[文書名] G7情報通信大臣共同宣言(憲章の実施に係るアクションプラン)G7 香川・高松情報通信大臣会合2016年4月29・30日
[前文]
1. 我々G7情報通信大臣は、情報通信技術(ICT)に関する、現在及び将来の、持続可能かつ包摂的な発展に向けた地球規模でのICTの機会や課題に取り組むために、2016年4月29日及び30日に香川県高松市に集った。
2. 我々は、デジタル連結世界の拡大についての世界的な進展に貢献してきた、グローバルな情報社会に関する沖縄憲章(2000年7月)、ドーヴィルにおけるG8首脳宣言(2011年5月)及びオープンデータ憲章(2013年6月)を想起する。
3. 我々は、以下を歓迎する。
- インターネットガバナンスの論点を議論するためのマルチステークホルダー・プラットフォームとしてのインターネットガバナンスフォーラム(IGF)の権限の延長を含む、世界情報社会サミット(WSIS)の成果の実施に関する総括レビューについての国連総会ハイレベル会合の成果文書
- NETmundialマルチステークホルダー声明におけるインターネットガバナンス原則
- 国連の持続可能な開発目標を達成するための「持続可能な開発のための2030アジェンダ」
- COP21で採択された、イノベーションの重要性に言及したパリ協定
4. また、我々は、以下の取組を含む、デジタル連結世界を促進させるイニシアチブを歓迎する。
- EUによる「欧州デジタル単一市場戦略」
- 米国による「グローバルコネクトイニシアチブ」
- 日本による「質の高いインフラパートナーシップ」
- フランスによる「開発とデジタル技術」アクションプラン
- ドイツによる「デジタルアジェンダ」
- 欧州デジタルアジェンダの枠組みにおける、イタリアによる「ブロードバンド戦略及びデジタル成長のための戦略」
- 英国による「サリー大学5Gイノベーションセンター」
- カナダによる「イノベーションアジェンダ」及びブロードバンドアクセスを拡大させることへの合意
5. また、我々は、全てのステークホルダーにより現在及び将来のグローバルなICTの機会及び課題を議論するために、2016年4月29日に香川県高松市で開催されたG7ICTマルチステークホルダー会議からの成果を歓迎する。
6. 我々は、2016年6月21日から23日にかけてメキシコのカンクンで開催される、イノベーション、成長及び社会の繁栄をテーマとした、デジタル経済に関するOECD閣僚級会合の成果に期待する。
7. 我々は、デジタル連結世界憲章に基づき、デジタル連結世界が有する潜在性を最大化するための、以下の取組を行うことに合意する。
[行動計画]
i. ICTへのアクセスの向上
8. ICTへのアクセスを向上させるため、我々は、以下の取組を奨励する。
a) デジタルディバイドの解消
9. 我々は、引き続き、デジタル連結世界のためのインフラの整備を奨励し、また、あらゆる人々へのブロードバンドによるインターネットアクセスを含めた、ICTインフラ、製品及びサービスのグローバルな拡大を支援する政策を促進する。その目的のため、我々は、2020年までに新たに15億人のインターネット利用者を生み出すための、マルチステークホルダーによる取組を誘発することを目指す。
10. また、我々は、引き続き、グッドプラクティスを他の国や地域と共有する。我々は、開発イニシアチブのために、国際開発金融機関を含めた、技術専門家、国際機関及び全てのステークホルダーからの支援の増加を奨励する。また、我々は、国の開発計画にインターネットアクセスの目標を統合することを奨励する。
11. 連結性のためのインフラの向上に関しては、我々は、競争的な投資環境及び技術中立的な枠組みのもとでの、民間部門からの投資を奨励する。官民連携は、持続可能で質の高いインフラの整備及び普及を促進するための、官民双方の力を拡大する助けとなる。
12. 我々は、世界的な連結性の強化にも資する、教育及び研究開発の目的のためのオープンなインフラを提供する国立研究教育ネットワークの整備、相互接続及び利活用の重要性を認識する。
b) 投資及び競争を促進させるような公正で透明性のある政策及び法的枠組みを通じた、世界規模でのICTインフラ、製品及びサービスの、質及び価格の手頃感の向上
