全保障に対して与える負の影響に鑑みると,締約国が同条約に留まることを促す方途を模索することが決定的に重要である。

核不拡散上の課題

9. 我々は,イランの核計画についての外交的解決への強いコミットメントを再確認し,

4月2日に,EU3+3とイランによりローザンヌにおいて合意された政治的了解を歓迎する。現在から6月30日までの間に,イランの核計画がすべて平和的な性質のものであるということについての国際社会の懸念を完全に解決し,イランが核兵器を取得しないことを確保するため,包括的共同作業計画が交渉される必要がある。我々は,EU3+3とイランによる共同作業計画の継続的且つ効果的な実施及び核関連措置の検証にあたってのIAEAの不可欠な役割の重要性を強調する。我々は,これに関連しIAEAによる監視及び検証作業への財政的貢献をおこなった国々を賞賛する。我々は,イランの核計画が専ら平和的性質であることを検証するためにIAEAにより行われている進行中の取組を強く支持することを再確認し,イランに対し,特に重要な軍事的側面の可能性に関するものも含めたすべての未解決の問題の解決のため,IAEAと全面的且つ遅滞なく協力することを求める。

10. 我々は,シリアによる保障措置上の義務の不遵守が続いていることに遺憾の意を表明するとともに,シリアに対し,国際原子力機関(IAEA)が要求している同国の情報,文書,サイト,物質及び関係者へのアクセスを直ちに認めることにより,IAEAに完全に協力することを要請する。

11. 我々は,寧辺における5MWeプルトニウム製造炉の再稼働,ウラン濃縮施設の稼働・拡張,軽水炉建設活動及び弾道ミサイル発射を含む北朝鮮による継続中の核・ミサイル開発を最も強い言葉で非難する。北朝鮮は,更なる核実験を差し控え,即時にすべての核活動及び弾道ミサイル技術を使った発射を停止しなければならず,関連安保理決議で求められているように,すべての核兵器及び弾道ミサイル計画を完全で検証可能且つ不可逆的な方法で放棄しなければならない。我々は,現在及び将来にわたって,北朝鮮を核武装国として受け入れることはない。我々は,北朝鮮に対し,すべての核兵器及び既存の核計画の放棄,早期のNPT及びIAEA保障措置への復帰を含む2005年六者会合共同声明におけるコミットメントを守るための具体的行動をとることを求める。我々は,また,北朝鮮が不拡散上の義務を完全に履行するよう求める。我々は,北朝鮮に安保理決議上の義務及び六者会合共同声明上のコミットメントを履行させるための外交的努力を支持する。我々は,すべての国家に対し,関連安保理決議上の義務を完全に実施し,北朝鮮による拡散活動を止めるためのあらゆる取組を行い,禁止されている核・弾道ミサイル計画の北朝鮮による継続的な追求を妨げることを要求する。

核軍縮

12. G7は,既存の軍縮及び軍備管理条約の誠実な実施を最も重要視する。我々は,ロシア連邦及び米国による,2018年までに配備済み核兵器数を大幅に削減する新戦略兵器削減条約(新START)の誠実な実施を歓迎。我々は,3000の核・通常弾道ミサイルを含む,一つの類に該当するすべての兵器を廃絶した画期的な軍備管理合意である中距離核戦力(INF)全廃条約は,冷戦後の欧州安全保障構造並びに国際安全保障及び安定性の重要な要素であるとともに,米国,ロシア連邦及び他の締約国によるNPT第6条の義務の実施への貢献であることを強調する。この文脈で,我々は,ロシア連邦に対し,完全かつ検証可能な遵守を確保することにより,INF全廃条約の実行可能性を保持するよう要請する。

13. 我々は,2013年6月,ベルリンにおいて,オバマ米大統領がロシア連邦に対して提案した新しい軍縮交渉ラウンドが,同交渉にとっての望ましい条件が整えば,いまも有効であることを評価する。こうした機会は失われるべきでない。我々は,英国が最近実施した実戦に利用可能な核弾頭数の120未満までの削減,及び,仏の核戦力の追加的な透明性に関する措置を含め,英国及び仏による軍縮関連措置を歓迎する。我々は,これまで核軍縮措置を行っていない核保有国に対し,大きさ,型,場所に関わらず,核兵器保有量を削減するよう要請する。また,我々は,核軍縮検証のための国際パートナーシップが最近立ち上げられたことを歓迎する。

