データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2015 G7エルマウ・サミット首脳宣言 附属文書

[場所] エルマウ,ドイツ
[年月日] 2015年6月8日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

附属書:女性の起業家精神に関するG7原則

・女児及び女性に,例えば学校,職業訓練,大学など早期段階から適切な情報を促進することにより,起業家となる可能性を認識させ,その考えをビジネス事案にすることを積極的に奨励する。

・ジェンダーの定型化に対抗し,女児が早期からSTEM(科学,技術,工学及び数学)分野において履修し教育を完了するための具体的な措置を策定する。

・例えば新世代の女性創業者の模範として,成功した女性起業家の注目度を高める。

・例えば女性起業家に目的に沿った情報,技能,助言及び指導を提供し,女性起業家のためのネットワークを促進することにより,女性起業家の個別のニーズに対応する。

・女性起業家の,代替的な資金源及び銀行制度を含む資金調達,技術・イノベーション,及び国内・国際市場へのアクセスを促進する。

・例えば,男性女性双方のための,育児休暇及び保育へのアクセスを含む仕事と家庭生活の両立支援のための十分な政策を策定することにより,枠組みを改善する。

附属書:薬剤耐性(AMR)と闘う共同の努力

 G7は,薬剤耐性(AMR)に関する世界保健機関(WHO)の第1次世界行動計画を強く支持する。我々は,以下の分野を強調しつつ,自国の国別行動計画を策定又は見直し,稼働し,共有するとともに,様々な機関及びステークホルダーとの協力を継続する。

 AMRとの闘いは,既存及び将来の抗微生物薬の効果の保全並びに新しい抗微生物薬,ワクチン,代替的な治療及び迅速な診断ツールのための研究開発への関与という2つの部分から成るアプローチにより取り組むべきである。

・我々は,人及び動物の健康,農業並びに環境の全分野を含むワン・ヘルス・アプローチに強くコミットする。我々の国別行動計画はこの概念に基づく。

・我々は,感染症の予防を改善し,抗微生物薬をより適正に使用する責務がある。これを達成するため,我々は,抗微生物薬の効果を維持するための包括的なアプローチと具体的な措置を必要とする。我々は,これらの取組への他国の参加を奨励し支援する。

・我々は,特に,抗生物質を,治療上の理由により,監督の下で国内法・管轄地域の法に従って個別の診断を得た上で使用することにコミットすることにより,抗生物質*(注)*の適正使用を促進する。我々は,医師,獣医師及び家畜生産者の管理プログラムの実施を通じ,知識及び責任ある使用を促進する。

・人及び動物の治療薬における抗生物質は処方又はそれに相当する獣医師の指示によってのみ入手可能であるべきであることの重要性及び抗生物質の適切な使用が薬剤耐性の減少に貢献することを強調する。

・我々は,リスクアナリシスがなされない場合には畜産における成長促進のための抗生物質の使用を段階的に廃止する必要性を特記する。

・我々は,医療及び獣医専門家並びに一般人の間で,感染の予防及び抑制並びにAMRについての認識及び知識を拡大する重要性を認識する。

・AMRと闘う効果的な戦略のための知識のギャップを埋めるため,我々は,医療,動物の治療及び農業における並びに環境の経路を通じた既存及び新たなAMRの態様のサーベイランスを強化する必要がある。

・我々は,基礎研究,疫学研究並びに新たな抗微生物薬,代替的治療,ワクチン及び迅速な患者の身辺での検査の開発及びアクセスの増加により,イノベーションを促進しなければならず,我々は,AMRに関する独立レビューに留意する。

・この文脈において,我々は,WHO,国際獣疫事務局(OIE)及び国連食糧農業機関(FAO)との緊密な協力の下,極めて重要な役割を果たす医薬品,生物工学及び食品産業との対話を強化することにコミットする。

・我々は,G7閣僚に対し,全ての関連するステークホルダー間で抗生物質の責任ある使用を促進しベスト・プラクティスを共有するため,国別の取組を蓄積し,G7会議を開催することを要請する。

