データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G7エネルギー大臣 ハンブルク会合 持続可能なエネルギー安全保障のためのG7ハンブルク・イニシアティブ

[場所] ハンブルク
[年月日] 2015年5月12日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国及び米国のエネルギー大臣およびそれぞれの代表、並びに欧州委員会気候変動対策・エネルギー担当委員は、昨年のローマ会合以降の共同のエネルギー安全保障強化の進展を協議し、最近の市場開拓を考慮したG7諸国内外の国々の持続可能なエネルギー安全保障を効果的に向上するための更なるイニシアティブを決定するため、5月11日及び12日にハンブルクで会合を行った。

1. 我々は、2014年にローマで開催されたエネルギー大臣会合で合意した、エネルギー安全保障のための原則への継続的なコミットメントを再認識する。我々は、昨年の会合以降に達成され、ローマG7エネルギーイニシアティブの実施報告書に記載された進展を歓迎する。我々は、ローマG7イニシアティブの実践を継続する。

2. 我々は、経済の繁栄、発展を支えるために、強靭かつ安全なエネルギーシステムが必要であることを確信する。我々は、持続可能なエネルギー安全保障の必要性を強調する。エネルギー安全保障を向上させるすべての対策は、可能な限り経済、環境の両面で持続可能であるべきである。我々はこれらの対策が、消費者や産業に、競争的かつ手頃な価格でエネルギーを提供し、経済成長の推進、雇用創出、社会の発展、生産性の向上、所得創出を促進することを確信する。

3. 多様化はエネルギー安全保障の中核的要素である。我々は、エネルギーミックス、エネルギー燃料、資源、調達ルートの更なる多様化を目指す。これにより短、中、長期的に、供給途絶に対するエネルギーシステムの強靱性が改善することを、我々は確信する。

4. 我々は、科学的観点から、温室効果ガス排出量の大幅な削減が必要であることを再認識し、二酸化炭素排出から経済成長をさらに切り離すための必然的なエネルギー転換の緊急性を強調する。我々は、COP21開催に十分な余裕を持って、すべての国々が約束草案を提出することを求める。この点に関しては、新たな協定であり、もう一つの法文書、もしくは法的強制力を伴う合意成果であり、一つの世界的合意を結論づけるために2015年12月にパリで行われるCOP21の重要性を再認識する。すなわち、それは野心的で、ロバストで、包括的な、産業革命以前のレベル以上2度以下に世界の温度上昇を効果的に抑えるために我々がすべきことをコミットしたままにするものである。

5.ロシア・ウクライナ間の危機情勢に対し、そして2014年ローマでのG7エネルギー大臣会合で採択された原則を再認識しながら、我々は、エネルギー紛争は互恵関係、透明性、継続された協力等を元にした対話を通じて解決されるべきであることを改めて表明する。我々は、危機の即座の解決を求め、エネルギーが、政治的な威圧や安全保障上の脅威として利用されてはならないことを再度確認する。

我々は次の分野においてパートナーと緊密に協力して行動することを確認した。

I. 安全なエネルギーシステム

供給国と輸送ルートの多様化に支えられた透明性、流動性、競争力のあるエネルギー市場は、エネルギー安全保障にとって必須条件である。

透明性、流動性、競争力のあるガス市場

6. 我々は、完全に相互接続され流動性あるガス市場は、単一の支配的な供給者はなく、消費者に選択肢を与えることを保証するということに同意する。我々はまた、例えばリスクと費用対効果の分析に従った逆送能力を含むよりよい相互接続のための物理的なインフラへの投資に対する安定的な条件を創出することによって先進的なガス市場の統合の必要性にも合意する。世界のガス供給安全保障へのLNGの価値ある貢献を認識しながら、我々はより柔軟で透明性のあるLNG市場を達成するため、さらなるステップを取ることに合意する。東京でのLNG産消会議のような既存プロセスと緊密に連携することを模索すべきである。

電力安全保障と強靱性

7. 我々は、エネルギーシステムの脆弱性を十分に評価するための協力を継続することに合意する。ガス供給ストレステストや、G7諸国による国家的な評価といった重要な作業に従い、我々は、自国の電力システムの脆弱性をさらに評価する必要性に合意する。

8. より多くの国々では、再生可能エネルギーが急速に拡大の一途を辿っている。エネルギーシステムの変化や関係する温室効果ガス排出の削減といった数多くの挑戦がある。そのうちの1つが、シェアが増加している変動性のある再生可能エネルギーをいかに電力システムに統合するかということである。我々はこの挑戦に立ち向かい、電力分野への新たな投資条件の創出を助長する必要性を理解するためにG7にリーダーシップの役割を見出す。

エネルギー分野のサイバーセキュリティ

9. エネルギー輸送システムへのサイバー脅威はますます複合的で巧妙になってきている。相互接続され必要なインフラとサービスを監視・管理する電子的通信設備を通じて、エネルギーが生み出され、輸送され、分配されることを確実にする、デジタルプロセスのネットワーク上に構築された、エネルギーシステムは、我々の経済の屋台骨である。エネルギーのバリューチェーンを超えてこれらのシステムが相互運用的であり相互接続される必要性は、デジタルフレームワークとインフラをサポートすることを必要としながら日々増している。