14. 我々は,2月4〜5日のロンドンにおける5核兵器国会合の成功裏の開催を歓迎し,内容のある共同声明,いくつかの非核兵器国への関与及び核兵器国による核兵器主要用語集等の諸成果に関する行動に留意する。相互信頼及び透明性の向上を目指した中国,仏,ロシア連邦,英国及び米国による対話の継続は,核軍縮の更なる進展にとり不可欠である。

15. 包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効及び普遍化は,すべての国の安全保障上の利益である。未署名・未批准国は,他国の動向を待つことなく,遅滞なく署名・批准すべきである。我々は,現行の自発的な核爆発実験のモラトリアムを歓迎する一方で,核兵器の実験的爆発の法的禁止がより効果的であることを想起する。我々は,すべての国に対し,同条約の趣旨・目的を無にする行動の自制を求める。我々は,CTBTの批准を進め,条約の発効を促進するためのCTBT賢人グループの尽力を歓迎する。ヨルダンにおける大規模統合野外演習(IFE)の成功は,条約の現地査察能力がいかに発展してきたかをよく示している。加えて,国際監視制度(IMS)は,核実験の検知,原子炉事故に起因する放射能の追跡及び津波の早期警告の情報提供によって,その有効性を示してきた。このことは,条約が発効した際に,同条約の検証体制がいかに効果的かを既に立証している。署名国は政治的意思を向上させ,この検証体制の完成のために適切な援助を提供しなければならない。

16. ジュネーブ軍縮会議(CD)の行き詰まりへの焦燥を共有し,この状況を乗り越えるべく引き続き取り組むことをコミットする。我々は,多国間の核軍縮・不拡散上の課題を前進させるための次なる論理的な措置は,CD/1299(CD文書)及び同文書に盛り込まれているマンデートを基礎として,核兵器又はその他の核爆発装置に使用するための核分裂性物質の生産を禁止する条約(FMCT)の交渉であると信じる。我々は,FMCTに関する政府専門家会合での実質的な議論を歓迎し,同会合の報告書を楽しみにしている。我々は,仏がFMCT条約案を配布する意図を留意する。

17. 近づきつつある広島・長崎の被爆年忌は,核兵器使用の壊滅的な結末を厳格に思い起こさせる。我々は,この関連で,70年という(核兵器の)不使用の記録を歓迎するとともに,すべての国がそのような出来事が再び起こることを防止する責任を共有すると確信している。我々は,軍縮・不拡散に向け,協調された,新たな努力の重要性を強調する。しかし,核兵器のない世界には近道はない。我々は,核軍縮に向けた漸進的手段がNPTにしたがった核兵器のない世界という目標に達するための現実的な方法であると考える。過去25年にわたり,このアプローチは,実質的な進展をもたらしてきた。

国際原子力機関(IAEA)保障措置

18. 我々は,IAEAの中心的な役割及び保障措置制度を積極的に支持する。保障措置の効果的な実施は,核不拡散体制にとって最も重要である。IAEAは,保障措置上の任務を果たす上で適切な資源及び政治的支援を有さなければならない。我々は,IAEAの包括的保障措置協定及び追加議定書が,核燃料,原子力資機材及び技術の供給決定に当たり検討されるべき普遍的な国際的検認基準として受入られることを引き続き目指している。我々は,追加議定書の未署名及びその未実施国に対し,追加議定書の署名及び実施,適切な場合には,改正少量議定書を締結することを要請する。我々は,関係国との緊密な協議を通じて国レベルにおけるIAEA保障措置制度の進展を支持し,IAEA保障措置制度の信頼性,効果性,統一性を維持することの重要性を強調する。

原子力の平和的利用

19. すべてのNPT締約国は,NPT第1条,第2及び第3条に規定される国際的義務に従って,原子力を平和的目的のために利用する奪い得ない権利を行使する。我々は,核不拡散義務を果たす国であって,完全な透明性をもって最高水準の原子力安全,核セキュリティ及び核不拡散を満たし,かつ環境に配慮した形で,平和的な民生用の原子力計画を策定することを希望する国々と協力する意向を有していることをあらためて表明する。また,原子力が責任ある形で発展する上で,最も重要である教育や訓練といった分野において,国際協力の強化に向け作業するよう,すべてのNPT締約国に奨励する。我々はまた,保健,農業,水資源管理,産業適用,発電等の分野において原子力技術の恩恵をより享受し,かつIAEA加盟国の開発ニーズを満たす有効な手段として,IAEA技術協力プログラム及び平和利用イニシアティブ(PUI)を支援していくことを確認する。