附属書:気候政策

気候リスク保険イニシアティブ

 特に,気候変動の影響を大きく受ける低所得国における貧困かつ脆弱な人々に対する気候変動の影響への強じん性の構築を目指す効果的な気候リスク管理は,災害リスク削減,気候変動への適応,自然災害や極端な気象現象に起因する残存リスクの一部分に対処するための保険を含むことが必要である。

目的

 G7イニシアティブの全体目標は,効果的な気候リスク保険ソリューション及び保険市場の創出と,貧困かつ脆弱な開発途上国において危機にさらされている人々及び財産に対する保険関連制度の賢明な利用を促進することである。これは,気候変動への適応を可能とし,経済成長,貧困削減及び気候への強じん性の促進に貢献する。

 G7気候リスク保険イニシアティブは,アフリカ,アジア,小島嶼開発途上国,中南米及びカリブにおける既存のリスク保険機構の活用も含め,低・中所得国において,気候変動に起因する災害の悪影響を補償する直接的又は間接的な保険によって恩恵を受ける人の数を2020年までに最大4億人増加させることを目指す。

 気候リスク移転アプローチは,保険可能性を促進する意識啓発措置と相まって,保険に適した環境を強化する。このイニシアティブは,国連気候変動枠組条約(UNFCCC)や仙台防災枠組などの関連する国際的な政策枠組みとの相乗効果の活用を意図している。

アフリカにおける再生可能エネルギーに関するイニシアティブ

 アフリカは,再生可能エネルギーの膨大な資源に恵まれている。しかしながら,世界の未電化世帯の半分はサブサハラ・アフリカに存在する。最近の著しいエネルギーへのアクセスの向上にもかかわらず,国際エネルギー機関(IEA)は,2030年には,サブサハラにおける6億4,500万人の人々がエネルギーへのアクセスから疎外されると予測している。負担可能な価格のエネルギー・サービスへのアクセスの向上と,それによるエネルギー貧困の削減は,クリーン・エネルギーの課題が重要な役割を担うことができる重要な目標である。この点において,全ての入手可能な資源を効果的に活用しつつ,地域における再生可能エネルギー源を開発することは,アフリカにおけるエネルギーの算出を増加し,未来に向け可能性を解き放つ主要原動力となり得る。

目標

 この取組の目標は,再生可能エネルギー(太陽光,陸上・海上における風力,水力,バイオマス及び地熱,オフ・グリッド,及び送電線網の展開)の導入を加速させることで,2030年までにアフリカにおける持続可能なエネルギーへのアクセスを改善させることである。このイニシアティブは,既存のイニシアティブの拡大を意図し,2020年までに追加的な再生可能エネルギー設備の容量を最大10,000MWに到達させることを目指す。これは,国家及び地域の投資計画に基づき,アフリカにおける再生可能エネルギー・プロジェクトの融資可能性を特定し,支援するであろう。特に国連の「万人のための持続可能なエネルギー(SE4ALL)」,国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の「アフリカ・クリーン・エネルギー回廊」,国連環境計画(UNEP)イニシアティブ,アフリカ・EUエネルギー・パートナーシップ,アフリカ連合,アフリカ連合とアフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD),アフリカ環境大臣会合(AMCEN),アフリカン・パワー・ビジョンを含むアフリカ開発銀行(AfDB)の旗艦プログラム,米国の「パワー・アフリカ」イニシアティブ及びEUの電化財政支援イニシアティブ(ElectriFi)などの既存の多国間,二国間プログラムに基づき策定することは可能である。このイニシアティブは,既存の取組間の連携プロセスを強化し,将来作業が必要な未確定事項を明確化することを目指す。これは,負担可能で安定的かつ安全でクリーンなエネルギーへの,全ての人々の普遍的なアクセスを確保するための国際的な取組の不可欠な構成部分を成すべきである。G7は,既存の金融機関,すなわち国際開発金融機関/開発金融機関(MDBs/DFIs)や緑の気候基金を利用すること,並びに気候変動防止技術への民間投資の特定の課題,すなわち,金融・政治的リスク,現地の限られたプロジェクト策定能力,及び脆弱な規制枠組みとセクター政策を目標とすることを目指す。