13. 我々は、低廉なコストによる技術の導入、更には競争を促進し、投資を刺激し、ローカルコンテンツを生み出すような、公平で、予測可能で、かつ透明性のある政策や法的環境等を通じ、手頃感のある価格でのアクセスを促進するためのベス
トプラクティスを共有することとする。
c) あらゆる人へのアクセシビリティ及びデジタルリテラシーの促進
14. 我々は、引き続き、必要不可欠なデジタルスキルについての教育及び訓練、更にはインターネットを含む、ICTの利用を全ての人に対して促進させるイニシアチブを通じ、デジタルから排除されるという課題に取り組むための努力を促進する。女性・女児、高齢者、青少年、障害者、マイノリティ、農村の住民、貧困世帯、読み書きのできない人及びその他の脆弱な人々への適切な配慮がなされるべきである。
d) 文化的及び言語的多様性の尊重
15. 我々は、多言語翻訳技術についての継続的な研究、開発及び普及を奨励し、また、様々な言語によるローカルコンテンツとサービスの更なる発展を支援する。また、我々は、文化的及び言語的多様性を促進させるような、音響・映像コンテンツのための技術を含む、新たな技術の開発を支援する。更に、我々は、デジタル技術が、2005年に採択されたユネスコ文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約の実施に関係があることに留意する。
ⅱ.情報の自由な流通の促進と保護
16. 情報の自由な流通の促進と保護のため、我々は、以下の取組を奨励する。
a) インターネットのオープン性及び越境情報流通の促進
17. 我々は、引き続き、インターネットのグローバルな本質を維持し、越境での情報流通を促進し、また、インターネット利用者が、自らの選択に基づきオンラインの情報、知識及びサービスにアクセスすることを許容するようなICT政策を支持する。我々は、公正な公共政策の目的を考慮した場合に正当化することのできない、データローカライゼーション要求に反対する。
b) プライバシー及びデータ保護の促進
18. 我々は、プライバシー及びデータ保護についての高い基準を満たすため、各国の法域をまたがる効果的なプライバシー及びデータ保護を一層促進するような政策枠組みの整備に努める。また、我々は、プライバシー及び個人データ保護を設計段階全体を通じて考慮した、プライバシーバイデザインなどのプロアクティブな方法を歓迎する。
c) サイバーセキュリティの促進
19. 我々は、信頼のあるデジタル連結世界の発展のために不可欠であるサイバーセキュリティを向上させる政策への支持を再確認する。我々は、ICT、及びICTによる重要インフラを含めて、サイバーセキュリティのリスク、脅威及び脆弱性に対処する取組の一環として、国際協力、能力開発及び官民連携を強化するよう努める。また、我々は、脅威を分析する手法に関する研究を含め、サイバーセキュリティに対するリスクマネジメントベースの取組を支援し、また、国際的なフォーラムにおける建設的な議論も通じて、引き続きそのような取組について、全てのステークホルダーと連携する。
20. サイバーセキュリティの意識の向上のためには、デジタル連結世界における全てのステークホルダーが積極的に責任を果たす必要がある。この目的のため、我々は、サイバーセキュリティへの脅威を軽減するための人材育成の重要性を認識する。それは、市民、重要インフラ事業者を含む企業及び政府が、効率的な方法で自らの目的を満たすことを可能とするための訓練、教育及び意識の向上を通じて実施されうる。
ⅲ.イノベーションの促進
21. イノベーションを促進するため、我々は、以下の取組を奨励する。
a) オープンな市場の実現
22. 我々は、引き続き、イノベーションを支援する手段として、オープンな市場を促進する政策を奨励する。我々は、企業の公正かつ非差別的な取扱いを確保し、産業政策の目標を追求するための競争上の措置の使用を避けるような、競争指向の政策手法の重要性を認識する。我々は、商業部門において技術製品を規制するために一般的に適用される方法は、革新的で、柔軟で、かつ費用対効果の高い解決策を奨励するための、外国政府、民間部門及び影響を受ける全てのステークホルダーとの有意義な協議からの便益を受けることを認識する。