20. 我々は,NPT締約国に,国際的な原子力損害賠償制度の構築に向けた取組を含むIAEA原子力安全行動計画の履行を支持するよう要請する。我々はまた,原子力安全条約(CNS)締約国による,2015年2月の原子力安全に関するウィーン宣言を含む,CNSの履行強化の取組の進展,及び原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)の発効を歓迎する。我々は,緊急事態時の準備と対応措置の確立,履行及び継続的な改善の重要性を強調する。

21. 核燃料サイクルへの多国間の取組は原子力活動に資する。適切に機能してい

る既存の市場を歪めることなくエネルギー安全保障及び不拡散の利益となり得るものとして,我々は,この概念を積極的に支持する。我々は,カザフスタンにおける低濃縮ウランバンクの設立に向けたIAEAの活動を支持し,ホスト国協定の早期の締結を要請する。

核セキュリティ

22. 核セキュリティの分野で,具体的進展が達成された。我々は2016年に米国が主催する次回核セキュリティ・サミット及び同年に開催されるIAEA閣僚級会合の準備プロセスを支持する。国家がそれぞれの国内的要請と一致する形で,高濃縮ウランの保有量を最小化し,分離プルトニウムの保有量を最小限のレベルに維持すること及び地球上の脆弱な核物質及びその他の危険な放射性物質の適切な防護によって,核・放射性物質テロリズムの脅威を更に削減することが極めて重要である。この分野の国家の基本的責任を認識しつつ,我々は核セキュリティを促進するための国際協力を更に強化し調整するとのコミットメントを再確認する。我々は,強固で包括的な国際核セキュリティ体系の必要性を繰り返し述べる。我々は,核セキュリティ・サミット・プロセスの間に創設され,発展され,実施された結果とアイディアの持続性を達成するため,核セキュリティ・サミットの機運を利用するよう努力する。我々は,各国がサミットの目的を支持する既存の関係国際イニシアティブに参加することを引き続き奨励する。

23. 我々は全ての国が核物質防護条約の2005年改正をできる限り速やかに批准,受諾,又は承認することを強く要請する。我々は,核物質防護条約の全ての締約国が,改正が発効する時まで,改正の目的に従って行動することを奨励する。

24. G7各国は,核物質の密輸に対抗し,核テロリズムと闘うため,核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ(GICNT)による取組及びその他の国際的な努力を賞賛する。我々は,2015年6月にヘルシンキで行われるGICNT全体会合を待望する。核物質及びその他の放射性物質の不法取引が20年以上の間継続的に発生していることにより,テロリスト及び悪意のある者によってこれらの危険な物質が取得されることの脅威が強調され,国際社会による警戒が求められている。こうした状況を背景に,我々は,核テロリズム防止条約の重要性を強調し,全ての国がこの条約の加盟国となるよう奨励する。我々は,全ての締約国がこの条約の全ての規定を完全に順守する必要性を強調する。我々は,IAEAの移転事案データベース(ITDB)及び既知の密売人の国境を越えた移動を追跡するインターポールのフェイル・セーフ作戦を含む,これらの物質の不法取引に対抗するための取組への国際協力及び国際調整を強化する取組を支持する。

原子力供給グループ(NSG)

25. 我々は,原子力供給国グループ(NSG)が,全ての国に対し,平和的目的のみのために核関連の技術及び資機材が供給されることを確保するよう監視を実施すること並びにそのような品目の移転が核兵器の拡散に寄与することのないよう確保するために最大限努力することを要請していることを歓迎する。NSGガイドライン及びザンガー委員会のリストは,原子力専用品及び原子力関連汎用品の輸出のための基準として機能すべきである。我々は,全てのNSG参加国政府に対し,同ガイドラインを厳格に遵守することを要請するとともに,NSGに参加していない原子力供給国政府に対し,同ガイドラインに従って行動することを奨励する。我々は,また,追加議定書を供給の条件とするとの議論を支持する。我々は,技術専門家グループによって行われている規制リストを最新のものにすることを確保するための進展を歓迎するとともに,同グループによる不拡散強化のためのアウトリーチの努力を歓迎する。

化学兵器

26. 我々は,CWC及び化学兵器禁止機関(OPCW)の活動への無条件の支持を再確認する。我々は,第一次世界大戦中の初の化学兵器の大規模使用から100年を迎えるに際し,CWCの普遍化の達成及び効果的な実施への努力を継続する。この関係で,我々は,CWC批准プロセスを完了するためのビルマ/ミャンマーによる最近の取組を強く歓迎する。我々は,CWC未締約国5か国の条約加入を強く勧奨する。我々は,すべての保有国に対し,透明性のある方法で,可能な限り速やかに廃棄プロセスを完了するためにすべての必要な措置をとることを強く要請する。我々は,化学兵器の再取得を防止するための効果的な検証及び取組の改善への支援の重要性を再確認する。