 このイニシアティブはまた,開発途上国における再生可能エネルギーとエネルギー効率への民間投資の推進を目指して革新的な気候資金措置の特定と先導を支援する「気候資金のためのグローバル・イノベーション・ラボ」に限定されないが,右を含む革新的な措置及び既存の成功したプログラムの拡大を含む。

方法

 アフリカにおけるクリーン・エネルギーの発展を加速させるために取組を協調させるとのエルマウにおけるG7の政治的コミットメントの支持を受けて,アフリカ連合,COP21の議長国フランス及びG7の議長国ドイツは他のG7諸国と協議しつつ,更なる行動のための共通計画を策定する。この行動計画は,UNEP及び世界銀行との緊密な協力の下で,その他の関係するステークホルダーの関与も得つつ策定され,IMF・世界銀行の2015年年次会合の間にリマで行われる気候資金に関する閣僚会合において,パリで行われるCOP21に向けた道の確固たる節目として提示される。

附属書:資源効率性のためのアライアンス

 世界レベルで,天然資源の消費と廃棄物の排出はかつてないほどの規模に増えている。データは,20世紀の間に,世界における天然資源の利用が一人当たりで二倍に増えたことを示している。GDPが1%増えるごとに,天然資源の利用は0.4%増えている。さらに,産業に供給された天然資源の多くが,一年以内に廃棄物として自然環境に戻されている。経済成長と天然資源利用との間にはいくらかの分断が見られるが,この分断は,2050年には90億人を超えると予想される世界人口と新たに工業化している国々における急速な経済成長に伴って,更に高まる需要を克服するには不十分である。

 持続不可能な天然資源の消費とそれに伴う環境劣化は,物資価格の上昇や供給の不確実性停止を通じて,ビジネスリスクを増大させる。このような背景を踏まえ,資源効率性の向上とライフサイクルを通じた資源の持続性の管理は,環境及び気候の保護,雇用,社会的恩恵並びに持続可能なグリーン成長を実現するために重要な要素である。資源効率性は,経済の持続性,競争力及び成長を強化するとともに,環境への負担を減らす機会を提供する。これは,持続可能な資源管理と循環型社会を促進するためのより広範な戦略の一部となるべきである。資源効率性の向上には,政策立案者,産業界,学界及び消費者の間の生産的な協力が必要である。

野心的な行動へのコミットメント

 我々は,ライフサイクルを通じた天然資源の保護と効果的な利用の高い重要性と,経済,環境及び社会という同様に重要な持続可能性に関する三側面に対する良い影響を再確認する。ライフサイクルに基づく意思決定は,天然資源,及び重要な可能性を持つ部門の,両方又はいずれかに焦点を当てることができる。我々は引き続き,神戸3R行動計画(発生抑制(Reduce),再使用(Reuse),再生利用(Recycle))を含む既存の国及び地域のイニシアティブを基礎として,国際的な進展を反映させながら,資源効率性を向上させるための野心的な行動をとる。そうすることで,我々は,産業の競争力を強化し,雇用を保障し,環境保護を促進していく。次回G7会合の前までに,我々は,我々の活動の進捗を共有する。

資源効率性のためのG7アライアンス

 我々は,産業界(ビジネス7)並びに公的部門,研究機関,学界,消費者及び市民社会を含むその他のステークホルダーと共にベスト・プラクティスを共有・促進しイノベーションを強化するための,自発的で非拘束的なフォーラムを提供する資源効率性のためのG7アライアンスを設立する。アライアンスは,例えば関連する産業界のイニシアティブに積極的に関与し,ネットワークを支持することで,恩恵を受ける。資源効率性のためのG7アライアンスは,資源効率性の課題にどのように対処するかについての構想の交換を促進し,ベスト・プラクティスと経験を共有し,情報ネットワークを創出することを目的とする。