b) 標準化を通じた相互運用性の促進
23. 我々は、伝統的な標準開発機関において策定されるものを含め、透明性があり、オープンであり、公明正大であり、市場ニーズに基づき、及び首尾一貫しているという原則に基づき、産業界が主導し、任意で、かつ合意により推進される、続ける、参照構造モデルを含むICTの標準の開発を促進する。
c) オープンデータ政策の推進
24. 2013年、G8ロック・アーン・サミットは、予算データ及びその他の政府の情報を容易にアクセスできる方法で公開するための、革新的なオープンデータ憲章を是認した。情報資源を一般にとってアクセスしやすく、発見しやすく、利用可能にすることが、市民生活の向上及び起業家精神、イノベーション及び科学的発見を誘発することを認識し、我々は、引き続き、相互運用性及びオープン性を容易にするための枠組みを推進することに合意する。
d) 人材育成
25. 我々は、既存の及び将来のニーズに合致し、また、ICTの利用による中小企業の生産性の向上及び新たな市場へのアクセスを助けるような、ICT人材の育成のための行動を奨励する。
e) 知的財産の保護
26. 我々は、営業秘密を含む知的財産の開発及び保護の重要性を認識する。我々は、強固な知的財産制度が、オープンな市場、競争、イノベーション及び成長を促進することを認識する。我々は、これらの製品のセキュリティを評価することについての政府の正当な利益を認識する一方、市場へのアクセスの条件として、一般的に適用される、大量販売用ソフトウェアのソースコードへのアクセス又は移転を要求するような政策に反対する。
f) 研究開発及び新たな技術の受容の促進
27. 我々は、デジタル連結世界の実現において、新たな技術を促進することの重要性を認識する。我々は、IoT、ビッグデータ分析、5Gモバイル通信、人工知能(AI)及びロボット技術などの新たな技術に関する、ICTの研究開発を奨励することへの合意を再確認する。我々は、我々の政策枠組みが、それらの技術が開発される際に、技術中立的ではありながらも、より広範な社会的及び経済的な影響を考慮することの確保を図る。
ⅳ.ICTの活用による地球規模課題及び機会への取組
28. 我々は、貧困と飢餓、保健医療、オンライン上での児童の保護、高齢化社会、教育、男女の平等と女性・女児の活躍、アクセシビリティ、エネルギーと気候変動、レジリエンスと防災、及び持続可能な交通と輸送等の分野を含む、持続可能な開発のための2030アジェンダに貢献するためのICTの活用についてのイニシアチブに関する経験を共有することに合意する。
29. また、我々は、WSISの成果及び行動計画が、引き続き、2030アジェンダ及びその他の国際的に合意された開発目標の達成のためにICTを利用することについての、マルチステークホルダーの連携のための適切な国際的枠組みを提供することを認識する。
30. 我々は、これらの開発目標を達成し、また、世界中の全ての人々のための社会の繁栄を実現するべく、新たな革新的な手法を使用するために、国家、地域及び国際の各レベルにおいて、全てのステークホルダーと協働することに合意する。
ⅴ.包括的な国際協力及び国際連携の強化
31. 上記の取組を効果的に実施するため、我々は、全てのステークホルダー間で、国際協力及び国際連携を強化することを決意する。我々は、他の国及び地域に対し、デジタル連結世界を支援する取組に着手し、また、イノベーションを奨励する環境を促進することを奨励するようにする。
32. 我々は、G7各国及びより広く適切な国際機関やフォーラムとの間において、別添に詳細が記載されている例を含め、協働可能分野及びベストプラクティスの共有を促進するように努める。更に、我々は、デジタル連結世界における、ICTの社会的及び経済的な影響を評価するイニシアチブを歓迎する。
[フォローアップ及び見直し]
33. デジタル連結世界憲章に基づく本宣言の実施を確保するため、我々は、将来のG7情報通信大臣会合において、議長国の裁量によりフォローアップを行い、また、必要に応じて本宣言の見直しを行うことに合意する。
34. 我々は、次回のG7議長国であるイタリアにおける2017年の情報通信大臣会合の開催の意志を歓迎する。