27. 我々は,シリアにより申告された化学兵器の除去及び廃棄を含む,過去12カ月間のシリアの化学兵器プログラムの廃棄の進展と,国際社会による甚大な努力に留意する。我々は,この作業の成功裡の実施のため財政的又は物的貢献を行った締約国に対し,深い感謝の意を表明する。OPCW事務局長及び技術事務局,国連特別調整官,OPCW・国連共同ミッションのスタッフによる献身及びコミットメントは,十分な認識に値する。

28. 我々は,シリア北部の反体制派の管理下にある3か所の村で2014年4月から8月にかけて,毒性化学物質である塩素が兵器として組織的且つ繰り返し使用されたとの説得力ある確証を提示するOPCW事実関係調査ミッションの報告書において表明された強い懸念を共有する。事実関係調査ミッションにより収集され報告された証拠は,これらの攻撃を,他の紛争当事者にはなくシリア軍のみが運用能力を有するヘリコプターの存在と必然的に結びつけるものである。さらに,我々は,最近報告されたシリアでの新たな塩素ガス攻撃の疑惑に深く困惑している。我々は,OPCW事実関係調査ミッションの継続と,これまでの報告書に含まれないすべての疑惑を調査するための措置を求める。我々は,アサド政権による塩素ガスの化学兵器としての使用を最も強い言葉で非難するとともに,こうした化学兵器攻撃はCWC及び国連安保理決議第2118号の下でのシリアの義務への違反であることを強調する。我々は,今後の化学兵器攻撃を防ぎ,シリアの民衆を守るため,国際社会が共同歩調をとる必要性を強調する。我々は,これらの恐ろしい行為の責任者に説明責任を負わせるとの決意で一致している。それ故我々は,その旨の直近のOPCW執行理事会決定及び,それに続く,国連決議第2118号の今後の不遵守には国連憲章第7章下の措置が課されることを明確にした国連安保理決議第2209号を歓迎する。

29. また,我々は,シリアが,CWC及び国連安保理決議第2118号による義務に従い,その化学兵器プログラムを完全に申告及び廃棄していないことを深く懸念する。我々は,シリアが,申告及びそれに続いて提出した情報の曖昧性と矛盾点を明確にするための記録を何ら提出していないこと,リシン・プログラムの攻撃的性格を隠蔽しようとしたこと,科学研究調査センターとバルゼ及びジャムラヤにある同センターの施設が化学兵器プログラムに果たした中心的役割を否定し続けていること,2013年8月21日にダマスカス近郊のグータで使用した兵器を申告していないことを強調する。さらに,我々は,シリアに対し,OPCW執行理事会の決定に従い,化学兵器生産施設の廃棄を加速化させることを求める。

生物兵器

30. 我々は,生物兵器を国際的に禁止する基礎として,BTWCを強く支持する。また,我々は,BTWCの普遍化を強く支持し,条約遵守を維持し強化するためのさらなる努力を慫慂する。我々は,最近のBTWCへのミャンマーの批准及びモーリタニアの加入を歓迎する。我々は,第8回BTWC運用検討会議において,条約への信頼を強化するための方策にかかる実質的アジェンダに合意することを追求し,BTWCプロセスに新しい活力を注入する。そのようなアジェンダは,とりわけ,個々の締約国によって試験的に実施されているアプローチを考慮し,実施と遵守に対してより大きな信頼を醸成するために展開されている実際的なアプローチを含むべきである。我々は,締約国間でのコンセンサスを追求するためにすべての地域のパートナーと共に熱心に取り組んでいく。

31. 我々は,自然発生,事故または故意にかかわらず,ヒト及び動植物の疾病アウトブレイクを,予防,発見,対応,削減するための生物学的・保健的能力を促進するために,BTWCを含む既存の枠組みにおける高水準の国際協調・協力を維持する必要性を確信する。西アフリカにおけるエボラの流行は,その努力の必要性を容赦なく思い出させるものである。我々は,世界保健機関の国際保健規則を完全に実施することに再度コミットする。我々は,バイオ脅威に対抗するためにパートナーシップを築き支援を提供する,世界健康安全保障アジェンダ(GHSA)やグローバル・パートナーシップのような他の取り組みを歓迎する。