 ベストプラクティスに関する一連のワークショップによりこのプロセスは開始される。資源効率性のためのG7アライアンスの下で取り扱われる主題は以下を含む。

・(ビジネス7との協力による)産業界のイニシアティブとベスト・プラクティス

・好ましい枠組みの状況を創出する政策

・資源効率性のためのライフサイクルに基づく意思決定の手段,データ,構想及び方法論

・産業共生,すなわち,例えばエコタウンを通じた産業間のサービス,設備及び副産物の共有

・実践的なツールを含む中小企業支援

・特定部門の政策手法とベスト・プラクティス

・持続可能な製品と購入,グリーン公共調達,ローカル・サプライ・チェーン及び資源効率性の政府機関の意思決定への統合

・循環型経済,エコデザイン,共有経済及び再製造

・資源効率性の研究・イノベーションの強化と資源効率性の教育・訓練への統合

・国際フォーラム及び国際機関の関連する活動

・開発途上国との二国間協力からの経験及びG7がこれらの国々と協力し支援する可能な方策

・非再生資源を持続可能な再生資源に代替する可能性

 資源効率性のためのG7アライアンスは,その年の議長国主導の下,少なくとも年一回ワークショップを開催する。移動の必要性や必要資源を抑制するとともに,恩恵を最大化するために,バーチャル・ワークショップやビデオ会議の活用が奨励される。

強化された国際協力

 資源効率性の取組は,既にこの分野で活発な国際機関との協力強化により,恩恵を受けることができる。したがって,我々は,国連環境計画(UNEP)国際資源パネル(IRP)に対して,先進工業国,新興市場国及び開発途上国における資源効率性のための最も有望な潜在力と解決策を強調した統合報告書を準備することを招請する。統合報告書は,IRP及びOECD,UNEPなどのその他の関連する国際機関の既存の作業とその主要な結果を基礎とし,持続可能な消費と生産10年計画枠組みなどの関連する国際的なプロセスを考慮に入れるべきである。統合報告書は,2016年後半までに提示されるべきである。我々はさらに,OECDに対して,統合報告書を補完する政策指針を作成することを招請する。

附属書:海洋ごみ問題に対処するためのG7行動計画

全体原則

 G7諸国は,

・海洋ごみについてその発生を予防し,それを削減し及び回収・処理するために,行動計画の主要な目標として,以下に記載された優先行動を含め,それぞれの国家システムを改善することに約束する。

・国際開発援助及び投資を通じた支援が海洋ごみ問題への対処に重要であることを認識し,これらを奨励する。

・内陸及び沿岸域に排出され,最終的に海洋ごみとなる廃棄物を減らすため,並びに既に海洋中に存在するごみを回収するため,国又は地域の行動計画の策定と実施を支援する。

・とりわけ開発途上国とベスト・プラクティスを共有し,その他の国際フォーラムにおいて,行動を同様に要請することを奨励する。

・可能な場合には,協力のために既存の基盤及び手段を利用することが,重複を減らし,これまでの進展(例えば,陸上活動からの海洋環境の保護に関する世界行動計画(GPA)又は海洋ごみの国際パートナーシップ(GPML),地域海条約・行動計画など。)の活用につながることを認識し,したがって,これらの利用を支援する。

