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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 海洋安全保障に関するG7外相声明

[場所] 広島
[年月日] 2016年4月10日‐11日
[出典] G7伊勢志摩サミット公式ホームページ
[備考] 仮訳
[全文]

自由で開かれ、安定した海は、国際社会の平和、安定及び繁栄にとっての礎である。海洋の重要性を認識しつつ、我々、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の外務大臣及びEU上級代表は、海洋安全保障及び海上安全に関する更なる国際協力へのコミットメントを再確認する。

我々は、海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映された原則を含む普遍的に認められた国際法の原則に基づく海洋秩序を維持することの重要性を再確認する。海洋の法的秩序は、国際交通を容易にし、海洋の平和的利用及び海洋資源の持続可能な利用を促進し、国際社会における経済秩序及び安全を支える。

我々は、航行及び上空飛行その他公海及び排他的経済水域の国際的に適法な利用の自由、並びに、国際法に適合する無害通航、通過通航及び群島航路帯通航の権利を含む他の海域における関連の権利及び自由に対する決意を改めて表明する。

我々は、すべての国に対し、仲裁手続を含む適用可能な国際的に認められた法的な紛争解決メカニズムの活用が法の支配に基づく国際秩序の維持及び促進に合致するとの認識の下、そのようなメカニズムを含め、信義誠実及び国際法に従った海洋に関する紛争の平和的管理及び解決を追求し、UNCLOSの下で規定されるものを含め、彼らに拘束力を有する関連の裁判所によって下されたあらゆる決定を完全に履行することを求める。

我々は、東シナ海及び南シナ海における状況を懸念するとともに、紛争の平和的管理及び解決の根本的な重要性を強調する。我々は、現状を変更し緊張を高め得るあらゆる威嚇的、威圧的又は挑発的な一方的行動に対し、強い反対を表明するとともに、すべての国に対し、大規模なものを含む埋立て、拠点構築及びその軍事目的での利用といった行動を自制し、航行及び上空飛行の自由の原則を含む国際法に従って行動するよう要求する。我々は、沿岸国が、境界未画定海域において、海洋環境に恒久的な物理的変更を引き起こす一方的な行動を最終的な合意への到達を危うくし又は妨げる限りにおいて控えること、及び、それらの海域において、実際的な性質を有する暫定的な取極を締結するためにあらゆる努力を払うことの重要性を強調する。我々は、地域における信頼及び安全の構築を追求するための対話といった信頼醸成措置への更なる関与を奨励する。我々は、南シナ海に関する行動宣言(DOC)全体としての完全かつ効果的な履行、及び効果的な行動規範(COC)の早期策定を求める。

我々は、世界の安定、安全及び繁栄を脅かす、海賊及び海上武装強盗、海洋空間での国境を越えた組織的犯罪及びテロ、人身取引、移民の密輸、違法・無報告・無規制(IUU)漁業、及びその他の海上活動を強く非難しつつ、これらの脅威に対処するための国際協力を追求することに対するコミットメントの継続を表明する。我々は、IUU漁業の防止に向けた対策や規制の実施を確実にするための取組を強化することの重要性を特に強調し、12月のドイツ主催「海洋安全保障に関するG7ハイレベル会合」において提出されたIUU漁業に関する提言を歓迎する。

我々は、海賊及び海上武装強盗並びにその他の不法な海上活動との闘いにおける地域のオーナーシップと責任の重要性を再確認する。我々は、ソマリア沖海賊対策コンタクト・グループ(CGPCS)、G7++ギニア湾フレンズ・グループ、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)のような枠組みを通じて、地域的な海上保安能力を開発・支援し、不法な海上活動を支援する陸上の犯罪組織を追跡し、それらを訴追する能力を向上するための取組を称賛する。我々は、国連及びその専門機関、北大西洋条約機構(NATO)のオーシャン・シールド作戦及びアクティブ・エンデバー作戦、並びにEUの共通安全保障・防衛政策(CSDP)ミッション、特に、連合海上部隊及び貢献国との緊密な連携の下で行われているアタランタ作戦及びソフィア作戦を称賛する。我々は、共通情報共有環境(CISE)を含むEU海洋安全保障戦略及びG7各国により策定された各戦略を歓迎する。

我々は、不法な海上活動の原因に取り組み、沿岸国が自身の脆弱性に対処するために、海上の管理、沿岸警備、災害救援、海上捜索救助、海上に関する情報の共有・統合、並びに立法、司法、訴追及び矯正といった分野における海洋安全保障及び海上安全のための能力向上支援を通じて協力していく決意を共有する。したがって、我々は、10月にトーゴにおいて開催予定のアフリカの海洋安全保障・海上安全及び開発に関するアフリカ連合(AU)首脳会合を歓迎する。

我々は、海洋安全保障を強化するための科学的及び技術的支援を提供することを目的とした研究活動を歓迎し、奨励する。我々は、さらに、国家管轄区域外の海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用につき、UNCLOSの下での将来的に法的拘束力を有する文書の策定に関する協力の構築を追求する。我々は、また、海洋分野の大部分の課題に根本的に関係する効果的な海洋状況把握(MDA)に必要となる情報共有と連携を促進することにつき、リーダーシップを発揮することを求める。

我々は、国際法に関するシンポジウムやセミナー開催といった、海洋法を含む国際法に対する理解を促進するための取組を奨励する。この観点から、我々は、昨年4月のリューベックにおける「海洋安全保障に関するG7外相宣言」において表明されたとおり、海洋安全保障に引き続き焦点が当てられることを歓迎するとともに、同年10月のチリ主催「我々の海洋」会合、「海洋安全保障に関するG7ハイレベル会合」、及び、本年2月の日本主催「第2回海洋法に関する国際シンポジウム」、「海洋境界画定に関する拡大ASEAN海洋フォーラム(EAMF)・ワークショップ」を歓迎する。我々は、国際社会の平和と繁栄に不可欠な、法の支配が貫徹する海を維持することの重要性を認識し、G7として、海洋安全保障に関する更なる行動にコミットする。

(了)