II. ウクライナなど最も脆弱な国々への支援

10. 前回の会合以来、本質的なエネルギー改革がウクライナにおいて動き出し、重要な逆送容量がウクライナに恩恵をもたらしている状況を歓迎する。しかしながら我々は、重要なエネルギー政策の改革の実行を継続することをウクライナに呼び掛ける。我々は、経済的に健全で、透明性があり、安全かつ持続可能なエネルギーシステム構築に向けて自国のエネルギー政策を改革しているウクライナや他の脆弱な国々への支援を再認識する。この意味から、我々は、エネルギーシステムが直面している巨大な挑戦に立ち向かっているウクライナを支援するためのすべての努力を歓迎する。我々は、ガス供給の持続可能な合意に至るためのEU、ウクライナ、ロシアの三者対話の努力を歓迎する。

III. 省エネ

11. 我々は、省エネが、持続可能なエネルギー安全保障を強化し、我々の経済の競争力に貢献する鍵であることを強調する。省エネは、「第一の燃料」であり、エネルギー需要を満たす最も費用効果の高い手段とみなされるべきである。我々は、省エネの未開の大きな潜在性を活用することにコミットし、エネルギー生産性を高めることにより、経済力を高め、より競争力のあるものとすることを目指す。

IV. エネルギー資源と革新的なエネルギー技術

12. 国産資源は、エネルギーミックスを多様化するための主要な選択肢である。我々は、省エネ、再生可能エネルギー及びその他の国産資源(選択する国においては、ベースロード・エネルギー源として機能することができる原子力を含む)の更なる活用促進を支持する。我々は、エネルギーシステムの中で温室効果ガスを徐々に削減する一方、当面、化石燃料は、エネルギーミックスにおける重要な部分として留まることを認識する。この文脈で、我々は、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)を利用することを選択する国々が、大規模な実証プロジェクトに参加するよう促していくと同時に、シェールガス及びその他の非従来型資源を開発・利用することを選択する国々が、安全で責任ある開発を進めていくよう促していく。我々は、非効率な化石燃料を段階的に廃止することにコミットする。

13. 我々はまた、研究・開発への継続的な投資と、革新的エネルギー技術展開の普及の促進を支持する。この観点から、スマートグリッド、最適化システム、エネルギー貯蔵、電気自動車、洋上風力エネルギー及びその他の柔軟な選択肢といったエネルギー技術のパフォーマンスの更なる改善とコスト削減が、エネルギー安全保障に大いに貢献する。

原則から行動へ:持続的なエネルギー安全保障のためのハンブルクイニシアティブ

ローマで合意された原則に基づき、我々は、G7各国及びそれ以外の国々において持続可能なエネルギー安全保障を更に強化するため、追加的な具体的共通行動をとることに合意した。

14. 我々は、G7エネルギー大臣の要請に基づき、IEAが作成したガス供給安全保障を強化するための勧告を歓迎し、その履行状況を注意深く留意することに合意する。我々は、IEAに対し、欧州委員会と協力しながら、パイプライン及びLNG両方を含むガス市場の強靱性と柔軟性を強化するための選択肢に関する更なる助言を提供することによって、取組を強化していくことを求める。これは、緊急時対応、契約条項の調整、ガス貯蔵施設、国産ガス資源や関連インフラ・プロジェクトに関する側面を含む。

15. 我々は、特に、電力分野における供給の安全保障とその相互依存性に関するエネルギー脆弱性評価に関する取組と情報交換を継続していく。これは、越境送電、電力供給途絶の許容範囲、デマンド・レスポンスおよびインフラを含む。我々はまた、IEAに対し、IRENAと密接に協力しながら、変動性のある発電を統合するために、システムの柔軟性強化を含む、電力安全保障を確保するために最も効果的な選択肢を評価することを要請する。

16. 我々は、エネルギー分野におけるサイバーセキュリティの改善に向けた取り組みにコミットする。異なるアプローチの分析、サイバー脅威の識別や脆弱性に対する定義や方法論についての情報交換、ベストプラクティス及びサイバーセキュリティ機能やキャパシティ・ビルディングへの投資を推進することをコミットする。

17. ウクライナをはじめとした脆弱な国々がエネルギーセキュリティの強化のために取り組んでいるエネルギーシステムの再構築や自由化を支援しつづけること、ウクライナや他のエナジーコミュニティ諸国におけるエネルギーインフラや省エネルギー分野における投資の促進を行う我々の深いコミットメントを再認識する。

18. 我々は、G7各国における主要な省エネルギー施策とその履行に関する分析を進めることに同意する。我々は、関係者間における省エネルギーネットワークの構築推進と対話の促進を続ける。欧州委員会と共に、省エネ製品における透明性を強化するエネルギー関連製品データベースの構築を模索することに合意する。我々はIEAに、IPEECや他のフォーラムとの連携の下、この分析を行い、これらのイニシアティブに対する勧告を策定することを依頼する。

19. 我々は、クリーンエネルギーの調査、開発、実証に関する全体の調和と世界的支出の透明性を高めるため、互いに、また同様な考え方を持つ国々との取り組みにコミットする。我々は、関係国や国際的ステークホルダー間でのベストプラクティスの情報交換を行うことにより、洋上風力のさらなるコスト削減を追求することにも同意する。

我々は、エルマウ城で行われるG7サミットにおける我々のリーダーの意思決定のため、持続可能なエネルギー安全保障のためのG7ハンブルクイニシアティブを提出する。