32. 我々は,窒息性ガス,毒性ガス又はこれらに類するガス及び細菌学的手段の戦争における使用の禁止に関する1925年ジュネーブ議定書の関連性を再確認し,

2015年に90周年を迎える同議定書の普遍化を要請する。

大量破壊兵器及びその運搬手段への対処

33. 国際的な不拡散レジーム(オーストラリア・グループ(AG),ミサイル技術管理レジーム(MTCR)及びNSG)による大量破壊兵器及びその運搬手段に関する輸出管理は,拡散者が最も先進的な技術を有する国から獲得し得る支援を顕著に減少させた。我々は,これらのレジームを通じて世界的な拡散の脅威を減少させる取組を継続するとともに,全ての国に対し,ますます重要になっているキャッチオールに関する規則を含め,これらのレジームのガイドライン及び基準を国内において一方的に採用し,及び適用することを要請する。我々は,国際的な不拡散の取組の強化並びに規制リスト品目の効果的な輸出管理及びキャッチオール規制の整合的な適用のため,これらのレジームの要件を完全に満たす同志国のレジームへの参加を支持する用意がある。我々は,本年6月に豪州のパースで行われるAG設立30周年総会の開催を歓迎するとともに,豪州に対し,AGにおける献身的なリーダーシップ及び豪州のリーダーシップが生物化学兵器の拡散の防止においてもたらした重大な貢献に謝意を表明する。

34. 我々は,国連安保理決議第1540号,第1673号,第1810号,第1887号及び第1977号並びに2014年5月の国連安保理議長声明で強調されている国際社会の懸念を再び想起し,全ての国に対し,来る決議第1540号の実施にかかる包括レビューまでの間,決議第1540号により設立された1540委員会に積極的に協力することを奨励する。我々は,拡散者による機微技術やノウハウ入手の努力を阻止すべく,意識を向上させ,責任の文化の確立を助けるため,産業界及びアカデミアへのアウトリーチについの更に強調することを求める。全ての形態の無形技術移転に対して機微技術やノウハウを保護する更なる取組及びそれに応じた国内法制の整備が必要である。

35. ミサイルの拡散,とりわけ,大量破壊兵器の運搬が可能なミサイルの拡散は,国際の平和と安全に対する脅威となる。弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC)は,これらの脅威への対抗において鍵となる重要性を有する。G7は,HCOCの普遍化及び弾道ミサイルに関する透明性促進にコミットしている。

36. 我々は,大量破壊兵器及び物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップ(GP)への揺るぎないコミットメントを確認する。GPの枠組み内又はGPパートナーとともに,核・放射線源セキュリティ,バイオ・セキュリティ,化学セキュリティ,科学者の雇用と知識流出防止及び国連安保理決議第1540号の履行に係わる分野のプログラム及び活動における調整や連携を強化するよう努めていく。GPは,2016年核セキュリティ・サミットに従い,核物質を確保する目標を推進し続ける。GPは中核拠点との連携とメンバーシップの拡大という価値ある作業を継続して行っている。化学セキュリティ,バイオ・セキュリティ,核・放射線源セキュリティといった個々の重要な分野に特化したサブ・ワーキング・グループは,GPが行っている情報共有,資金供与,プロジェクト調整を改良させることに寄与した。GPは,エボラ危機への対処のため,とりわけバイオ・セキュリティの分野において,資金供与を行った。加えて,マッチメイキングの強化によって,GPはウクライナにおける化学セキュリティ,バイオ・セキュリティ,核・放射線源セキュリティの脅威削減のための支援を供与した。

37. 我々は,拡散対抗にとり重要であるPSIを支持する。阻止宣言を支持する国は増え続けており,最近ベトナムが104ヵ国目の支持国となった。我々は,大量破壊兵器並びにその運搬手段及び関連物資の拡散懸念国家・非国家主体への輸送及び拡散懸念国家・非国家主体からの輸送を阻止するために必要な能力や権限を強化するため,更なる施策の実施に強くコミットしている。我々は,PSIへの参加促進のためのアウトリーチを支持し,法的及び運用上の課題に引き続き重点的に取り組む。