・海洋ごみ問題に取り組むための啓発と教育を通じて,個人及び企業の行動の変化を促進する。

・発生の抑制が,海洋ごみ問題への取組と対処を長期的に成功させる鍵であることを認識する。産業界と消費者は廃棄物を削減するために重要な役割を果たす。

・海洋環境中には既に大量のごみが存在することから,回収・処理活動が必要であることの重要性を認識する。

・海洋ごみ問題に対処するための活動の実施を支えるための経済的インセンティブ,市場措置及び官民連携を含む利用可能な幅広い政策手段と制度の利用を支援する。

陸域を発生源とする海洋ごみに対処するための優先行動

・廃棄物の管理,廃棄物の発生抑制及び再使用と再生利用の促進のための国家システムの改善

・廃棄物管理に関する活動を国際開発援助及び投資に組み込むこと,適切な場合におけるパイロット・プロジェクトの実施に対する支援

・海洋環境に流出するマイクロプラスチックを含む廃棄物について,下水及び雨水を経由するものを削減し,及び予防するための持続可能かつ費用対効果の高い解決策の研究

・海洋環境に影響を与える使い捨て製品等の利用を削減するための適切な措置及びインセンティブの促進

・マイクロビーズの自発的な段階的廃止など,環境便益を得るための持続可能な包装の開発及び製品からの原因物質の除去に取り組むことを産業界へ奨励

・ペレット流出ゼロを目指すなどの,プラスチック製造全体や,製造から輸送までのバリュー・チェーンに関するベスト・プラクティスの促進

海洋ごみ回収・処理のための優先行動

・海洋ごみが蓄積する地域の特定と,海岸,川岸,海底,海中及び海面並びに港湾及び内陸水路における海洋ごみ回収・処理に係る経験を交換する場の設立

・費用対効果を含めた社会経済的側面を考慮した,利用可能な最良の技術(BAT)及び環境のための最良の慣行(BEP)を利用し,可能な場合にはパートナーと共同で実施される,影響を受けやすい海洋生態系に脅威を及ぼす海洋ごみの環境面で健全な方法による回収・処理の支援

・海洋ごみの発生を抑制するための啓発活動,潜在的な政策に係る選択及びその他の手段を支援し,及び対象とするための回収データの評価・分析

海域を発生源とする海洋ごみに対処するための優先行動

・マルポール条約附属書Vに従い,港湾の受入れ施設に運ばれ,適切に処分される廃棄物の量を最大化する取組

・海洋ごみ対策に貢献し,適切な場合にはパイロット・プロジェクト(デポジット制度,自主的合意及び使用済み品の再生を含む。)を実施し得る,国際連合食糧農業機関(FAO)の専門的知見を考慮した,水産業及び水産養殖業からの主要な廃棄物に対処するための選択肢の特定

教育,研究及び啓発活動に関する優先行動

・自然環境,内水及び海洋に流入するごみの量を削減すること可能とする個人の行動変容をもたらす啓発活動及び教育活動の促進

・整合性のある地球規模の海洋ごみモニタリングの着手並びにモニタリングの手法,データ及び評価の標準化を支援

・海洋ごみの発生源,発生経路及び影響に対する理解を促進するため,国連環境計画(UNEP)及びその他の機関による活動に対する支援

・海洋ごみ問題に取り組むための追加的な研究構想・戦略に対する支援及び要請

附属書:食料安全保障及び栄養に関するより広範な開発アプローチ

 我々は,飢餓と栄養不良の撲滅に引き続き力強くコミットする。したがって我々は,野心的なポスト2015年開発アジェンダに向けた現行の取組を支持し,食料安全保障及び栄養に係る我々の関与を同アジェンダの枠組みの中に位置づけることを想定している。パートナー国及び国際的な関係者が関与する広範な取組の一部として,またポスト2015年開発アジェンダに対する大きな貢献として,我々は,2030年までに開発途上国における5億人を飢餓と栄養不良から救い出すことを目指す。

 以下に示されているとおり,広範なG7アプローチは,飢餓と栄養不良の削減に資するために策定されている。我々は,開発の有効性向上と効果の改善,及び資源の動員により焦点を当てることを含めた幅広い範囲の介入を追求する。

 我々の広範なアプローチは,ラクイラ食料安全保障イニシアティブ,食料安全保障及び栄養のためのニュー・アライアンス,土地パートナーシップ並びに世界的な成長のための栄養(N4G)コンパクトを含む,食料安全保障及び栄養のための長期的なG7の取組を基礎とする。我々は,開発途上国との既存のパートナーシップを基礎とし,開発途上国の開発政策と戦略を支持し,我々の活動をこれらと整合させることにコミットする。我々は,栄養スケールアップ(SUN)運動,並びに,繁栄の共有及び生活向上のための農業成長・変革の加速化に係るマラボ宣言の文脈におけるパートナー国のコミットメントを謝意をもって留意する。

幅広い範囲の介入

 我々は,食料安全保障及び栄養に関する既存の幅広い介入を継続し,基礎とするとともに,以下の分野に特に注意を払う。

ダイナミックな農村社会の変革に向けて

・飢餓と栄養不良は,現在,農村部において最も蔓延している。我々は,特に農村の貧困層及び小規模・家族農家に焦点を当てながら,農村部の潜在力を開発することを支援するための統合された多分野に渡るアプローチを進めることを目指す。しかし,既に世界の人口の半分以上が都市部に住んでいる。農村社会は,急速な人口の構造変化と空間的移動を通じて,既に変容している。我々は,これらの現行のプロセスの正の効果を最大化し,負の効果を最小化し,一人も取り残さないようにすべく,どのようにして最大限支援できるかについての理解を深めるために協働し,経験と認識を共有する。

・女性と若者の重要な役割を認識しつつ,我々は,特に農業・フードシステムの中での彼らの能力を強化し,農業・フードバリューチェーンへの積極的な参加を支援することで,彼らをこの広範なアプローチの中心とすることを目指す。これは,彼らの起業家としての潜在力を引き出すことで,世帯収入の増加を後押しし,貧困を減らし,食料安全保障及び栄養を向上させることにつながる。

・我々は,小規模農家を企業と結びつけ,投資を呼び込み,緊急に必要とされている非農業雇用と収入を生み出す,農業・フードバリューチェーン・アプローチを促進する。

責任ある投資と持続可能な農業

・我々の取組は,民間資金の動員と開発利益の増大に寄与すべきである。我々はしたがって,国家の食料安全保障の文脈における土地,漁業,森林の保有に関する責任あるガバナンスのための任意ガイドライン(VGGT)と,世界食糧安全保障委員会(CFS)の農業及びフードシステムにおける責任ある投資のための原則の着実な実施と,我々のODAによる投資を同ガイドライン及び同原則と協調させるべく努めることに対する支持を再確認する。我々は,食料安全保障及び栄養のためのニュー・アライアンスにおける民間投資の同ガイドライン及び同原則との適合を促進するように更に努力する。

・土地の保有に関する責任あるガバナンスは,社会的に公平な農業の発展と投資の呼び込みにとって極めて重要である。我々はしたがって,VGGTの実施のためのパートナー国への支援を続け,既存のG7土地のパートナーシップを継続し,適切な場合には新たなパートナーシップの追加を追求する。

・我々は,天然資源への高まる負荷を懸念し,世界の生態系を保全して持続可能な形で利用する必要性を明確に認識する。我々は,持続可能な農業生産の増大を,パートナー国を支援する我々の食料安全保障の取組の重要な構成要素とすることに合意する。我々は,研究開発,新たな持続可能な技術,その他のイノベーション及び慣行が,農村の貧困層にとってよりアクセスが容易で入手可能なものとなることを確保するための取組の増進に合意する。

・我々は,食料安全保障及び栄養に対する気候変動及びその他の潜在的災害リスク要因の負の影響を懸念し,したがって,気候変動に適応し,強じん性を構築し,温室効果ガスを緩和しつつ,持続可能な形で農業生産を増加し,生産性を向上し,及び収入を増加する手段を更に進めることにコミットする。我々は,気候変動への適応に関するベスト・プラクティスを促進することにコミットし,気候変動対応型農業のためのグローバル・アライアンスなどの新たなイニシアティブに留意する。

栄養

・我々は,妊産婦,乳児,幼児の栄養を向上させるため国際的に合意された世界保健総会のグローバル・ターゲットを達成する取組において,食料安全保障及び栄養の向上のために,統合された多分野に渡るアプローチをとることにコミットする。我々は,N4Gコンパクトを歓迎し,より栄養改善のための間接的,直接的な介入を拡大する必要性を認識する。

・我々は,低栄養や微量栄養素不足の対処に効果的であることが証明されている,栄養改善のための直接的な介入を追求する。我々はまた,農業,社会保護,水,衛生,保健,教育及びフードシステムの向上などの主要部門への栄養改善のための間接的な介入を強化する。我々は,より良い栄養のためのバランスのとれた食事を増進するために,多様化した食料生産を支持する。

・我々は,妊娠から子供が2歳になる誕生日までの1000日間に特に注意を払いつつ,出産年齢の女性,妊婦,新生児を育てている母親,及び5歳未満の子供の栄養に焦点を当てた,生涯アプローチを確認する。