小型武器

38. 通常兵器(特に小型武器及び弾薬)の不正な移転及び不安定な蓄積は,世界の多くの地域における安定や安全に対する主要な課題となっている。特にアフリカは,小型武器の密輸により悪化する武装暴力により影響を受けている。我々は,リビアの前政権の兵器庫から発生した通常兵器の拡散が,マリの不安定化に大きく寄与し,北アフリカの多数の近隣国及びサヘル,サハラ以南の一部の地域の安全への脅威となっていることを大きな懸念を持って目の当たりにした。我々は,テロ,組織犯罪及び武器の密輸を含む国境を越えた脅威に対する戦いに関する国連安保理決議第2195号の採択を歓迎する。この目的は,2014年11月にテロ及び犯罪対策に関するG7ローマ・リヨン・グループの下でのG7+支援戦略委員会が,深刻且つ組織化された犯罪に対するドナー支援を調整するための西アフリカ戦略支援枠組(WASAF)を採択したことにより前進した。我々は,サヘル及びサハラ以南のアフリカの他の地域における国々や地域機関とともに,地域会合の枠組みの中で,この取組に対して貢献していく。

39. 我々は,アフリカ諸国が武器密輸に対して一層協力することを求めるとともに,そのような協力に対して支援する用意がある。我々は,国家が所有する武器及び弾薬の管理が,関連ある地域における武装暴力に対する効果的及び持続可能な戦いのために,中核を成すと考える。我々は,最新技術の役割,並びに,武器の刻印及び追跡,物理的安全及び備蓄管理に関するベスト・プラクティスを考慮し,関心国に対する協力を継続して行う。

40. 我々は,ワッセナー・アレンジメント(WA)が通常兵器及び汎用品・技術の移転における透明性とより大きな責任を促し,不安定化をもたらす武器の蓄積を防止することにより,国際及び地域の安全と安定に貢献することに留意する。我々は,全てのWA参加国に対し,WAの核となる原則に従うとともに,武器の不法な移転及び不安定化をもたらす武器の蓄積を防止することを要請する。我々は,WAに参加していない国に対し,WAの基準及び規制品目リストを適用するためにあらゆる努力を行うよう求める。

41. ウィーン文書及びオープン・スカイズ条約は,ここ数ヶ月間,ウクライナ及びロシア西部における軍事行動についての有益な透明性を提供してきている。これは,これらの合意及びコミットメントを継続的に実施し,近代化することの重要性を表すものである。

42. 我々は,2014年12月24日に発効した武器貿易条約(ATT)の重要性を強調する。締約国による条約の効果的な履行は,合法的な武器取引を維持しつつ,人命救助に貢献し,武器及び弾薬の密輸を削減することとなる。我々は,条約への支持を拡大する締約国の努力の重要性を認識する。2015年8月の第1回締約国会議は,条約の国際的な実施のため重要な節目となり,ATTが国際安全保障における重要な役割を果たすことにつき関心を喚起する。

宇宙

43. 宇宙活動は,国家の社会,経済,科学及び技術的な発展に,国際的な平和と安全の維持と同様,重要な役割を果たし続ける。この文脈において,我々は,安全で,安定した,持続可能な宇宙環境を維持し,国際法に従った,公平で相互に受け入れ可能な条件による宇宙の平和的探査及び利用を確保することへのコミットメントを繰り返し述べる。我々は,宇宙環境の長期的な安全,セキュリティ,持続可能性及び安定性を強化するために,協調し,時宜にかなった,実際的な措置をとる必要性を認識する。同様に,G7は,宇宙における安定性を強化するために,透明性・信頼醸成措置(TCBM)の発展と実施に関する建設的な議論を支持し,促進する。国連政府専門家(GGE)の2013年7月29日の報告書における勧告を考慮して,我々は,「宇宙活動に関する国際行動規範」を2015年に完成させることによって,緊急に必要とされている宇宙におけるTCBMをさらに促進することに強くコミットする。我々は,また,2015年6月の国連宇宙空間平和利用委員会におけるTCBMに関するGGE勧告の検討と同様に,本委員会による「宇宙活動の長期的持続可能性」ガイドラインの完成への努力を支持する。

44. 我々は,宇宙が紛争の場となることを防止し,宇宙における軍備競争を避ける必要性を認識する。我々は,2014年の中露による「宇宙空間における兵器配置防止条約」(PPWT)改訂案の提出に留意した。しかしながら,いかなる新たな法的拘束力のある文書も,包括的で,詳細な,普遍的で,信頼でき,検証可能なものである必要がある。我々は,地上配備システムを含むデブリを発生させる対衛星兵器及び能力の継続的な開発を引き続き懸念する。我々は,宇宙における軍備競争を防止するために,そのような開発に速やかにまた国際的な取組の一環として対処することの重要性を強調する。

(了)