・我々は,第2回国際栄養会議(ICN2)で採択された栄養に関するローマ宣言及び行動枠組みを支持し,低栄養と闘う多様なステークホルダーによるSUN運動及びパートナー国の継続した取組を歓迎する。N4Gコンパクトに関し,我々は,進捗を監視し,コンパクトの目標を達成するための追加的行動の必要性を評価するため,ブラジルのリーダーシップの下で2016年に再び集まることを期待する。

紛争・危機の際の食料安全保障及び栄養

・我々は,自然災害,経済危機及び社会的・政治的・暴力的紛争による影響を受けた人々の食料安全保障及び栄養に係る必要性に対処することに,引き続きコミットする。

・我々は,強じん性を高めるため,包括的な開発戦略の中に組み込む形で,短期,中期及び長期的な支援をより良く結びつけることを目指す。救援から開発への移行の強化は,効果と持続可能性を高める上での鍵である。我々の目的は,急性ショック又は慢性的なストレスに対処する能力を高めるため,個人,地域及び国家の吸収力,適応力及び変形力を強化することである。

・包括的な合同リスク分析は,可能な限り,我々の介入の基礎となり,食料不安の根本原因をより良く理解し,対処できるようにする。

 我々は,より多くの介入が,特に食料危機の再発又は長期化に陥りやすい国における強じん性を高める形で策定されるよう努める。

開発の有効性向上と効果の改善

・我々は,開発の有効性を高める釜山原則の完全な実施へのコミットメントを再確認する。我々は特に,包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)などのパートナー国の既存の戦略,アプローチ及び計画を支持し,これらに我々の活動を整合させることに再びコミットする。我々はまた,国際レベルとパートナー国内との双方における多様なステークホルダーのパートナーシップを支持するとのコミットメントを強調する。

・我々は,政策の議論と調整のための最も包摂的な場としてのCFSを支持し,CFSやその他の国連及び国際機関並びに食料安全保障及び栄養のための協調的な国際的取組を向上させる既存のイニシアティブとの関与を追及する。

・透明性を確保するために,我々は,G7の説明責任の慣行に沿って,進捗を監視し報告する。我々は,適切な場合には,ポスト2015年開発アジェンダ・プロセスの成果に沿って,我々のコミットメントを定量化するとともに,これまでのG7の取組を基礎としつつ,説明責任のメカニズムを通じて進捗を監視する。我々は国レベルでの説明責任プロセスを改善させるため努力する。

・我々は,国連機関,世界栄養報告及びSUN運動と緊密に協働しながら,食料安全保障及び特に栄養に係る我々の目標を監視するデータのインプットを改善する。

資源の動員

・我々は,開発途上国のパートナーが,食料安全保障及び栄養のために国内資源を効果的に利用することを信頼する。我々は,民間部門に対して責任ある投資による貢献を要請し,市民社会に対して積極的な関与を奨励する。我々は,開発資金プロセスに沿って,持続可能な革新的資金調達の更なる活用を支持する。

・我々は,G7が2009年のラクイラ・サミットにおける誓約以来,農業,農村開発,食料安全保障及び栄養に対するODAを増加させてきていること,並びに,民間投資を含むその他の資金源を呼び込む上でのODAの役割を認識する。我々は本日,2030年までに開発途上国における5億人を飢餓と栄養不良から救い出すことを目指すために必要な資源を動員するために,パートナーと協働していくことにコミットする。

・我々は,国連食糧農業機関(FAO),世界保健機関(WHO),国際農業開発基金(IFAD),国連世界食糧計画(WFP)及び国連児童基金(UNICEF),並びに国際開発銀行(MDBs)や世界農業食料安全保障プログラム(GAFSP)などの資金メカニズムのパートナーを通じた資金調達,加えて市民社会の実施パートナーの,それぞれの重要な役割を認識する。我々は,N4Gコンパクトの一部として行われたコミットメントを認識し,入手可能なマッチング資金の開放を追求する。

{*(注)* G7諸国における「抗生物質」の用語の定義の相違に留意しつつ,ここでは人の健康に影響を及ぼす抗生物質を指す。}